行け行け加茂ジャパン(7) |
---|
・・・ここのところ、ここのチャットでどなたともお目にかかっていません。けっこう人は来ているようなのですが・・・。
何だかちょっと淋しい「あ」でした。
今夜は例のアレ(4年に一度の)なので、チャット出没は十二時以降になりましょうが・・・どこに行くにしろまずここのチャットを覗いてから参ります。どなたか相手してやって下さい。
翌日の夜である。
ジョン・バトルブリッジは、またも酒場でひとり杯を重ねていた。
酒がそんなに強いわけではない。それでも飲まずにいられない。
シド・ハイウィンドは、彼が子どものころ、初めてあこがれた英雄であった。今でもその純粋な気持ちは変わらない・・・と思う。
計算外だったのは、実物のシドの予想以上の美しさである。
「美しさ」と言っても、外見だけのことではない。内面的なハートの美しさもある。そして、彼のそばに一度でも近づいてみなければわからない・・・セクシーさと言うか、色香というか・・・そんなものも濃厚にある。
シドに実際にお目にかかってみて、彼は初めてそれを知った。シドの首筋や鎖骨や表情からこぼれる、無意識に女を、そして男を誘うようなオーラに、たちまち魅せられてしまった若いジョンだった。
そしてあの声・・・。怒鳴ればどこまででも響くだろうが、低くすればこの上なしにセクシーで艶がある。一度泣かせてみたい、喘がせてみたい・・・というよこしまな欲望を誘わずには置かぬような声である。
「よう」
突如、その声が頭から降ってきた。
「・・・シ、シド艇長!」
ジョンは、あわててグラスをひっくり返しそうになった。
コート姿のシドが、背後でくわえタバコで笑っている。ジョンは息が止まりそうになった。
「ど、どうしてここに・・・」
「さぁな、偶然だ」
「・・・」
「わき・・・座っていいか」
「あっはいはい、どっどうぞ!」
シドは、悠々とジョンの隣に腰をおろした。
「ウイスキー、ストレートでくんな」
「・・・艇長」
ジョンは顔を伏せた。
「・・・昨夜は・・・申し訳・・・」
「いいよ、気にしてねぇよ」
シドはほろ苦い大人の笑みで返した。ジョンは体中に冷や汗を吹き出させながら、
「でも・・・」
「俺は気にしてねえよ。いつものことだ」
「い、いつもの・・・」
「二度とやったら許さねえけどな」
「は、はい・・・」
「・・・ついでにもひとつ、頼みがあるんだが・・・聞いてもらえるか」
「はい、ど、どんなことでも!」
「新しいロケット計画だがよ、一人、雇ってもらいてえメカニックがいるんだが・・・」
ジョンは黙り込んだ。まさか、そういう話になるとは思わなかったのだ。
「ロケット村ってとこによ、シエラって女がいる。トロくせえけど仕事はちゃんとできる女だ」
「・・・」
「そいつの仕事のおかげで、俺は、危うい命を拾ったこともあるんだ」
「は・・・」
「俺が宇宙に行きたかったのとおんなじくらい、そいつも、自分の手入れしたメカが宇宙を飛ぶのを見たかったろうと思う・・・」
「・・・」
「そいつをスカウトしてやってもらえねえか?」
ジョンは、シドのブルーの瞳を見つめた。
何と返事していいかわからなかった。よもやこんな話になろうとは思ってもみなかった。
シエラ・・・その名は彼も、実は知っている。第一次ロケット計画のスタッフは、一応、全員ピックアップしてあるのである。
第一次計画をダメにした人物だということは知っていた。だが、にもかかわらず、メカニックとしては非常に優秀であるとも聞いていた。
シドが言い出さなくても、あるいはスカウトがかかっていたかも知れない女性である。
ジョンはそれを隠して、尋ねた。
「もし、その条件をのむのと引き換えに、ぼくら親子の言うことを聞けと・・・そう脅したら、どうなさいます」
シドはただ肩をすくめた。
「親父は知らねえけどよ・・・お前がもし寝ろってんなら、ひと晩くらい、つきあってやったっていいぜ」
「・・・!」
「俺は、ほんとのこと言うと、別にお前のことが嫌いってわけじゃねえし・・・今さらカマトトぶって拒めるような、おきれいな身の上でもねえからよ」
