Five Years Dead


投稿者 くろねこ 日時 1997 年 9 月 25 日 21:11:28:

すみません、やけっぱちモード入ってます。
リミット低空飛行、かなり甘口、ドリー夢度高いです(^^;;)
もし万が一読んでしまったらすぐ忘れてください(笑)。



Five Years Dead

ぎらりと真夏の日差しがクラウドの肌に容赦なく照り付ける。
見上げればどこまでも続く透き通った空。
青いペンキをぶちまけたようなそこには一片の雲もなく、風はそよとも吹かない。
ごつごつとした岩肌に何度も足を取られながらクラウドはニブル山の頂上を目指していた。
(あの時も苦労したな・・・)
ついこの間の事のようにも、もうずいぶん昔の事のようにも思える。
(もう5年も経つのか・・・)
ふと地面からたちのぼる陽炎の中にプラチナブロンドのきらめきを見たような気がして
思わず立ち止まる。
「セフィロス・・・」
誰に言うともなく言葉がひとりでにこぼれた。
なんという甘い響き。その言葉を唇にのせる快さよ。
故郷を、親を、友を、全てを自分から奪っていった憎むべき相手であるはずなのに
そこにあるのはただ、狂おしいほどの愛しさだけだ。
その名前はクラウドの全身を駆け巡り、そのすみずみまでしみわたった。
いつのまにか洞窟の入口まで辿り着いていた。少しためらった後、思い切って足を踏みいれる。
辺りにたちこめる魔晄の香り・・・岩肌はやや青みがかった緑で、ここに今だに星の生命が
息づいていることを教えてくれる。
薄い暗闇の中をクラウドは奥へ進んだ。
幾つかの角を曲がるとぱぁっと視界が明るくなった。どういう造りになっているのか
天井から光が漏れているのだ。その光の中央に見るからに古い曲がりくねった樹の枝が
はみ出していた。丁度人の手を広げたような形をしている。
そう、あの時は・・・ここにマテリアがあったんだな。
ヒュージマテリアに匹敵するくらい大きな天然のマテリアだった・・・。

