『月光』


投稿者 血吸ねこ 日時 1997 年 10 月 01 日 16:36:26:

う〜ん、タイトルも思いつかなくなってきました。
(ラストを書くのを伸ばそうとしているらしい・・・)


「あった!あれだ!」
 日の射し込まない海底で、古代種の鍵は見つかった。直接ボーンビレッジに乗り付けられれば早いのだが、そうも行かない。ジュノンに行き、そこで飛空艇に乗り換えなければならない。
 ずっと海中にいたために、時間がわからなくなっていたこともあり、一行が忘らるる都の近くに降り立ったのは、すでに日が沈んで大分たってからだった。

 夜目の利くヴィンセントが先頭に立ち、忘らるる都を取り巻く森に足を踏み入れる。月が出ているのか、思ったよりも足元が明るい。一行は無言のまま、足早に通り過ぎる。静まり返った森に、足音だけが響いている。
 ふと、月が翳る。同時に、モンスターが躍りでた。ヴィンセントがガントレットをはめた腕でモンスターを叩きのめす。そして、他にいないかと身構える。
 雲が晴れたのか、月光が差し込んできた。
(・・・すげぇな・・・)
 ガントレットから血を滴らせ、その紅い瞳に冷酷な光を浮かべ、闇を見据える。その姿を、青い月光が更に冷たく−−−更に美しく見せる。
 その姿に、シドは背筋が凍るほどの恐怖と感動を覚えていた。

 忘らるる都にたどり着いたのは、夜中を大分過ぎた頃だった。一行は、すぐに古代種の装置の所に行き、ブーゲンハーゲンに鍵を渡した。鍵をセットすると、中央に水のスクリーンが現れた。
「・・・エアリス!」
 クラウド達に会う直前−−−祈りを捧げるエアリス。
 いや、魔法を唱えているようだ。
「・・・ホーリーだ・・・!」
 エアリスはすでに白マテリアを使い、メテオに対抗できる魔法−−−ホーリーを唱え終わっていたのだ。だからこそ、彼女の死顔は穏やかだったのだろう。
 しかし、ホーリーが発動している気配はない。何かが邪魔をしている。何か−−−いや、誰か、というべきだろう。
 メテオを呼んだもの−−−セフィロスが。

「・・・やっぱセフィロス、か・・・」
 すでに、夜明けに近かった。シドは大きく伸びをしている。
「・・・そのようだな。」
 ガントレットにこびりついた血を落としながら、ヴィンセントは優しい瞳でシドを見やる。ここに来る途中で見せた、冷酷な光はどこにもない。
「明日は昼にここを出るってよ。」
 北の大空洞の中で、セフィロスは待ちかまえているはずである。どうやってあのバリアを突破するのか−−−その解決策も探さねばならない。
 シドはくわえていた煙草を消し、ベッドに腰掛けた。ようやく手入れの終わったガントレットを置き、ヴィンセントが隣に座る。シドの肩にそっと頭をもたれさせ、目を閉じる。ひょっとすると、あの瞬間−−−エアリスが刺された瞬間を、思い出していたのかもしれない。ヴィンセントはクラウドと共に、その場に立ち会っていた。
「・・・寝るか。」
「そうだな・・・」
 ベッドに入りランプを消すと、一瞬、部屋が暗くなった気がした。が、すぐに冴え冴えとした月光が差し込んできた。
「おい・・・ヴィン・・・!」
 ヴィンセントがシドに口づけ、舌を絡める。シドの手がヴィンセントの肌をまさぐり、甘い吐息をはかせる。シドの穏やかな愛撫に、ヴィンセントの息が荒くなる。
 露になったヴィンセントの肌を、月光が青白く染める。それは、病的な青白さとは違い、どことなく海の底にいるような、神秘的な感じがした。
「・・・きれいだな・・・」
 思わず、ぽつりと言葉が漏れる。
「・・・え?・・・ぁっ・・・」
 胸の突起を責められ、大きく仰け反る。ヴィンセントの艶やかな髪がベッドに散らばる。その髪さえも、月光に青く照らし出される。
(まるで・・・月を、いや月の光を相手にしているような・・・)
 月光に照らし出されたヴィンセントが、いつになく艶っぽく見える。
(・・・俺も、月光にあてられちまったか・・・?)
 どことなく儚げで、それでいて艶かしい。ふとしたはずみで消えてしまうのではないか、という錯覚すら覚える。思わず、その存在を確かめるかのように、首筋に唇をあて強く吸う。
「はぁっ・・・」
 ヴィンセントが甘い喘ぎを漏らす。シドの手が、更に感じやすい部分を刺激し、ヴィンセントが大きく身体を震わせる。
「あぁぁっ・・・」
 シドに貫かれ、ヴィンセントが悶える。その顔には快感に酔うかのような表情が浮かび、先程感じた儚さはどこにも見あたらなかった。かえって、月光のせいか更に妖艶に見える。
(・・・月の魔法・・・?けっ、俺らしくもねぇな・・・)
 シドは不思議な感覚を胸に抱きながら、ヴィンセントと共に登り詰めていった。

「・・・シド・・・」
 ヴィンセントがかすかな笑みを口の端に浮かべて問いかける。
「さっき・・・なんと言った・・・?」
「わ、忘れちまったよ」
 シドの顔が赤くなる。ヴィンセントはそれを見てくすりと笑った。
「・・・そうか・・・」
 そう言うとシドに軽く口づける。だが、ヴィンセントは聞き逃してはいなかった。
(きれい、か・・・シドに言われるとはな・・・)
 なんとなくくすぐったい気がしたが、心地の悪いものではなかった。
「寝るぜ」
 照れたような声でシドが言い、2人は目を閉じた。

 2人が共に眠りに落ちた頃、すでに東の空は白み始めていた。


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