ミッドガルの襲撃(3) |
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こんにちは。頭はすでにフランスへ飛んでいる「あ」です。
ええと。
いろいろと先の展開を考えていましたが・・・何だかいずれ鬼畜が始まりそうな雲行きです。ああっシド。(マーフィの法則・・・やの字は、真面目にやろうとすればするほどキチクになる)
止めるんなら今のうち、かも知れません。
走れヴィン、愛する人を鬼畜の手から守るのだ。・・・ってねー、実は一番キチクなのがヴィンかもしれない・・・。
だって、その趣味なかったシドを、完璧引きずり込んでしまったんですものね。
とりあえず今の私は、美中年シドを、泣かせてみたいという妄想でいっぱいです。何たってうちシドはヒュー・グラントがイメージキャラクターですから、美形も美形なんですわ。ちょっと崩れたような、ちょっと頼りなげなところがたまらないの☆
少年シドじゃ、幾ら泣かせてもものたりない。こんなあたしに誰がした。救急車おもてに呼んで、さあ書き始めよう。
しかし、予定は未定。とりあえず二人のナイトは、ユフィちゃんを魔の手から守ろうとしています・・・。
ダッシュだ森島、フランスへ。(なんのこっちゃ。でも分かる人には分かるよネー)
「・・・うそー、そうなんだー」
「そうだよう、ヴィンセントったらサ、今でこそあんなコワモテしてるけどさー、昔はもっと暗くてさあ」
何やら不穏な女どもの会話・・・。ヴィンセントはせき払いしながら部屋に入って行った。
「・・・ユフィ、気分は?」
「うっす、ヴィンセント」
「きゃあきゃあヴィンセントさん☆」
「ユフィ・・・ちょっと」
ヴィンセントはユフィを手招きした。玉ノレンのかかったキッチンにユフィを呼び出して、
「・・・あの、ユフィ、言いにくいのだが」
「うん、なあに」
「いちおうイリーナは、昔はともかく今は私の部下なわけだし、あんまり部下の前で私の尊厳というか威厳が下がるような話題は・・・」
「つつしんでほしいってわけ」
「・・・ユフィもそろそろ一人前のレディに近い年ごろだろう。私はユフィを信じているよ・・・」
実は冷や汗を三斗くらい流しながら、平静な顔で説教したヴィンセントであった。
こういうところを見ると、やはりユフィはまだ子どもだな、という気がひしひしとしてしまう。シドは、一見傍若無人に言いたいことを言ってふるまっているようだが、実はそこが大人で、ぎりぎりのところで他人の尊厳を傷つけるようなことは決して言わない。
まあ、シドも若気の至りを乗り越えてその境地まで来たのであろうから、年でいえばやっとシドの半分しか生きていないユフィを同列に論ずるのは間違ってるのだろうが・・・。
「ご苦労だったなイリーナ。なにか異常は?」
「はい、とくになかったですが・・・なにか分かりました?」
「別派のニンジャのしわざだあ?」
その夜。“かめ道楽”で夕食を一緒に取りながら、シドは顔をしかめた。
「そうなんだ。煙玉の残留成分を調べたところ、世に出回っているウータイ産の煙玉とわずかに違うらしいことが判明した」
ヴィンセントは、大皿から焼きウドンを箸で取り分けながら、真面目な顔で報告した。
「・・・ほら、野菜もちゃんと食えよ」
「るせえ、シエラみてえなコト言ってんじゃねえよ」
「あんたのカンが正しかったかもしれんな。・・・とにかく、いま、特定を急いでる。と同時に、ウータイのほうにも部下を派遣して調査させているところだ」
「ぶか・・・って、あいつらか」
ヴィンセントは頷いた。
「ああ見えて、仕事はきっちりやってくれる連中だ。すぐに探り出してくれるだろう・・・誰がユフィを恨んでるか、または、ユフィの親父さんを恨んでいるか・・・」
「ユフィをねえ・・・。ユフィを恨んでつけまわすような奴がいるたあ考えにくいがなぁ・・・」
