おまけ(7)
<ヴィン主任おしおき編>


投稿者 あぐり 日時 1997 年 9 月 11 日 01:28:18:

 ここから先は未知の領域・・・です。
 レノは攻めじゃなきゃやだ!という人。
 ヴィンがシド以外の人間と×××なんてやだ!という人。
 今すぐここでお引き返しください。今ならまだ間に合います・・・。
 ということで、シドを××されたヴィンの、部下達へのおしおき編です。




 ニンジャ軍団の邪悪なたくらみを潰したタークス・・・であったが、ルードの顔は、なにゆえか冴えないのであった。
「やっぱり・・・」
「ん?」
「やっぱり飛空艇のオヤジをやりこましたのは、ちょっと・・・」
 ルードは顔にタテ線を入れながら、ぽつんと呟いた。
 場所はいつものバーである(ここしかないのか)。
「気にするなよ、と。バレやしないんだから・・・と」
 レノはあくまで楽観的であった。バレたらバレたで仕様はある、と思っているのである。
「・・・」
 ルードは考え込んでいた。
 前任のツォン同様、ルードは、新しいボスであるヴィンセントを愛し、欲情するのと同じくらい畏れていた。シドに何かあった場合、ヴィンセントがどれだけ怒るかは身をもって体験ずみである。
 殴られるくらいなら我慢する・・・と言うか、むしろ大歓迎なのだが、もう二度と口きいてもらえなくなるかも・・・と思うと、ルードの胸は乱れるのであった。
 その時、レノの携帯がピーと鳴った。
「・・・はい、こちらレノ、と」
『レノか。ヴィンセントだが・・・』
 レノは内心ぎくっとしたのだが、ルードの手前、わざと平静を装って・・・、
『夜分すまんが、急ぎの用事だ。本部にいるから来てくれないか』
「オーケー、と・・・ルードはどうするのかな、と」
『ルードは後でいい。とにかく急いで来い』
 やけにたかびーなヴィンセントであった。
 レノは携帯をしまいこみながら、
「ボスから呼び出しだぞ、と。ちょっくら行ってくる」
「・・・バレたんじゃあるまいな?」
「さあね、と・・・その時はその時だぞ、と」


 神羅ビルの某階、タークス本部・・・。
 ヴィンセントは部屋の明かりもつけず、窓際にたたずんで夜景を眺めていた。
 そのきゃしゃな後ろ姿が、なぜかレノには大きく見える。
 長いつややかな黒髪をしばるリボンも、ふつうの人間なら「可愛い☆」で済みそうだが、レノには息苦しくなるほど魅力的で男っぽく見えるのである。
 こんなことは、前任のツォン以来のことだ・・・。
 ヴィンセントはゆっくりと振り返った。
「来たか・・・レノ」
「急ぎの用事って何なのかな、と」
 ヴィンセントはゆっくりと手を上げ、髪をかき上げた。
「それは、これだ」
 ボワン!
 突然投げつけられたものに、レノはよけるすべもなく咳込んだ。
「こ、これは・・・興奮剤?!」
 ヴィンセントは平然とした足取りでレノに近づいた。リボンを装備していれば、眠り、毒、麻痺、混乱、カエル、ミニマム・・・すべてのステータス異常から身を守ることができるのだ。
 だが、不意をつかれたレノはどうしようもなかった。


