「良い子」の為のセフィクラ


投稿者 ゆきみ 日時 1997 年 9 月 28 日 11:42:57:

 性懲りもなくまた送ってしまいました。まだ修行も始めていません(苦笑)。一回目はクラウドもセフィロスも出てこなくて欲求不満になってしまったので、今度はクラウドとセフィロスだけを書いてみたくなりました♪でも多分……や●いは入ってないような気が……入れてみたいんだけど……ううーん……



 気がつくと、クラウドは大きな屋敷の前にいた。
「ここは……」
 ――ここは神羅のお屋敷。中で何があるのかわからないんですからね。入っちゃいけませんよ。
 誰よりも優しい母親の言葉が思い出される。
「………………」
 ――こんな所じゃなくても、もっと遊ぶところはいっぱいあるでしょう?お隣のティファちゃんとか、ご近所のお友達とか。お友達と遊びなさい。
 ニブルヘイムの田舎町にそぐわない、大きくて立派な屋敷。クラウドはいつものように子供たちの輪に入れず、一人でとぼとぼと歩いているうちに、村でも禁忌の屋敷の前に来ていたようだった。
 ――うん。おかあさん。ぼく、このお家に入るの、やめる。
 ――いい子ね、クラウド。
 かつて交わした、母子の会話。クラウドは屋敷の前で、ぼんやりとそのことを思い出していた。
「いい子、か……」
 くすぐったい言葉だ。まるっきり子供扱いされて、全く気にくわないはずなのに、そう言われると何だかとても嬉しい。
「でも、僕はいい子じゃないね……いい子なら、きっと他の子と遊んでる。僕は……そういうこと、しないもの……」
 だから、ここに入っても、いいんだ。
 後で怒られるかもしれないけど。お母さんに怒られて、大人の人に呆れられて、隣のティファたちにバカにされて?
 そう思うと少し寂しかったが、クラウドは迷うことなく、屋敷の門に手をかけていた。


 無人の屋敷に一歩踏み入れて、クラウドは感嘆の声を上げた。
「うわあ…………」
 なんて広い屋敷だろう。パーティーでも開けそうなホール、そしていくつもいくつもある部屋。自分の家が一体いくつ入るのかと、ふと思えるくらいに。
「明かり……ないのかな……」
 外からの明かりだけでは薄暗い。しばらく掃除をされていないのか、射し込む光の中で埃が舞っている。だが、それもきらきらとしていて悪くないのに気づき、クラウドは明かりを探すのを諦めた。
「ちょっと埃っぽいけど、絨毯もふかふかだ。天上も高いや……あれはシャンデリアかな?僕、初めて見た……」
 興奮しながらホールを走り回る。くすんではいるが豪奢な壁紙、精巧な作りの階段や、床一面に敷かれている上等の絨毯を一つ一つ確認していく。
「でもでも、こんなに広いなら、ちょっとくらい遊び場にさせてくれたらいいのに。どうせ、今は神羅の人、誰もいないんだか……ら……」
 言いかけて、クラウドは立ち止まった。
「…………」
 ――ねえ、どうしてあの子、こっちに来ないの?
 ――ほっとけよ、ティファ。あいつはああしてるのが好きなんだろ?
 子供たちが話していた内容が、頭の中を駆けめぐる。
「ここを遊び場にしたって……僕には、関係ないんだ……」
 ぽつんと、呟く。それにつられて、じんわりと涙がにじんできた。
「…………っ」
 誰も、いない。だからいつもみたいに平気なふりをする必要もない。ここなら誰も見ていないのだから。泣いたって、誰も気づかないから。
 クラウドはその場に座り込み、そっと膝を抱え、うつむいた。
 その時。

 ぽぉ――ん……

「…………?」
 近くの部屋から何かが聞こえたような気がして、クラウドはびくりと顔を上げた。
「何……?」
 今、この屋敷には誰もいないはず。神羅の人は今はいないと大人が言っていた。村人は、ここには絶対入ってこないはず。それなのに……?

 ぽぉ――ん……

 聞いたことがある。そういえば、誰かが同じような音を出していた。あれは何だったっけ……?
「ピア……ノ……?」
 そう、ティファが家で弾いていたピアノの音だ。窓を開けて弾くから、隣の家のクラウドにもよく聞こえていた、ピアノの音。
「誰か、いるの……?」
 クラウドは立ち上がり、音の方へと歩き出す。こわい人かもしれない、それとも村の大人が怒りに来たのかもしれないが。
「誰……?」
 今のクラウドの頭の中には、その「誰か」に会いたいという気持ちでいっぱいだった。


