風雲 ロケット村!(4)


投稿者 あぐり 日時 1997 年 9 月 02 日 02:00:35:

「貴様ら、何しにここに来やがった!」
 シドに怒鳴りつけられて、レノは肩をすくめた。
「勘違いするなよ、と・・・俺らとしては、別にあんたをやっつけようとか、押し倒して犯そうとか・・・そういうつもりで来た分けじゃないんだぞ、と」
 それからちらっとルードを見て、
「・・・それもいっちょやってみたいとは思うがな、と」
 ルードは謹厳な顔で黙っている。イリーナは顔をしかめた。
「いやん、先輩ったらエッチ☆ そんな話してる場合じゃないでしょう」
だから、何の用だって聞いてるんだよ
 焦れて大声を出したシドに、イリーナは首をすくめて、
「きゃ☆こわい。・・・別に危害を加えようってんじゃないですよ。ただ、貴方とお仲間に、神羅に戻ってきてほしいだけなんです」
「神羅にだあ?」
「いやだと言っても駄目ですよ。社長命令なんですから、こっちも必死なんだから」
 イリーナはそこまで言ってから、不安そうに先輩たちを見た。
「・・・こんなもんでいいデスか、先輩?」
「だんだんオドシ文句もサマになって来たが・・・最後の“社長命令”は余計だったな」
「70点だな、と」
「社長?!誰のことだ?ルーファウス野郎はもう・・・」
 シドは、眉をひそめた。
「リーブ元部長ですよ。ご存じでしょ」
「リー・・・あ、あの!」
「あの方が、とりあえず臨時社長を拝命したんです。それで、社と都市の再建のため、どうしてもみなさんをひっぱってきてほしいって・・・命令なんです」
 ちくしょうあのケット・シー野郎・・・よけいなこと考えつきやがって。
「さあ、どうするかな、と」
 レノがずいと前に進み出た。手に電磁ロッドを握っている。
「あんたが来たくないならそれはそれでいいんだぞ、と。これで眠らせて連れて行くって手もあるからな」
「くっ」
「・・・そこまでにしてもらおうか」
 頭上から、美しい声が響いてきた。いつの間にそこに来ていたのか、頭上の木の枝から、ヴィンセントがこちらを見下ろしていた。
「ヴィンセント!いつからそこにいやがったんだ?!」
「・・さっきからずっとな(←どうやらシドをじーっと盗み見ていたらしい)」
「仲間もいたとは手っ取り早いぞ、と」
 レノはロッドでポンポンと自分の肩を叩いた。
「さあどうするね。おとなしく着いてくるか、それとも、ここでタークスの新旧対決と行くか・・・決めるのはあんたらだぞ、と」
「ここでお前らと戦う気などない」
 ヴィンセントはくるりと身を翻し、ほとんど音もたてず、シドのそばに着地した。
「・・・お前らについていこう。ケット・シー・・・いや、リーブ新社長に挨拶したい」
「お、おい、ヴィンセント」
「私は行くぞ、シド。あんたはどうする」
「・・・」
 シドは舌打ちした。ヴィンセントが行くのに、自分ひとりがとどまるわけには行かないではないか。


 ミッドガルへ行くことになったと告げると、シエラは一瞬悲しそうな顔になったが、すぐに思い直したらしい。
「そうね・・・。この村ですることもなくてぶらぶらしてるより、ミッドガルでお仕事したほうが、艇長のためかも・・・」
「すぐ戻るよ」
「ううん」
 シエラはかぶりを振った。
「やっぱり貴方は“飛空艇のシド”だわ。こんなところでくすぶっていてはいけない・・・と思うの」
「・・・」
「・・・でも、私待ってますから」
 シエラは顔を上げた。
「それから・・・メカニックが必要になったら、いつでも呼んで。やっぱり私、艇長の下で働きたいんです」
「シエラ、お前って女はよう・・・」
 シドはシエラを抱きしめた。この際人目などかまっていられない。
 シエラは真っ赤になったが、すぐにシドの身体を抱き返した。ヴィンセントはじっとそれを見つめている。
 すぐにシドはシエラを離し、イリーナを振り返った。
「支度してくる間、待ってくれるか」
「ええ、それはもう・・・。出発は明日にしましょうって、先輩がおっしゃってましたから」
「・・・ねえちゃんなあ、敬語の使い方くらい覚えとけよ。自分の身内のことをヨソの人間に話す時は、謙譲語だろ!」
 シドに敬語のことで説教されてしまった・・・。イリーナはベソかき顔になりながら、
「すいません・・・どおせあたし新人ですから」
「いつまでも新人じゃねえだろ、たくよ・・・。お前らも、ちゃんと後輩のしつけくらいしとけよ。お前らの仕事だろ」
 シドはついでにルードにも説教してから、
「そういや、あの赤毛のにいちゃんはどうした」
「レノ先輩・・・じゃなかった、レノ、ですか。さあ・・・どこかでナンパでもしてるんじゃないですか。仕事片づいたから安心して」
 荷物をまとめるためにシドは二階へ上がった。思いもよらないなりゆきだったが、実は水を得た魚のような気もひそかにするシドであった。何と言ってもこの村での無為の日々が長すぎた(と言っても3月かそこらだが)。シエラは可哀相ではあるが、なに、いざとなったらミッドガルへ呼んでやればいいわけだし・・・。
 かなり楽観的に考えて、シドは足取りも軽かった。・・・と。
「楽しそうだな、と」
 いきなり背後から音もなく歩み寄られて、両腕をねじ上げられた。
「レ、レノ」
「俺は意外とおやじも好みなんだな、と・・・。そのうちつきあってくれるかな、と」
「ば、ばかやろう」
「おいしそうな首筋だぞ、と」
 ガリガリに痩せているレノなのに、どこにこんな馬鹿力が、と思うくらい力が強い。シドは振りはなそうともがいたが、無駄だった。
「今度食わせてもらおうかな、と」
「て、てめえ」
「大先輩も一緒でもかまわないぞ、と。・・・もっともあっちはルードの趣味かな。ヤツは長い黒髪にヨワいんだな、と」
「・・・ふざけるな!」
 シドは、渾身の力でレノを振りほどき、息を荒くしてにらみつけた。
 レノはひょいと肩をすくめた。
「・・・まあいいか、俺はあせらないんだな、と」
「・・・」
 憤然と衣服の乱れを直しながら足音荒く立ち去るシドの後ろ姿を、レノはにやにやと見送った。
「マジ、おいしそうなバックだぞ、と・・・。こりゃミッドガルが楽しみになってきたな、と・・・」




 今夜はここまで。読んでくれた貴女には、いつもながら感謝感謝☆でございます。
 うーーーん どうなっちゃうんだろうな一体・・・。(レノが手を出そうとするとは、正直意外な展開・・・)


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