過去への回帰(その5)


投稿者 いかそーめん 日時 1997 年 9 月 24 日 05:08:56:

 お久しぶりです。皆様忘れてるんじゃないかしらん。お待ちかね(?)40代のリーブ×32歳のシドでございます。
 しかし今回長いです。しかも全編やりっぱなし(爆)おまけにハードで鬼畜なモーグリ+ケット・シー+リーブ×シド……(超爆)。半端じゃない濃ゆさです。リミットレベル4の限界すれすれなのでは。
 引き返すんなら今の内です。読んでから後悔しても責任取れませんのであしからず。


 ちなみに前回までのあらすじ……

 ミッドガルの魔晄炉暴走後……破壊された神羅ビルの社長室に呼び出されたシドは、ケット・シーの本体であるリーブと接触する。だが彼は不良箇所を記した飛空艇ハイウインドの設計図と引き換えに、10年前の記憶を取り戻せとシドに強要する。
 その言葉と共に、シドは10年前の忌まわしい記憶を思い出す。宇宙開発計画のパイロットの座と引き換えに、プレジデントに陵辱されたこと。そしてその後、激情に駆られたリーブに無理矢理犯された事を……。

 ……てな訳で本文をどうぞっ。




 忌まわしい10年前の記憶が、奔流となってシドの脳に溢れ出た。己の中でケリを付け、時の流れと共に風化したはずの記憶だった。だがそれは、目の前の男と共に再び姿を現し、生々しい迄の感情と共に己の中に蘇った。
「て……めえ! あの時の……っ!!」
 シドの顔がドス黒く染まる。目の眩むような怒りが胸中に沸き上がった。今まで感じた事も無い、激しいまでの怒りに、その身が細かく震え出す。シドは、燃えたぎる瞳で目の前の男を――己を陵辱し、プライドを血にまみれるまで引き裂いた男を睨み付けた。
 激しい眼差しだった。灼け付くほどの感情を迸らせ、青い炎がリーブを射貫く。シドの口から、押し殺した、恐ろしいまでの殺気の篭った呟きが洩れた。
「てめぇだけは許さねぇ……!!」
 普段の彼からは聴いた事もない、暗く呪詛の響きを持つ言葉だった。その声を耳に受け――リーブは、うっすらと笑った。
「そうだ……ようやく思い出したな……」
「ふざけんじゃねぇ!! ……いい度胸してるじゃねぇか。今ここできっちりカタぁ付けてやるぜ」
 暗い炎を宿す青い瞳でリーブを見返す。リーブは微かに苦笑を浮かべると、モーグリの人形に押さえ込まれているシドの頬に手を滑らせた。
「相変わらず強情だな……この状況でそんな事が言えるとは」
「けっ! てめぇなんかなぁ……両手縛られてたって屁でもねぇんだよ!」
 叫びざま、シドの鍛え抜かれた足が鋭く蹴り上げられた。
 ――が、
『動くな』
「うっ――!?」
 刹那、ビクリと硬直したようにその身が強ばった。蹴り上げられたはずの足が、リーブに触れる寸前で急停止する。己の意志とは関らず自由を失ったその体を、シドは驚愕の瞳で見返した。
「てめぇ……っ!? 何しやがった!!」
 激しい眼差しで噛付くシドに、リーブはフッと笑みを浮かべた。
「いつも見ているはずだか……? 私にはこれしか能が無いからな」
 言われて、シドははっとケット・シーを見返した。その手にしたメガホンにはめ込まれている、黄色いマテリアが鈍い光を放つ。
 それが『あやつる』のマテリアである事に気付き、シドは苦々しげに舌打ちした。
「ちっ、そんなもん使わなきゃ人ひとりコマせられねぇのか」
 挑発的な声音で煽るシドを、リーブは静かな瞳で見下ろした。
「お前は特別だ、シド……お前を手に入れるためなら、私はどんな手段でも使う」
 片手を机に突き、シドの顔を覗き込む。その瞳に、微かに奇妙な炎が宿った。
「ずっとお前を見続けて来た……スパイなどに身を興じたのも、お前のためだ」
「何ぃ?」
 訝しげな眼差しがリーブを見返す。リーブは薄い笑いを浮かべ、言葉を続けた。
「お前のタイニーブロンコを徴収するよう、ルーファウス新社長に提言したのは私だ」
「なんっ……!?」
「何故わざわざあんな一人乗り用の機体を取りに行ったと思う? ……お前ならば、あのクラウド達と必ず行動を共にするだろうと思っていた……」
 シドは思わず言葉を失った。
「この……変態野郎がっ!」
 シドの苦々しげな怒声がリーブを打ち据える。だがリーブは笑みすら浮かべ、その怒声を受け止めた。
「そう……私は狂っているのかもしれないな。お前と出会った、あの夜から……」
 その瞳が狂的な色を秘めて燃える。その眼差しに、シドは背筋に冷たい物が走るのを感じた。
 あれ以来、シドとリーブは二度と顔を会わせることはなかった。もとより宇宙開発計画に参加するパイロットと、神羅カンパニー本社の社員である。接点があったこと自体、本来ならばあり得ぬ話だっだのだ。二度と会わなかったからこそ、シドはその記憶を過去の悪夢として忘れる事が出来――そしてリーブは、なお鮮やかな記憶として、その身にずっと焼き付けて来たのだ。
「シド……『力を抜け』
「くっ――!」
 リーブの言葉と同時に、シドの全身からガクリと力が抜けた。体を動かそうにも、力が篭らない。怒りにたぎるシドの瞳を受け、リーブは静かな笑みを上らせた。
「安心しろ……こんなものでお前を支配しても、それは形だけの物に過ぎない。――私自身の手でお前を支配し、そして屈伏させなければ……意味が無い」
 静かな、だがどこか熱を帯びた声がその口から洩れる。リーブはシドの頬から喉元に手を滑らせ、首に巻かれたスカーフをするりと引き抜いた。
「この……っ!」
 抵抗しようにも、体が動かせない。リーブはシドの首筋に手を這わせると、淡々とした口調で語り始めた。
「この日が来るのをずっと待っていた……お前を、再びこの腕に抱く日を……」
 その手が首筋から伝い降り、シドの厚い胸板の上を這う。まさぐるように、そして確かめるように這うその手は、執拗なまでにシドの体を嬲った。
「あの日から、お前の記憶が心に灼き付いて離れない……この肌の感触を、その声を、お前の熱さを……忘れる事が出来なかった……」
 その指が、シドの衣服を引き剥がしていく。シドの脳裏に10年前の悪夢が鮮やかに蘇った。激しい怒りが、再びその瞳に燃え上がる。
 その様を見つめ、リーブの口元に再び奇妙な笑みが上った。
「そう……その瞳だ。それが私を虜にした。お前は屈伏する事を知らない。その魂は汚れを知らない。……だからこそ、傷つけ、嬲り……犯したくなる」
 狂気を含んだ声音がシドの脳に染み込んでいく。リーブは吸い込まれるようにシドと唇を重ね合わせ、貪るように深く吸い上げた。
「――っ!」
 刹那、刺すような痛みと共に口内に鉄の味が広がった。思わず身を離したリーブの唇から、赤い筋が伝い落ちる。
 シドは血の混じった唾を床に吐き捨てると、侮蔑の篭った眼差しでリーブを見上げた。
 リーブは血に濡れた己の唇に手をやり――そして、苦笑とも楽しんでるともつかぬ、奇妙な笑みをその顔に浮かばせた。
「ふ……忘れていた……お前は少しでも油断すれば、喉笛を噛み切ろうとする野獣だったな……」
 舌先で、噛み切られた唇の血を舐め取る。静かな、だが熱を帯びた瞳で、彼はシドの顔を見据えた。
「だからこそお前に惹かれるんだ、シド……その炎に灼き尽くされたいとすら……思えて来る」
 その手が、シドの顎を掴む。リーブはシドの顔を引き寄せ、その瞳を覗き込んだ。シドを見つめるその瞳は、獲物を捉えた、猫科の動物を思わせる鋭さを秘めていた。
「あの夜を思い出せシド……激しく燃え上がり、私の身も心も灼き尽くしたあの夜を……」
「ふざけるな……!! 勝手な事抜かしやがるんじゃねぇ!!」
 刹那、あの夜の記憶が――動けぬ体を無理矢理犯され、それでもなお、快楽に取り込まれてしまった屈辱が――シドの胸裏を駆け抜けた。その瞳が怒りと憎しみで燃え上がる。
「てめぇは……てめぇだけは許さねぇ……!!」
 その、暗いかげりを放つ瞳に、リーブは微かに満足げな微笑を浮かべた。
「それでいい……もっと思い出せ、あの時の想いを……」
 リーブの瞳が、静かな狂気を含んだ眼差しでシドを見つめる。その手がゆっくりと首筋に伝い降り――そして、喉元へと、軽く押し当てられた。
「あの夜と同じ様に……私を灼き殺してくれ……」

