ミッドガル・ヒーローズ(6) |
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秋の気配ですね。・・・今ごろ水着買ってもーた「あ」・・・バカかお前は。
明日からフィットネスクラブへ通います。わたし、強くならなくちゃ・・・。
ついでに言うと、このお話のヴィンちゃん・・・タークス制服着てるんです。髪の毛は(くすくす)リボンで結んでるの。
「シド」
よろめきながら部屋から出ようとしたシドを 、ヴィンセントは呼び止めた。
「・・・あ?」
ヴィンセントは、シドのみぞおちにパンチをたたき込んだ。
「ぐっ・・・」
崩れ落ちるシドをヴィンセントは抱きしめた。
「・・・すまない、だがここから先は私の仕事だ・・・。私がまんまとウータイにおびき出されたせいで、ユフィは」
ヴィンセントは、シドのからだをユフィのベッドの上にそっと横たえた。
「休んでいてくれ・・・あんたが悪夢を見ぬように祈るよ・・・」
レノとルードが部屋を出ていった。ヴィンセントはこの世で一番大切なひとにくちづけると、部下たちの後を追った。
「お前ら、あたしに何する気だあ!」
さっきまでぽろぽろ泣いていたとは思えない。ユフィは元気元気であった。
「・・・わかったゾ、アタシがあんまり可愛いから、誘拐してアダルトビデオでも作る気だろ!えっ、そうなんだろ」
「ユフィ・・・」
イリーナはまさにT0Tの顔をしていた。
二人は今や、四面楚歌・・・。半裸で後ろ手に縛られて、大勢の男たちに、どこやらともわからない倉庫に連れ込まれているというのに、何でこの子はこんなに元気なのか。
さっきまで自分の腕の中でべそかいてた子と同一人物とは思えない。
それにしても、ああ。
(・・・あたしたち、もしかしてここでこいつらにれいぷされちゃうのかしら・・・ああ、ドキドキ。イヤだわイヤだわ、そんなの絶対、イヤ。・・・タークス入りたての頃、社長室に連れ込まれてルーファウスさんに××されちゃった時も、あとで一人で泣いてたら、ツォンさんが慰めてくれたんだったわ・・・)
イリーナはふるふると頭を振った。
(ああん、ツォンさ〜ん・・・、あたし、貴方にだったら何されても許したのに・・・一回も抱いてくれないで、貴方は・・・)
「察しがいいな、娘・・・」
ニンジャの一人が詰め寄った。
「ここでお前を辱めて、そのありさまをビデオに撮ってからお前の父に送りつける。なかなか楽しそうではないか」
「へん、や、やれるもんならやってみろ」
ユフィの声が少々ひるんだ。
「助けが来ると思っているなら無駄だ。タークスはみんなウータイへおびき寄せられている・・・」
その時、である。
バリアス7が壁を突き破って・・・ではなかった。
「・・・そうかな。生憎ともう戻っているぞ」
テレビのヒーローものなら、ここで主題歌が入ること間違いなし!というタイミングで、ヴィンセントの声が振ってきた。
「な、なんだと!」
ヴィンセント、レノ、ルード・・・新生タークス三人衆が立っていた。
ユフィの態度が大きかったわけだ。彼女はヴィンセントから、小型の電波発信機を預けられて、それを身につけていたのである。万一敵の手がのびたとしても、ヴィンセントはすぐに駆けつけられる段取りになっていたのだ。
「・・・てことは、俺一人だけやられ損・・・か」
ニンジャ軍団を一網打尽して警察に引き渡した翌日のことだ。
シドは、入院するほどではないが、身体がきついので2、3日は安静にするように医者に言われていた。
シドはうるさがったが、ヴィンセントはつききりで看病していた。まさかとは思うが、自殺なんかされたら大変だと、それが心配だった。
ヴィンセントはまだ知らない。ウータイエリアでシドをはずかしめたのはコルネオではなく、実は自分の部下たちだということを・・・。シドもまた、口が裂けてもそのことは言うまいと決意していた。
