ロケット村の異変(3)


投稿者 あぐり 日時 1997 年 9 月 01 日 02:44:32:

 ロケット村に日が落ちていく。夕焼けに染まる山の連なりを、レノはルードの胸に抱かれたまま、窓からぼんやりと眺めていた・・・。
「・・・なに考えてる、レノ」
 ルードは、ガタイのわりに繊細な指先で、レノのうすい胸の突起をつっついた。レノはくすぐったそうに我に返り、
「いや、仕事のことをちょっと・・・」
「・・・」
「シドはおとなしく来てくれるかな、と・・・。もしかして奴が俺たちのことかぎつけたら、勘違いして逃げ出しゃしないかな、と」
「その時はその時だろう」
 ルードにくすぐられて、レノは嬌声を上げた。
「あっ・・・悪い指だぞ、と」
「あんまり簡単に片づいたんじゃつまらん・・・少しくらいスリリングなほうが、やり甲斐がある」
「それもそうだな、と」
 レノは再びルードの首に腕を回した。
「もう一回、いいかな、と・・・」


 日が落ちる前にシドとヴィンセントがたどりついたのは、裏山の中腹にある山小屋であった。
「猟師や山越えの旅人が泊まれるように造ったもんだが、当座の食糧くらいは備え付けてあるから」
 シドは、ベッドの上の毛布をバタバタやりながら言った。
「・・・と、ベッドが一つっきゃねえんだな・・・。いい、オマエが使え。俺は床で寝るから・・・大丈夫、布団はふたり分あるから」
「シド」
「オマエの言いたいことは分かってる」
 シドは、ヴィンセントをにらんだ。
オマエはベッドで寝ろ。俺は床で寝る。OK?
「・・・わかったよ、そう強く言うな」
 ヴィンセントは少し悲しそうな顔になった。
「・・・ちっ、タバコ忘れて来た。手持ちのがなくなったらアウトだぜ」
 シドはポケットから取り出したタバコの箱を、情けなさそうに見つめた。
「ま、そのかわり、酒は山ほどあるからな。久しぶりに一杯やろうぜ」
 二人は備え付けてあった料理用ストーブを使ってご飯を炊き、缶詰を開けて、ランプの火灯りの下で夕食をとった。粗末な食事ながら、二人ともあまり食事にはうるさいほうではなかったし、酒の瓶がふんだんにあったので、満足であった。
 シドは、ヴィンセントと酒を飲むのは嫌いではなかった。・・・と言うより、積極的に好きと言ってもよかった。
 ヴィンセントは無口だが、酒は強くて、幾ら飲んでもつぶれなかったし、シドの酔態も微笑しながら眺めていてくれて、何となく安心なのであった。これがバレットあたりだと、酒グセが悪くてからむわ、暴れるわ・・・で大変だし、クラウドは分裂気味で、酒など飲むとますますわけがわからなくなるから、とても酒の相手など出来ない(注・ベッドの相手としてはまた別の話なのであろうが)。
 その点ヴィンセントと飲むのは気持ちがいい。若干の会話と、静かな時間と雰囲気と濃密な空気をサカナに飲む、という感じがして・・・。
 ところが家であまり深酒をするとシエラがうるさいので、村に戻って以来、ろくに飲酒できていないシドであった。
 まあ、そんなこと言うとまたヴィンセントが調子に乗っていろいろするだろうから、黙っていたけれど。
 シドが酔っていくのを、ヴィンセントは黙ったまま自分も飲みながら見つめ、ときどきシドが新しいタバコをくわえると、ライターで火をつけてくれた。シドは、そういう時間が決して嫌いではなかった。
 シドは警戒しなかった。まさかタークスがここまで追って来るはずはなかったし、ヴィンセントはここ数カ月おとなしくしていたからだ。
「ん・・・」
 酔いつぶれて寝てしまったシドが気がつくと、いつの間にかベッドに移動していたらしい。
「ん、ヴィンセント・・・水・・・」
 起き上がろうとして、シドは、手首に食い込む不吉な感触に、一気に酔いがさめるのを感じた。
「ヴィン・・・」
 いつの間にか、両手首に縄が食い込んでいた。ベッドに縛りつけられていたのだ。
「・・・!」
「すまない、シド」
 ヴィンセントが、こっちを見下ろしている。
「もう我慢できないんだ・・・あんたを抱きたくて」
「お、おい・・・」
「村ではこらえていたが・・・、ここにはシエラさんはいない」
「ヴィンセント!」
「シド、あんたは誰にも渡さない。・・・あんたに似合うのはもっと広い天地だ。これ以上あんたを、あんなちっぽけな村に置いてはおけないよ・・・」
「あ・・・ああ!」


 シドは、心ならずも、かなり燃えてしまった。ここ数カ月の、何の刺激もない平穏な生活にくらべて、ヴィンセントの愛撫は刺激的でスリリングすぎた。
「い、いやだ・・・そんなこと・・・!」
「口では嫌だと言うだろうが・・・ほしいんだろう、本当は?」
「せ・せめて縄を解きやがれ」
「いやだ」
 ヴィンセントはシドをいたぶりながら言う。
「あんただって、本当はこうしてほしいんだ・・・ほら、あんたのここがそう言ってる」
「あ・・・あ!」
「何もかも忘れてしまえ・・・私のことばと身体だけに酔うがいい・・・」
「く・・・」
「さあ、シド、私の名を呼ぶんだ・・・私だけを」
「ああ、ヴィンセント・・・ヴィンセント・・・!」


 日がかなり高くなってから目覚めたシドは、千々に乱れた胸を抑えながら、近くの川へ洗顔しに出た。
 ヴィンセントは小屋から消えていた。どこへ行ったのか、シドの胸はそれだけで乱れたが、それをあらわにすることは、シドのプライドが許さなかった。
 ヴィンセントの胸は気持ちがいい。抱かれると、身体がばらばらになりそうな気がする。抱かれない時でも、彼の視線を感じるとき、美しいあの顔を見つめるとき、そして二人で酒瓶を間に置いて語り合うとき・・・それはシドにとってもっとも濃密な時間だ。
 でも・・・シエラは俺のために十年近い日々を無駄に過ごして来た・・・。俺はシエラを棄てることなんか出来ない・・・。
 川には、年齢不相応に老けてしまった自分の顔が映っている。シドはそれをじっと見つめた。・・・決して醜いわけではない。若い頃は美貌だったと言ってもおかしくはないシドなのだ。
「・・・もの想いとは、らしくないぞ、と」
 背後からかかった声に、シドは振り返り・・・身構えた。
 河原に、タークスの三人が立っている。
「おいしそうなバックだぞ、と・・・」
「オマエら・・・!」
「・・・そんな顔をするもんじゃないぞ、と。ついつい襲いたくなるじゃないか・・・、と」



 後ろ姿美人のシド(笑)の運命や如何?!・・・というとこで今夜はここまで。
 この先は・・・何も考えてないんダ、実は・・・。
 はあ、何かいいネタないですかネ・・・。
 とにかく読んでくれた貴女には、心から感謝☆


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