ミッドガルの
サスペンスドラマ(2)


投稿者 あぐり 日時 1997 年 9 月 08 日 15:07:58:

 20日にオフ会があるそうですね。しかも場所は池袋。めちゃ近場なり。
 もしかしたら、行けるかも知れません・・・(まだわからないけど。予定入る可能性有)。あたしなんかが参加してもいいのでしょうか・・・?
 これだけ掲示板で大きな顔している以上、一度くらいはご挨拶しとかないと、何だか申し訳ない。もちろん、皆さんにお目にかかりたい!というのが一番の動機ですけどね。
 



 明け方近いころ、シドは、ヴィンセントのアパートをそっと出ていった。すっかり忘れていたが、自分はオフではないのだ。
(はあ、これから仕事・・・か)
 シドは時計を見た。・・・今から自分の部屋(いい忘れたが同じ棟である)に帰って、あと2時間くらいは横になれるだろうか。幾ら目下の仕事がつまらないデスクワークばかりだと言っても、プロである以上、ふやけた顔で出勤するわけには行かない。部下たちへのシメシがつかぬ。
 ヴィンセントは安眠していることだろう。彼は仕事明けでオフなのである。
 それにしても、ヴィンセントは悪夢をほとんど見なくなったそうだ。
 ヴィンセントは「シドのおかげだよ」と言うのだが、シドの見るところ、仕事がうまく行っているのがやはり大きいようにも思う。やはり男の生きがいは仕事、だろうから。
 宝条なんかは仕事至上で、カスな人生を終えてしまったみたいだが・・・。まああれはあれで幸せなのだろう。
 外はまだ真っ暗で、わずかに空が白みかけている程度である。すぐ上の階なので、シドはエレベーターを使わず、非常階段を昇ることにした。
(・・・あれ?)
 階段には、いかにも挙動不審げな男がいて、シドと出くわすと、あわててコートの襟を立てて顔を隠すようにし、たったかと階段を昇って行った。黒いコートに黒い帽子・・・いかにも怪しい。
 シドは、男のあとをつけることにした。最上階とそのひとつ下の階は独身女性ばかりが住んでいる階で(ユフィもそこに寝泊まりしている)、もしかしたら悪さしにやってきた変質者のたぐいではないか・・・と思ったからだ。
 ミッドガルはこういう事件が相変わらず多くて、神羅新社長であり実質的な市長でもあるリーブも、相当頭を痛めているのだ。かと言って、たかが変質者に軍隊を出動するわけにもいかない。これは警察の仕事である。
 バレットを呼んで、そのあたりの仕事をまかせたいらしいのだが、はっきりとはよく分からないとヴィンセントも言っていた。・・・たしかにバレットが治安維持の仕事・・・というのは、こわもてが効いて似合うかもしれないが・・・。
 それはさておき。
 気取られないようにそっと後をつけると、男は、息をきらせるようすもなく、最上階の一歩手前の階で階段から出ていった。
 シドははっとした。ユフィのいる階なのだ。
 ほとんど眠っていないシドにはきつい追跡だったが、シドは歩みを早めた。
 例の男は、足音を忍ばせてフロアを歩いていたが・・・ユフィの部屋の前まで来ると立ち止まり、表札を確認した。そのままドアノブに手をかける・・・。
「・・・そこまでにしとけ」
 男ははっとした。シドが、いつの間にか背後に立っていた。
「この部屋に、何の用だ」
「・・・」
「・・・まあいいや、言い訳は後でゆっくり、警察でするこったな・・・と、うわっ!」
 男は振り返りざま、床に何かをたたきつけた。煙り玉だ。
 ボン!という音がして、フロアはたちまち煙がもうもうと立ちこめた。
「ごほっ、ごほっ・・・テメエ、何者だ!」
 その時、ドアの内側からがちゃがちゃ音がした。ユフィが起きて来て、カギを開けようとしたらしい。
 シドは咳込みながらも、
「ユフィ、き、聞こえるか」
「あ、艇長!・・・イヤ〜ん、夜這い?」
「あほ、もう明け方だろ!・・・て、そんなこたあどうでもいいや」
「今なんかすごい音したね。爆発?待ってよ、今開けるから」
「開けるな!」
 シドはドアノブを押さえた。
「そのままカギ開けずに警察を呼ぶんだ」
「警察?なんで?」
「おかしな奴がここをうろついてたんだ。いいか、とにかく開けるんじゃねえぞ、部屋でじっとしてろ!」
 シドは煙がおさまりかけたのを待って、エレベーターホールに駆け込んだ。
「・・・ちっ」
 エレベーターがどんどん下がっていく・・・。シドはエレベーターの厚いとびらを、いまいましげに思いっきり殴りつけた。


