ロマンチストな男たち…(6) |
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「ブレスオヴファイア3」買ってしまいました。
というわけでしばらく休筆するかもしれません。チャットもお休みするかもしれません。(とか言って、明日も書いてたら笑えるね)
みなさん、また会う日まで「あ」のことを忘れないでねぇ〜☆(速攻忘れられる可能性大)
「ん・・・うっ」
ずるずると崩れ落ちながら、シドは必死にジョンを睨み上げた。・・・冗談じゃない、こんな年下のガキにやられてたまるものか・・・。
ジョンは悲しげに、
「そら、その目です」
「・・・何がだよ!」
「わからないんですか?その目が、ぼくらを・・・男たちを狂わせるんですよ」
「く、狂わせるだと・・・」
「自分は決して屈服しない、たとえ身体は預けても、魂だけは誰にもやらない・・・その目がそう言っている。そう言えば言うほど、ぼくらのような人間は、よけいあなたが欲しくなる。泣かせて、ひざまずかせて見たくなるんです」
シドはぐったりと床にはいつくばりそうになるのを必死でこらえながら・・・
「わ、笑わせるな!」
「それがいけないんです」
ジョンはじっと、奇妙に熱っぽく光る目をシドに当てた。
「もう少し・・・こうして見ていたい。逆境に陥れられれば陥れられるほど、あなたのハートは熱く輝くのだから」
「う・・・」
「いい表情だ」
シドは目を閉じ、力つきたように壁に体重を預けた。・・・勝手にするがいい。お前の言う通りだ、身体はやっても、ハートだけはやらない。
シドの傷ついたような、だがまだ強情さを感じさせるその悲痛な表情は、若い青年の心をいくばくか、動かしたらしい。
いったいどんな目に合わされるのか・・・。なかば覚悟を決めていたシドを、ふと、若者はふわりと抱きしめた。
シドは驚いて目を開けた。
今までの経験からして、こんな時はまず股間かその他のところ・・・そんな場所から攻められるもの・・・と予想していたからだ。
抱きしめてきたというのは初めてであった。・・・ヴィンセント・・・奴はどうだったろう。奴は・・・そうか、あの冷たい唇で・・・。
ヴィンセントの肌は冷たかった。吐息だけが炎のように熱かった。
だが・・・この若者は・・・。限りなくやさしく、温かい・・・。
「キスしても、いいですか?」
ジョンはそっと、シドの目を見ながらささやいた。シドはその熱さにひるんだ。
「いいですか?キスして・・・」
若者は、再度シドの意志を確認した。
「て・・・てめぇ」
こう出られると、シドは弱い。力押しで来る相手にはあくまで抵抗するが、こういうソフトな攻めは、はっきり言って初めてである。
シドの瞬時の迷いを承諾と受け取って、若者は、十も年上の・・・あこがれの英雄の唇に、そっと自分の熱い唇をかさねた・・・。
ヴィンセントが、ドアを開けて入ってきたのはその時であった。
「シド!」
「!」
ジョンは、シドから飛び離れた。シドは救われたような想いでヴィンセントを見上げた。
「シドに・・・何をした、中尉」
ヴィンセントはいつもように完全な無表情だが、その声がかすかに震えていた。ジョンは肩をすくめた。
「邪魔が入りましたね」
「・・・」
「まあいいや、また今度・・・機会は幾らでもあるのですから」
「ヴィンセント!」
シドは息を切らせながら、
「・・・そいつを逃がすな!ゆうべの声を録音されちまった」
「・・・何だって?」
ヴィンセントはショックを受けた。そんな気配など一切気づかなかったのだ。
ジョンは二人から視線を離さないまま、ポケットからテープレコーダーを取り出して、傍らに置いた。
「お返しします。ぼくには必要のないものですから」
「中尉!・・・一体きみたち親子は、何をたくらんでいるんだ?」
ジョンはきびすを返しながら、
「たくらんでるのは僕の父です。ぼくは何もかかわりがない」
「ではなぜこんなことをした」
「ぼくは、ただ・・・艇長が欲しいだけです・・・」
「・・・」
「・・・さようなら、艇長」
ジョンは足早に部屋から出ていった。
