…石とか投げないでね


投稿者 チープサイド爆発寸前 日時 1997 年 9 月 05 日 18:16:38:

セフィロス×エアリスです。
この間書いた子どもの二人は良い評価もらったけど、(ホンとか?)大人バージョンはどう言われるだろう?
読めばわかると思いますが、この作品で始めて一人称を使ってみました。


「セフィロスー、遅れちゃってごめーん!」
オレがいつもの待ち合わせ場所で待っていると、八番街ステーションの方から彼女が手を振りながら走って来た。彼女がいつも着ているピンクのワンピースが、薄暗いこの街によく目立つ。
「ごめん、ちょっと、遅れちゃった。」
オレのそばまでくると、エアリスは息を整えながらそう言った。ふっと、エアリスからいい香りが漂ってくる。
「十分くらい,どうって事ない。」
オレは、時計を街灯の光りにかざして見ながら言う。これだから薄暗いミッドガルは嫌いだ。
「んー、だけど、セフィロス待たせちゃったし…。」
エアリスが済まなそうな顔をする。
「遅れたことなんか、たいしたことじゃない。オレは全然気にしないよ。」
「ありがと、セフィロス。優しいね。」
エアリスにそう言われるて、オレは少し照れてしまった。エアリスにほめられるのはとてもうれしい。
少し赤くなってしまったのを、彼女に見られないようにしながらオレは言った。
「おいエアリス、前髪が乱れてるぞ。きれいな君が台なしだ。」
「あっ!いけない!」
エアリスはあわてて後ろを向き、どこから取り出したのか、クシで前髪を整える。エアリスが後ろを向いたときに、またエアリスから漂うよい香りが鼻をくすぐる。美しい花のようなその香りを嗅いで、なぜかオレはドキリとしてしまう。
「よし、じゃ、行こうか。」
エアリスが髪を整え終えたのを見て、オレは言った。
「うん!行こう!」
エアリスがぱっと明るい笑顔になる。彼女の笑顔は、オレが今一番好きなものだ。できれば、一日中見ていたい。それくらい、好きだった。
オレの左腕に、エアリスが自分の右手をからめる。暖かい彼女の体温が伝わってくる。にっこりとしたエアリスにつられて、思わずオレもほほ笑んでしまう。
オレたちはゆっくりと歩きだした。今日は、かねてから彼女と約束していた、人気の映画を見に行くのだ。
足取りも軽く、すぐに映画館に着いた。さすがに今人気の『LOVELESS』だけあり、すごい人出だ。
「ねえセフィロス、こんなに人いて、入れるの?」
エアリスが不安げにオレを見上げる。その顔を見て、オレの心の中にちょっといたずらしてやろうと言う気持ちが沸き起こった。
「しまった、チケットをおいて来てしまった!」
ポケットに手を突っ込み、あわてた顔をしてそう言うと、思った通り、ええっとエアリスが驚いた。
「そ、それじゃ…、」
ひどく悲しそうな顔をされて、オレはやり過ぎたかな、と不安になった。
エアリスは悲しそうにうつむいてしまっている。それを見て、オレはしまった、と思い始めていた。
「大丈夫。一番いい席のチケットを取ってあるよ。」
オレがチケットを取り出してエアリスに見せると、
「もうっ!いじわるっ!」
と、膨れてそっぽを向かれてしまった。
「ごめん、エアリス、驚かせてしまって。悪かった。だからきげんを直しておくれ。」
ひどく怒った様子だったので、オレはとても反省してエアリスに謝った。
エアリスがオレに向き直る。今にも吹き出しそうな顔だ。
「セフィロスの方も、だまされたね。私、怒った振り、しただけだよ。セフィロス、忘れ物なんて、絶対しないもん。」
「おいおい、じゃあさっきの…、」
「そう!悲しそうな振り、しただけ。私って、けっこう演技力あるみたいだね。」
そのときのオレの表情は、さぞかしおかしかったのだろう。エアリスはこらえ切れなくなって笑い出してしまった。
エアリスに笑われて、オレは耳の先まで赤くなってしまったのを感じた。
「さ、さあ、いこうエアリス。あと20分もしないうちに始まってしまうぞ。」
必死で恥ずかしいのを振り払い、オレはなるべく元気よく言った。
「うん!私、とっても楽しみ!」