 上半身をあらわにされ、シドは瓦礫の残る机の上に仰向けに寝かされた。
 素肌の背に瓦礫の破片が食い込み、あちこちに鋭角的な痛さを刻み付ける。
 薄暗い室内に差し込む街の明かりが、床に散らばる瓦礫と共に、シドの体をほのかに青く照らし出す。それは奇妙な静けさを伴い、どこか非現実的な気配を感じさせた。
 力の篭らぬ、抵抗出来ぬ状態でありながら、シドは不遜なまでの怒りの眼差しでリーブを睨み上げた。
「けっ、抵抗できねぇ奴でなきゃ押し倒す事も出来ねぇのかい。10年前とちっとも変わってねぇ糞野郎だな」
 毒を含んだ侮蔑の声に、リーブは微かな笑みを浮かべ、シドを見下ろした。
「……お前のその態度も、少しも変わらないようだな……」
 呟き、鍛え上げられた肉体へと手を滑らす。
 10年前と比べても遜色の無い、若々しい肉体が、そこにあった。
 いや、むしろ10年前にはなかった深みを湛え、更に濃厚に男の色香を漂わせている。張りのあるしなやかな筋肉が全身を鎧い、最も脂の乗った、30代の男の肉体を作り上げていた。
 リーブはその肉体に手を這わせながら、静かな声音でシドに告げた。
「あの夜も……この場所でプレジデントに肌を嬲られたのか?」
「――っ!」
 刹那、シドの頬が怒りでカッと染まった。忌まわしい記憶が、再び胸裏を駆け抜ける。その様を眺めながら、リーブは淡々と言葉を続けた。
「プレジデントはどうやってお前を嬲った……? その舌と唇はどこに触れた? お前の全てを……犯したのか?」
 奇妙なまでに静かな声が、シドの耳に滑り込んでいく。刹那、シドはプレジデントに嬲られた記憶を続けざまに蘇らせた。肌に触れられた時の悪寒と吐き気が、そして計らずしもその愛撫に反応し、快楽に身を震わせたことが、生々しいまでの実感を伴ってシドの身の内に蘇る。シドはギリッと奥歯を噛み絞め、激しい声でリーブを怒鳴り付けた。
「余計な事抜かしてんじゃねぇや! つべこべ言わねぇで、抱きてぇんならさっさと抱いたらどうでぃ!」
 言ってから、それが10年前、プレジデントに向けて放った言葉と同じである事に気付き、シドは顔を歪めた。リーブは微かに満足げな笑みを浮かべると、一旦その身を引き起こした。
「焦る必要はない。じっくりと……思い出させてやる」
 その言葉と共に、ケット・シーがピョコンと机の上に飛び乗った。何時の間に用意したのか、その手に氷の落とされたグラスと、酒を乗せた盆を抱えている。
「10年前……あの部屋に用意されていたのと同じものだ」
 微かな笑みを含んだ声でリーブが告げる。シドは心底呆れ返った声を発した。
「けっ、ご大層なこったぜ。わざわざ取り揃えたってか? 偏執狂かてめぇは」
「……かも知れんな」
 その口元に、静かな、自嘲にも似た奇妙な笑みが浮かぶ。リーブはグラスにゆっくりとその高級な酒を満たした。空虚な廃墟には不釣り合いな、豊潤な香りが広がっていく。一種シュールなその光景に、シドの胸中に冷えた笑いが沸き上がった。
「全てが揃わなければ、意味が無い。この部屋と、この酒と、そしてシド――お前が」
 静かな声で、リーブは告げた。酒の満たされたグラスを、もう一つのグラスと打ち合わせる。チンと澄んだ音が鳴り響き、廃墟の空気を僅かに震わせた。
「もう一度……あの夜に帰りたかった。お前をこの腕に抱き、その熱さに溺れたかった。この身を……灼き尽くされるまで」
 リーブの手が、再びシドの厚い胸板に触れる。それは胸筋を辿って首筋を登り、そして頬を捉えた。
「これを狂気と呼ぶのなら好きにするがいい。私はただ、お前を手に入れたいだけだ。……10年前の、あの夜のように」
 その瞳が、シドの青い瞳を捉える。狂気にも似た、静かな、だが熱い想いを秘めた眼差しが、シドの心まで犯すようにその瞳を見据える。
 リーブはその眼差しのまま、端的に命令した。
『口を開けろ』……シド」
「……っ!!」
 リーブの言葉に従い、唇が勝手に開いていく。リーブはグラスの酒を口に含むと、半開きになったシドの唇に己の唇を重ね合わせた。豊潤な香りを放つ液体が注ぎ込まれ、口の中がカッと熱くなる。それと同時に、閉ざす事の出来ぬシドの口内に、ぬるりとした生き物のような舌が差し込まれた。
