宝条×ナナキ(人間.Ver)もどき


投稿者 小説初投稿!宝条×ナナキ(人間バージョン)もどき(^^;) 日時 1997 年 9 月 09日 22:37:20:

まともに小説というものを書いたのは初めてなのですが、すごい暴走したものができて しまいました。
お前本当にナナキファンか?ってカンジ。

ちょ、ちょっとSMっぽいかも。(爆)
物好きな方は読んでやって下さい。



実験サンプル用のカプセルの中で、彼は目覚めた。
鉄格子のはめ込まれた窓から差し込む冴え冴えとした蒼い光が、強化ガラスを通してその体を照らしていた。
「‥…。」
ずいぶんと長い時間、月光を浴びながら眠っていたようだ。
  ―決して満月の光にその身をさらしてはいけない…―
幼い頃より何度も繰り返された母の言葉が蘇った。
頭の芯がまだぼんやりとしている。体が、だるい。
  ― 逃げなければ ―
彼はのろのろとその身を起こしかけた。
「お目覚めかね?」
かすかな靴音をひびかせて、闇から浮きあがるように白い影が現れる。
「…っ!宝条!!」
自分を、あの聖なる地からこのつめたい実験室へ連れ去った張本人。狂気の、科学者。
「クックック…。怖い顔だ。…しかし、実験は成功だったようだな。月齢に不安はあったのだが。」
「なんだって?」
「おや、気付いてないのかね?よく観察してみることだ。…自分の体をな。」
歪んだような冷たい笑みを浮かべて、宝条は傍らに置かれた大きな鏡を指さす。
「!!」
彼は、そこに信じられないものを見た。
そこに映っていたのは、いつもの自分の姿ではなく、一人の人間の少年だったのだ。
深紅の瞳を、これ以上はないというほど大きく見開き、恐怖の入り交じった驚愕の表情でこちらを見つめている。
歳の頃は、14か15くらいであろうか。
少し長めの暗紅色の髪。
ネコ科の野生動物を思わせる浅黒いしなやかな肢体。
無骨な枷で戒められたその身を覆うものはなにもなかったが、その肌にはところどころに特徴のある入れ墨が施されている。
あの模様は…。
「…う、嘘だ!」
「嘘ではないよ、レッド・サーティーン。」



「…あんた、おいらになにをした?」
なにやらわけのわからない装置の端末を体中にとりつけられ、実験台の上に鎖でつながれたまま問いかける。薬のせいか、声を出すのも相当に辛い。
「実験サンプルのくせに不遜だな、レッド・サーティーン。」
「…ナナキ、だ。」
「ここではサンプルナンバーがお前の名前だ。…フム、しかし、私はお前を改造などしておらん。…ただ、月の光のもとに放置しておいただけだ。自分の種に、そういう因子があることを知らなかったのかね?」
「……………。」
「まあいい。そんなことは問題ではないからな。…そう、問題は…、」
宝条は、ナナキの細い腕をとると、なにやら妖しげな無色の液体を注射した。
「…っ!」
「少し強い薬だが…、まあ時間もないことだし、副作用も許容範囲だろう。」
全く勝手なものだ。こんどは、どんな実験をされるというのだろう。
ナナキはぼんやりした意識のなかでそんなことを考えながら、目を閉じ、重苦しい息をはいた。
…と。
「…っっんはぁうっっ!!!」
突然、背筋に鋭い電流を流されたような感覚が彼の体に走った。
…熱い熱い熱い。血が、逆流する。肌が、泡立つ。
「…な…なに…なん…で?」
はじめての感覚だった。
思わず身もだえする。鎖が、チャラチャラと硬質な音をたてた。
宝条は、そんなナナキを感情の伺えない観察者の目でじっと見つめている。
毛皮に覆われていない、素の肌にその視線が何故か辛くて、ナナキはきつく目を閉じ、激しく頭を振った。汗が、飛び散る。艶やかな紅の髪が乱れて額にはりつく。
「あ…あぁ…‥‥。」
息があがる。視界が薄くぼやけ、口のなかがひどく乾いて舌がザラつく。
「流石に、よく効くな。」
「これも、実験なのか?こ‥…んなことして、な…ンになるっていうんだよっ!」
「古代種の娘の花婿が必要なんでね…。手持ちのサンプルのなかで、ヒトと交配が可能そうなのはお前だけなんだよ。調査のために、精液を採取させてもらう。」
平然ととんでもないことをいう科学者に、ナナキは目の前が暗くなるほどの怒りを覚えた。
こいつには、良心というものがないのだろうか。
「なんだよそれっっ!おいらや、そのコに悪いとか失礼とか思わないのっっ!?」
「…うるさい。」
宝条が側の装置のレバーをひく。
「ひあぁぁうっっ!!」
ナナキの体に電流が走る。敏感になっている体は、そんな刺激にさえ反応して、陸にあげられた魚のようにビクビクと跳ね上がってしまう。
あまりの屈辱感に、彼は思わず叫んだ。罵倒した。
「こんなことするなんて、…あんたは、誰…かを好きになったことが‥ないんだ。絶対、そうだっっ…。」

