「検察捜査」最終章


投稿者 京都太郎 日時 1997 年 9 月 19 日 06:06:08:

いやいや、自分で総会屋と企業の癒着を書いていますが、世間ではまた証券会社が本物の「検察捜査」を受けましたね。
悪い事は出来ないものですねぇ。さて、僕の「検察捜査」も、なんとか最終章を迎える事が出来ました。
これも読んで下さった方のおかげです。長い間、ありがとうございます。



「そうよね、なんでヴィンセント捜査官を見て検察だと分かったの? おかしいわね」
クラウドと同じ疑問を、エアリスも持ったらしい。エアリスはイリーナに尋ねた。
「そ、それはーー」
イリーナは完全に気が動転している様子。
奇妙な空気が流れた。今ここの部屋にいるのは、イリーナ、エアリス、クラウド、ヴィンセント、それにセフィロス。
「もういい、イリーナ」
口を開けたのは、意外な人物ーーヴィンセントだった。
「ヴィンセントさん・・・」
「ヴィンセント!」
イリーナは彼の方を振り返った。
「イリーナ、もういい。ありがとう、いままで協力してくれて」
「ヴィンセント・・・」
イリーナはヴィンセントにかけより抱き着いて、そして大声で泣き始めた。
「ヴィンセント・・ごめんなさい・・あたし・・」
「ああ、イリーナ。お前は最後までわたしにつくしてくれたよ」
ヴィンセントはイリーナの手を優しくほどき、一同を見まわした。
「検察に密告したのは私だ」
彼の低くよく通る声が、室内に響いた。
「ヴィンセントさんが?」
驚いた声を上げたのはエアリスだ。イリーナが密告者だと考えていたから、全く予期せぬ展開を見せたのだ。
「ど、どういう事ですか! だいたいイリーナさんとヴィンセントさんはどういう関係でーーそれに密告者がヴィンセントさんってのもよく分かりませんよ! いったいどういう事ですか!」
クラウドは思い付くままの疑問を口に出した。
「順序立てて話そう。既に3年前から神羅カンパニーから総会屋ルーファスへの献金疑惑は検察にあった。しかし肝心の証拠は何一つ無い」
3年前。もうクラウドは入社し、『チョコ』の件も知っていた。
「そんなある日、わたしはイリーナに出会った。偶然の出来事だった。だか幸か不幸か、彼女は私を愛するようになっていたのだ。それに気がついてわたしは考えたよ。恨み深き神羅に復讐するために、彼女を利用しようとね」
「恨み深い・・ってヴィンセントさん、神羅に何かあったんですか!」
クラウドの声も自然と大きくなっていた。
「恨み・・いや、恨みでも復讐でも無いか」
ヴィンセントは独りで笑い「・・自分の事は自分でけりをつける。それまでの事だ。忘れたとは言わせないぞ、セフィロス」
ヴィンセントの視線はセフィロスに向いていた。ーーセフィロスはそれをあざ笑うかのように受け止めていた・・。
「セフィロス部長・・」
クラウドが呟くようにして言った。
「待って。ヴィンセントさん、あなたイリーナがあなたを愛している事を利用したって言ったわね。それをどう考えているの?」
クラウドを遮り話したのは、エアリスだった。
「どうとは?」
「女として許せるわけないわ! あなたは人の気持ちを勝手に・・!」
エアリスは声を荒げている。
「エアリスさん聞いて」
泣きはらして赤くなっている顔で言ったのは、イリーナだった。
「私・・私、ヴィンセントと互いに愛しあっていたわ」
「嘘! あなたは使われたのよ? 用が済んだら捨てられてのよ?」
「本当の事なんです。ーー勿論他に好きな人もいたわ。でもヴィンセントと居る時が一番落ち着くの。わたしが本当の私に戻れるような気がして・・ヴィンセントは私に優しくしてくれたわ」
イリーナは自然にヴィンセントの肩に寄り添っていた。
「・・悪かった。許してくれ」
ヴィンセントはイリーナに言った。
「・・いいわよ、そんな事。こっちだって、愛してくれて、ありがとう」
二人は優しくキスをしたーー。
ーーしばらくして、静かで相手をゾクっとさせるような声で、ある人物が言った。
「ラブシーンなんて繰り広げていていいのか? ヴィンセント」
その声は、今までに無い恐怖を与えるような、セフィロスの声だった。
「・・セフィロス部長」
「けっ! 何が復讐だ。俺に勝てるとでも思っているのか?」
セフィロスの周りから、クラウドもエアリスも、いつもとは違う、張り詰めるような雰囲気を感じ取っていた。
「わたしはお前を殺さないといけない。ルクレツィアの為に」
ヴィンセントはイリーナをクラウド達の方に預け、セフィロスと向き合った。
「ヴィンセント。俺を殺せないぞ。俺は不死身だからな」
「不死身だろうが、殺さなきゃならないんだ。ルクレツィアの為に。最初で最後に、愛しきれなかったルクレツィアの為に」
「うるさい! 母さんの名を気安く呼ぶな」
セフィロスは壁の日本刀、正宗を取った。
「セフィロス部長・・」
クラウドは目の前の状況を理解できなかった。目の前にはいつもの煙たがられるセフィロス部長はどこにも居なかった。いるのは「悪魔」。そしてまさに今、「決闘」が開かれようとしていた。
何かしなければ。決闘を止めないと。でも何も出来ない。雰囲気がそうさせていた。
ヴィンセントは銃をぬいて、セフィロスにあわせた。
「やめて!」
イリーナの大声とともに、一発の銃声が室内に響いた。