 酒の満たされた口内で、リーブは逃れようとするシドの舌を絡め取った。アルコールに刺激され、いつもより過敏になった神経が、その感触を生々しいまでにシドに伝える。熱い液体とリーブの舌の動きが絡まり合い、シドの口内を隅々まで嬲った。執拗なその舌の動きに、シドの動悸が自然と速くなっていく。
 たっぷりと口内を犯してから、リーブはようやく舌を引き抜いた。呑み切れなかった酒が口の端から零れ、シドの喉に伝い落ちて行く。開放されたその口が、新鮮な空気を求めてあえいだ。荒い息をつき、何かを言いかける。だが、自由にならぬ口に、シドは顔を歪ませた。
 その様を見つめ、リーブは微かな笑みを上らせた。
「何が言いたい……? 『話せ』、シド」
「どうせ飲ませんなら普通に飲ませやがれ! せっかくの酒がまずくならぁ!」
 刹那、噛付くように叫んだシドに、リーブは更に笑みを深めた。
「やはりお前はその強情を張る姿が一番似合っている……。お前の自由を全て奪ってしまっては面白くない。お前が自分の意志で屈伏しなければ……意味が無い」
「はん、やれるもんならやってみやがれ。てめぇの下手糞なワザでイケるかどうかよ」
 シドは燃えたぎる怒りを込め、挑戦的な声音で言い放った。その眼差しに、リーブは微かな満足にも似た笑みを浮かべる。
「いいだろう……私に見せてくれ、お前がどこまで耐えられるかを……」
 その言葉に、ケット・シーが再び動き出した。シドのスカーフを手にとり、頭の方へとまわり込む。
 刹那、視界がその白い布で遮られ、シドは思わず声を上げた。
「てめっ……何しやがる!」
「少し趣向を凝らすだけだ。……普通に抱いても、お前は決して屈伏したりしないだろう。だから、今までに無い快楽を……教えてやる」
 目隠しをされ、シドの視界は完全に闇に閉ざされた。微かな衣擦れの音と、リーブの放つ体温の熱さだけが、空気に乗って伝わって来る。何も頼るものの無い闇の中、己の感覚だけが鋭敏に砥ぎ澄まされていくのをシドは感じた。奇妙に不安定なその感覚が、シドの胸中に微かな不安を呼び起こす。
 不意に、リーブの気配が動いた。己の上に屈み込む気配がする。リーブの行動が予測できず、シドはわずかに身を固めた。
 何も見えないという事がこれほどまでに不安だという事を、シドは計らずしも実感する事になった。目が見えていれば、リーブの動きを読む事も、何を考えているのか知ることも出来る。だが、ただ目隠しをされただけで、シドは外界の情報の大部分を遮断されていた。もとより体には力が入らず、抵抗に身をよじらす事も出来ない。ただ料理されるのを待つ身でしかないこの状況に、シドは自然と沸き上がってくる恐怖心を、苦々しい思いで押し殺した。
 ――刹那、シドの首筋を冷たい何かがなぞった。
「――っ!!」
 唐突に押し付けられた刺激に、シドは思わず身をすくめた。その冷たい塊は、首筋を伝い降り、鎖骨をなぞるように肌の上を滑った。通り過ぎた後がカァッと熱くなり、肌が熱を持ち始める。その熱に溶かされるように、肌の上に冷たい水滴が残された。その正体がグラスに入っていた氷だという事に、ようやく思い当たる。
 氷はシドの厚い胸板へと伝い降り、ゆっくりと胸筋をなぞった。暫くはその肌の上を嬲るように這い回って行く。鋭敏に研ぎ澄まされた感覚は、その冷たい感触を必要以上に明確にシドに伝えた。氷の通り過ぎた冷たい軌跡が、やがて熱となってシドの体に染み込んで行く。
 そしてそれは胸筋を一通り嬲り終えると――胸の突起物へと、辿り付いた。
 シドは思わず身を強ばらせた。冷たい刺激が、その敏感な部分に触れる。
「――っ!」
 刹那、シドの思いとは裏腹に喉が勝手に息を呑み込んだ。押し当てられた氷が、嬲るように円を描き、新たな刺激をそこに加える。
 奇妙な疼くような感覚がそこに生まれた。砥ぎ澄まされた神経が、いつもの倍以上の鋭敏さでその刺激に反応する。チリチリと刺す、痛みにも似た刺激に、シドは息を呑んでそれを耐えた。
 刺激が痛みに変わる頃、氷はそこを離れ、腹筋へと伝い降りていった。シドは軽く息をつき、無意識に体に込めていた力を緩めた。
 刹那――不意に、温かな、湿った柔らかな物が、シドの胸の突起物を嬲った。
「んんっ――!」
 予告もなく、唐突に走り抜けた刺激に、思わず喉の奥で声を上げてしまう。冷たさに馴れたその部分を、温かなざらついた物体がなじった。ただでさえ過敏になっているその部分が、急激に暖められ、甘い快楽の疼きに震え始める。
