雪景色…一応3作目です


稿者 血吸ねこ 日時 1997 年 9 月 11 日 11:30:50:

またまた続きを書いてしまいました。
う〜ん、そろそろネタが尽きかけている・・・(ToT)



 エアリスを失った一行は、忘らるる都を後にした。セフィロスを追って山中のトンネルを抜けると、雪原にでた。初めて雪に触れたレッドXIIIは子犬のように転げまわり、わずかではあるが、一行に久しぶりの笑い声を上げさせていた。

「おろ?」
 ユフィの声に、皆が振り向く。
「なんだ?」
「う〜ん、ちらっと見ただけだからわかんないけど〜、チョコボがいたみたいなんだよね〜。」
「チョコボぉ?!」
「あ、ほらあそこ!」
 今度は、ティファが指さす。チョコボに間違いない。
「よっしゃあ、このバレット様が捕まえてやらぁ!」
「待てよ、バレット!」
「そそ、一人じゃ無理無理」
 駆け出したバレットの後を、クラウドとユフィが追いかける。
「元気ね〜」
 少し呆れたようにティファがいい、レッドXIIIがぱたぱたとしっぽを振って同意する。
「・・・ゆっくり行こーぜ。」
 煙草に火を付けながら、シドが言う。ちょうど朝日が昇り、光を受けた雪原がきらめき出す。
(・・・これほど日の光が似合う男など、いないのだろうな・・・)
 太陽を背にして立つシドの姿に、ヴィンセントはしばし見とれた。
「ほな、行きまひょか。」
 彼らは、クラウド達の足跡を目印に、移動を再開した。

 結局、そのチョコボを捕まえることは出来ず、疲れはてたクラウド達と合流できたのは昼近くだった。午後になると、雪片を含んだ風が吹き始めた。一行は、しばしば立ち止まってケットシーのボディに付いた雪を落とさねばならず、思ったように道のりが進まない。
 一行がアイシクルロッジにたどり着いたのは、日が沈んでからだった。

 宿のベッドに寝転がり、大きく手足をのばす。雪原を歩くのは大変だったし、ケットシーのボディの雪を落とすのにも手間がかかった。すでに、チョコボを追いかけた3人は寝入っている。
(風呂にでも入るか)
 シドは浴槽に湯を張り、身体を沈めた。なれない雪道での疲れをほぐしながら、技術者らしく、どうすればケットシーのボディに雪が付かないようになるかを考え始めた。

(何年ぶりだろう・・・)
 ヴィンセントは村の中を歩いていた。
(確か、セトラの後裔が住んでいたな・・・)
 長い眠りにつく前だが、何度か調査に来たことがあった。
(・・・そういえば、意志の強そうな瞳をした女の子がいたな・・・)
 一人の少女の顔が浮かぶ。どことなく、エアリスに似た面立ちの少女の顔が。

 結局、解決策を見いだせず、頭を切り替えようと酒場に降りてきたシド。カウンターの角で、なんとなく聞こえてくる周りの会話を聞き流していたが、「セトラ」という語が注意を引いた。耳をそばだて、会話を聞き取ろうとする。と、後ろから肩をたたかれた。
「な、なんでぃ、脅かすなよ。」
 いつのまにか、ヴィンセントが立っていた。
「・・・火酒をくれ。」
 運ばれてきた酒を口に運ぶ。
「珍しいもん、頼むんだな。」
「・・・このくらい寒いと、こういう火酒でないとな。」
 それにここの名物だ、とかすかに微笑む。よくよく注意していないとわからないほどの笑み。ちょうど酒がなくなったシドは、同じものを頼んでみた。一口含んで、吹き出しそうになる。
「な、何だよ、この酒は!」
「・・・だから”火酒”だと言っただろう・・・」
 見ると、ヴィンセントが笑っている。大声で笑う、というのではないが、屈託なく笑っている。シドは、彼がこんなに笑うのを見た覚えがなかった。

 部屋に戻っても、まだヴィンセントは笑みを浮かべていた。
「・・・あんたがこんなに、笑うなんてな・・・」
 半ば呆れ顔でシドがつぶやく。
「酒のせいだろう。」
 やっと、いつもの静かな表情に戻ったヴィンセントが答える。
「・・・初めて会った頃、あんたと2人で飲んだことがあったが・・・正直言って、面白味のねぇ野 郎だと思ったよ。」
 ちびた煙草をもみ消し、しばしヴィンセントを見つめる。
「それが今じゃあ・・・こんなに変わっちまって。」
 新しい煙草に手を伸ばそうとして、止める。
「・・・疲れたな。・・・寝るぜ。」
 さっさとベッドに潜り込むシド。ヴィンセントは明かりを消し、窓の外の月を見やった。

(変わった・・・か。そうかもしれんな。)
 一人、物思いに耽る。
(でもそれはおそらく・・・シド、あんたのおかげだろうな。)
 雲がかかったのか、月光が翳る。
(あんたの魂は光輝いている・・・その光に、惹かれたからかもしれん・・・)
 思わず小さなくしゃみがでる。そして、シドに軽く口づけた。
「!」
 シドが、ヴィンセントの身体を、ベッドに引きずり込む。
「・・・身体、冷えちまってるじゃねぇか。」
 そして、枕元の瓶の中身を口に含み、口移しでヴィンセントに飲ませる。いきなり火酒を流し込まれ、ヴィンセントはむせた。
「おい、シド・・・」
「・・・さっさと寝ないからだぞ。」
 そのまま、ヴィンセントの冷えた身体を抱きしめる。シドの温もりがしみてきて心地よい。
「・・・あんたの腕の中にいると・・・安心できる・・・」
 シドの腕に力がこもる。そして、ヴィンセントに口づける。
「こういうこと、されてもか?」
「・・・ああ。・・あんただから、かもな・・・」
 シドの手が、ヴィンセントの身体をまさぐる。
「これでも、か?」
 ヴィンセントは答えるかわりに、シドに口づけ、舌を絡める。シドの穏やかな愛撫に、ヴィンセントはすぐに甘い吐息を漏らした。酒が回ってきたのか、体が熱い。
「お、おい!」
 ヴィンセントがシドの腰に顔を埋める。その、舌技の妙にあっけなく果てそうになる。そっとヴィンセントの顔を離し、唇を重ね、ヴィンセント自身を愛撫する。
「ぅ・・・」
 声を上げまいとして、唇をかみしめる。それでも、シドのものが入ってきたときに、押さえきれない声が上がる。そして、静かに絶頂へと登り詰める。
 2人は互いの温もりを確かめあうかのように抱き合い、眠りについた。

 いつしか、雪が降り始めていた。

[小説リユニオン「改」トップへ]