幾ら興奮剤を使われていたとは言え、あの時のすさまじいばかりの狂態は・・・。
「つらいだろうが、シド、過ぎたことだから・・・」
ヴィンセントはシドの目をのぞき込みながらささやいた。
「・・・」
シドは目をそらした。
ヴィンセントに合わせる顔がない・・・。あの二人組にやられて、自分は、ヴィンセントにさえ見せたことがない燃え方を、あられもない狂態をさらしてしまった。
シドの目に、また涙が浮かんだ。
「シド」
よほどつらい目にあったのだろう、としかヴィンセントは思わなかった。
「泣くな、シド・・・あんたが泣くなんて、どうしたらいいか分からなくなる」
おろおろとシドを慰めようとするヴィンセントであった。
「泣くなら・・・私の胸の中で泣いてほしい」
「・・・違う、違うんだ、ヴィンセント」
シドは言いかけて言葉をのみこんだ。
ふたりの目が合った。
ヴィンセントはゆっくりとシドの唇に、自分の冷たい唇を重ねた。シドは逆らわなかった。本当は自分からすがりつき、抱かれて泣きたかった。それをよしとしなかったのは、シドのプライドだ。
医者には、安静を命じられていたが・・・。
ヴィンセントはシドのパジャマの襟をそっとくつろげた。
シドの輝くような肌の上に無残に散らばった、赤いしるし・・・。そして、無数につけられた男の歯形・・・。
ヴィンセントはそれらを清めるように唇を、舌を這わせた。シドは喉をのけぞらした。
「・・・?」
ふとヴィンセントの感覚が、異常を告げた。何だか・・・おかしい。
歯形は二種類あった。ふつうの人間には分からないかもしれないが、ヴィンセントにはわかるのである。
では、シドを汚したのは、コルネオ一人ではなかったのか・・・?
その時ヴィンセントの脳裏に、あの時の部屋の落花狼藉のようす・・・が甦ってきた。
倒れていたコルネオ・・・シドを介抱していたレノとルード。
介抱・・・介抱?
ヴィンセントは顔を上げた。
「・・・そうなのか、シド?」
「え?」
「レノとルードにはずかしめられたのか」
「・・・!ち、違う」
「なぜ、隠す。かばっているのか、やつらを」
ヴィンセントは頬を紅潮させた。そのままシドの襟髪をつかんでねじ上げる。
シドは苦しげに顔をしかめた。
「く・・・やめろ、ヴィン・・・!」
「正直に言うんだ」
ヴィンセントは、自分が哀れになるほど理性を失っていることを自覚していた。だが、かまわない。
シドをこれ以上傷つけたくなければ、そっとしておいてやるべきだろう・・・。だが、怒りと嫉妬が抑えられなかった。彼は、今はそれほどにシドを愛し過ぎていた。
「あああっ・・・!」
「言わぬなら・・・そのからだに聞いてもいいんだぞ」
「い、言わねえ」
シドは必死にかぶりを振った。
「い、いっそ殺しやがれ!」
「・・・」
ヴィンセントははっとして手を放した。シドが苦しげに咳込む。
「・・・すまん、シド・・・ついカッとなってしまった」
「お前が悪いんじゃねえよ・・・」
罪なのは、自分のからだだ。シドはそう言いたいのをこらえた。
「おやすみ、シド」
ヴィンセントはシドの身体にそっと毛布をかけてやる。
「あんたは疲れてる・・・。ゆっくり休むがいい。目覚めた時には、いやなことはすべて忘れてしまえ」
「・・・俺はいつだってそうして来たさ」
シドは目を閉じた。
「なあ、ヴィンセント」
「ん?」
「俺が寝つくまで・・・ここにいてくれるか」
「・・・いいとも。このいのちが尽きる日まで、私はあんたのものだ・・・」
やがてシドは、安心したように深い眠りに就いた。
ヴィンセントは愛しげに接吻すると、立ち上がった。
「レノ・・・ルード。お前たちはすこし調子に乗り過ぎたようだな・・・」
ヴィンセントは拳を固めた。
次回、ヴィンセントのおしおき編・・・になるかな?
こんなんでも、読んでくだすった貴女には感謝☆