 それがリーブの舌先だと理解すると同時に、シドの胸中にカッと羞恥心が沸き上がった。
「このっ……変態野郎がっ!!」
「ふ……気に入って貰えたか?」
 微かな笑みを含んだ声に、シドの頬が紅潮して行く。
「ふざけんじゃねぇ! ちったあまともに抱いてみやがれ!」
 屈辱に晒され、シドが叫ぶ。刹那、胸の突起物がきつく吸い上げられた。思わず身をすくめて反応したシドの耳に、忍び笑いを含ませたリーブの声が響く。
「お前の体はその口ほどに強情ではないようだな……」
「……っ!」
 シドの頬が、羞恥にカッと染まる。激しい怒りと屈辱が、胸中に沸き上がった。
 リーブは殊更嬲るようにその舌を下げていった。腹筋を伝い降りる氷の後を追うように、リーブの舌が肌の上を這っていく。
 不意に、シドは自分のズボンにリーブの手が掛かるのを感じた。止め具を外す微かな音と、その手の動きが伝わってくる。
 砥ぎ澄まされた聴覚と肌の神経が、その行為をいつも以上にはっきりとシドに伝えてくる。シドは、激しい羞恥に身中がカッと熱くなるのを感じた。
 シドは歯を噛み絞めてその羞恥に耐えた。今更何を言ったところで、リーブを喜ばせるだけだと言う事は解っていた。抵抗出来ないのならさっさと事を終わらせ、後で報復すればいい。シドは敢えてそう頭を切り換え、この屈辱に耐え抜こうとした。
 リーブの手が、ゆっくりとズボンの中に侵入してくる。その手が嬲るように敏感な内太股を這い、微妙な刺激を与える。シドは身を固くし、その仕打ちに耐えた。
 ――と、不意にシドは背後から抱き上げられた。思いもしなかった方向から伸びた手に、思わずぎょっとする。だが背中に当った柔らかな獣毛の感触に、シドはそれがモーグリ人形である事を悟った。
 だが、次の瞬間――突然獣毛の覆われた手で肌をまさぐられ、シドは思わず怒声を張り上げた。
「なっ……てめぇ! 何考えてやがるっ!!」
 柔らかな獣毛が、撫でさするようにシドの肌を嬲って行く。人の手とは違うその感触に、むずがゆさに似た感覚が肌の表面に沸き上がった。下半身は依然リーブの手が動き、ズボンをその身から引き剥がそうとしている。太股をさすられると同時に脇腹に口付けされ、シドは思わず身をのけぞらせた。
 更に追い撃ちを掛けるように、不意に首筋をザラザラした舌が舐め上げた。
「なんっ……!?」
 首筋をくすぐる髭と、肩に押し当てられた小さな足に、それがケット・シーである事を知る。シドの頬がカァッと紅潮した。その胸中に激しい怒りと羞恥の感情が吹き荒れる。
「てめぇ、リーブ!! この変態野郎!! 一人じゃ何も出来ねぇのか!!」
 激しいシドの怒声にも、リーブは応えようとしなかった。刹那、衣服を剥ぎとられた内太股をきつく吸い上げられる。と、同時に、柔らかな獣毛がシドの胸の突起物を嬲り、シドは思わずその身を戦慄かせた。
 目隠しされ、ただでさえ感覚が鋭敏に砥ぎ澄まされている上に、予測のつかない三者の愛撫を体のあちこちに受け、シドは体の奥底に熱い疼きが生まれるのを感じていた。
 体のどこを嬲られるのか、それさえ解ればまだ抵抗のしようがある。だが、まったく予測もしていなかった所に愛撫を受け、それを堪えようとした瞬間にまた別の場所に愛撫を受けて、シドは体を休める事が出来なかった。少しでも気を抜けば、そのまま快楽の波に取り込まれそうになる。
 常に無い、奇妙なまで高ぶりに囚われている事を、シドは自覚せざるを得なかった。嬲られているにもかかわらず、目隠しがその事実を覆い隠し、与えられる快楽のみをストレートにその身に刻み付けて行く。そして抵抗出来ずに嬲られているという事実が、シドの心に奇妙な興奮を与え、自ら高ぶらせている事を、シドは認めざるを得なかった。
「糞っ……垂れ!」
 執拗なその愛撫に嬲られ、翻弄されながら、シドは上がり掛ける声を必死で押さえていた。それでも不意を付かれ、時折声が漏れてしまう。その度に、シドの頬は羞恥と屈辱にに赤く上気していった。
 シドの全身を、三対の手と三つの舌が同時に這い回る。首筋を大きな舌が舐め上げ、厚い胸板をざらついた舌が這い、引き締まった太股を熱い舌がなじる。その体の隅々まで嬲られ、貪られて、シドは否が応にもその身を高ぶらせていった。疼くような快楽が体のあちこちに生じ、全身を快楽と羞恥に赤く上気させる。


