ワールドガイド鬼畜編その2


投稿者 あぐり 日時 1997 年 10 月 09 日 00:56:08:

 パーフェクトガイドを見て、改めて思うのですが・・・イラストを全員バックにしたのはイイ考えでしたね。想像力をそそるではありませんか。
 どんな顔、どんな表情・・・というのは、各プレーヤーの想像力にゆだねられているわけです。かといって空腹感も決して感じさせない、美しい後ろ姿を描きこんでいるわけですね。
 「あ」の小説もかくありたいと思うのですが、どんなものでしょうか・・・。




 ウータイの「かめ道楽」は・・・店のつくりといい、雰囲気といい、何となく、ヨソの「かめ道楽」と違う雰囲気を感じさせる。
 紅殻格子をはめこんだれんじ窓、店内に流れる胡弓の調べ・・・と、何となく、なまめかしくてアヤしい。
「・・・なんか、落ち着かねえなァ」
 シドは、そわそわしながら外を見つめた。
「・・・」
「・・・」
 クラウドも、ヴィンセントも・・・いや、ふだんにぎやかなバレットまでもが、しずかに黙り込んでしまっている・・・。
「艇長・・・だいじょうぶよ、ユフィちゃんは」
 ティファがとりなしたが、シドは立ち上がった。
 ユフィは、今朝、ウータイの「五強の塔」に登っていったところだった。ユフィ以外の人間は入ってはならぬということなので、彼らはとりあえず宿に戻り、待機していたのであったが、夜になるころになってもユフィは戻らない。
「どうして、大丈夫なんて言えるんだよ?ええ?武闘家のネエちゃんよ」
 シドは、いけないと知りつつも、ついついティファにからんでしまう。ヴィンセントが、そんなシドの服の裾をつかんだ。
「・・・シド、外に出よう」
何でだよ!
「・・・いいから・・・それとも、私と一緒に散歩するのは、いやか」
「う・・・」
 なぜかシドは逆らわない。他のメンバーがいぶかしむ中・・・ヴィンセントは、シドを従えて「かめ道楽」から出ていった。


 ウータイ人にとっては大切な大切な心のよりどころであるダチャオの像も、外国人たちには、ただの観光名所にすぎない。ほんとうは“拝観時間”はとうに過ぎていたのだが、ヴィンセントは、ひょいとサクを乗り越えて、あっさりと中に入ってしまった。
「さあ、シド・・・」
「・・・い、いいのかよ、こんなとこから入って」
 本来、入り口で拝観料を払って、チケットを買わないと入れないところではある。シドはしり込みしたが、ヴィンセントは構わずに手をさしのべた。
「来るのか、来ないのか?」
「・・・てやんでえ、知らねえぞ俺あ」
 シドは破れかぶれで柵を乗り越えた。中年とは思えない身のこなしの軽さは、さすがである。
 ヴィンセントが、すっとシドの手を取った。シドはビクンとした。
「さ、行こう・・・二人きりのデートだ」
「お、おい・・・いいのかよ、ユフィがひとりで戦ってるってのに・・・」
「・・・今は、私だけのことを想ってくれないか」
「う・・・」
 ヴィンセントに手を引かれて、シドはダチャオ像を登り始めた。お手々、つないで・・・まるっきり幼稚園のお遊戯ふうだが・・・ヴィンセントは嬉々としてのぼっている。
 足元はもう真っ暗だが、ダチャオ像は、幸いというか何と言うか、夜になると、観光客向けにライトアップされる。その明かりがけっこうあって、二人は転ぶことも迷うこともなく、1時間とたたず、最上までのぼることができた。
「ああ・・・見ろ、シド。ウータイが一望のもとだ」
 ヴィンセントが、珍しくはしゃいだ声をあげてシドを振り返った。
 だがしかし、ウータイの夜景は、ヴィンセントの言うように素晴らしかった。シドも、一瞬すべてを忘れて見入ってしまう。
 向こうに、「五強の塔」がすらりとした姿を見せている。あそこで今ごろユフィが・・・と想うと、シドの顔は曇った。
 その時、背後から、すっ・・・とヴィンセントが寄り添った。
「ヴィンセント・・・」
「今は私のことだけを想っていてくれと・・・言ったはずだ」
 ヴィンセントのやわやわとした、だがつよいものを秘めた腕が・・・きゅっ、となまめかしくシドを抱きしめた。
「お、おい・・・こんなとこで?!」
「こんな所だからこそ、燃えるのさ・・・違うか?」
「あ・・・う」
 ヴィンセントの唇が、背後からシドのそれを襲う。
 シドは、いつになく酔ったような気持ちになって・・・それを受け入れてしまった。


「ああっ・・・あッ・・・ヴィンセント・・・ヴィンセント!」
 こんな、めちゃくちゃライトアップされているところでこんなことして・・・もしかしたら誰かに見られているかも・・・。
 そんないけない気持ちが、却ってシドを燃え上がらせてしまう。燃え上がるシドのあで姿に、ヴィンセントもどうしようもなく昂ってしまう。
「いやだッ・・・あああ!」
「・・・きれいだ、シド・・・最高だよ」
 背後からシドを抱きしめて貫きながら、ヴィンセントは際限もなくシドを揺すり上げる。揺すり上げつつもささやく・・・。
 ライトアップに照らされるふたりの裸身は、表現を越えるほどなまめかしく、美しかった。
「駄目だっ、こんなとこで・・・あ・・・あぅ」
「そう言いながら・・・燃えてるじゃないか、こんなに」
「う・・・あっ」
「あんた・・・だんだん本性が目覚めてきた・・・みたいだな」
 ヴィンセントはふっとほほ笑んだ。彼が生まれて初めて手に入れた、完全に彼の思い通りに踊る・・・きれいで淫乱で、でも意地っ張りな恋人である。
「どうして認めようとしない?・・・これがシド、あんたの本性だよ」
「・・・」
「みだらで、恥知らずで、マゾヒスティックで・・・そして私を愛してるのだと・・・さあ、認めるがいい・・・」
「ううっ・・・違う・・・違う!」
 シドの爪が、救いを求めて、ダチャオ像の岩肌をひっかき・・・むなしく宙を掻く。
「違う・・・違う・・・違う!」
「ききわけのない男だ・・・でも、そこがいい」
「・・・ああああ!もう・・・もう・・・!」
 金髪を振りたてると、汗が水晶のようなしずくとなって、飛び散った。
「それでこそ・・・調教のしがいがあるというものだ・・・」
「ヴィン・・・もう・・・もう、許してくれ・・・!」


 自分の腕の中でぐったりと失神したシドを抱きしめながら、さすがにヴィンセントは後悔していた。
「・・・すまん、シド・・・こんなにいじめるつもりでは、なかった」
 ヴィンセントはつぶやき、そっとシドに接吻した。
 向こうにそびえている五強の塔・・・
「・・・わたしも、ほんとは気が気ではないんだ・・・」
「う・・・」
 シドがかすかに身じろぎする。
「・・・でも、これで・・・つかの間でも、ユフィのこと・・・忘れていられたろう?」
 ヴィンセントの瞳には、深い悲しみが宿っていた。
「・・・私も、おかげで、つかの間・・・心配を忘れていられたよ」




 はっきり言いますが、オチなどありません。
 ・・・ワールドマップがみんなみんな悪いのです。このダチャオ像で、二人をからませてみたいと・・・それだけなのです。
 ごめんなさい・・・。
 こんなのでも、読んでくだすった貴女には感謝・・・。
 次は・・・(まだ書く気・・・?)ちゃんとストーリーのあるの、書きますから・・・


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