ヴィンセントは何とも複雑な表情でそれを見送ると、ぐったりしているシドを抱き起こした。
「だいじょうぶか、シド」
「・・・ヴィンセント・・・」
シドはあえぎながら立ち上がろうとした。
「わからねえ、あいつ・・・一体何を考えてやがるんだか・・・」
「私にも分からない・・・何もかも」
ヴィンセントはシドを支えた。
二人の胸に、言い知れない不安が広がった。
「不安・・・だ」
シドは、驚いたようにヴィンセントを見た。いつも冷静で、憎たらしいほどに落ち着き払っているヴィンセントが、そんなことを言うなんて・・・。
「ヴィンセント」
「・・・私を抱きしめてくれ。私がこんなことを言うのは・・・おかしいかも知れないが」
「・・・」
「私には・・・あんたしか・・・いないんだ」
「ヴィ、ヴィンセント」
ヴィンセントは、力の入らないシドの身体を、ぎゅっと抱きしめた。
「・・・もしもあんたを失ったらと思うと・・・ぞっとする」
「・・・」
「仕事・・・使命。そんなものも私にはあるけれど・・・それだけではいやだ。あんたがいなければ、やはり私は完全な人間でいられない・・・今の私がこうして立ち直り、人間らしく生きていられるのはすべてあんたと出会ったおかげ・・・」
ヴィンセントは、熱くささやいた。
「この命をかけて守るから・・・あんたを傷つけようとするものすべてからあんたを守るから・・・だから、どこにも行かないでほしい・・・」
シドは・・・どうしたらいいか分からなかった。
だが、ヴィンセントのおびえたような横顔は、確かに真実を語っている・・・守るから・・・「守るから」だって?それは・・・男が愛する乙女にでも言う台詞ではないのか。
「・・・どこにも、行かねえよ」
やっと、シドはそれだけ言った。それ以上の約束は、もしかしたら自分には出来ないかも知れないが・・・。
でも、シドの言葉も真実を語っていた。
ヴィンセントは、シドの頭を抱きしめた。シドの身体のぬくみだけが、不安に胸を支配されたヴィンセントが、今やこの世で唯一すがれるものに感じられる。
そしてシドも・・・実はおなじことだった。
バトルブリッジ副部長は、一人、暗いオフィスで回想していた。
若い日々・・・。入社したての頃のことだ。
同期で入った美しいタークスに恋をしたことがあった。相手は男性だったが・・・。
無表情なのに、どこか、いつも歯痛をこらえているような風情があった。ぬけるような白い肌と、つややかな黒髪が絵のようだった。
二人きりで話したことは一度もない。そんな機会をつくろうとも思わなかった。ただ、そっと眺めているだけで胸が甘酸っぱくなった。
ほんとうに純粋な恋ごころ・・・だったと思う。ピグマリオンが美しい彫像に恋い焦がれたようなものだ。
結局その想いは、彼の心に秘められたまま、風化してしまった。彼には学生時代からの恋人がいたし、彼女を不幸にするつもりなど、さらさらなかったからだ。
やがてバトルブリッジは恋人を妻に迎え、幸せな家庭を築き、子をなし育てた。会社では不遇だったが、家庭は決して不幸ではなかった。
彼の胸の底にそっとしまいこまれた美しいタークスの青年は、いつの間にか行方不明になっていた。その理由も行き先も、バトルブリッジには分からなかった。探そうとも思わなかった。
あれは、若き日の思い出なのだから・・・。
「ヴァレンタイン・・・生きていたのか。神羅に復帰していたのか・・・」
バトルブリッジはそっと呟いた。
生きていたとしても、奴ももう50過ぎ・・・。あの彫刻のような美しさはもう失われているだろう。
ため息がもれた。会ってみたい、いや会わぬまでも、遠くから、よそながらひと目見てみたいという気持ちが強く沸き上がってきた。
が、彼はかぶりを振った。
「いや、よそう・・・彼も私も老いた。夢は美しい夢のままにとどめておこう・・・」
何かえらくロマンチックな展開になっちまいましたね。あたしらしいと言えばあたしらしい展開かも。
このまま望むラストへなだれ込んでくれるといいが・・・。
こんなのでも、読んでくだすった貴女には、感謝のキッス百連発☆