 リーブは一旦身を起こすと、熱く火照ったシドの肌に手を這わせた。刹那、ビクンとその身が反応する。全身が性感帯と化したその体は、僅かに触れるだけでも過敏に反応し、疼くような快楽をシドに与えていた。
 息を荒くつき、なお快楽という名の苦痛に耐え抜こうとするシドを見下ろして、リーブは酷薄な笑みを浮かべた。その手が、卓上のグラスに伸びる。


「くっ――!」
 不意に、その胸に冷たい液体をぶちまけられて、シドは思わず身をのけぞらせた。
 束の間、冷えた刺激が肌に染み込み、直後、カッと熱く燃え上がる。
 アルコールの刺激を受け、敏感になった肌に、リーブの熱い舌が触れた。
 シドはビクンと身をすくめた。肌の上を舌が這う感触と共に、酒と共に肌を舐めすする音が耳に滑り込む。その淫猥な物音とリーブの舌から与えられる快楽に、身体の芯から熱い疼きが吹き出した。リーブの舌先が胸の突起物に触れ、なじるように転がす。残る一つを、ケット・シーのざらついた舌先が舐め上げた。
「んぅっ……!」
 荒く、切ない吐息と共に、押し殺したあえぎ声がその口から洩れる。シドは歯を食いしばってこの責め苦に耐えた。だが体の奥底は更なる快楽を求め、狂おしいほどリーブの舌を求める。


