ヴィンクラ50%(3)


投稿者 あぐり 日時 1997 年 9 月 28 日 03:43:21:

 前回までのあらすじ:新生神羅カンパニーの新タークス主任となったヴィンセントは、クラウドをスカウトする密命を帯びてニブルヘイムへ。だが、クラウドは、セフィロスを忘れることができず、アイシクルエリアでひとり暮らしていた。アイシクルエリアへクラウドを迎えに行ったヴィンセントは、雪の中に倒れて凍えかけていたクラウドを助け出す・・・。
 教訓:覗きもいいけど、ほどほどにしないと・・・凍えて死にますがな・・・。




 クラウドの目が、悲しみと失望に翳った。
「あ・・・じゃあ今の、夢だった・・・?」
「夢・・・見ていたのか?」
「・・・」
「セフィロスの夢か・・・」
 ヴィンセントの腕の中で、クラウドは唇を噛みながら目を伏せた。
 と・・・クラウドが、何を想ったか、ひしと抱きついてきたではないか。
「ク・・・クラウド?」
「ヴィンセント・・・抱いて」


「・・・冷えるなぁ、レノよ・・・まだここにいる気か?」
「しーっ・・・そろそろおっ始めるぞ、と・・・」


 ヴィンセントは、正直、心臓が高鳴り出すのを抑えられなかった。クラウドは、彼が見つめ続けてきた人間ではなかったが、それでも、彼が見てきた人間の中では、5本の指に入る「美人」であることは間違いない。
 白くしなやかな肌は、今まで何人の男たちにもてあそばれ、快楽を教え込まれて来たものか・・・。魔性を秘めた肌の感触は、絹よりも真珠よりも心地よくヴィンセントを誘う。
 彼が馴染んだシドの、男の色香を充分にたたえた、黄金のように輝くはりのある肌とはまた違う。クラウドのそれは、男でもなく、女でもない、性を超越したような、不思議な美しい生き物のそれであった。
 ヴィンセントの、これまた人間を超越したような白い肌が、さっと血の気を帯びて上気した。
「さびしかったんだ・・・誰かのぬくもりが恋しくて」
「ク・・・クラウド」
「セフィじゃないけど・・・ヴィンセントは、セフィじゃないけど」
「・・・」
「でも優しいし、セフィみたいに綺麗だ・・・」
「・・・」
「今だけでいい、一度だけでいいから・・・俺を抱いてくれ。慰めてくれ・・・」
「ク・・・」
「そしたら俺、とても気持ち良くしてあげるから・・・今だけ、俺の恋人のかわりになってくれないか・・・?」
 ヴィンセントは目をつぶった。正直、かなり心は動いた。
 しかし・・・だが・・・、今ごろ、ミッドガルで彼の帰りを待っているだろうシドの、澄んだブルーの目が、ヴィンセントの目の前でちらちらした。


「ああ、艇長・・・」
 その、シドだが・・・なぜか、ジョンの部屋に連れ込まれて・・・その腕の中にいる。
「う・・・駄目だ・・・駄目だ、ジョン・・・」
「何故ですか?ヴァレンタイン氏は、ここにはいないのに・・・」
「駄目だっ・・・駄目だ!」
「そんなこと言って・・・ここまでついてきて、今さらそれはないでしょう」
「つ・・・ついてきたわけじゃ・・・はぅ!」
 正解は「連れ込まれた」と言うのが正しい。
 しかしこれはシドが悪い。相手が前に自分にどんなことをしようとした人間か、ころっと忘れて、無防備に酔いつぶれてしまったのである。目の前で無防備につぶれられたら、どんな人間でもよこしまな心を起こすに決まっている。
 シドは、自分が邪心とか悪だくみとかいう言葉と完全に無縁の人間だから、他の人間もそうなのかと思って油断していたようだ。いくら「自分の若いころに似ている」ジョンでも、完全に自分と同じではない。
「もう、遅いです」
 ジョンは、ネクタイを取り去りながら、シドのからだの上にのしかかった。
「今夜は、もう・・・放しません」


「・・・駄目だ、クラウド!」
 ヴィンセントは、やわやわとからみつく柔肌を、断腸の思いで押しのけた。
「・・・」
 クラウドが悲しげな顔になった。だがヴィンセントは、毛布をその肌にかぶせてやって・・・
「お前は、孤独でおかしくなっているんだ。もう少し落ち着けば、今言ったことをきっと後悔する・・・」
「・・・」
 クラウドは声をしのばせて泣きだした。ヴィンセントはベッドから降り、自分の身支度を整えた。
「もうじき、迎えのヘリが来るから・・・。さあ、もうそんなに泣くんじゃない」
「うっ・・・うう」
「クラウド、頼むから・・・。お前はいつも笑っていなければ」
「・・・」
「そんなことでは、エアリスやティファが悲しむ・・・」
「エア・・・リス」
 クラウドは、顔を上げた。
 そうだった・・・。どんな時でも花のように明るくほほ笑んでいた乙女・・・。
 セフィロスがどう思うかは分からない。だが、クラウドの弱気は、エアリスにはきっとつらいものに違いない・・・。
「・・・そうだね・・・俺、もう・・・泣かない」
「分かってくれたか」
「ありがとう、ヴィンセント・・・」
 言いながら・・・。
 クラウドの胸に、温かいものが広がっていく・・・。
 優しくて、そして温かいヴィンセントが、何だか少し、今までにないまぶしさを以て、クラウドの胸に焼きついてしまった・・・。
 

 服を着たヴィンセントは、小屋の外に出た。
「・・・どうした、レノ、ルード。何をそんな、おかしな顔をしている・・・?」
「あっ、いや、別に・・・と」
「おかしなやつらだ」
 ヴィンセントは空を見上げ・・・かすかに眉をひそめた。
「いやな空の色だ・・・」
「また、吹雪が来るらしい・・・」
 ルードがぼそりと言う。
「なに?」
「救援のヘリは、吹雪がやんでからだと・・・支社から返事があったんだな、と・・・」




 ちょっと短いけど、きりがいいので今夜はここまで。
 ここまででも、読んでくだすった貴女に感謝☆


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