そう、あの時俺が気がついて最初に見たものはあそこで見たマテリアと同じ色の瞳。
どこまでも深く透明な光を宿すエメラルドグリーンの宝石。
(一体どうしたんだ、僕は・・・つり橋が途中で切れて・・・急に身体が軽くなって・・・
そうだ、落ちたんだった。耳元で空を切る風の音を聞きながら、このままどこかに
ぶつかって死ぬのかな、とぼんやり思って・・・それから・・・それから?
僕は助かったんだ・・・でもどうやって?)
「気がついたようだな」
その時初めてクラウドは自分が誰かの腕に抱かれていること、そしてそれが誰であるかを
ようやく悟った。
自分の背中にまわされているたくましい腕・・・を感じて自然と顔があかくなる。
「あ、あの・・・僕・・・その、助けて頂いて、す、すみません・・・」
密かに憧れていた英雄を目の前にし、しかも自分の不様な姿を晒してしまったことで
クラウドはパニックに陥っていた。
(こんなことだからソルジャーになれなかったんだ)
「もう大丈夫です・・・ありがとうございました」
頬が火照っているのを意識しながら、クラウドは立ち上がった。
なるべく英雄の瞳と目を合わせないようにした。
「やはりお前には無理だったかな」
「・・・・・」
「名前は?」
その問いにクラウドははっとした。こんな失態を報告されたら、ますますソルジャーへの
道が断たれてしまう。
しかしこのまま黙っているわけにもいかず、消え入りそうな声でクラウドは答えた。
「クラウド・ストライフです・・・」
「クラウド、か。良い名前だ」
「あ、あの・・・セフィロスさん、僕せいいっぱいがんばりますから・・・
 その・・・今のこと・・・」
「今の事?ああ、つり橋から落ちて気を失ったことか」
何を思ったのか伝説の英雄は唇の端でくす、と笑った。
「報告・・・されるんですよね、やっぱり」
「・・・そうだな。いや、お前次第・・・だな」
「?」
その言葉の意味を測りかねてクラウドはぼんやりと英雄のまなざしを受け止めた。
類まれなる二つのエメラルドがこちらをじっと見つめている。
まるで蛇に睨まれた蛙だ。全身からどっと汗が吹き出すのを感じる。
「セ、セフィロスさん?」
気がつくと翠緑の宝石はすぐ目の前にあった。
驚く間もなく両手首を掴まれ、ざらりとした岩肌に押し付けられる。
薄い唇が音もなくクラウドの呼吸を奪った。
(!)
全身を貫く甘い衝撃。たちまち自分の意志がとろとろと溶けていく。
生暖かい舌がまるで生き物のように絡みついてくる。
(どう・・・して・・・)
そんな疑問も遥か彼方に消し去ってしまうほどの波がクラウドを飲み込もうとしていた。
すでに身体が痺れていうことをきかない。
クラウドは自分の背中が岩肌をずるずるとこする音を聞いた。
膝が震えて立っていられなくなったのだ。
「もうお前は私のものだ」
もはやクラウドの耳にはただ一人の声しか届かなくなっていた。
「んんっ・・・ぁあっ」
耳たぶを噛まれてこらえきれなくなり、思わず声が出てしまう。
かあっと全身が熱くなる。キスが耳たぶから首筋に移り、セフィロスの左手がクラウドの中に
滑り込んだ時、クラウドの身体は雷に撃たれたように一瞬びくんと震えた。
(どうしてこんな事に・・・?)
とぎれとぎれの意識でそんなことを考える。時間の感覚がひどくあいまいだ。
(それより・・・!)
「あぁっ」
自分を更に深く貫く存在にクラウドは反り返った。
セフィロスの唇で刻まれた紅い花びらがいっそうその色をましていく。
すぐ耳元にセフィロスの息遣いを感じる・・・なんとかぐわしい香りだろう。
プラチナプロンドの髪がクラウドの背中に広がり、持ち主の動きに合わせ、何度となく
クラウドの頬をかすめる。クラウドは自分の身体が完全に支配されたのを知った。
自分の意志はとうに消し飛び、獣のように膝をついて頭を揺らしている。
美しい銀の悪魔のとりことなりながら。
(もう・・・耐えられない・・・)
波のようによせては返す苦痛と歓喜の真っ只中にクラウドはいた。
「あっ、あっ」
貫かれるたびに漏れる声はもう止めようがない。
「良い声だ・・・」
朝もやの中から響いてくるような声。
次の瞬間襲った目の眩むような光にクラウドは自分がまたも暗い闇の中に
沈んでいくのを感じた。薄れゆく意識の中で・・・。

そして再び外の世界に戻った時、最初に目にしたのはやはり同じ宝石だった。
エメラルドグリーンの瞳・・・魔晄の輝き。
クラウドは自分の胸になんともいえない感情が沸き上がるのを感じた。
心臓が締め付けられるようなとても苦しく、それでいて甘美な感情。
なんと美しい顔だろう。その瞳も唇も何もかもがクラウドをとらえて離さない。
切なさがひたひたと胸いっぱいにあふれて、クラウドの喉をしめつけた。
「あ、あの・・・」
何か言いかけてみたものの、言葉が見つからない。
大体何といえばいいんだ。
本当はみんな夢だったのかも・・・しれない。
彼ほどの英雄がソルジャーでもない自分にそんな・・・。
「心配するな」
例えようもなく愛しい声が上から降ってきた、かと思うとふっと唇が重なった。
先ほどとは違うただ触れるだけのキス。ひんやりとした・・・。
それでも今のクラウドには十分過ぎるほどだった。
心配?何のことだろう・・・ああ、そんなことはもうどうでもいい。
身体中のありとあらゆる細胞がただひとつの存在を求めて軋み、悲鳴をあげた。
「ぐずぐずするな、行くぞ」
クラウドはふらふらと立ち上がり、歩き出したプラチナブロンドを目で追った。
これから未来永劫自分が存在する限りこの全身全霊を支配するであろうその姿を。
・・・もう逃れられない。