 リーブは、快楽を求め、震え始めたシドの体を見下ろし、微かに満足げな笑みを浮かべた。卓上に残されたもう一つのグラスを手にとり、酒を口に含む。
 そのまま頭を下腹部へ滑らすと、彼はシドの熱くうち震えるその部分へ、その頭を屈み込ませた。


「はあっ!? あぁぁぁあっ――!!」
 刹那、脊髄を走り抜けた凄まじい刺激に、シドは雷に撃たれたように身をのけぞらせた。
 シドの固く隆起した物を、アルコールに満たされたリーブの口が捉えていた。痛みすら伴うほどの刺激が、過敏にまで高められたシドのそれへと染み込んでいく。更にそれを嬲るように、リーブの舌がその中で蠢いた。熱い液体とざらついた舌先が、シドのそれに絡み付き、苦痛にすらなりかねないほどの強烈な快楽を注ぎ込む。執拗なまでの濃厚な愛撫に、シドの身体はガクガクと震え出した。荒い息と共に、その喉から押さえ切れない嬌声が零れでる。
「んぅっ…ふっ……!! ち…くしょ……!! はぁっ……離……れ…やがれ……!!」
 今まで一度も経験した事のない快楽が、脊髄を駆け抜け、脳髄にまで達する。頭の芯まで痺れさせるようなその快感に、シドの身体は急速に高められていった。
 身の内に激しい屈辱の炎が吹き荒れる。だが、それを上回る快楽の波がシドの体を捉えていた。頭の中が白くなり、何も考える事が出来なくなる。
「はぅ……うっ……!! うっ、くうぅぅぅっ!!」
 リーブがシドのそれを深く吸い上げると同時に、シドは激しい絶頂をその身に迎えた。解き放たれた熱い飛沫を、リーブがすべて受け止める。そのまま、残りの雫まで吸い取られ、シドは快楽の余韻に晒される体を更に打ち震わせた。
 やがてシドはガクリと力を無くし、背を地に預けた。痺れるような快楽に包まれながら、胸を大きく上下させ、荒い息をつく。
 その上に、リーブの屈み込む気配がした。吐息が耳元にかかり……そして、笑みを含んだ静かな声が注ぎ込まれる。
「今度は間違いなく気に入ってもらえたようだな……」
「……っ!!」
 刹那、シドの頬にカッと血が上った。胸中に激しい恥辱の念が沸き起こる。
 だが、シドは何も言えなかった。リーブの愛撫を受け、果ててしまったのは事実なのだ。
 怒りと、羞恥と、屈辱の念が身の内を焦がす。シドは激しく奥歯を噛み絞めると、苦く、押し殺した声を吐き出した。
「遊んでねぇで、犯るんならさっさと犯りやがれ……!!」
 クスリと、リーブが笑みを零すのが解った。耳元に寄せられた口が首筋に吸い付き、耳たぶを舐め上げる。果てた直後の敏感な体がそれに反応し、ピクリと身体を震わせた。
「まだだ……お前を犯すのはたやすい。だがそれでは意味が無い。もっと快楽を与えてやる。お前が本気で私を欲しいと望むまで……」
「……はっ……あっ!?」
 その言葉と同時に、果てたばかりのそこへ獣毛に覆われた手が絡み付き、シドは身をのけぞらせた。
 未だアルコールの刺激が残るそれは、熱く火照り、外気に晒されるだけでも痺れるような快楽をシドに伝えていた。その鋭敏な部分を、柔らかな獣毛が更に嬲り、電流のような刺激を背筋に走らせる。
 再び、三対の手と三つの舌が全身を嬲り始めた。シドの身体が瞬く間に快楽に燃え上がる。愛撫の手がどこかに伸びるたび、シドの体は敏感に反応し、大きく震えた。逃れようの無い快楽の渦が身の内から溢れ、全てを取り込もうとする。
 シドは、ともすれば呑み込まれそうになる意識を辛うじて繋ぎ止めながら、その快楽と戦っていた。頭が白く霞み始め、余計な事が考えられなくなって行く。
 と、不意にその体がうつぶせに返された。モーグリ人形の滑らかな獣毛が体の前面に押し当てられる。
 刹那、己の秘部に熱い吐息が掛かり、シドはビクリと身をすくませた。
「ばっ……馬鹿野郎、何考えてやがる!! 止めろリーブ!!」
 シドは激しい羞恥の滲んだ怒声を張り上げた。だが答えはなく、代わりに己の薄く色付いた部分へ、湿った感触が走り抜ける。その感触に、シドは思わず背をのけぞらせた。
「止……めろ! リーブ!! 畜生、止めやがれ!!」
 今までに無い激しい羞恥に身を灼かれ、シドは屈辱の声を張り上げた。だがリーブの愛撫は止まることなく、アルコールに濡れた熱い舌が、ゆっくりとシドの内部へと潜り込んで行く。己を犯す存在に、シドの体が大きく戦慄いた。
「止めろ……止めろ!! リーブ……っ!!」
 激しい羞恥にシドの全身が朱に染まった。恥ずかしさのあまり、その身が細かく震え出す。筆舌に尽くし難い屈辱がその身を襲った。リーブの舌が、その身を嬲り、心の奥底まで嬲り上げる。