「・・・今夜はこれでおしまいみたいですね」
 タークス本部では・・・3人がまだ頭を3つ寄せあって、よからぬたくらみ(?)にふけっていた。
 盗聴器のマイクは沈黙している。彼らのボスは眠ってしまったらしい。
「あ〜あ・・・なんか、がっかりしちゃったような、うふふなような、変なきもち」
「リーダー・・・意外とテクニシャンなのかもしれん・・・な。綺麗なお面して・・・」
 ルードは言い、ちょっと口をもごもごさせた。未遂に終わったヴィンセントとの一夜を思い返しているのであろうか。
 なにを妄想しているのやら・・・。
「イリーナ、別につらかったら参加しなくてもいいんだぞ、と」
 さすがに可哀相になったのか、レノが珍しくやさしい言葉をかけた。が、イリーナはふるふるとおかっぱ頭を振って、
「いいんです。これであたしも一人前のタークス・・・ですね、きゃっ☆」
「・・・」
 レノは盗聴器のマイクを切った。
「まあこれはもうしばらく電池が残ってるから・・・、たぶんまた今夜あたり、おっ始めるだろう、と」
「ストーカーみたいですね、あたしたち。うふふふ」
「みたい・・・じゃなくてりっぱなストーカーだぞ、と・・・」
「思い出すな、レノ・・・ツォンさんの部屋もこうやって盗聴したことを」
 イリーナは目を丸くした。
「えっ、えっ、そ、そんなことしてたんですか、先輩たちは」
「・・・オマエも今やってたじゃないか、と」
「そっそりゃそうだけど。・・・で、どうだったんですか?!」
 身を乗り出してしまうイリーナに、レノは肩をすくめて、
「それが失敗したんだな、と。ツォンさんのお相手は、ツォンさんよりお偉方ばっかりだったから・・・呼び出される専門で、部屋ではいつもひとり寝だったんだな、と」
「1週間目に盗聴がバレて、大目玉をくらった・・・今となってはいい思い出だ」
 ルードは遠い目になった(グラサンをかけていたが)。
「何か、このまま眠る気分じゃなくなってきた・・・」
「・・・俺の部屋に来るか、ルード・・・と」
「あーあ、あたしも早く彼氏見つけようっと・・・」
「何なら混ざるか、イリーナも」
 イリーナはぶるんぶるん頭を振った。
「そ、それはちょっと・・・。今度、お一人ずつとなら考えてもいいですけど」
「まあいい、夜明けまでまだ少しある・・・どこかで飲み直そう」
 イリーナの腰の携帯が鳴り出したのはその直後である。
「こんな時間、誰だろ・・・はい、イリーナです」
『イリーナ』
「あっ、ヴィンセントさん」
 イリーナはどきどきしてしまった。さっきまでマイクで超色っぽげな睦言をぬすみ聞いていたボスの声なのである。
「おはようございますっ」
『こんな早朝すまないが、私のアパートまで来てくれないか。至急』
「はい・・・でも一体何で?」
 色恋目的なら、時間が遅すぎるような気がした。レノとルードは顔を見合わせた。
『こっちで騒ぎがあったんだ。被害者が女性なので、君にガードをお願いしたい』
「はいっ、すぐ参りますっ」
『レノとルードもいるのか?そこに』
「は、はい・・・いちおう」
『ならば伝えておいてくれ・・・ついでに私の部屋にしかけた妙なものを、片づけていってほしいと』
 げ、ばれてる!3人は一気に青ざめた。
『タダで聞かせてやったんだ、休日返上で、しっかり働いてもらうぞ・・・』
「は、はい・・・リーダー」
 イリーナは、なんと返事したか覚えていなかった。レノが肩をすくめて目をおおった。


