Happy Birthday To MAMI(2)
そして反省文へ…(笑)


投稿者 しほ 日時 1997 年 9 月 01 日 18:31:43:


 いらっしゃいませ後編へ。今だから言いますが、実はこの話、反省文も兼ねてたりするんですー(汗)。か、会長…ナムコワンダーエッグのチケット代はこれでチャラに…(ならねぇって・涙)。
 それではセフィ×ヴィン編、行ってみよう!


 背筋を伝う戦慄。冷たい汗が肌を流れ落ちる。強い、気配───
 ヴィンセントは銃を持つ右手に力を込めた。
 既に衣服を身につけ、クラウドが眠るベッドから降りた彼は、重く絡みつく闇を睨みつけていた。
 これは、間違いなくセフィロスの気配。彼はやはりやって来た。予感は現実となる。目眩がしそうな現実───
「酷い男だ。クラウドに、私の事を考える暇も与えないとはな」
 冷え切った声が響く。ヴィンセントはゆっくりと声の方向を振り返った。闇の中に浮かび上がる、銀の影。厭わしい言葉を放ったばかりの唇が再び開く。
「人形が私に逆らう事は許されない…」
「クラウドも私も、貴様の人形などではない」
 ヴィンセントの言葉に、セフィロスは喉を震わせて笑う。そして音もなくクラウドの眠る褥へと歩み寄った。
 ヴィンセントが見つめる中、セフィロスは無防備に寝息を立てるクラウドに、慈しむような視線を向けた。その眼差しに、ヴィンセントははっとした。
 この男が、こんな穏やかな表情をすることが、信じられなかった。全てを包み込むようなまなざし。言葉はなくとも、その眼が、クラウドに愛しいと告げている。ざわり、とヴィンセントの体を悪寒が駆け抜けた。
「…クラウドに、触れるな」
 己の掠れた声に、彼は愕然とした。思うように体が動かない。セフィロスの放つ気に、呑み込まれてしまっているのか。
「お前は、何か勘違いをしているようだ」
 セフィロスは顔を上げ、その視線を、まっすぐにヴィンセントに据えた。
「これは、私のものだ。お前が何度この子を抱こうと、これはお前のものにはなり得ないのだ。誤った思い上がりは正してもらいたいものだな」
 唇を白くなるほどかみしめて、ヴィンセントは燃える瞳をセフィロスに向ける。右手に持つ銃の先が小刻みに震えた。
 偏狂な程の征服欲。クラウドの全てを所有していると言わんばかりのセフィロスを前に、ヴィンセントは言葉を失う。セフィロスの言葉が正しいのなら、ヴィンセントがこれまでクラウドと築き上げてきたものが、否定されてしまう。クラウドがヴィンセントを望んだ事実が、全て無に還ってしまう。
「この子が何を望むか、それはこの子の自由だ。だが、私のものを汚すことは、罪になるのだよ…」
 罪人の宣告がヴィンセントを追いつめる。セフィロスはゆったりと微笑む。勝利を確信した笑みが、ヴィンセントの胸に深く突き刺さった。
「お前の罪は、クラウドを抱いたことではない。この私のものを手に入れようなどという思い上がりを持った事だ」
「なにを…訳のわからない事を…」
「フッ…わからぬか。所詮お前も、神たる私には永遠に近づけぬ存在でしかないのだな…」
「貴様は…狂っている」
 セフィロスは初めてヴィンセントに対して表情らしきものを見せた。見下した瞳、せせら笑う唇が無言で伝えるもの。それを読みとろうとする前に、セフィロスが口火を切った。
「ほう…」
 さも可笑しそうにセフィロスは微笑う。細められた目の奥で、エメラルド色の瞳が冷たく光った。
「ならば、お前は、狂っていないとでもいうのか?」
「……っ!」
 胸を撃ち抜かれたような衝撃を受けた。じわりとヴィンセントの額に汗が浮く。
「狂気を持たぬ人間などありえぬ。ましてお前は、宝条の遺物……お前の中に、どのような狂気が隠されているか、自覚していない訳ではあるまい」
 勝ち誇るセフィロスの声を聞く事に耐えきれず、ヴィンセントは銃を構えた。まっすぐに銀の美貌に狙いを定め、トリガーに指をかける。が、銃口を向けられてさえ、セフィロスは薄笑いを絶やさない。
「私を撃つ気か?」
