想い


投稿者 血吸ねこ 日時 1997 年 9 月 12 日 11:24:35:

またまた続きを作ってしまいました。(といいながら、まだ先を作ってますが。)
今回は、ちょこっとまじめなお話・・・かな???



 大雪原を越え、絶壁を登り切った一行は、竜巻の吹き荒れる岩山を前に、休むことにした。
 −−−この先に、セフィロスがいる。
 緊張と、竜巻の音でなかなか寝付けない。落ち着かないのか、なんとなくばらばらにテントを張る。
そして、ばらばらに眠りについた。

「・・・シド。」
 寝付かれずに寝返りばかり打っていたのが聞こえたのか、ヴィンセントが声をかけた。
「寝付けないのか?」
「・・・ああ。・・・酒でも、飲むか?」
 こんな所にまで、酒瓶を抱えてきている。さすが、というところか。
「・・・少しなら、な。」
 2人は、風を避けるべく、また仲間を起こさないように、かなり離れた岩影に座り込んだ。
「・・・ひでえとこだな、ここは。」
 風が強すぎて煙草をあきらめざるを得ず、ちょっといらいらしているようだ。
「・・・奴に相応しい所かもしれんな・・・」
 しばし、黙って酒を飲む。空になったグラスに酒をつぎ足す。
「シド、・・・」
 ヴィンセントが口を開く。
「ん?」
 シドが顔を上げる。そのまま、ヴィンセントが話し出すのを待つ。
「・・・前に・・・私が変わった、と言ったな・・・」
「ああ。・・・よく笑うようになったな。・・・ったく、その笑顔、忍者のねーちゃんに向けてやりゃあいいのによ。」
「・・・なぜユフィなんだ?」
 不思議そうに問い帰すヴィンセント。シドは苦笑した。
「気づいてなかったのか?・・・あのねーちゃん、この頃おめぇのことばっか、見てっぞ。」
「・・・そうなのか・・・?」
 ユフィのことを聞かされても、別に意識し直すこともない。
「・・・私が変わったのは・・・あんたのおかげだよ。」
 一瞬、強い風が吹き込んでくる。
「・・・・・・・・・私には、あんたが・・・太陽に、見える・・・」
「よせやい、くすぐってえ。」
 シドがグラスを空ける。
「そんな台詞ぁ、可愛いねーちゃんや別嬪さんに言うもんだ。」
「・・・女性に、か・・・」
 ふっと遠くを見るヴィンセント。シドは、彼の心の傷に触れてしまったことに気づいた。
「言いたい女性は・・・すでにいない・・・」
「・・・すまん・・・」
「あんたが謝ることじゃない。」
 優しげな、しかし悲しみを含んだ瞳でシドを見つめる。
「・・・あんたの、光輝く魂・・・手に入れたいとは思わん。だが・・・」
 話すうちに、気が昂ぶってきたのか声が震える。
「・・・だが、あんたの側に・・・いたい・・・」

 シドは、めんくらっていた。いきなり告白(しかも男から!)されるとは思ってもいなかったのだ。
それはまあ、仲間内では一番打ち解けてもいるし、何度か抱いてもいるのだが。
 しかし、ヴィンセントが打ち解けた様を見せ、笑顔を見せているのはシドだけになのだ。それだけシドを信頼し、心を開いている証なのだろう。だからといって、この告白は唐突すぎた。
「い・・・いきなり・・・何を・・・」
「・・・あんたといると、安心できる・・・悪夢も、みない・・・。」
 ヴィンセントはシドを見つめる。その真剣な眼差しに、シドは何も言えなくなる。
「あんたが・・・私の凍てついた心を、溶かしてくれた・・・」
 そっと手を伸ばし、シドの頬に手を触れる。
「・・・奴と対決する前に・・・伝えておきたい、と思ったから・・・」
「・・・あんたがマジなのは、わかったよ。」
 シドが囁く。
「確かに、あんたのことは気に入ってる。・・・だがな、俺ぁシエラのことも気にかかる。」
 空になったグラスを弄びながら、シドは言葉を探した。
「だから・・・も少し時間をくれ。」
 自分の頬にあてた手を取り、軽く唇を付ける。
「そうだな・・・、ここを出るときまでには、よ。・・・だから・・・」
 だから、必ず奴を−−−セフィロスを倒す。
 だから、必ず生きて出る。
 言葉にしなくとも、伝わってくる思い。
 ヴィンセントは、頷くと、先に自分のテントに戻った。

 シドは、グラスに酒をつぎ足し、考えていた。ヴィンセントのこと、シエラのこと、明日のこと。
(俺にとって・・・あいつは何なんだろうな)
 仲間。 一番安心して後ろをまかせられる仲間。
 だが、時たま見せる、儚げな表情がシドの脳裏から離れない。彼の過去を聞いたこともある。シエラとはまた別の意味で気にかかる存在。
(・・・今頃、何やってんだろーな)
 ロケット村で、自分の帰りを待っているシエラ。村にいたときには何とも思わなかったが、離れているとどうしているかが気にかかる。このまま自分が帰らなければ、彼女はどうなってしまうか。彼女はこの10年、すでにシドのために無為に過ごしている。それを思うと、放っておけない。
(・・・セフィロス、か・・・)
 ようやく、追いつめることが出来た。だが、胸の内にどす黒い不安が募ってくる。なぜ、こんなにも不安なのか・・・
 シドは一気にグラスを空けると、彼もまた自分のテントに戻っていった。

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