ミッドガル・ヒーローズ新作(1) |
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う〜〜〜ん。困ったことになった・・・。
「あ」はどうもタークスが気に入ってしまったみたいです。
ユフィちゃんも気に入ったみたいです。
もちろんミッドガルで中間管理職してるシド&ヴィンは、言うまでもなく最愛です。
と言うわけで、「ミッドガル・ヒーローズ」シリーズ(←シリーズ化してる)第二弾と行かせていただいてよいでしょうか・・・。
おひとりでも読者がいてくれることを祈りつつ・・・。
長く、ダラダラと続く会議・・・。シドはあくびをかみ殺しながら、書類にイタズラ書きをしていた。
いつになったら終わりやがるんだろうな・・・ちきしょうめ、俺はこういうの、マジで苦手だぜ。
いつもであれば、とっくのとうに居眠りしているところなのだが、今日の会議は来年度予算がかかっている。うっかりして眠っている間に、勝手に「では、軍事部門の予算は100ギルで」なんて決められたらエラいことだ。100ギルではエーテルも買えやしない。
しかし決算報告に予算案なんてもの、おもしろいわけがない。
シドはなるべく熱心にメモをとるふりをしながら、書類にハイウィンド号の絵をひたすら書いていた・・・。
「お疲れさま〜、シド!」
オフィスに戻ると、秘書(ぶっ)のユフィが元気に出迎えてくれた。
「はい、お茶!」
どん!と寿司屋でくれるような特大湯のみになみなみとお茶をついで出し、
「どうだった、予算いっぱいぶん取れた?」
「けっ、話にも何にもなるかよ、あんなんで」
シドは顔をしかめて渋茶をすすった。
「リーブの野郎、シブいったらありゃしねえ。今は都市の再建に力をそそぐべき時で、軍事力増強は後回しだって言いやがる」
「ま、それもそうなんだろうけどネ・・・」
「けっ、知らねぇからな、またウェポンが来たってよ」
シドは悪態をつくだけつくと、
「・・・で、会議中に電話とか客とかなかったか」
「はいはい」
ユフィは「電話受信記録」をパラリとめくった。
「ええと、ヴィンセントから電話があったよ」
「・・・」
シドは、お茶を吹き出しそうになった。
「し、仕事の話か?それともプライベートな方か」
「今夜、かめ道楽で待ってるって」
「・・・」
「シド・・・身体、もつ?」
「☆☆☆」
何か言いかけたシドを制して、
「あ、それとあともう一件。宇宙開発部門の新しい副主任になったっちゅー人から電話があったよ」
どうせならそっちを先に言え、とユフィに説教してから、
「用件は?」
「とくに用事があるわけじゃないけど、いちお、挨拶しときたいって」
ユフィは時計を見て、
「あっ、そろそろ来るよ」
「なに?きょ、今日これから来るってか?!」
「ちょうど会議終わる時間だからサ、アポ入れてやったんだい!」
「何をいばってるんだオマエはよう、それを最初に言えってんだよ!」
シドは頭を抱えた。これくらい役に立たない秘書も珍しい。
と思うひまもなく、ノックの音がした。シドはあわてて、緩めていたネクタイを締め直した。
「どうも、突然お邪魔しまして」
礼儀正しく入ってきたのは、50代くらいの、ちゃんとした身なりの男と、きっちりと軍服を着た若い男・・・である。
新社長リーブもそうだが、このタイプは神羅には珍しい。前々社長も、その次のルーファウスの時も、どこかクレイジーと言うか、頭のネジが2,3本抜けているというか、そういう人材がのさばっていた会社だったからだ。
ところがリーブの時代になって、仕事はできるが人格がまともだったせいで不遇な扱いを受けていた人々が、言うなれば復権してきた。
宇宙部門も、今までの部長だったパルマーは今のままの役職に据え置きなのだが、実質的にはここにいるバトルブリッジという新副部長が部長で、パルマーはほとんど閑職なのだという話であった。シドにしてみれば「ざまあ見さらせ」である。
「バトルブリッジです。シド艇長・・・失礼、ハイウィンド大佐」
「あ、ど、どうも、こちらこそご挨拶が遅れまして」
幾ら軍事部門の幹部に抜擢されたと言っても、シドはまだ32歳、若者たちの中に置けばオヤジだろうが、社会的に言えばまだまだ若僧もいいところである。それが、こんなに年上の人間に礼儀正しく挨拶を受けたのだから、緊張しないわけがない。
「世界で初めて宇宙へ飛び立たれたシド艇長のおうわさ、かねがねうかがっておりまして・・・この」
と、連れてきた若者を振り返って、
「バトルブリッジ中尉が、ぜひお目にかかりたいと言うものでしてな」
「バトルブリッジ中尉・・・すると」
