青春の輝き…(シリアスです)


投稿者 あぐり 日時 1997 年 9 月 04 日 15:50:44:

 何だか世間様がラムザ総受で盛り上がっているようなあんばいですねっ。
 というわけがらで、便乗して書いてみました。
 でもね、ここではディリータとラムザは幸せそうですが・・・やがて二人は別れます。ラムザはディリータに棄てられてしまうの・・・。だからと言ってラムが不幸になった、というわけではないけれど。(汚れちゃったディリータに代わって、もっとラムザにぴったりな恋人が出現するカラ)
 だからこれは、ほんとに幸福な日々の物語。つかの間の青春の輝き・・・です。
 それでもよければ、読んでやって下さいませ・・・。




「やめてっ、ディリータ、そんなこと・・・!」
 ガリランド王立士官アカデミーの候補生、名門ベオルブ家のラムザは、必死で親友を引き留めた。・・・ディリータ・ハイラルは、これから決闘に行こうと言うのだ。
 五十年戦争が終結してまだ間もない頃であった。戦禍はイヴァリース中を巻き込み、まだ国も人もその痛手から立ち直り切れていない、そんな時期である。
 アカデミーの若者たちも、若者らしい情熱で国を憂いながらも、恋と友情・・・そういった若者らしい純粋なものにも燃えていた。それはけっして矛盾するものではなく、どちらも車輪の両輪のように、純な若者の胸をひとしく燃え上がらせるものであったのだ。
 ディリータが上級生のジークと決闘することになったのも、まさに若者の情熱・・・悪く言ってしまえば若気の至り・・・である。それでもディリータは真剣だった。
「俺は行くよ、ラムザ。俺の命なんかはどうだっていい。お前の名誉を守るためだ」
「イヤだっ」
 ラムザは、身支度を整えるディリータにしがみついた。自分のせいでディリータに、大事な幼なじみのディリータに何かあったら・・・いや、大それたけがでなくとも、毛筋一本ほどのけがでもされたらと思うと、ラムザは半狂乱だった。
 昨夜ラムザは「新しい武器を見せてやるよ」と上級生のジークの部屋に誘われて、思わぬ恋の告白を受け・・・驚きながらもやんわりと断ったところ、危うく乱暴されそうになったのだった。
 ラムザは必死で抵抗したし、もの音に驚いて他の部屋の連中が駆けつけたので、危ういところだったが汚されずに済んだ。ところがおさまらなかったのはディリータだ。
 相手は貴族の御曹司、ディリータは平民の子・・・。普段からアカデミーでも目立たぬようにふるまってきたディリータだが、今度ばかりは、身分の差も人々の嘲笑もかまわず、ジークに決闘を申し込んだのだった。
「ぼくの名誉なんかより、ディリータ、お前の命のほうが大事だ!やめてくれ、頼むから!」
「残念だが、もう決闘は決まったことなんだ。今さら逃げたりしたら、それこそ俺の名誉に傷がつくよ」
 ディリータは音たてて、ベルトに剣を落とし込んだ。
「やめてくれっ、お願いだから・・・!」
 ラムザの涙まじりの悲鳴を後に、ディリータは出ていってしまった。


「逃げずに来たか、平民の子」
 決闘の場となった中庭には、もうジークが待っていた。見物人も、庭と言わず建物と窓と言わず、鈴なりになってディリータの到着を待ちかねていた。
 ディリータは黙ってジークの前に進み出た。
 ジークも破れかぶれである。下級生をだますようにして部屋に連れ込み、想いを遂げられないとわかると乱暴しようとしたなど、笑いものもいいところなのだ。ここはディリータとの決闘に打ち勝って、名誉を回復するしかない。
 人の心は、現代とは違う。戦後間もない、剣と魔法の国・・・である。人々のものの感じ方、考え方は、今よりずっと単純で荒々しく、貴族たちの間では、名誉というものが時には生命より重んじられた時代であった。
「俺の大事なラムザをけがそうとしたその罪を、お前の血でつぐなってもらうぞ」
 ディリータは、介添人を務める同級生に、自分の剣を差し出した。介添人は両者の剣を調べ、不正がないことが分かると、それをおのおのに返した。
「大事なラムザ?・・・ふん、身の程知らずな・・・。お前こそ身の程知らずに、主人の子に惚れているわけか」
「・・・なにが悪い、ひとの心は、魂は・・・平等なはずだ!」
 息せききって駆けつけたラムザの耳に、ディリータの思わぬ告白が飛び込んできた。止めに入ろうとしたラムザの膝から力がぬけた・・・。


