タクティクス初挑戦


投稿者 あぐり 日時 1997 年 8 月 31 日 16:35:02:

 今日明日とお休みです。一日くらいは体を休めようと思って家でおとなしくしてるのですが、頭(そして妄想)は休んでくれません。
 というワケガラで考えてしまったタクティクスネタ。
 ラム受ですが、ラム×アグリです。お嫌いな方はここで引き返してください。


「逃げて、アグリアスさん!」
 不覚をとった。ゲルミナスの険しい峠道で仲間たちとはぐれ、たった三人きりで、無数の山賊どもと戦うはめになってしまった。
 仲間の一人エリオットは敵の刃に倒れた。残されたラムザとアグリアス二人では、とうてい勝ち目はない。
 ラムザは、アーマーを破壊され、傷をかばいながらも背後のアグリアスに向かって叫んだ。
「何を言う!」
 アグリアスは健気に叫び返す。
「お前を見捨てるくらいなら、私はここで一緒に死ぬ!」
 山賊たちが、アグリアスの声を聞いて驚いたようであった。
「・・・女だぞ、殺すな!」
「・・・あうっ!」
 その時、敵のモンクが放った地裂斬の衝撃で、わずかに残っていたラムザの体力は尽きてしまった。背後でアグリアスの倒れる音を耳にしながら、ラムザの意識は、永遠の悔恨へと落ちて行った・・・。


 ・・・目を開けると、窓の小さな、暗い部屋に閉じ込められていた。石灰の臭いが鼻をつき、背後に回された両手をいましめる荒縄が食い込んでいた。
 ラムザは、土間にじかにころがされていた。
「・・・アグリアスさん?無事ですか?」
「う・・・不覚だった」
 ああよかった、アグリアスはまだ無事だ。ラムザの全身から力が抜けた。
「エリオット・・・可哀相なことをしてしまった」
「・・・」
「なんという無力・・・。私たちには何もできないのだろうか?」
 沈んだ声を震わせ、うつむいてしまうアグリアスの横顔は、薄暗がりの中でも美しく輝いていた。ラムザの胸は激しくしめつけられる。
 その時、乱暴にドアを開ける音がして、数人の山賊、そして一人だけややまともなアーマーをつけたナイトが入ってきた。二人は緊張して彼らをにらみつけた。
「おれを覚えてるか、ラムザ・ベオルブ」
「・・・?」
「忘れてしまったか。まあ無理もなかろう。貴様らお高い貴族様には、虫ケラ風情はいちいち覚えておられんだろうからな」
「・・・あ、骸旅団!」
 よく覚えていなかったが、それで少し思い出した。前にせん滅させた骸旅団の中に、確かこのアーマーをつけたナイトがいたような気がする。
「骸旅団の残党か!」
 アグリアスも叫んだ。美しい声が震えていた。
「今はこんな山賊に身を落としたが・・・。それもこれもすべて貴様のせいだ、ラムザよ。ここで会えたが百年目とやら、せいぜい我々の恨みを思い知ってもらうぞ」
 剣の鞘先で顎を持ち上げられ、ラムザは目を閉じた。
 殺されるのか・・・こんなところで。それも仕方ないが、心残りはアグリアスさん・・・。彼女だけは逃がしたかった・・・。
 が、そんな彼を、信じられないような言葉が襲った。
「おい、お前ら、貴族の女ははじめてだろう」
「おお」
「いい女だ。殺す前に楽しませてやるといい」
 仰天して目を開けると、あのナイトが、かがみこんでアグリアスの膝の辺りに指を這わせている。アグリアスが息を引き、身を固くするのがわかった。
「やめろ!彼女に手を出すな!」
 ラムザは自分の立場も忘れて叫んでいた。
「そのひとは、お前らなんかが好きにできるようなひとじゃないんだ・・・!」
「フン、貴族のプライドとやらか・・・。まあそこで見ていな。貴族だろうと下衆だろうと、女は女・・・、そのことをたっぷり思い知らせてやるからな」
「なんということを・・・!」
 ラムザは身震いした。アグリアスは顔をこわばらせて黙っていた。・・・不意に山賊のひとりが、大声をあげてアグリアスの顔に飛びついた。
「こ、こら!・・・この女、舌を噛もうとしてやがる!」
「猿ぐつわを噛ませちまえ!コトが済むまでは死なせるな」
「アグリアスさん・・・」
 こんなときなのに、ラムザは感動していた。・・・なんという誇り高い女性だろう。ラムザも何だかんだ言って貴族の、そして武門の子である。いのちを棄ててでも操を守ろうとする女性の行為を美しいものと感じずにはいられなかった。
 だが、それと同時に、どんなことがあっても彼女を死なせたくない、死なせてはならないという気持ちが、それより強く胸に沸き上がってきた。
「・・・やめろ、山賊ども!」
 ラムザは叫んだ。
「彼女をけがすことは許さない!かわりに僕が彼女の身代わりになる!だから、そのひとには手を出すなっ!」
 一瞬、しんと静まり返った。
 猿ぐつわをかけられたアグリアスが、なにか言おうとしたが声にならなかった。ナイトは、ラムザの顔をしげしげと見つめた。
「・・・フム、憎いベオルブの子をいたぶれるのか・・・それも悪くないな」
 乱暴に服をぬがされながら、ラムザは、これでいいんだ・・・これで・・・と必死に自分に言い聞かせていた。


