「検察捜査」第4章デス


投稿者 京都太郎 日時 1997 年 9 月 15 日 17:09:55:

いやいやなんとか第4章が書けそうです。
それにしても台風気になりますなぁ。



ルーファスを乗せたエアリスの車は、ルーファスの指示で市街へと向かっていた。助手席のクラウドは、さっきからチラチラとルームミラーから後部座席のルーファスを見た。
白い服、髪をかき上げるしぐさ。なんとなく、総会屋というよりヤクザだな。クラウドはそう思った。
「そこだ、止めてくれ」
車は、ごくごく平凡な通りに停まった。
「・・ここですか?」
窓からレンガが敷き詰められた歩道を覗き込む。植え込みに色とりどりの花が植えられ、街灯も整備されている。そこに、5階建てのフツーの建物。確かに「ルーファス住建」と書いてあるものの、1階はどうやら写真店の店舗になっているらしい。
どこにでもありそうな中堅のビルだ。
クラウドは、もっと大きなビルか、そうでなかったら、ウータイにありそうな寺院のような御殿を考えていたから、意外だった。
「ここだよ、わたしの職場兼自宅は」
ルーファスは髪をかき上げ、車を降りた。
「クラウド、行きましょ」
エアリスはさっさとエンジンを止め、ルーファスに続いて降りた。クラウドも、それに続く。
「悪いね、こんなボロビルで」
「いえ、そんな・・」
エアリスが言った時、突然1階の写真屋から一人の女が飛び出てきた。
「きゃ〜! ルーファス! 帰ってたんだ!」
女というより、少女と言った方が適当だ。彼女はルーファスを見つけるなり彼めがけて抱き着き、
「お帰り! 私ルーファスの為にずっと待ってたんダヨ!」
「おいおい、お客の前だよ・・いや失礼。彼女は」
「アタシね、ユフィって言うの。ここの写真屋の女主人なんだ! よろしくね!」
元気そのものである。エアリスもクラウドも、しばしこの少女にあっけに取られた。
ユフィはようやくルーファスから離れ、今度はルーファスの服の乱れを直し始めた。
「駄目ねぇ、ルーファス。早く奥さん貰わないと」
「余計なお世話だぞ。ああ、こちらは、神羅カンパニーの社員さんだ」
「あ、エアリスともうします。こっちが、クラウド・・」
エアリスはやっと調子を戻して、自己紹介した。
「どーも」
クラウドも、こめつきバッタみたいに頭を下げる。
「へえ、じゃあルーファスがお金貰ってるトコの人なんだ!」
「は?」
エアリスとクラウドは度肝を抜かれた。なんでこんなチビが知っているんだ?
「いや、エアリス君、すまんね。こいつにだけは、『チョコ』の事を言ってるんだ。信用できる事は私が保証するよ」
ルーファスはエアリスに説明した。
「ルーファスったらね、こんなキザに見えて、あんた達から貰った金を植え込みの花の世話とかに使っているんだよ」
「こら、言うなって約束だろう」
「それにね、このレンガ通りも、街灯も、みーんなルーファスのお金で整備されたんだよ!」
「はぁ、そうですか・・」
エアリスもクラウドも、またあっけに取られた。
「恥ずかしいから言うなって・・。しょうがないなぁ。事実ですよ、ユフィが言った事は」
ルーファスは顔を赤くしながら、照れたように髪をかきあげた。
「似合わないだろ? わたしに。でもこれくらいしか使う道が無いんだよ。家族でもいれば別な使い方もあったかも知れないが、不幸にもこのようにシングルでね」
ルーファスは苦笑した。
「嫁さん来ないんだよ、こんないい男でも。ねえエアリスさん、良かったら付き合ってあげなよ」
ユフィは勝手な事を言い出す始末。
「こら。お客に失礼だぞ。・・君たちが聞きたい事は分かっている。わたしが検察に密告したと思っているのだろう?」
「ええ・・」
エアリスが遠慮うがちに言った。
「残念だが、それはわたしではない。わたしだって検察が来て、びっくりしていたのだから。恐らく第三者が密告したのだと思うよ。それに、私がいないと花を世話するやつが一人減るからね」
「そうだよ。ルーファスが密告するなんて墓穴掘るような真似、するわけ無いじゃん!」
ユフィが言った。

翌日。神羅カンパニー30階。営業部。
検察の立ち入りがあったとは言え、業務は続けられるのだ。
「意外でしたよね、エアリスさん」
「本当ね。ルーファス氏があんな人物だったとは・・でも密告者じゃなさそうね」
「あんな人のいいやつだとは思いもしませんでしたよ!」
「ほんと! 人は見掛けによらないわ」
エアリスとクラウドは、エレベータホールの近くの自販機で、甘ったるいコーヒーを飲んでいた。
「でも、振り出しに戻ったわけですよね、これで」
「そうね。恐らくーー社内に密告者はいるわね」
「え? なんでですか?!」
「女の勘よ。さ、業務に戻りましょう」
エアリスはカップをごみ箱に捨て、さっさと自分のデスクに戻った。
「・・女の勘ねぇ・・」
残っていたクラウドも、残りを飲み干し、戻ってゆく。

自分のデスクでボーとしながら、クラウドは密告者の事を考えていた。
目の前には最新型のノートパソコン。会社から支給されたものだ。ここのEメール受信箱に、エアリスが『チョコ』の情報を入れて来る。
無論、内容を確かめたらクラウドは、メールを削除する。
ふと、疑問に思う。
ーーもし、そのメールを誰かが盗み見ていたら?
メールを見たら、ルーファスへの不正な金の事を理解する可能性はある。
ーーって事は・・
ふと後ろを向いた。
そこには少し離れた所に、観葉植物が。室内に点在する一つだ。
「まさかあの中に!」
観葉植物に紛れ込ませて、隠しカメラかなにかの装置があったら・・!
果たして、はたからは分からないように、幹に黒いコードが。そして葉には超小型カメラが設置してあった。

「おい! なんでぇこの段ボールの山は!」
シドは特捜部の部屋の散らかりように呆れ顔だ。
「仕方なかろう。全て神羅から押収したものだ」
「これをいちいち調べなきゃならねえのか? ああうんざりする!」
ヴィンセントは同僚の愚痴を尻目に、パソコンと格闘していた。
数万枚のフロッピーとMO、さらにはジップまで、なんとかこの中から証拠を突き止めなければ神羅とルーファスのつながりを暴けない。
「おい、この箱邪魔だぞ」
シドが通路の箱の山の一番下を蹴った。
「あっ!」
他の捜査員が唖然とするまもなく、箱は崩れ落ち、中から資料の紙やファイル、フロッピーが落ちる。
「ああ! シドさん、たのむから邪魔しないでくださいよ!」
捜査員達が落ちた紙を拾い始める。
段ボールの下敷きになったフロッピーに、一枚『菓子類 チョコ』とあるのも気がつかないで・・・。



いやあ、またまた奇妙な展開になって参りました。
果たして検察に密告したのは誰なのか?
写真屋ユフィの腕は確かなのか? 
さ、寝る前に展開を考えないと・・・。
読んで下さって、どーも有り難う!

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