 ディリータは決闘に打ち勝った。しかし相手も一年上級だけあって、腕はほとんど互角と言ってもよく、ディリータも腕に傷を負った。
 だが誰も嘲笑する者はなかった。ディリータは命がけで名誉と、・・・そして恋を得たのだ。


 傷から発熱したディリータが、うとうとしたまどろみからふっと覚めると、そばにラムザが付き添っていた。
 ラムザは、目を真っ赤にして・・・そして、ディリータの怪我していないほうの手を握りしめていた。
「ずっと、付き添っててくれたのか?」
 目を上げると、ラムザはうなずいた。目に涙がたまっている。
 上質のロマンダの陶器のように白く、きめこまかい肌が、うすく血の色を映していた。この上なく美しく繊細な魂を持ったラムザ。自分は彼を愛してる・・・とディリータは痛いほど思った。
「ラムザ・・・」
 ディリータが、痛みを推して腕を広げた。
 言葉はいらなかった。ラムザはディリータの胸に、そのほっそりした肢体を投げ出した。
 やわらかな少年の唇どうしが重ねられた。
 ディリータは、今得たばかりの恋人のからだを、自分の身体の下に敷き込んだ。


 ラムザは何度も痛みに声をあげてしまった。・・はじめてだったし、ディリータも、ラムザを初めから喜ばせてやるすべを知ってはいなかったから・・・。ただ無我夢中にふたりは愛を交わした。
 それでもラムザは幸せだった。ディリータと二人でいるだけで、世界が全部自分のものになったような気がしたから・・・。
「愛してるよ」
「ぼくも、ディリータ・・・」
 やがて夜が明ける頃まで、二人は稚拙なやりかたながら、この上ない幸福感につつまれて・・・何度も何度も永遠の愛を誓い合った。
 二人でいれば何も怖くない。どんな困難にも立ち向かえる・・・と二人は信じて疑わなかった。


 ・・・土と草のにおいのたちこめた平原で、ラムザは幸福な夢から覚めた。 
(ああ、ディリータ・・・)
 今は異端者の烙印を押され、国中を敵に回し・・・それでも自分の道を進んで行こうとするラムザであった。
 そしてそのかたわらには、ディリータは・・・いない。
「夢を見ていたの?ラムザ」
 やわらかな、上品なコントラルトが頭上から降ってきた。
「アグリアス・・・さん」
「涙が・・・」
「・・・ごめんなさい、ちょっとうとうとしたみたい・・・」
 ラムザはあわてて顔をこすった。アグリアスは微笑しながらこちらを見つめている。
 そう、ディリータはいない。でも・・・今は。今はこのひとが自分のそばにいてくれる・・・。
 年上の、でも誇り高い、美しい、強さとはかなさを同時に秘めたひと。彼女は髪の毛一本、血の最後のひとしずくまで、ラムザの魂のために捧げてくれるという・・・。
 一度ディリータに裏切られたラムザなのに、彼はアグリアスを信じていた。彼女ならきっとそうしてくれるだろう・・・と信じることができた。
 アグリアスが白い手を差し出した。ラムザはその手を取り、立ち上がると、仲間たちの待っているほうへ、歩いていった。




 ディリータ・・・今さらながら(自分で書いておいて何ですが)許せん男・・・。
 でもラムザには、まわりにアグリアスのようなすてきな人もいるし、その他素敵な攻様(おい)もいっぱいいることだし。
 ま、いいか。
 こんなゴミでも、読んでくだすった貴女に感謝☆


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