映画が終わった後は、喫茶店に入り、軽食を取った。
窓際で、外の様子がよく見える席だ。店内の雰囲気も、暖かい感じがしてとてもいい。
オレの前に座ったエアリスがおいしそうに、にこにこしながらショートケーキをほお張っている。
「エアリス、口の周りにクリームがついてるぞ。」
コーヒーを飲みながらオレがそう言うと、エアリスはあわてて口の周りをナプキンでふいた。
「ここのお店、ケーキとってもおいしい!」
エアリスがうれしそうにケーキを食べている。その動作がかわいくて、オレはコーヒーを飲みながらも、ちらちらとエアリスを見ていた。
「おいしかったあ。ごちそうさまあ。」
エアリスが食べ終わった。満足している顔だ。そろそろ行こうか、とオレは席を立つ。
「ね、ここのお店、またこよう!私、気に入っちゃった。」
エアリスが立ち上がりながら言った。そうだな、とオレが笑いかける。
「さーて、どこに行く?」
店を出ると、オレは横にいるエアリスに尋ねた。
「いつもの公園!」
エアリスが元気に答える。八番街の片隅に、小さいけどきれいな公園があるのだ。
このミッドガルにしては珍しく、管理も行き届き、いつもきれいになっている。
それに加えて人もほとんど来ない。駅前の広い公園の方にみんな行ってしまって、こっちの公園は、あまり知られていないのだ。
エアリスと一緒に、ミッドガルを歩き回ったときに見つけて以来、この公園にいる時間が、誰にも邪魔されない、本当に二人きりになれる場所だった。
オレたちは、ここがとても気に入って、いつも来ている。
この公園に一つだけあるベンチに腰掛けた。街灯のオレンジの光に照らされて、公園全体が不思議な世界のような雰囲気だ。
「いつ来てもいいね、ここ。」
オレの左に腰掛けたエアリスが、言った。
「ああ、そうだな。」
答えながら、オレは左手を伸ばして、エアリスの右手を握った。それに気づいて、エアリスがオレを見る。
「手を、握られるのが嫌だったら言ってくれ。」
オレがそう言うと、エアリスは首を振った。
「あなたに手を握ってもらうと、私、とっても落ち着くの。なんだか、セフィロスの暖かさ、伝わってくるみたいで−−。」
「そう言ってくれてうれしいよ。」
しばらく、お互いの手を握ったままじっとしていた。
「なあエアリス、少し歩かないか?」
オレが誘って立ち上がる。エアリスもうなずくと、立ち上がった。
エアリスの手をつかんだオレの手を、彼女は優しくほどくと、代わりに腕をオレの腕にからませてきた。
しばらく話しながら歩いた。最終電車の時間まで話し続けた。そのときのオレの気持ちは、幸福以外のなんでもなかったろう。
最終電車のくる時間になり、ステーションの方に向かった。ステーションには、ほとんど人がいなかった。駅員もいない。
「君といつまでも一緒にいれたらいいのに。」
オレは駅に着くとつぶやいた。オレは神羅の人間であるから、こういう休日くらいにしか彼女に会えない。
「私もだよ。ねえ、セフィロス。きっと、いつまでも一緒にいられるときが、きっとくるよね。」
エアリスがオレの目を見つめる。
「ああ、もちろんだ。」
オレは力強くそう言った。
いつかきっと、君とどんなときでも一緒にいられるときがくるよ…。
オレは、エアリスをしっかりと抱き締めた。エアリスも、オレにしっかりと抱き着いてきた。彼女の温もりが伝わってくる。
「愛してるよ…エアリス…。」
「私もだよ…セフィロス…。」
そうささやきあうと、オレはエアリスの柔らかく暖かい唇に、そっと自分の唇を合わせた…。


一人称も良いなあ…
セフィロスとエアリス、両方とも好きなんだよー!
だからこんなの書いてしまった。
私ってどんどん「好きなキャラ」×エアリス書いてるな…
わー!石とか投げないでー!あ、銭なげならどんどんやって。
ねえ、怒った?怒った?(FF6オルチャン風)


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