 セフィロスはゆっくりと手を伸ばし、クラウドの頬に触れた。瞬間、クラウドの寝息が乱れる。小さな幼い唇から漏れる吐息。セフィロスの腕が、眠りに身を委ねるクラウドの体を軽々と抱き起こし、慈しむように抱き包む。
「撃ってみろ。クラウドに当たるぞ」
「貴様っ…!」
 銃口が震える。かみしめた奥歯がぎりぎりと音を立てている。それがヴィンセントの限界だった。
 クラウドを撃つことはできない。自分の腕なら、確実にセフィロスだけを撃ち抜く自身はあったのに、それでも万が一クラウドを傷つけることがあったらと思うと、彼はトリガーを引くことができなかった。
「ふ…陳腐な感情だな」
 クラウドの細い顎を取り、その頬に口づけながら、セフィロスが嘲笑う。項を支えていた手がゆっくりと滑り、白い喉にかけられる。
 ぐっとその指に力が込められた。クラウドの寝顔が微かに歪み、苦しげな吐息が吐き出される。
「クラウドから離れろ!」
「できんな。これは私のものだ。お前の指図は受けない」
 言いながら、セフィロスの指は更に食い込んでゆく。クラウドの顔から血の気が引き、元々白い頬から色を奪って行く。このままでは、クラウドは───
 そんな状況にありながら、どんな夢を見ているものか、幸せそうに微笑を浮かべるクラウドが信じられず、ヴィンセントは声を上げていた。
「やめろ…クラウドを殺す気か!?」
「それも悪くない」
 セフィロスの即答に、ヴィンセントは凍り付く。
「な…に……?」
「遅かれ早かれ、そうなるのだからな。今殺しても同じことだ。いっそ、その方が良いかもしれんな…」
「何を…言っている…」
「これは、私とひとつになる為に、私の元へやって来る。これが自分の意志で来るのを待つのも悪くはないと思っていたが…そうだな、見果てぬ夢に浸る今、ひと思いに殺してしまった方が、この子の為かもしれん」
 そしてセフィロスは、ゆっくりとクラウドに唇を重ねた。
 クラウドは目覚める気配を見せない。夢の中にたゆたいながら、クラウドは。意識のないまま、セフィロスに無防備に身を預ける様は、まるでセフィロスの全てを許しているかのように、ヴィンセントの目に映った。
「───セフィロス!!」
 どこまでクラウドを弄べば気が済むのだ。どこまでクラウドを苦しめれば満足するのだ。何故この男を、クラウドは求めるのか……
 セフィロスはゆっくりとヴィンセントを省みた。その腕にクラウドを抱いたまま。
「…何が望みだ」
「私は何も望まぬ」
「どうすれば…クラウドを、お前から解き放つことができる…」
 血を吐く思いで、ヴィンセントは言葉を綴った。
「…それは、取引か?」
 獲物を物色する目で眺められている事を知る。セフィロスの視線、それは先刻のものとは違い、舐めるような粘りを持ってヴィンセントの体を滑った。
 ヴィンセントは、自分が敗北したことを悟った。クラウドをセフィロスの腕に奪われた時から、それはわかりきっていた事だった。
「クラウドのためか? クラウドは、お前など見ていないというのに?」
「……っ」
 色を失う程、唇を強く噛みしめる。セフィロスの言葉など信じてはいけない。だが、その言葉の全てを否定できないのも、また事実だった。
「お前にそのような感情があるとはな…面白い」
 セフィロスはクラウドの体をそっと寝台に戻した。一瞬、クラウドの手が、セフィロスにすがるように彼を求めた。その手に口づけ、セフィロスはクラウドから離れて立ち上がる。
「罪人よ…私を生み出したのは、お前だ」
 冷ややかな笑みが、セフィロスの美貌を彩る。
「今、その罪を償うがいい…」
 足音も立てず、セフィロスが近づいてくる。その姿をまともに見ることができず、ヴィンセントは目を伏せた。月明かりだけが頼りの薄闇の中、足元に伸びる影が、ヴィンセントの影に重なった。
 細い身体が寝台に沈む。首筋を冷たい唇が滑り、ヴィンセントから声を奪った。長い指が、彼の体に纏う衣服を、もどかしいくらいゆっくりとはぎ取って行く。
「…そう固くなるな。初めてでもないだろう…?」