「わからんぞ、シド。ユフィはああいう娘だから・・・。私たちの知らないところで、またマテリアを盗んでいるかもしれないし・・・」
「確かに、なあ」
シドは、ユフィにマテリア全部持って行かれて、ダチャオ像で大苦戦させられたことを思い出しながら頷いた。
「とにかく、早いとこ解決してくんねえと困るぜ。あんなんでも、いねえと結構困るからよ」(注・ユフィはシドの秘書をしているらしい)
「わかってる。まあ、もうじきだよ。・・・ところで」
ヴィンセントはガーネットの瞳でシドをじっと見つめた。
「今夜は、泊まっていくんだろう?」
シドは、「ばたっ」とこけてしまった・・・。
なんぼなんでも、毎晩毎晩ヴィンセントの激しい攻めを受けていては身がもたない。シドは「明日早いから」と言って、大して飲みもしないうちに引き上げることにした。
「ふう・・・」
部屋に一人きりになると、シドは水を飲み、服を着替えもせずにベッドに身を投げ出した。
「ヴィンセント・・・」
今でも信じられない。あの美しいが陰気だったヴィンセント。彼が自分をこれほどまでに愛してくれるとは・・・。
不本意ながら始まってしまった深い関係であった。シドはもともとノーマルで、男の趣味は皆無だったはずである。それが今や、ヴィンセントの声を聞くだけで昂ってしまうようになってしまった・・・。
今では、心ならずもヴィンセントを求めてしまう。からだが、そうなっている。
女だったら、あの声を聞き、あのきれいな顔を見つめているだけで「濡れて」しまうのだろう・・・。
「てやんでえ・・・俺は」
それでも、心でだけは抵抗したいシドだった。自分が誰かひとりにこれほどまでに縛りつけられるなんて、考えたくなかった。
シエラを想う気持ちとは違う・・・。あれはかなり冷静なもので、頭で考えてそれから想っている、という、確かだが静かな恋である。
ヴィンセントについては、炎に飲み込まれ、激しい流れに押しながされるようなものだ。理性や何や、すべてを越えたところでシドを焼き尽くし、燃え上がらせてしまう。
「ああ・・・」
シドは天井を見上げながらため息をついた。
ドアのほうで、カタッと音がしたのはそのときだ。
「?」
シドは身を起こした。いつもなら何でもないもの音くらい見逃すところだが、ユフィのことがある。
「誰かいるのか?・・・!」
シドは息をのんだ。
いつの間にか、4人もの不審人物が、わらわらと部屋に押し込んで来て、たちまちシドを取り囲んでしまったのだ。
「て、てめえら、なにもんだ!」
黒ずくめの装束、黒覆面。それはまさに・・・
「ニ、ニンジャ!?」
「・・・大声を出すな」
ひとりのニンジャが、シドの頬に、クナイのとがった切っ先を突きつけた。
「お前らが、けさユフィの部屋に押し込もうとした・・・」
「そう。よくも今朝は邪魔してくれたな」
「な、なにもんだ・・・」
「ウータイ忍びに怨恨を持つ者、とでも言っておく」
「・・・」
「ウータイの頭の娘を誘拐して、ゴドーを苦しめてやろうと想っていたのだが・・・」
「けっ、せけぇニンジャもいたもんだぜ」
「黙れ」
そんなときでも悪態をつくのを忘れないシドの頬に、ニンジャは切っ先を押し当てた。冷たい痛みが走り、頬にぬるっとした感覚が伝わった。
「つっ・・・」
シドは顔をしかめた。
他のニンジャたちがわらわらと寄って、たちまちシドを後ろ手に縛り上げてしまった。
リーダーらしいニンジャがクナイをしまいこみながら、
「おとなしくしていれば、殺しはせん」
「てめえら、何する気だ?!」
「俺たちはどうもしない。ただ・・・」
「ただ?!」
「・・・俺たちの新しいスポンサーは、女も好きだが男も好きでな。お前のそのからだはきっとお気に召すだろう・・・」
・・・窓の下にじっと立って、シドの部屋をじっと見守っていたヴィンセントは、部屋の灯りがふっと消えたのを確認して、そっときびすを返した。・・・シドは寝たらしい。それなら私も部屋に戻って、シドの夢でも見よう・・・。
