過去への回帰(1) |
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……何やら無性に鬼畜が書きたくなりました(爆)
公約(?)していたリーヴ×シド(爆)です。
茨の道を突き進む私……一体誰が付いてこれるというのか。
ちなみに前に投稿した「心の境界」とは別の設定です。
リーヴファンは見ない方がいいかも……(笑)
ではごゆるりと鑑賞して下さいませ……。
破壊され、瓦礫があちこちに散乱する室内に、シドは足を踏み入れた。
神羅ビル社長室。――かつては栄華を誇り、権力の頂点に立つ者のみが座する事を許された場所だ。
だが、プレジデント神羅も、その息子ルーファウスも今は居ない。
父はこの場でセフィロスに殺され、息子もまた、同じ場所でアルティマウェポンの攻撃に射貫かれた。
主を失い、空虚な廃墟と化した薄暗い室内で、シドは墓石のように静かに沈黙する瓦礫のオブジェを踏みしめながら、今は吹き晒しとなってしまった窓へ近寄った。
遥か眼下に、街の明かりが見えた。シスターレイ発射による魔晄炉の暴走で一時的に混乱に陥っていたが、どうやらそれも収まったらしい。
シドは街の明かりでその身をほの青く染めながら、静かに紫煙をくゆらせた。
そのまま、幾許か時が過ぎる。
シドが何本目かの煙草を吸い終える頃、背後で瓦礫を踏みしめる足音が響いた。シドはゆっくりと振り返った。
暗闇の中、姿を現した人物を認め、シドは深く煙草の煙を吐き出した。
「呼び出しといて遅刻たぁいい度胸してるじゃねぇか。ええ? ……神羅の部長さんよ」
シドの皮肉を込めた声を受け、姿を現したのは、2体の奇妙な生き物だった。
「いやぁ、えろうすんませんなぁ。街の混乱収めるのに、ちょお時間かかってもうて……」
大きなモーグリの人形が、ユーモラスに体を揺らしながら近寄って来る。その上にちょこんと乗る小さな猫のぬいぐるみが、大袈裟な身振りを加えながら奇妙な言い回しで言葉を続けた。
「せやけどもう大丈夫です。あとはもう部下に任せて来ましたよって、シドはんとお話する時間はたっぷりありまっせ」
飄げた声音で告げるケット・シーに、シドは「けっ」と呟いた。
「んなこたどうでもいいんだよ。用件ってな一体なんだ? わざわざクラウド達にゃ秘密にしたぐれぇだ。よっぽど重要な事なんだろうなぁ?」
疑惑を含んだ眼差しで、シドはその計算して作られた滑稽な風貌の人形達を見つめた。猫のぬいぐるみが人間のように器用に肩をすくめて見せる。
「シドはんも相変わらずせっかちなお人やなあ。ま、ええですわ。ほな、本題に移りまひょか」
ヒョコヒョコとモーグリ人形が近付いて来る。その上でゆられながら、ケット・シーは一枚の折り畳まれた紙を取り出した。
「これ、なんだか解りますか?」
思わせぶりな口ぶりに、シドが眉をしかめる。
「そんなの知るかよ。一々勿体付けんじゃねぇ」
シドの物言いを気にした様子も見せず、ケット・シーは元は社長の執務用であった机の上にピョコンと飛び乗った。瓦礫の散らばるその卓上に、紙を広げる。
その図面を一目見て、シドは思わず片眉を上げた。
「こいつは……ハイウインドの設計図じゃねぇか」
彼が設計にも携わっていた飛空挺の図面が、そこにあった。だが、良く見れば彼が知っているものと細部が違う。更に良く見ようと手を伸ばした彼の指先から、不意にケット・シーが図面を掠めとった。
「おいっ、何しやがる!」
「これは、シドはんが設計しはった後の――つまり今のハイウインドの設計図ですわ」
何事もなかったかのようにケット・シーが言葉を続ける。更に文句の言葉を募らせようとしたシドを機先するように、ケット・シーは続けて言葉を放った。
「今のハイウインドが色々改造されてるんはご存じですやろ? せやけど後から無理矢理くっつけたんもあって、あっちこっち無理が来とるんですわ」
「ああ? どう言うこった」
シドが苛立ちを滲ませた声で聞き返す。ケット・シーは表情の読めない笑みを張り付かせたまま、事も無げに言った。
「このまんまやと、飛んでる内にガタが来て空中分解ですわ」
「なっ……」
思わず絶句したシドを面白そうに眺めながら、ケット・シーは言葉を続けた。
「ま、せやけどシドはんやったらこの図面見て調整する事も出来ますやろ? せやからわざわざこっそり持ち出して来たって寸法ですわ」
「なんでぇ……脅かすない」
シドが安堵の息を洩らす。だが、再び図面に伸ばそうとしたシドの手を、ケット・シーはヒョイと避けた。
「……おい?」
シドの目が、訝しげにケット・シーを見返す。ケット・シーは、その無表情な笑みを浮かべたまま、不意に声のトーンを落とした。
「これをお渡しするんには、ひとつ条件がありますのや……」
気配の変わった目の前の人形に、シドは警戒の色を浮かべた。
