たまには静かな夜を


投稿者 あぐり 日時 1997 年 9 月 12 日 02:25:17:

 えーーーと。
 突然ですが、下のほうに「受クラウド」さんが書き込みをくだすってまして。(黄クラウド・・・ってくら茶の方・・・?わたくしスカーレットです、よろしく☆)
 「シドを自分でも押し倒したくなる」とのコメントでした。ありがとうございます。
 が☆よくよく考えてみますと、シド総受にはなんの異論もない私ですが、く、クラウドにシドが押し倒されるなんて、それはちょっと・・・・。
 人それぞれポリシーはあると思いますが、クラウドはやはりみんなのお姫でいてほしい「あ」でした。
 何だかクラウドが書きたくなってしまいました・・・。
 シドクラまたはクラシド・・・やらないけどね。どっちも受けだから、うち・・・。基本はあくまでヴィンクラです。
 百合は女の子だけでじゅうぶんだ。
 あ、でもクラ×ラムは期待してます・・・・☆(←退場!)




 海底の神羅飛空艇・・・。クラウド、シド、ヴィンセントの(うちの)最強トリオは、懲りもせずに再チャレンジの最中であった。
「この前は、ここでシドが大変な目に合ったんだったよな」
 クラウドが言うと、シドは「けっ」と面白くなさげに顔をしかめた。
 十日前だったか、やはりここに来ていた時・・・正体不明よりもっと正体不明なモンスターに刺され、意識不明になったばかりか、記憶まで喪失して、えらい醜態をさらしてしまったシドであった。
 「大人の分別」「大人のやさしさ」「大人のシブミ」・・・とかいったアダルト系の魅力はすべて消えうせ、18歳の不良少年そのままに、周りの人間を振り回してしまったのである。
「あの時はどうなるかと思った・・・な、ヴィンセント」
「さっさと忘れろよ、てめえら・・・」
「だってシドったら俺のことまで・・・」
いつまでもすぎたことウダウダ言ってんじゃねえよ
 シドは、ランスを構えたままスネてしまった。ヴィンセントは黙っていたが、内心では笑いをかみ殺していた。
 ユフィのファーストキスを奪い、バレットを誘惑し、クラウドまで押し倒そうとしたシドであった。だがクラウドは必死で、必死で抵抗したのだ。
 「いやだああああ!セフィ!セフィいいい!」・・・別荘中に響き渡るような悲鳴を上げられて、シドは(もともと軽い気持ちだったもので)驚いて逃げたのである。
 逃げ出したシドも可愛いが、そこまでいじらしい抵抗をするクラウドも・・・ヴィンセントには愛しかった。
 シドが誰かほかの男に押し倒されそうになったとしても、泣いてヴィンセントの助けを求める確率はかなり低い。シドはどんなときでも自分の力で解決しようとする男だからだ。
 それに比べるとクラウドはまだ子どもというか、まだまだ他人の助けにすがりつきたがっているような雰囲気が濃厚にあり、それが男心を別の意味でくすぐる。
 あくまで他人の助けや情けを拒み、むしろ自分が弱い他者を守ろうとする、自覚を持った大人の男。
 つっぱってはいるが、実はまだまだ甘えたい、優しくされたいさかりの若者。
 ヴィンセントはどちらも好きだった。・・・ただ、クラウドは彼を傷つける守ってやりたい、温かく抱きしめて保護してやりたいと思うが、シドのほうは、その厚いツラの皮をひっぱがし、押し倒して泣かせて自分のものにしてしまいたいというゆがんだ欲望が沸き上がってくる・・・という違いはあったが。