「ヘンな男なんて、ぜんっぜん、覚えがないよう」
 雑誌やら服やらぬいぐるみやらで足の踏み場もないほど散らかった部屋で、ユフィはこわーい顔をしていた。がすぐににこにこっと笑みくずれて、
「・・まあさ、ユフィちゃん、自分で言うのもなんだケド可愛いからさ。ほら、ストーカーってやつ?狙われちゃうんだよねー」
「ストーカーなんて、お前、カタカナで言うからかっこよさげなだけで、昔なら“変質者”で終わりだぜ」
 シドは新しいタバコをくわえながら、渋い顔になった。ユフィはふくれて、  
「るさいやい。シドこそ、こんな時間になんで外になんか出てたんだよう」
「・・・う、うるせえな、大人の用事だ!」
「へん。どうせヴィンセントの部屋でイチャついてたんだろ」
 シドは咳込んだ。ヴィンセントは顔色ひとつ変えず、
「いや、ユフィの言う通りだ」
「い、言う通りだってテメエ、み、認めて、ど、どうするんだよ?!」
「・・・そうじゃなく。もしシドがこの時間階段を使おうとしていなかったら・・・どうなっていたことか」
「あ、そ、そういうことね」
 その時「ピンポーン」とチャイムが鳴った。
「おはよーございまーす、イリーナでえす」
 ヴィンセントの部屋のドアに「ユフィの部屋にいる」と貼り紙をしておいたので、それを見て来たらしい。
「おはよう、イリーナ。きみだけか?」
「はいっ、先輩たちはもう外で聞き込み捜査にかかってます☆」
「そうか・・・、それは話が早い。ついでにこれを返しておこう」
 ヴィンセントは無表情なまま、小さな機械を内ポケットからつまみ出して、イリーナの胸ポケットに入れた。
 イリーナは青ざめながらも笑顔を維持した。
「わ・・・わかりました。あとで先輩に返しておきます」
「タークスリーダーというのは、想像以上に厄介な仕事だな。私が現役だったころは、こんなに風紀も乱れていなかったのだが・・・」
「・・・と言うか、レノ先輩のせいだと思うんですけど・・・」
 ヴィンセントは軽いため息をついた。
「なんでえ、今のは?」
「いや、何でもないよ」
 もしシドにアレが何だったか教えたら、大変な騒ぎになるだろうな・・・とヴィンセントは思った。
「とにかくイリーナ、君には、ユフィのボディガードを頼みたい」
「わかりました」
「いらないよう、ガードなんて」
 ユフィはあわてて言った。
「長いことじゃないよ、ユフィ。犯人の正体と意図がわかるまでだ」
「だってさあ・・・」
「ユフィ」
 ヴィンセントは身をかがめて、ユフィの耳にささやいた。
「お前にもしものことがあったらと思うと、私もシドも気が気じゃないんだよ・・・」
「え、そっ、そう?」
 ユフィは顔を真っ赤にした。
「そんなら、まあ・・・いいかな、と」
「いい子にしているんだぞ、ユフィ」
「うん・・・。でもヴィンセント、ほんと、変わったね・・・」
「そうか?」
「前は救いがないくらいクラかったのにさ☆もういっちょまえの女ったらしで男ったらしってカンジ・・・」
 ヴィンセントは苦笑したが、何も言わなかった。
 シドは黙って窓ぎわでタバコをふかしていた。
「どうした、シド」
「ヤツ・・・煙玉を投げてきやがった」
「ああ。あとで警察に残留成分を調べさせるつもりだが」
「どうも気になるんだな・・・。煙玉ったらニンジャの武器、だろ」
「・・・」
「ユフィもニンジャの一族・・・。何か、そこらがひっかかりやがる」




 シリーズ初のサスペンスとなるか!?
 たとえどんな展開になっても、やの字だけは真面目にやりますんで・・・。
 ははは、イリーナ、ユフィ、意外な役割で「からんで」来たでしょう☆
 楽しんでいただければ幸いですが(どきどき)。
 トコロでユフィは・・・ミッドガルでいったい何のお仕事をしてるのでしょう・・・ね。ヴィンはタークスリーダー、シドは軍事部門の幹部・・・という肩書なんですが。(てことは、ヴィンってシドの部下だったのか)
 その辺のことは・・・これから考えます。とほほほ。
 こんなのでも、読んでくだすった貴女に感謝☆


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