「恥ずかしながら、私の息子なのです」
「ジョン・バトルブリッジ中尉であります。新しい神羅ロケット計画の責任者に抜擢されました」
輝くような白い歯が印象的なその若者は、あこがれの艇長にじかにお目にかかれた感激をそのまま全身に表して、
「光栄です、シド艇長!」
「ああ、それじゃ今度は・・・」
シドは、複雑な気持ちを抑えられなかった。
神羅26号の打ち上げ失敗以来、長く中断されていた宇宙計画が、今度から再開されることが決まったのはつい先日のことだった。リーブが、すまなそうに報告してくれたのである。
「えろうすんまへんな、艇長はん・・・でも、こんな時代やからこそ、人々には夢とか希望とか、そういうものを与えるような計画が・・・必要なんですわ」
シドは、自分抜きでその計画が進められるのはむろん面白くなかったのだが、それでも祝福しないわけには行かなかった。
そうか、今度はこの若者が・・・かつての自分と同じポジションで・・・。
「どうしたんだ、シド」
居酒屋“かめ道楽”の喧騒の中で、シドは我に返った。
「あ?いや、別に・・・」
「何か心配事がありそうだ」
ヴィンセントは、相変わらず深いガーネットの瞳で、じっとシドを見つめた。
「・・・何か、会議で面白くないことでも?」
「そういうことじゃねえんだけど・・・何かやりづれえな」
シドは苦笑しながら、クシャクシャと自分の髪に指を突っ込んでかき回した。
「こんなクソうるせぇとこで話せるような話題でもねえんだ」
「そうか・・・。じゃあ、後で静かなところで飲み直そう」
「・・・はい、揚げ出し、ホタルイカ、タン塩、それとブリカマにグリーンサラダ、お待ち!」
「あ、あとビールもう一本追加だ」
「はいビール」
「それから・・・焼きウドンでも取るか」
ヴィンセントはてきばきと店員に指示する。シドは驚異の目でそんなヴィンセントを見た。
「・・・オマエ、ほんとに変わったなあ・・・イメージが」
「そんなことはない。眠りに就く前は、学生時代、タークス時代、こうやって居酒屋で友人や同僚と飲み食いしたものだ」
「友だち・・・いたのか」
シドは、若き日のヴィンセントが・・・友人たちと居酒屋でイッキ合戦をしているところを想像して・・・気が遠くなるようだった。
「数は少なかったが、皆無というわけじゃなかった」
ヴィンセントは首を振った。
「でも、今は違うな・・・シド、あんたといる時が・・・」
「わ、わかってるからそれ以上言うな」
シドはあわててさえぎった。
「静かなところ」と言っても、だいたい行く場所は決まっている。ヴィンセントのアパートである。
もっとも最近では、そこへ行ったからと言って必ず襲われるわけではなかった。純粋に酒を酌み交わすだけで静かにふけていく夜もある。
ヴィンセントの気分次第で、グチョグチョのドロドロな夜になることも多かったが・・・。
とにかく、酒の強いヴィンセントは、深酒をすると前後不覚になるシドの相手にはうってつけである。
「・・・別に、だからどうだってわけじゃねえんだ」
シドは胸のつかえを吐き出すように、
「オレが逃しちまった夢を、これからの若い奴がかなえていく・・・めでてえこった、はっ」
「その割に、あんたは嬉しくなさそうだ」
「・・・」
「嫉妬してる・・・のか?その若いのに」
「・・・わかんねえよ、そんなこと」
シドはストレートをあおった。
「ただ、これだけは言えるよな・・・」
「・・・」
「オレは、もう、みんなに祝福されて宇宙へ行くことは・・・できねえんだ」
ヴィンセントには、言葉がなかった。
十年近く前、シエラの命を救うため、自分で自分の夢をあきらめざるを得なかったシド・・・。
あの時何もかもうまく行っていれば、あの若者がやがて得るであろう称賛も、名誉も、すべてがシドのものになっていただろうから・・・。
「・・・シド、私には何と言ったらいいか・・・」
「・・・は、もういいんだ、いいんだよ」
シドはやけくそのように笑いながら言った。
「それに、あの時ロケットが飛ばなかったおかげで、こうしてオマエに会えたんじゃねえか・・・だろ?」
「・・・」
「喜んでくれよ、オレのため、ロケットのため・・・若いジョン・バトルブリッジのために、だ」
「バトル・・・バトルブリッジだって?」
ヴィンセントは首をかしげた。その名には・・・記憶があった。
おお、シリーズ(←いつの間にかシリーズ化してる)初のオリキャラ登場ですね。
この父子がヴィンとシドとどうからむのか(全然からまなかったりして)。タークスいつ出てくるか・・・。
すべては・・・神様だけが・・・ご存じよ。
こんなもんでも、毎度読んでくださる(といいなあ)貴女に感謝☆