 何を知っているものか、セフィロスは嘲笑混じりの声で囁く。
 欲望故に抱くのではない。あくまでクラウドの代わりなのだと解っていた。だが、これ以上クラウドを汚されるくらいなら、己の罪に染まった体で償えるなら、それでもいいとヴィンセントは思った。
 全てを奪い去られた白い裸身が闇に浮かび上がる。クラウドの、未だ幼さの残る体とは違う、しかし華奢な青年の裸体は、祭壇に捧げられた神への供物にも似て、ひどく痛々しかった。
「…っ……う…」
 びくりと跳ね上がる体を、セフィロスの腕が容赦なく押さえつける。初めて触れるはずのヴィンセントの躰の、けれど確実に感じる部分を、セフィロスは的確に責める。そして、その口元に、うっすらと笑みを浮かべるのだ。
 これが、セフィロスの抱き方───
 肉欲を満たすためだけでは決してない。己の下で呻き、歪んだ表情を浮かべる獲物の様を見ることが至上の喜びであるかのような、そんな情事。そこには、交わりなど存在しない。
「っあ…っ!」
 下腹部に伸びる指の刺激に、ヴィンセントは短く声を上げた。上げてしまってから、言いしれぬ羞恥に、口を手で覆う。
「ふ…良い声だな…」
 セフィロスの声がヴィンセントを追いつめる。
 ヴィンセントの自身を、濡れた感触が包み込む。やんわりと舌が絡み、唾液に濡れたそれは、昂ぶりを押さえきれずに震えていた。いつしかヴィンセントの紅く染まった唇から、声にならない喘ぎが漏れる。
 クラウドも、こうしてこの男に抱かれていたのだろうか。彼はクラウドをも同じように抱いたのか。だとしたら……淋しすぎる。
 体は快楽に震え、更なる刺激を求めている。けれど、心は───決して交わることはない。
クラウドとセフィロスは、果たして解り合っていたといえるのだろうか。触れあい、求めあい、肌を寄せあって、そこから得られたものは、一体何だったのだろう。
 不意に秘所を襲った激痛に、ヴィンセントの思考は途切れた。慣らすこともなく、まるで戦いを挑むかのように突き入れられた凶器が、思う様ヴィンセントを蹂躙する。
 耐えきれず、ヴィンセントはセフィロスのコートを握りしめた。一糸纏わぬ裸体を晒すヴィンセントとは対照的に、セフィロスは何一つ乱さぬまま、ヴィンセントを責め立てる。セフィロスが動く度、彼の長い銀の髪がヴィンセントの肌の上を滑り、その刺激にすら、ヴィンセントは反応しているというのに。
「くく…いい姿だな…」
 苦痛の表情を浮かべて喘ぐヴィンセントを冷たく見下ろし、セフィロスは喉の奥で笑う。
「お前のこの姿を、クラウドが見たら何と言うかな…?」
「く…下司がっ…」
「おやおや、綺麗な顔のわりには、悪い口だ」
 からかうような口調に、ヴィンセントはセフィロスを睨み付ける。体をつなげながらも、彼らはまるで戦っているかのような緊張感を漂わせていた。
「今のお前が何を言おうと無駄だ。それは、お前が一番良く知っているだろう?お前は私には逆らえぬ。クラウドと同じ、人形なのだからな…」
 セフィロスはヴィンセントを深く貫いた。瞬間、ヴィンセントの躰が仰け反り、飲み込みきれない悲鳴が上がる。もはやヴィンセントには、逆らう力は残されていなかった。
 ヴィンセントの躰の奥深くに己の証を残し、セフィロスは彼から離れた。疲れ果て、指一本すら動かすことのできないヴィンセントを、冴えた碧の瞳で見下ろしながら、セフィロスはやはりうすい笑いを絶やさない。
「契約通り、待っていてやろう」
 シーツの波の中でセフィロスを睨み上げることしかできないヴィンセントの傍らに膝をつき、セフィロスは、初めてヴィンセントに唇を重ねた。まるでセフィロスの心そのもののように冷え切った唇。吐息さえも冷たく感じられ、ヴィンセントは思わず目を閉じた。
「クラウドとともに、私を追ってくるがいい。…その時こそ、お前達は運命を知るだろう」
 去って行くセフィロスの背中を、最後まで見届けることはできなかった。ヴィンセントの意識は、セフィロスの背に揺れる銀の波に呑み込まれるように、深い闇の中に沈みこんでいった。