ヴィンセントはまだオフィスで、レノとルードの報告書を読み返していた。
ヴィンセントが永い眠りに入ってからのちのバトルブリッジの不遇ぶりが、つぶさにそこに描かれていた。
あれだけの優秀な人材が、どういうめぐりあわせか知らないが、パルマーなどという無能者の下で長年働かされていたのだ。それは世をはかなみたくもなるだろう。
そして、メテオという大きな危機を乗り越えて、実質的に宇宙開発部門のトップの座を手に入れたバトルブリッジ・・・。
何を考えて、こんな危険な橋を渡ろうとするのだろう。
ヴィンセントには少しも分からない。
彼は、ふーっとため息をついて、報告書をデスクに投げ出した。
「一度・・・会ってみるか・・・彼に」
「・・・今夜は、ありがとうございました」
夜更けの街で・・・。
ジョンは、シドとかたい握手を交わしていた。
「おかげで迷いがふっきれました。これで、心置きなく、ロケット計画に打ち込めそうです」
「・・・よかったな、おめでとう」
シドも、少し悔しいながら、今は素直にそう言える心境になっていた。
「自分は、宇宙へ行きます。その時こそ、あなたに・・・対等の人間として、交際を申し込めると思います」
「・・・よせよ、そういうの・・・」
シドは顔をしかめた。
「そういうのはヴィンセント一人で充分だ」
「いえ、ヴァレンタイン氏から、あなたを必ず・・・」
「いいから、言うなって」
シドはあわてて手を振った。彼としては、せっかく得た、同じ夢を持つ年若い友人を、くだらぬ色恋沙汰で失いたくはなかった。
ジョンはくすっと笑った。そんなシドが・・・年下のくせに・・・何とも言いようがなくいとしい。
「送らなくてだいじょうぶですか?」
「・・・逆だろ、そりゃ。こっちの台詞だよ」
「そ、そうでしたね。失礼しました・・・おやすみなさい、艇長」
「ああ、おやすみ」
ふたりは気分よく別れた。
シドは鼻歌を歌いながら、夜更けのミッドガルを歩き出した。
ずいぶん迷ったけれど、やはり、ジョンに会いに来てよかった・・・。
実は、ヴィンセントとはまた別の意味でだが、ジョンが気になってしまうシドである。・・・その姿は、自分の若い日々によく似ていた。自分は決してあんなエリートではなかったが、それでも、宇宙にかける夢や、何かを思い込むとどうしても手に入れずにいられない性格は、自分の十年前を思い出させて、すこしせつないような、甘ずっぱいような気持ちにさせてしまうのだ。
ゆうべ、その気になれば力ずくででも自分を抱けたのに、バカ正直に「キスしていいですか」なんて聞く・・・そんなうぶさも、実は可愛いと思う。
本当はいい奴なのだから、腹打ち割って話せば、きっとわかってくれる・・・そう踏んだのは間違いではなかった。
(・・・どっかで飲み直すか。そうさな、ヴィンセントの野郎にも声かけて・・・)
「シド艇長」
背後からかかった声に、シドは振り返った。
「何だ・・・うっ」
しゅーっ、と、相手の手元から、白いガスが流れ出した。油断していたシドはひとたまりもなくそれを吸い込んでしまった。
「・・・う、う」
シドの全身から力が抜け・・・そのまま、男たちの足元にくたくたとくずおれた。
男たちは、素早く、力を失ったシドの身体をかつぎ上げた。
「・・・早く運び出せ。副部長の命令なんだから・・・」
・・・お待たせしました(?)。次回あたりまた鬼畜・・・はじまるのかな・・・。
鬼畜がこまる、というかたは、早めに申告していただきたいと存じます・・・。
ふうう・・・
シドの運命も気になるし、同じくらい日本代表の運命も(T0T)。
代表が負けたら・・・気分転換に、シドいじめしちゃうかも・・・。勝ったら・・・喜びの鬼畜突入、とか(←どっちにしてもいじめる?)。
至上はヴィンセント×シドです。「たとえどんなことが起ころうと、私はあんたのそばにいる・・・永久に(@ポカホンタス)」ですから。
ここまででも、読んでくだすった貴女に感謝の踊り☆ポルカポルカポルカ☆