刹那。

もの凄い勢いで頬を張られ、ナナキは愕然とした。
短い鎖で首をつながれていなければ、おそらく数メートルはふっとばされたに違いない。
「な…ぜ‥?…っぐあぁ!!!」
考える暇も与えられずいきなり首をきつく絞められる。息がかかるほど間近にせまった 宝条の顔は、まるでなにかに憑かれたようだ。目の焦点があっていない。
しかし、なぜだろうか。ナナキには、一瞬、その目がひどく哀しそうに見えたのだ。
「…………。」
ナナキは、静かに目を閉じた。
奇妙におちついた気分だった。
「…いいよ。殺しても。」
宝条の手が止まる。
「おいらは多分、今、なにかあんたの大切なものを傷つけた。それに、あんたがさっき言ったような目的に使われる気もない。それぐらいなら…死を選ぶ。」
ゆっくりと目を開いて宝条を見つめる。宝条が、見つめ返す。
長い、長い沈黙に彩られた、息詰まるような、視線の交錯だった。

「うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」




先にそれをやぶったのは宝条だった。
ナナキの首に再び力が加わる。
哀れな科学者の、凄まじい慟哭の声がだんだん遠くなるのを感じながら、彼が意識を手放す瞬間、したたり落ちた冷たい滴が、その頬を濡らした。



かすかに、ミツバチの羽音のような機械音が聞こえる。
ナナキは、うっすらと目を開いた。…眩しい。
日は既に高く昇っているらしい。
昨夜目覚めた時と同じように、彼は実験サンプル用のカプセルの中にいた。

(おいらは…死んだんじゃなかったっけ?それに…。)
鏡のある方に視線を向けてみる。
そこに映っているのは、いつもの、赤い獣の姿だった。
(夢だったのだろうか。)
否。
頬に残るかすかな痛みと首の違和感が昨夜のできごとが現実であったことを証明していた。
しかし、なぜ宝条は自分を殺さなかったのだろうか。
混乱した頭を整理しようと、ナナキが頭を軽く振ったとき、けたたましいベルの音が鳴り響いた。


不法侵入者をつげる、警報だった。

<むりやり終。>



こんで、クラウドたちと出会う、みたいにつなげたつもりです。
…ゲーム中で宝条の研究室にいくのって、夜じゃなかったですよね?
(もし夜だったら大笑い。)
大体、今考えると興奮剤も使わずにナナキをエアリスにけしかけた宝条の行為、本気で交配させるつもりだったとは思えませぬ。
(使ってたにしても効いてなかったですもんね。
普通、事前に適量を確かめますよ。普通の生物学者なら。)

それにしても、こんなもんを最後までよんで下さったあなたには感謝感激です。どうも有り難うございましたあ!

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