好きになると、相手をとことん見つめ続け、追いつめて自分のものにしないと気のすまないヴィンセントであった。かつてルクレツィアには、そんな陰気さや執念深さを忌まれ、振られてしまったのだが、どうにも性格は直らない。
そのとき、携帯が鳴った。
「・・・もしもし」
『リーダー』
ウータイへ派遣したレノであった。
「レノ、何か分かったか?」
『面白いことが、いろいろとね、と』
さすがに、ふざけているようだがタークスのエースだけはある。仕事は正確で早い。
『ニンジャにもいろんな流派があるのはご存じかな、と』
「煙玉の分析の結果からすると、別派のニンジャの仕業の可能性があるとは聞いていたが・・・」
『なら話は早いぞ、と・・・。ウータイ・ニンジャのライバルで、隣の山に住んでるウーロン・ニンジャってのがいると思ってほしいな、と』
レノの説明は簡潔かつ明瞭であった。
ウータイは十数年前の戦争でミッドガルに敗れて以来、観光地としてその命脈をほそぼそと永らえてきた。ユフィがそんな故郷のありさまに発奮して、何とか強いウータイを再興しようとクラウドたちに接触して来たいきさつは、諸兄もご存じのはずである。
ところが同じ戦いの時、最後まで降伏をよしとせず、ニンジャの誇りを守り続けようと戦っていたニンジャ立ちがいた。それが別家というか分家というか、別流派のウーロン・ニンジャだというのだ。
彼らは、さっさと降伏してしまったウータイ・ニンジャとは袂を分かち、以後は山の中にこもって、ゲリラとして活動していた。ところがいつしか彼らもその目的を見失い、食い詰めて、今や半分山賊に近いものに身を落としているという。
『ところが奴さんたち、最近になって新しいスポンサーをめっけたらしいんだぞ、と』
「スポンサー・・・誰だか分かったのか」
『俺たちには簡単すぎる仕事だな、と・・・』
「誰なんだ」
『ドン・コルネオって名前、聞き覚えがあるのかなっ、と』
コルネオ・・・あの好色な元マフィアのボスか。
ヴィンセントは、いやな胸騒ぎがして、アパートを見上げた。窓のほとんどは真っ暗になり、しんと静まり返っている。それでもヴィンセントの超人的な感覚は、ちりちりと何かいやなものを感じていた。
彼は音もなく、だが人間離れしたスピードでダッシュしていた。エレベーターを使い、最上階へ・・・。
「・・・ユフィ、ユフィ、いるのか」
夕方も顔を出したばかりだったが、彼は、ユフィの部屋のドアを叩かずにいられなかった。
しばらく中でごそごそしていたかと思うと、ねぼけまなこのイリーナが、パジャマ姿で顔を出した。
「ん、ヴィンセントさん・・・どうかなさったんですかあ」
「イリーナ、ユフィは無事か?」
「あ、はい。もう寝てますけど・・・ふわわわわ」
イリーナは長いあくびをした。ヴィンセントは息をついて、
「そうか・・・ならばいいんだが。私かシド以外の人間が来ても、ここを開けるなよ」
「はあい、わかってまあす」
「シド・・・シド?」
不意に、ぞっとするような冷たいものが背筋を走り抜けた。
「・・・シド!」
そのまま、彼はエレベーターも呼ばず、非常階段で・・・シドの階まで駆け抜けた。
フロアはしんと静まり返っている。その静けさに、なぜかヴィンセントはいやなものを感じずにいられない。
シドの部屋は・・・カギが開いていた。
「シド、いるのか」
カチャリとドアを開けて中に入る。
中はまっくらで・・・しんとしていた。
シドの姿はどこにもない。
ヴィンセントの、闇でも見える目は、シドの寝室の扉に貼られた一枚の紙をのがさず捕らえていた。
『ウータイで待つ』
血のような赤インクで書かれた置き手紙・・・。
ヴィンセントの目も、インク以上に赤く、らんらんと燃えていた。
次回、禁断のコルネオ×シド編?!・・・ああ、書きたくないぞ、と・・・。
こんなものでも、読んでくださった貴女には感謝☆