 刹那、己の内部に熱い液体が注ぎ込まれ、シドは大きく身をのけぞらせた。アルコールが内部を灼き、熱く燃えるような疼きをそこに与える。敏感になったその部分を、リーブの舌が嬲った。己の内部で蠢くその感覚に、シドの背がビクリと震える。
 その背を、獣毛に覆われた手がまさぐるように愛撫した。リーブの手が前に回され、再び熱く脈打ち始めたシドのそれを絡めとる。大きく戦慄き、のけぞらせたシドの喉を、ケット・シーのざらついた舌が舐め上げた。
 もはや限界だった。全身が快楽を求め、炎のように燃え上がる。リーブの舌が引き抜かれ、その背を舐め上げるように舌が這った。首筋まで舐め上げ、シドの耳を嬲りながら、熱い囁きを注ぎ込む。
「シド……私が欲しいか?」
 シドは激しく頭を振った。だが自身を強く握り締められ、思わず押し殺した声を上げる。
「……まだ強情を張るのか? 自分の心に素直になれ。己の欲望を解放しろ……」
「ふざ……けるな……っ!!」
 辛うじて、シドは叫び返した。それ以上余計な一言でも洩らせば、喉から嬌声が零れ出そうだった。だが刹那、己の秘部に指を押し込まれ、シドは掠れた悲鳴を迸らせた。
「まだ解らないのか……? 欲望を受け入れろ、シド。お前の身体はこんなにも私を求めている。己の本心をさらけ出せ。くだらない誇りになどしがみつくな……」
 呪詛の響きを持つ言葉がシドの耳に注ぎ込まれる。過敏に高められた己の内部を指で犯され、シドの理性はかき乱された。きつく噛み絞めた唇の端から、押さえ切れぬ嬌声が零れでる。殊更嬲るように深く内部をえぐられて、シドはガクンと背をのけぞらせた。快楽への狂おしいまでの欲求が、その身を締め付ける。
「さあ、シド……言うんだ、自分の本心を……」
 シドの脳を、快楽が犯して行く。もはや、シドは何も考えられなかった。だが、最後に残された何かにしがみつくように、その頭が大きく振られる。リーブの愛撫が焦れたようにシドを責め立てた。刹那、その身が大きく戦慄く。
 もはや限界だった。全身の毛穴という毛穴が広がり、僅かでも多くの快楽を貪ろうと神経を極限まで砥ぎ澄ます。その喉が酸素を求めてあえぎ、掠れた嬌声を迸らせた。欲望の波がシドの誇りも何もかも押し流し――ついにシドは、快楽を求め、屈辱の声を上げた。
「あっ……あああっ!! ……頼……む……もう……!!」
 リーブは背後からシドの顎を捉えると、殊更静かな声で問い掛けた。
「……私が欲しいか?」
「……!!」
 その顔が羞恥と屈辱に歪む。だが再びその身をなじられ、シドは大きく身をのけぞらせた。
「ああっ!! ……そ……うだ……だか……ら……!!」
 リーブの喉から、会心の笑みが零れでた。刹那、シドの内部から指が引き抜かれ、代わりに熱くたぎるリーブ自身がシドの奥底まで突き上げられた。待ち焦がれていた物に、シドの喉から嬌声が迸しり出る。
「はぁっ!! あああぁぁぁぁっ!! あっ、あぁっ……!!」
 リーブが律動するたび、痺れるような快楽が脳髄まで貫く。と同時にケット・シーとモーグリの愛撫を受け、シドはその身を戦慄かせた。全身が快楽に取り込まれ、触れられるだけで達しそうになる。
 不意にリーブはシドの体を引き寄せ、抱え起こした。結合が更に深まり、シドの喉がのけぞる。シドの体を抱きしめながら、リーブはその耳元に囁いた。
「シド……『お前は自由だ』
「……っ!?」
 刹那、シドの体を戒めていたマテリアの効果が途切れた。手足に力が篭り、自由に動けるようになる。
 ――だが、シドは逃げる事など出来なかった。いや、むしろ更なる快楽を求め、その身が勝手に動き出す。
 激しい羞恥と屈辱がその身を襲った。だが、もはや止める事など出来なかった。リーブの動きに合わせ、その身が快楽を貪る。
「それでいい、シド……己の欲望に素直になれ……」
 リーブの喉から勝利者の洩らす笑みが零れでた。それがシドの耳を犯し、身も心も犯して行く。シドは激しい高ぶりに身を包まれた。もはや、快楽以外の何物も考えられない。
「あっ、はぁっ、あっ……ああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
 絶叫と共に、シドはその身を激しく震わせた。リーブの熱い飛沫を受け、同時に絶頂を迎える。
 頭の中が真っ白に染め上げられた。何もかもが、その脳裏から消え去って行く。
 己の意識が砂糖菓子のように溶けてほどけて行くのを感じながら、シドはその身の全てを快楽へゆだねた。

