ドロドロなオープニング(1)


投稿者 あぐり 日時 1997 年 10 月 02 日 01:00:53:

 今日、WOWWOWで、「9カ月」という映画をやってたので・・・前に見たのですが、こんだビデオに撮って、今見直してます。なんたってわいが総受俳優ヒュー・グラントに惚れた作品ですからな(冒頭でおっさんに押し倒されてクチビルを奪われるシーン、もう百回くらい見ちまったですよ・・・)。
 あの甘いタレ目といい、老け顔なのに若々しい印象といい・・・。何をどうやっても「受」の印象のただよう容姿、物腰といい・・・。
 何と言うか、エンディングムービーのシドが、似てるんですねー・・・こんなこと思うのわしだけかも知れないですが。
 これから書くのは、もしかして、「9カ月」の影響・・・あるかも・・・しれんです・・・。




「艇長!」
 ミッドガルの駅頭・・・シエラが駆けてくる・・・シドは両腕を広げてシエラを迎え取る・・・。
 まるで、映画のワンシーンを見るような美しいシーンである。ヴィンセントは、頬のはじに苦っぽろい笑みをうかべて、抱き合う二人を見つめていた。
「会いたかったわ、艇長・・・」
「お・・・俺もだよ、シエラ」
「まあほんと?ついにお世辞を使えるようになったんじゃないのかしら?」
 シエラはほほ笑み・・・幸福そうに、自分の下腹を撫でた。
「聞いて、ベイビー・・・あなたのパパさん・・・ママに会えて、喜んでくれてるみたい・・・よ」


 ・・・・。
 ・・・・。
 ・・・・。


「パ・・・パパさん・・・だってえ?!」
「・・・」
「で・・・できたのか、シエラ」
 もうはた目なんか構っていられない。シドはシエラの顔を覗き込みながら、息せききって尋ねた。シエラはぽっと頬を染めて・・・
「・・・まだ確かめてはいないのよ。でも、多分間違いないと思うの」
「・・・て、ことは・・・」
「あなたの子どもよ、シド。あなたと私の」
「う・・・」
 シドは、シエラをぎゅっと抱きしめた。
「や・・・やった!!!!・・・・と」
 歓喜に顔を輝かせて、振り返ったシドの目に・・・完全な無表情で腕組みしているヴィンセントが映った。
 シドは、歓喜も何も、一瞬で忘れて・・・心臓を凍りつかせた。
「・・・どうしたの、艇長?」
 シエラがいぶかしげな顔になる。
「い・・・いや・・・と、とにかく、病院へ行ったほうが・・・いい・・・かも」


 子ども・・・子どもだって?シドに?
 ヴィンセントは、胸が鉛のように重くなるのを我慢しながら、できるだけ冷静を保とうと努力した。
 祝福・・・してやるべきだろうか。
“シドが・・・幸せなら・・・・私は・・・”
 かつてルクレツィアをあきらめた時のように、そう思うべきであろうか。
(・・・いや、断じて、違う!)
 ヴィンセントは拳を固めた。
(シドは私のものだ。もしシドが女なら・・・私は彼をとっくに妊娠させている。その自信はある)
 そんな自信をもつな・・・ヴィンセントよ。
(今さらシドをあきらめなどは、死んだってするものか・・・)


 シドは、虚脱してソファに横たわっていた。
 シエラの妊娠がほんとなら、自分は喜んでよかったのか、悪かったのか・・・。何とも複雑な気持ちである。
 ともあれ、すべては杞憂と言うか、まぼろしではあった。産婦人科に担ぎ込んだら、シエラの「妊娠」は、ただの体調不良だと判明したのであるから。
 ほっとしたような、がっかりしたような・・・かなり複雑な心境のシドの顔の上に、ヴィンセントの長い黒髪がぶら下がった。
「・・・わっ!ヴィ、ヴィン・・・!」
「・・・電話だ、シド」
「だ・・・誰から」
「バトルブリッジ中尉だ」
 シドは、ヴィンセントの手から、受話器をひったくった。
「・・・もしもし、何だよ!こっちには電話するなって・・・言っただろ!」
 ヴィンセントが、こちらをじー・・・っと・・・ガーネットの瞳で、見すえている・・・。
 シドは全身から冷や汗を吹き出させながら・・・「火宅」というコトバを思い出さずにはいられなかった・・・。
『もしもし、シド艇長・・・僕です、あなたのジョンです』
「あっ・・・」
『どうです、今夜あたり、また・・・』
「ばっ・・・ばかやろう!」
 シドは、思いっきり怒鳴りつけて、受話器を切った。
 シドは目をおおって、ソファに横たわった。
「てやんでぇ・・・俺が、俺が何したってんだよ?!」
「シエラさんを抱いて、私に抱かれて・・・おまけに、中尉にも抱かれた。それだけだろう」
 ヴィンセントの声は、何だか冷たかった。
 ヴィンセントは・・・覚悟していたつもりだった。シドは、自分のような者が一人で御していけるような人間ではない。それでもシドは自分を愛していてくれると確信していたはずだった。
 それでも、やはり、こう立て続けにいろいろとあると、感情がシドを許せなかった。
 シエラだけならまだいい・・・。彼女は、十年近くも・・・一番若くて一番美しい時期を、シドのために犠牲にしたのだから。
 だが、バトルブリッジ・・・あんな小僧っ子にまで・・・と言うのは、どう考えても、ハートが許せない。
「ヴィンセント・・・お前、ひょっとして、俺のこと、嫌いになった?」
「嫌いになれたら、どんなに楽だろうかと思うよ」
 ヴィンセントも頭を抱えた。
「でも、私があんたを棄てたら・・・多くの男や女が、待ってましたとばかりに、あんたのそのからだに群がるだろう・・・それが許せないんだ」
「そんなこと、ねえだろ・・・こんな老け顔のおっさんにさ」
「そんなことがあるから、だからいやなんだ」
 ヴィンセントは、シドの手首をぐいと掴んだ。
「シド・・・私のものだ。私だけの」
「ち・・・違う」
「ああ・・・あんたをいっそ殺したい。誰の手にも届かないものにしてしまいたい」
 ヴィンセントは、狂ったように、シドの顔と言わず唇と言わず、くちづけた。
「いやだ・・・あんたを誰かにとられるくらいなら・・・そんなこと・・・死んだ方が・・・死んだ方が、ましだ・・・!」




 い き な り・・・ドロドロした始まりですねぇ。とほほほ・・・。
 何だかヴィンセントが可哀相になってしまいました。か、必ず幸せにしたげるからねっ。
 ここまででも・・・読んでくだすった方(いるのだろーか、ほんとに・・・)には、感謝のチュ・・・☆


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