「は・・・う」
 へたり込みながらもレノは、不敵な笑みを浮かべる努力を忘れなかった。
「な、何のつもりなのかな、リーダー・・・と」
「とぼけるな、レノ」
 ヴィンセントは、レノの前にかがみこんだ。
「私のシドに、同じことをしただろう」
「なっ、何の話だか・・・」
「ネタは上がってるんだ」
「・・・」
「・・・いけない子だな、レノ」
 ヴィンセントは、息の荒くなりはじめたレノの頬に手をやった。
「お前は実に有能な部下だが、懲りるということを知らないので困る」
「う・・・」
「お前のような恥知らずには、シドの苦しみの百万分の一も味わうことはできないだろうが・・・。それでも、罪はつぐなってもらうぞ」
 レノは首を振った。
 確かにレノはかなり乱れた人間ではあった。女でも男でもオーケーだし、相手が男の場合、受けることも攻めることも、何とも思わずやってのけた。
 だが、それには一つだけ原則がある。受けだろうと攻めだろうと、男だろうと女だろうと・・・、主導権は自分が握り、相手を翻弄するということである。
「はあ、はあ、はあ・・・。そ、それで俺をどうする気なのかな・・・と」
「シドの味わった屈辱を、少しでも体験してもらおう」
 ヴィンセントの目がギラリと燃えた。
「うっ・・・うわっあああ!」
 いきなり制服の裾から手を突っ込まれ、もう片方の手をズボンの前にやられ、レノは声を荒げた。
「ま、待っ・・・」
「お前は待ったのか。助けを求めるシドの声を、少しでも耳に入れたのか」
 続いて乱暴にレノの制服をはぎとりながら、冷たい声でヴィンセントは言った。
「うっ・・・、ち、違うぞ、と・・・あのおとっつぁんは別に助けなんざは・・・」
「それは、シドは求めなかったろう。彼はそういう男だ」
「あう!」
「お前などとは違う」
 レノの裸身があらわになった。
 ヴィンセントも細身だが、レノはさらに細い。感じやすそうなうすい皮膚が、薄暗い中、外のネオンサインに照らされた。
「あ・・・」
「ボスとして、お前に教えてやる。人間の尊厳というものがどういうものか、誇りというものがどういうものだか」
「いやぁっああっ!・・・」
 レノは、ついに叫んでいた。
「・・・私も忘れていたことだ。だが、シドのおかげで、それを取り戻すことができた」
「はうあっ!」
「私の下で今後も働く気なら・・・そのことだけは胸に刻み込んでおけ」
「わ、わかったぞ、と」
 レノは必死に体勢を立て直しながら、
「言う通りにする。だ、だから優しくしてくれよ、と」
 ヴィンセントの目が異様に燃えたように見えた。
「・・・くえぬ男だ、レノ・・・」
 レノは恐怖に・・・それは恐怖であった・・・目を見開いた。
 目の前で、ヴィンセントが変化していく・・・。
 きゃしゃな身体が、雲つくような巨大な怪物へと・・・。
「う・・・うわああああ!」


「あ・・・っはあ」
 恐ろしいモンスターの身体に組み敷かれ、貫かれながら・・・レノは何とか逃れようとした。
「や、やめ・・・もう、やめてくれ、と・・・くはっあああ!」
 お前はやめたのか、と怪物が咆哮する。
 シドが哀願した時、お前はそのとおりにしたのか?・・・
「う・・・」
 レノはついにすすり泣いた。
「あああっ・・・もっと・・・もっとおおお!」
 月の光とネオンサインが、糸のように細いその無残なからだを照らし出している・・・。


 夜明け前・・・。
 薬が切れて、ぐったりとなり、すでに感じる能力をすべて失ったボロボロのレノのからだから、いつの間にかもとの姿に戻ったヴィンセントは離れた。
 レノは身体をひくひくさせながら、あられもない姿でまだ身悶えている。
 ヴィンセントは、その裸身に、タークスのスーツをぱさりと掛けた。
「まだだ、ヴィンセント・・・」
 ヴィンセントはじっとレノを見下ろしながら、自分で自分に言い聞かせる。
「次はルードの番だ・・・」


 夢も見ずぐっすりと眠ったシドは、昼近くなってから、ようやっと長い眠りからさめた。
「あーあ・・・っと」
 気分は爽快だった。やはり、時間の経過がシドの心から痛手を取り除いたようである。
 別にあんなこと、そんな気にすることじゃない、とシドは思った。別に自分は嫁入り前の若い娘っ子ってわけじゃなし・・・。
 興奮剤を吸っていて、しかもあれだけのことをされたら、たとえどんな奴だって感じてしまうに決まっている。自分がめちゃめちゃに乱れたからと言って、別に自分のせいではないはずだ。
「・・・?!」
 身を起こして、シドは仰天した。
 いつの間にか同じベッドに、ヴィンセントが横になっている。上掛け毛布の上に、タークスの制服のまま・・・。
「ヴィン・・・」
 声をかけて起こそうとして、シドは思いとどまった。
 ヴィンセントは死んだように眠りこけている。その表情は、疲れ果ててはいたが、安らかであった。
「・・・」
 シドは何となく、その寝顔に感謝した。




 はあ、はあ・・・。シリーズ最大の鬼畜もの、これにて終了・・・。
 次はもすこし幸せなお話がいいなあ・・・。でもシド、泣かせ足りないような気もする(まだ足りないのかい!)
 こんなお話でも・・・ほんとに読んでくれた方々、そして会長さんに、感謝感激のチュッ☆


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