 一度では終わらなかった。リーブは二度、三度と立て続けにシドの体を求めた。
 そのたびにシドは快楽に打ち震え、その身で欲望を貪った。
 燃えるような一時だった。その情事は、激しさに耐え切れず、シドが気を失った夜明けまで続けられた。
 リーブは己の下に横たわるシドの肢体を見下ろした。陵辱され、執拗なまでの愛撫に嬲られた肌は、以前の面影すら残さず、無残な傷痕で埋め尽くされている。
 だが――同時に、それは凄まじいまでの艶めかしさをその身に与えていた。
 リーブはシドの頬に手を這わせ、その肌をゆっくりと撫でた。乱れて額に張り付いた日に焼けた金髪を、その指で引き剥がして行く。
 美しい姿だった。壊された物のみが持つ、脆く危うい魅力がその身から湧き出ていた。
 リーブの頬に満足げな笑みが浮かんだ。思う様シドを嬲ったその唇で、シドの頬に軽く口付けする。
「シド……その身を憎しみで焦がすがいい。私を憎めば憎む程、その魂は暗く穢れていく……」
 その瞳に狂的な色が宿る。どこか恍惚とした眼差しで、リーブは言葉を続けた。
「私を憎め……私という存在をその身に刻み付けろ。そして……私を殺しに来い、シド……」
 リーブは愛しげにシドを見つめると、その唇へ己の唇を深く重ね合わせた。




 ぜぇぜぇ……お、終わった〜っ!!(号泣)
 ああもう……ただ単にヤってるだけなのになんでこんなに長くなるんだっ!(泣)
 今回私の投稿作品中最長記録です。(ってまだ大して書いてないけどさ)おかげでえらい時間かかってしまいました。

 それにしても……リーブさんごめんなさい。変態で鬼畜なキ○ガイ野郎にしてしまいました(汗)このリーブさんにはいかそーめんの妄執が乗り移ってます。だからシドをいぢめ倒して嬲り上げてとことんぶち壊そうとしてしまうのね(爆)

 さて……鬼畜モードはここで終了です。
 この作品も次回でラストの予定……。
 ようやくあの人物も登場します(笑)
 果たしてシドの魂は救われるのか? リーブとの決着は?
 物語の結末や如何に。次回、「過去への回帰 最終章」、請う御期待!
(……って誰も待っててくれへんかったらどないしょ……(爆))


P.S.
 あぐり様。この作品のシドを捧げますので、今回の鬼畜な4P(?)で裏ビデオなシーンの変わりって訳には行きませんか?(泣)
(うう……さすがに最近鬼畜書き過ぎてネタが枯渇してる(爆))


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