一応この話はここで終わり(3)


投稿者 あぐり 日時 1997 年 10 月 04 日 01:45:44:

 インターナショナル、買ってしまいました。と言うか、ガイドが欲しかったのですね〜。「ブレスオブファイア3」クリアしてから、ゆっくりと本編に取りかかりますわ。
 改めて思うことですが、ヴィンセント、そしてシド・・・美しい。
 その美しい二人の、せつない恋模様であります。お嫌いな方は、ここでお引き返し下さいませ。




「ん・・・」
 目を覚ますと・・・なぜか、ヴィンセントが隣りに眠っていた。
「・・・?」
 シドはゆっくりと身を起こした。長い髪がはだかの肩にはらりと落ちる・・・長い・・・長い髪?!
 シドは一気に青ざめた。下を見ると、自分の胸に、豊かなバストが二つ、白桃みたいにぽろんと揺れているではないか。
「ヴィ・・・ヴィンセント!」
 シドが慌てて揺すり起こすと、ヴィンセントが目を開けて、あのガーネットの目でこちらを見てにこりと笑った。
 シドは背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「お・・・俺に・・・俺に何をした、ヴィンセント?!」
「あんたに、私の子どもを生んでほしいから・・・」
「ヴィ・・・」
「ルクレツィアに頼んで、あんたを改造してもらった・・・」
「か・・・改造!」
「そう、私の子を生めるからだにね」
「・・・」
「見てごらん」
 ヴィンセントが指さす方向に、大きな鏡がかかっている。
 そこにいたのは、自分ではない。シエラ・・・の色気のない、だが人のよさそうな顔、そして、まぎれもない女の身体・・・であった。
「俺に・・・シ・・・シエラに何した、てめえ!」
 思わず詰め寄ると、ヴィンセントは、美しい笑みを浮かべた。
「シエラさんの身体を使わせてもらった・・・あんたが愛した女性のからだだ、一つになれて嬉しいだろう・・・?」
「ふ・・・ふざけるな!」
「綺麗だよ、シド・・・今まで見たどんな美女よりも」
 ヴィンセントが身を起こして、のしかかって来る。シドは手足を振り回したが、男の力(!)にはとてもかなわない。
「う・・・うわあ、やめろ、ヴィンセント!」
「さあ、私の子を・・・」
「やめろおおおおおお!」


 ・・・そこで、シドは、汗びっしょりになって目を覚ました。
「・・・はあ、はあ、はあ」
 夢か・・・。夢でほんとによかった・・・。現実だったら、シド・・・自殺してるだろう。
 傍らで眠っていたシエラが、いぶかしげに目を開けた。
「どうしたの?悪い夢でも見たの?」
「あ・・・いやいや、何でもねえ」
「・・・私も夢を見ていたのだけれど」
 シエラは、うっとりと呟いた。
「艇長と初めて会ったときのこと・・・思い出すわ」
「初めて・・・か。いつ会ったっけ、俺たち・・・」
「まぁ、忘れてるのね。でもしかたないわ。私、最初は、数あるロケット計画スタッフの一員にすぎなかったんですものね・・・」
 シエラはほほ笑んだ。相変わらず色気のない顔ではあるが、決してブスではない。どころか、整ったきれいな顔だちである。
 往時のシドは、シエラなんかに興味はなかった。彼は、セフィロス登場以前の神羅がプロデュースする、ヒーローでありスターであった。もっともっと華やかで美しい女たちが、佃煮にするほど周りにいたからだ。
 だがシエラは、その頃からずっとシドにあこがれていた。ハンサムで、強くてかっこよくて、いつも遠くを見つめている青空色の瞳が素敵だった。ただミーハーな気持ちであこがれていたわけではなく、誇り高くてまっすぐで純粋で、ガラッパチのようでいて実は部下や周囲の人間にこまかく気を使う暖かさも持った、その黄金のハートが好きだった。
 シエラには、あこがれの王子様である。まさかその王子様の子どもを授かって育てて行く運命だとは、当時の彼女は考えもしなかった。そばにいるだけでいいと思っていたから・・・。
 でも、子どもとひきかえに、実物のこの人とはお別れ・・・正直、寂しくて胸がつぶれそうだが・・・でも、それでもいいと彼女は思い直した。
「ねえ・・・」
「ん?」
「子ども・・・何て名づけようかしら」
「決まってらあな・・・。男なら、シドJr.だ・・・女の子なら・・・そうだなぁ」
 シドは天井を見つめながら考えた。とくにいい名前・・・思い浮かばない。シドは、そういうセンスが全然なかった・・・。
「そう・・・ルクレツィア、てのはどうだ」
 さっきの夢をふと思い出して、シドは何げなく口にした。別に冗談ではなく、真面目にである。
 何となく、ヴィンセントへのつぐないの気持ちもあった。
「ルクレツィア・ハイウィンド・・・カッコいいんじゃねえか?あたま、よさそうでよ・・・」
「きれいな名前ね。どこかのお姫様みたい。あたしじゃなく、あなたに似てくれるといいわね」
 何も知らないシエラは、幸福そうににっこりした。
「でも、ハイウィンドの名前でいいの?あなたに迷惑、かからないかしら・・・」
「てやんでえ、俺のガキだって言っただろ」
「・・・そうね、シド・・・嬉しいわ」
「・・・お前、ほんとに大丈夫なのか?」
「大丈夫よ」
 シエラは気丈に顔を上げた。
「私・・・幸せだわ・・・」


