中継ぎ…(11) |
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ヴィンセントは、おだやかな顔をして眠っていた。
シドはその顔を、じっと見つめた。
・・・悪夢とは縁のなさそうなこの寝顔。おだやかな、この上もなく安らいだ寝顔だ・・・。
(愛してる)
シドは、今はもう、はっきりと自覚していた。
シエラのことも愛している・・・とは思うけれど・・・。
シエラに大して先立つのは、責任感とか、すまなさとか、そういうたぐいの、いじらしい愛しさである。それはかなり冷静なもので、シドの頭の中ではぐくまれた愛であった。
だが、ヴィンセントに対する思いは、もっともっと動物的なものだ・・・。からだが、肉体が、このぬくもりを求めている・・・とでも言うべきか。
ヴィンセントがいなかったら、もう生きては行けない・・・。
(ちくしょう)
シドは、ヴィンセントの胸に寄り添いながら考えた・・・。
(どうして・・・どうして俺さまが、こんなことになっちまったんだ・・・)
「ん・・・シド」
ヴィンセントが目を開けた。
「・・・どうしたんだ?」
「いや・・・何でもねえ」
「シド」
ヴィンセントは、シドのからだを抱き寄せた。
「愛してる・・・よ」
「・・・俺もだよ、ヴィンセント」
「・・・」
「ちくしょう・・・これだけは言わないどこうと思ったのに・・・」
顔をそむけるシドが愛しかった。
「・・・待っていた、シド・・・そのひとことを」
「く・・・」
「なぜそんな・・・悔しそうな顔を?」
「だって・・・」
シドは、今はもうすべてをかなぐり捨てていた。
「・・・俺、もう30過ぎてるんだぜ・・・?お前は今でもこんなに綺麗なのによ・・・。お前はいつまでたってもこんなに綺麗なのに、俺はどんどん年食って、ジジイになってく・・・」
「・・・」
「俺・・・いつか、おまえに棄てられる・・・それがくやしいんだ、てやんでぇ」
「シド・・・」
ヴィンセントは、もう耐え切れなかった。シドを下から力いっぱい抱きしめると、シドは、びっくりするくらい素直に身をまかせるのである。
「棄てたりなんかしない、シド・・・あんたは永遠のひとだ」
「・・・あてになんかなんねぇよ」
「ああ、シド・・・」
「ほかに・・・いるじゃねえか。クラウドでも、ユフィでも・・・それこそ、イリーナだって」
「・・・」
「そっちのが、てめえにゃよっぽど似合いなのに・・・どうして?どうしてよりによって俺なんだよ?」
「それは・・・シド・・・」
「うっ・・・あっ」
「あんただからだよ・・・。あんたがいたから、今の私がいるんだ・・・」
ヴィンセントはこの上なく熱く優しくささやく。
シドはそれに酔わされながら、実は、胸の奥の奥で・・・つめたいものを感じている。
彼くらいの年になれば、わかってしまう。どんな激しい愛も、永遠を誓った愛も、一瞬で冷めてしまうことはよくあることだ。現にヴィンセントも、あれだけ激しかったルクレツィアへの想いを、ほとんど忘れてしまったではないか。
ヴィンセント・・・このままなら、いつかは、自分は彼に棄てられる。
今となっては・・・ヴィンセントを愛してしまった今では・・・その日が恐ろしいシドであった。
シドは、結局、これだけ愛しながら、ヴィンセントのことをすこしも理解していなかったのかも知れなかった・・・。
激しい愛の交歓のあとで・・・。
ヴィンセントは、ぐったりと力つきて眠るシドを抱きしめながら、闇の中で、じっと他のことを考えていた。
シドをこれだけ傷つけたバトルブリッジにどう報いてやろう・・・。
・・・すいません、ここで一回切ります。続きは比較的すぐに載せられると思いますが。・・・・
つづき・・・まだ読んでくれてるような奇特な方・・・いるのかなぁ・
とほほほ・・・・。