「てめぇ……今更何企んでやがる」
「企んでなんかいませんて。ただ――」
「――過去を、思い出してもらいたいだけだ」
目の前の猫が口調を豹変させると同時に、不意に背後からも声が響いた。驚愕したシドが後ろを振り返る。
暗がりの中に、痩身の人影が佇んでいた。品のいい、落ち着いたスーツに身を包んだ男の姿が浮かび上がる。
男はゆっくりと歩を進めた。微かに差し込む街の明りが、ぼんやりと男の姿を照らし出す。
40代の男の姿が浮かび上がった。少し長めの髪を後ろへ流し、口元はきれいに整えられた髭で覆われている。知性と教養を感じさせる風貌だが、全身から漂う雰囲気に、他者に指示を与える事に馴れた、上に立つ者の重みを湛えていた。
シドは訝しげな眼差しを向けたまま、当然の疑問を口にした。
「……誰だおめぇ?」
「……都市開発部門統括者、リーヴ。……ケット・シーの、本体だ」
目の前の男と背後の猫のぬいぐるみから、ユニゾンで声が発せられた。
「リーヴ……あんたがそうかい」
シドは初めて見る目の前の男を窺いながら、警戒に身を固めた。
「生身で会うのは初めてだな、部長さんよ」
軽口を叩きながら、シドは何故か心が騒ぐのを感じていた。心が落ち着かない。理由の解らない不安が、胸の内から湧き出して来る。
シドはこの男の顔を見るたび、奇妙な息苦しさに襲われることに気付いた。
一体なんだと言うのか。今日初めて会う男に、なぜこんな不安を感じなければならないのか。
――初めて?
シドは、この男の顔にどこか見覚えがあったような気がした。だが、その途端、更に強烈な不快の念がシドを襲う。思い出したくない、いや、思い出してはいけない、そんな漠然とした不安が胸中に広がる。
そんなシドの様子をじっと見つめながら、リーヴは一歩、シドへと近寄った。
反射的に、シドは一歩引いていた。そうしてしまう己自身に困惑した表情を浮かべる。かまわず、リーヴはシドとの距離を詰めた。シドは再び後じさったが、背に机がぶつかる感触が走り、己が追い詰められた事を知った。
「なっ……なんでぇ一体……」
「あんたと私は、初対面ではない」
シドの問いかけを遮るように、リーヴは静かな声で言い放った。
「忘れたのか? あの夜の出来事を」
「ああ?」
「10年前……この部屋で行なわれた事を」
「――っ!!」
刹那、シドは鋭く息を呑んだ。その顔が驚愕に彩られる。
「てめぇ――!?」
リーヴの顔を見返す。だが次の言葉を続けるよりも早く。不意に背後で気配が動いた。
「何……!? うっ!」
いきなりシドは仰向けに引き倒された。強い力で両腕がねじ上げられる。驚愕して振り仰いだシドの目に、自分の手を押さえこむ、大きなモーグリ人形の姿が映った。
シドは、ねじ上げられた腕と背中に当たる瓦礫の痛みに顔を歪ませながら、燃える瞳でリーヴを睨み上げた。
「てめぇ……何のつもりだ!」
「言ったはずだ。過去を思い出して欲しいと」
リーヴは、机に手をつくと、仰向けに転がるシドの顔を覗きこんだ。
「思い出すんだ……10年前の、あの夜の事を……」
その言葉に、シドの顔が青ざめて行く。心の奥底に葬ったはずの忌まわしい記憶が、再び形となって、浮かび上がろうとする。
「あの夜、あんたはプレジデントに呼び出された。……そして、その体を……求められた」
「止せ!」
淡々としたリーヴの声を遮るように、シドの怒声が響く。だがそれは、普段の自信に溢れた彼とは違う、どこか悲痛な響きを滲ませた声音だった。
「あんたは、宇宙開発と宇宙飛行士の座をネタに関係を強要された。そして……あんたはその要求を呑んだ」
「うるせぇ、黙れ!!」
激しい声がリーヴに叩きつけられる。だがリーヴはそれをものともせず、シドの顎を掴み、その青い瞳を覗きこんだ。
「思い出すんだ。あの時何があったのかを。この部屋で――この机の上で、何をされたのかを」
逃げる事を許さぬように、リーヴの猫科の動物を思わせる冷たい瞳がシドを捉える。
刹那、シドの脳裏を、忌まわしい10年前の悪夢が蘇った。
とゆー訳で次回へ続く(爆)
短めですがあまり書ける暇がないので小出しにする事にしました。
次回は禁断のプレジデント×シド……(爆)
(一旦リミットブレイクして怖い物がなくなったらしい(笑))
でも何時書けるかは未定(^^;)
仕事しろ自分。自分の首締めてどーすんだか。……でも楽しい(笑)
ご意見、ご感想、苦情などがございましたら是非ともお聞かせ下さいませ。
ではまた☆
p.s.そーいやリーヴさんの年齢っていくつなんだろう……(←ぉぃ)
私が持ってる同人誌じゃ40代って意見が多かった(っても2個だけ)んで40代にしといたけど。
ちなみにリーヴさんの性格が違っちゃってる気もしないでもないかもしれないが、あまり気にせぬよう。