「・・この2日間の出来事は夢だったんですかね」
クラウドは地検近くの喫茶店『讃岐屋』にいた。
「・・夢なら覚めてほしいわ」
エアリスはため息を吐いた。
あのあと、死んだのはヴィンセントだった。セフィロスの正宗の方が、わずかに早かった。
「・・イリーナさん、かわいそうですね」
「かわいそうなんて物じゃないわよ。ひどすぎるわ」
イリーナは倒れたヴィンセントに駆け寄った。流れ出る鮮血に服が汚れるのもかまわずに。
「本当に愛していたんですね。僕てっきり『タークス』のツォンさんかと・・」
エアリスとクラウドは、神羅カンパニーを辞めた。辞めさせられた、と言うべきか。
神羅とルーファスの関係も、無論検察により明らかにされた。だが、中心人物のセフィロスが消えた事で、捜査は長引きそうだ。
「でも、ルクレツィアって誰でしょうね? ほら、ヴィンセントさんが最後に・・」
「あれなら調べたわ。5年前、昔の神羅科学部門にガスト、ルクレツィア、宝条の科学者が居たの。
ガストとルクレツィアは、結婚しようとしていた。でも、わかるのはこれだけなの」
「え?」
「3人とも記録では死んでいるのよ。だから本当にセフィロス部長の母親がルクレツィアかどうかも分からない」
エアリスはため息を吐いて、ブラックコーヒーを飲んだ。
「これからどうしましょうかね。僕いまさら故郷に帰るなんてできませんし・・」
「あら、ならいっそのこと私と結婚でもして喫茶店でも開く?」
エアリスは悪戯っぽく視線をクラウドに向けた。
「え?」
クラウドは砂糖の入ったコーヒーでむせ返りながら聞き返した。
「冗談よ。実わね、ルーファスさんからお誘いがあったの。罪償いでうちで働かないかって。ほら、その紙」
エアリスはクラウドに1枚の案内書を見せた。
多額の保釈金で釈放されたルーファスからのもので、今後の世話をするという内容のもの。
「最後の一文、ユフィでしょうね、きっと」
クラウドは笑いながら言った。
「ほんと、あの子くどいわ」
紙には最後にこうあった。『エアリス姉ちゃん、ルーファスとつきあってあげなよ。金ならあるしいい男だよ!』



ごめんさない! こんなしょーも無い結末で! もっとサスペンス色強くしようとしたんですが、幾分力量が不足していて・・。
ほんっとうにごめんなさい! ヴィンセントも殺しちゃったし、セフィロスは行方不明でいい加減な結末でした!
でも、こういう結末しか書けなくて・・ひとまず、僕の最初の長編を読んで下さった皆さん、本当にありがとう! (と言って、逃亡する京都太郎・・)

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