 ハイウィンドに乗り込んでなお、クラウドは迷っている。それを知っていて、誰一人口には出さなかった。皆、クラウドが自らその口を開き、その言葉を発するのを待っているのだ。
 クラウドは、ゆっくりと窓辺に歩み寄った。窓の向こうに世界が見える。仲間達と旅をしてきた世界、そして、今は破滅に向かうのを待っているだけの、その世界。
 守らなければならない。そう思う心を、嘘だと叫ぶ自分がいる。
 眼下に広がる世界を、この星を救うなどという、大それた事を言うつもりはない。
 自分のため、なのだ。自分を救うため。自分の心が壊れてしまうのを止めるため。
 ───セフィロス───
 その名を囁き、クラウドは窓のガラスに額を押しつけた。
 胸が、痛い。息苦しくなるくらい。行かなければと思う。セフィロスのもとへ行かなければ。そうしなければ、この痛みは決して消えない。
 ふいに、暖かい腕に包まれた。その腕は力強く、そして優しく、クラウドを抱きしめる。
「クラウド…船を大空洞へ」
「ヴィンセント…」
「空を駆けめぐる時間は終わったのだ。今は地の底が我々の戦場…天の光ではなく、地の闇こそが明日への扉…」
 クラウドの顔が、泣き出しそうに歪んだ。けれど、それを言うヴィンセントもまた、何かに耐える表情をクラウドに向けている。
 残酷な決断を迫られて、クラウドは怯える子供のように、ヴィンセントを見上げた。
 ヴィンセントの手がクラウドの頬に触れる。その手は大きく、暖かい。その温もりに、クラウドは安堵する。
 かつて、この体に触れたひとの手は、いつも冷たかったように思う。憧れ、ともに在ることを望んだひと。クラウドの全てだった、そのひとは───
「お前は一人ではない。…ともに行こう、クラウド」
 クラウドは目を閉じた。ヴィンセントの声が、言葉が、胸に染み込んで行く。それは優しい響きで、彼の傷を癒してゆくようだ。
 ヴィンセントの腕に身を凭せかけたまま、クラウドは深く頷いた。
「ありがと、ヴィンセント…行くよ。もう、迷わない」
クラウドが浮かべた微笑みを、柔らかな視線で受け止めて、ヴィンセントもまた微笑した。

 それぞれの想いを乗せ、運命の鎖を断ち切るために───船は、進む。


 長々とお疲れさまでした。いかがでしたでしょーか?
 読み返してみたら、あんまりHじゃなかったような…特に後半が…
許してMAMIちゃん。やっぱり私、クラウド受け話じゃないとHぃなのが書けないみたい…(汗汗)


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