 朝の太陽が高く昇るころ、シドが戻ってきた。
 鏡に向かって長い髪をとかしていたヴィンセントは、振り返って、シドを万感の想いで見つめた。
「ヴィンセント・・・」
「・・・いい、何も言うな」
 シドは、崩れるように、ヴィンセントの胸に倒れ込んだ。ヴィンセントは力のかぎり彼を抱きしめた。
 本当は、いろいろと言ってやりたいことがあった。でも、こうして戻ってきてくれたシドには、何も言えなかった。
「ごめん・・・ごめん、ヴィンセント」
 シドは、いつになく弱々しく、誰かの腕を必要としているように見えた。
「シエラさんが、シドの子どもをほんとに生んだなら・・・私は祝福するよ」
 ヴィンセントは、やさしく言った。
「この世で一番大切な人の子どもを、私が憎むわけがないじゃないか・・・」
「・・・」
「自分の子でもあると思って、可愛がるよ・・・シエラさんが許してくれればだが」
「あいつは、誰かを怨んだり憎んだりするような女じゃねえよ」
 シドは顔を上げ、乱れた前髪をかき上げながら言った。
 ああ、そうだ・・・。ヴィンセントは思う。あのやさしい、怜悧な、大きな愛情を持ったシエラならば、きっと、同じような大きな愛を持った子どもに育ててくれるだろう。
 シドの黄金のハートと、シエラの静かに包み込むような愛を持った子なら、きっと誰からも愛されて、幸せな人生を送るだろう・・・。
「ところで・・・」
 ヴィンセントは、ふと現実に返って・・・
「・・・バトルブリッジ中尉が、窓の下でじーっと立っているのを見かけたが・・・」
「な・・・何だってえ」
 シドはため息をついた。こっちが片づいたら、今度は・・・。
 まあ、いい・・・。そのうち何とかしよう。
 今は、シドは、ただヴィンセントのそばにいたかった。




 ・・・ま、シエラさん編はこれで完結。いずれ、忘れたころにまた出て来るでしょう。こんどはママさんとして・・・。
 次はちょっと時間をさかのぼって、決戦前のお話を書かせていただこうと思います(ま・・・まだ書く気だよこいつ・・・)。こっちも小品になりましょうが、できたら読んでやって下さいまし。
 ではでは・・・今回も読者様と会長様に、愛と感謝の投げキッス★


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