 ピアノの音がする部屋は、一回の奥の部屋だった。
「だぁれ……?」
 キイイ、と音を立ててドアが開く。途端に、ずっと一音のみを続けていたピアノの音が止まった。振り向く人影。
「誰だ!?」
 誰何の声。だが、クラウドは聞いてはいなかった。
 そこにいたのは、黒と銀の男。黒いコートで身を包み、艶やかな銀で周囲を染める、美しい男が立っていたのだ。クラウドは一瞬驚き、そして次の瞬間には思わず見とれてしまっていた。
 冴え冴えとした蒼の瞳が、クラウドをとらえる。
「…………この村の子供か?」
 かつかつと音を立てて男がクラウドの方へと近寄ってくる。蒼の瞳に射すくめられて、クラウドははっと我に返った。
「あ……あの……」
(神羅の人だ。いないって言ってたのに……)
 この村の男ではないはずだ。この小さな町で、こんな男、見たことがないのだから。村の大人は「神羅の人は帰った」と言っていたのに、まだ残っていたなんて。
 男が目の前まで来る。何も答えようとしないクラウドに訝しげな視線を向けながら。
「子供……名前は?」
(怒られる!)
 クラウドはびくりと身をすくめた。村の言いつけを……神羅の言いつけを守らなかったのだ。怒られるのは当然だし……殴られるかもしれない。
 やたらと長い刃物が目に映る。これで切られてしまうのか?ここはそんなに大切な屋敷だったのだろうか……?
 いつまで経っても答えようとしないクラウドに、男はいらだったようだった。容赦ない力で、無理矢理クラウドを上向かせる。
「い……たい……っ」
「名前は?」
 黙ることを許さない、とでも言いたげな声。抗議の声を上げても、男は全くかまう様子がない。
(こわい……こわい、こわい……)
「名がないのか?お前は?」
「…………ク……クラウド…………」
 泣きそうになりながらも、ようやく言えた言葉に、男はやっとクラウドを解放した。
 クラウドはその場でぺたんと座り込んでしまう。恐怖のあまり、その瞳からぽろ、と涙がこぼれ落ちた。
(こわい……こわいよ……)
 頭の中にはただ一つの単語が渦巻く。こわかった。クラウドには、目の前の銀の男が何よりもこわかったのだ。
「クラウドというのか?……おい、泣くな」
 慌てたような男の声。クラウドはしゃくり上げながら、男を見上げた。
「僕を……怒るん、でしょう?僕……悪い、子、だから……ここに、入って来、た、から……」
 声が詰まって何も言うことができない。そんなクラウドを見ていた男は、やがて諦めたように、クラウドの前にしゃがみ込んだ。
「……そんなつもりはない。だから泣くな。悪かったから……」
「…………?」
「苛立って手荒な真似をしたのは認めるから。だから泣くのはやめろ」
 先程とはうって変わった穏やかな声。あの厳しい声は、敵かと思ったからだろうか?恐怖のヴェールを外して見た男の瞳は、困ったような色を見せていた。
「怒ら……ないの?お兄ちゃん、神羅の人、でしょう?」
「ああ、怒らないから。だから泣くな……」
 ひんやりした手が、クラウドの頬に触れる。それだけでほっとする自分が、クラウドには何だかおかしかった。
「……うん。ごめんなさい」
 素直に謝って立ち上がるクラウドに、男は初めてやわらかな笑みをかける。
「良い子だ」
 ――いい子ね、クラウド。
 男の言葉と母親の言葉が重なる。それが何故か、クラウドには、辛い。
「……いい子じゃ、ないよ。僕……」
 思い出すのは近所の子供たち。一緒にいたいのに、変に大人ぶっていつも馬鹿にしていた自分。結局ひとりぼっちで、こんな所まで来てしまった。
「……何故?」
「ここに入っちゃいけないって言われてたのに、入って来ちゃったもの。お友達と遊びなさいって言われてるのに、僕はいつもひとりぼっちで……」
 言っているうちに再び涙がこぼれ出す。声を出さずに涙を流すクラウドが痛ましかったのか、男はそんなクラウドを抱き上げた。
「泣くな……今のお前は、一人ではないだろう?」
 クラウドの頬に流れる涙を唇で啜る。びっくりした顔のクラウドに、男は優しく笑いかけた。
「……お兄ちゃん?」
「セフィロスだ。そう呼べ」
 セフィロス。昔絵本で読んだ天使の名に、とてもよく似たものがあったような気がする。
 銀と黒の天使……その蒼の瞳が、クラウドは何より好きになった。
「セフィ……ロス……?」



 …………あれ?終わってない……(汗)
ちびクラとセフィロスの甘甘(Hあり)を書こうと……思ってたのに……
何でこんなに長くなっちゃったんだろう?
……おっかしいなあ……(前もそんなこと言ったな(苦笑))
あの……続けちゃっても、いいですか?(ちょっと不安)


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