そして今日まで来てしまったんだな。
ふと我にかえるとクラウドは自嘲ぎみに笑った。
今までの俺は・・・そう、この5年間死んでいたようなものだった。
あの悪魔の腕の中でずっと眠り続けていたんだ。

マテリアのあった洞窟を抜けると再び目の眩むような光がクラウドの目を刺す。
大体俺はこんなところに来て何をしているんだ。
ここに来てから何度目かの疑問が頭をもたげたが、クラウドは敢えてそれを
心の中から追い払った。
一段と険しくなった山道をひたすら頂上を目指す。
普段めったに汗をかくことのないクラウドだがさすがにこの暑さはこたえた。
つぅと光の雫がこめかみから流れる。
それでもどうにか頂上にたどり着くことが出来た。
いつのまにか太陽は西に傾き、少しずつ夜の気配が近づいてきていた。
心地好い黄昏の風がクラウドの頬を撫で、金の髪を揺らしている。

もうすぐ人々が家路につく時間だ。
あるものは少し急いで、またあるものはどこかに寄り道をして。
それでも最後には自分の家のドアを開けるだろう。
そしてこの広い空の下、今夜も数え切れないほどの人々が眠りにつくだろう。
こんなにもたくさんの人間が今日を生きている。
それなのに。

なぜどこにもいない?

俺は星を救うためにここまで来たんじゃない。
そう心の中で確信した時自分でも気づかないうちに頬が濡れていた。
この瞳はいつでもあの姿を映し出すことができるというのに。
あの声は今でもこの耳の奥に木霊しているというのに。
そしてこの身体を駆け巡る甘い疼きは昼となく夜となく俺を痛めつけている。
あの日から心は半分もぎとられたままだ。

ふいに何の前触れもなく、嵐のような感情が怒涛の如くクラウドを襲った。
「あ・・・」
声にならない叫びをあげて膝を折りその場に崩れ落ちる。
涙が止まらない・・・苦しい・・・
まるで胸の中が何かで塞がれてしまったようだ。
息をすることも許されていないかのように、浅い呼吸を繰り返しながら
体を小さく丸め、苦しさのあまりクラウドは何度も呻いた。
どうして今さらこんな・・・

いつでもお前のそばにいる
例えお前がどのような姿になろうとも
・・・どんな時でも
私はお前のそばにいる
さあ、早く私の許へ来い・・・クラウド・・・

「やめろ、やめろ、やめろぉぉぉぉっ!!」
けだるい夏の空気の夕闇にクラウドの血を吐くような絶叫が木霊した。

このままでは俺はおかしくなってしまう。
今日は何もかもふっきるつもりだった。すべてが始まり、そして終わった
この場所に来て、あの道を辿り、この目で確かめてこんな馬鹿げた現実に
別れを告げるはずだった。
そして足元にある本当の世界を生きていくはずだった・・・のに。
やっぱり俺は今でもどこか死んだままらしい。

解ってるだろう?
お前は最初から私のものだ

もう何もかもわからない。
何が現実で何がつくりものなのか。
目の前の景色さえ次の瞬間まがいものに見えてくる。
今の俺には耳に響くこの声だけがただひとつの真実。

・・・俺はまだあの腕の中で眠っているのだろうか?



ぎゃああああ〜恥ずかしすぎっ。
勝手に夢見てろってカンジですよね(-_-;;;)。
つり橋から落ちたあとのムフフな設定ってすでに誰かやってらっしゃったような
気がするけどどうか許してやってくださいっ。

ううう・・・会長様、これはリユニオンいいです・・・(涙)


[小説リユニオン「改」トップへ]