 お宝あさりも佳境に入ってきたところで、三人はテントを張り、野営をすることにした。
「あの・・・俺、外で見張りしてるから」
 クラウドはおずおずと申し出た。
「もの音とか、声とかしても、聞かないふりしてるから・・・だからゆっくりしていいんだ。あ、でも、モンスターが出てきたらすぐに助けに来てくれよ」
「な、何でそうなるんだよ!?」
 シドは悲鳴を上げた。いつの間にかヴィンセントと公認の仲になっていたとは・・・。
「私は、どっちだっていい」
 あくまでクールに受け流すヴィンセントだったが、シドは、
「冗談じゃねえよ、見張りは俺がする。どきな」
 と、勝手に自分が見張りに出てしまった。
 クラウドはため息をつき、寝袋にくるまった。
「・・・おせっかいだったかな」
「そうだな。時と場合によっては、気を使うことが相手を傷つけたり苦しめたりすることもある・・・」
「・・・俺、まだその辺がよくわかんなくて」
「大人になれば・・・自然とわかってくるさ」
 ヴィンセントの言葉は静かだが、経験の重みが感じられた。
 はあ、とクラウドはまたため息を漏らす。大人・・・。俺はいつになったら大人になれるんだろう。
 セフィロスは大人だった。クラウドのどんなわがままも、静かに笑って受け入れてくれた。
 エアリスも・・・しぐさや言葉つきは童女のようにあどけなかったが、やはり、大人の包容力を持った女性だった・・・。
 そして一緒にいるシドとヴィンセントも、だ。けっして他人に頼ろうとせず、他人の力にこそなって行こうという二人のやりかたは、クラウドの目から見てもかっこよかった。
 シドが子どもじみた照れ性だとか、ヴィンセント、暗すぎるとか、そういうのは置いておいて、とにかく二人は大人だった。
「シドは照れているだけだ。ああいう奴なのさ・・・お前が気にするほど彼も気にしてるわけじゃない」
 冷静に分析してみせるヴィンセント、かっこよかった。
 クラウドは、それでつい口がすべってしまった。
「・・・なあヴィンセント、俺、ひとつ聞きたいんだけど・・・」
「?」
「好きな相手に振り向いてもらえなかった時・・・あんたはどうしてた」
「・・・」
「俺、ひねくれちゃって、わざと興味ないんだって顔してたけど・・・おかげでとんでもないことになっちゃったけど」
「・・・」
「ヴィンセントなら・・・」
 ヴィンセントは黙ってきれいな横顔を見せていた。クラウドはあわてて首を振り、
「・・・ううん、いいんだ。ごめんヴィンセント、いやなこと思い出させた」
「私は・・・」


 ヴィンセントは過去を回想した。ルクレツィアと知り合い、親しくなり、時には食事にも誘うようになり・・・もしかしたら「愛してもらえるかもしれない」と思った胸のときめき。告白し、それが無残に裏切られた時の絶望・・・。
 そんなものが、いちどきに鮮やかに甦ってきて、ヴィンセントの胸をやるせなく噛んだ。
 だが誰より理性のまさっていた彼は、あきらめる道を選んでしまった。彼女が幸せなら、それでかまわない・・・と。
 彼女がおそろしい実験に身を捧げるときめた時も、「それが彼女の意志なら」と目をつぶってしまった。代わりに宝条を説得して実験をやめさせようとし、ああいう結末を迎えてしまったのだ。


 ヴィンセントは、テントの外でタバコをふかしているだろうシドを想った。
 シドと出会った今なら・・・。今ルクレツィアが目の前にいて同じことをしようとしていたら、ヴィンセントは、彼女をひっぱたいてでも止めただろう。
 シドが自分だったら、迷わずそうしていただろう。
 世の中には、理性や理屈だけでは解決できないこともある。たとえ理屈で正しくても、人間としてしてはいけない事はあるのだ。それを止めるには、理屈ではない、感情をむき出しにし、時には殴ってでもしなければ、気持ちは伝わらないのだ。
 シドに出会うまで、そんなことすら分かっていなかった自分であった。


 ヴィンセントは、クラウドに正直にそのことを言った。
「往時、私はじゅうぶん大人のつもりでいた。愛する人に振り向いてもらえない時も、黙って耐えるのがおとなのやり方だと思ってた」
「違うの?」
「・・・違う。いや、違わない場合もある。でも私の場合は、違ったんだ・・・」
「・・・」
「あの時は・・・彼女をひっぱたいてでも止めるべきだった」
「・・・」
「・・・そうすれば、こんなことには」
 クラウドはふうっと息をついた。そして言った。
「確かにそうかもな。でもヴィンセント」
「ん・・・」
「あんたには悪いけど、彼女・・・ルクレツィアを止めないでくれて・・・俺は感謝してる」
「・・・」
「おかげでセフィロスに会えたから」
 ヴィンセントは目を見開いた。
「そうか・・・」
「こんなこと考えて、地獄に落ちるかもしれない。でも、ほんとだよ」


 シドは何十本めかのタバコに火をつけた。
 今夜は静かな夜が迎えられそうだ・・・。




 ということで、やの字なしですが、まあ前回が鬼畜だったからよしとして下さいませ。
 次回(まだ書く気なのか)は、ストーリーもやの字も真面目に考えます。
 今回も読んでくだすった貴女に感謝のくちづけを・・・。

 ところでここって、FF6のネタとかのせたら駄目なのかな・・・?


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