 ラムザは、耐えた。痛みと屈辱、そしてややもすれば感じそうになってしまう自分の体に・・・。
(ディリータ)
 彼は、必死でかつての恋人の名を心の中で呼んだ。
(ディリータ、お前は優しかったね・・・。やがて英雄になろうとしているお前が、こんなところでかつての恋人が山賊たちにはずかしめられていると知ったら、どう思うだろうか・・・)
 だから声だけはたてるまい、涙すまい・・・とラムザは歯を食いしばる。自分は武門の子、誇り高いバルバネスの子・・・。そしてだいじな女性を守るためにこんな目に合っているのだという、誇りだけが彼を支えていた。
 ディリータと教会で再会して知った、彼の変心。彼の心はもうひとかけらも自分にはなく、オヴェリア王女に・・・あるいはその野心のみに捧げられているのだ・・・と悟ったとき、ラムザも、ディリータとの訣別を決意したのである。それまで心の支えとして絶えず想い続けていた男であった。が、もう二人の人生が重ね合わされることは二度とないだろう・・・と哀しく自分に言い聞かせたラムザだった。
 かつては永遠の愛を誓い合った二人だけれど、人は変わる。その心も変わる。変わらないのはラムザだけだ。
 それ以来彼の心は、堰を切ったようにアグリアスに向けて寄せられるようになった。美しく誇り高く、強く・・・そしてはかなさを秘めた清楚な魅力は、ラムザの純でありつづけようとする心には、この上もなく美しいものとして映ったのであった。


「あう・・・っ」
 耐え切れなかったのか、ラムザのなまめかしいあえぎ声がわずかに漏れた。
 アグリアスは耳をふさぎたかった。目はさっきからしっかりと閉じていたが、膝さきで何が起きているか、物音や気配ですっかりわかってしまう。
(耐えなければ。ラムザはわたしよりももっと激しい苦痛と屈辱に耐えているのだから・・・)
 が、アグリアスとて生身の人間。すぐそばでこんな落花狼藉を耳にし、気配に感じていては、何も感じずにすむわけがない。
「・・・」
 体が熱くなってきた。・・・近衛騎士の名門オークス家の娘として生まれ、男子がない父の手で、男として育てられたアグリアスも、生身の人間、生身の女なのだ。
(ああ・・・いっそ舌を噛めたら・・・。もしかしたらラムザよりも私のほうがつらいかもしれない・・・)
 身じろぎした時、ふっと手首が軽くなるのを感じた。・・・しめた、縄がゆるんでいるのだ。


 数時間におよぶ凌辱が終わり、賊どもは満足して引き上げて行った。
「このままで済むと思うな。お前は後でなぶり殺し、女はどこかの町へ連れていって売り飛ばしてやるからな。せいぜい別れを惜しんでおくことだ」
 ナイトの捨てぜりふも、ぐったりしきったラムザの耳には届かなかったようだ。
 アグリアスは猿ぐつわをかまされたままだったが、ゆるんだ縄をなんとかほどいてしまおうと必死で身動きした。
 ぎい、と扉がきしんだ。アグリアスはびくっとした。・・・ひとりの賊が戻ってきたのだ。
「へ、へ・・・やっぱり男よりは女のほうがいいやな」
「・・・!」
「貴族の女を食うのは初めてだぜ」
 ひざまずき、アグリアスの胸に手をのばそうとした・・・そのとき、アグリアスは縄をほどき、男の腰に下がっていたダガーを抜き取りざま、男ののど笛にたたき込んだ。
「ぎゃあっ!!!」
 血しぶきをたてて男がどうと倒れるのを見守ると、アグリアスは自らの猿ぐつわをはずし、ラムザに駆け寄った。
「ラムザ、ああラムザ・・・」
「う・・・ア、アグリアスさん」
「・・・お前という男は」
 アグリアスは、ラムザを抱きしめた。
「・・・泣いて下さるんですか?僕のようなもののために・・・」
「ラムザ」
 アグリアスは、もうたまらなかった。ラムザの唇に自分の唇を押しあててしのび泣くと、ラムザは首を振って、
「いけない、貴女が汚れてしまう」
「汚れなどするものですか。ラムザ、お前の・・・いいえ、貴方の魂は」
 男たちの放ったもので汚れたラムザの顔に、目と言わず頬と言わず唇を押しつけた。
「貴方はほんとうの英雄、勇者。・・・これで私の心は決まった。私は永遠に、貴方についていく。このいのち、この身体・・・すべては貴方の崇高な魂に捧げよう・・・」


 てな感じですけれど。何か、ありがちですね・・・お粗末。
 私はもう何年もイベント行かないので、タクティクスのやの字ってほとんどお目にかかったことがないので、自分で書いてみました。
 他の方々がいろいろ書いて下さるのを待ってます。
 でもやはり一番はラムザ×アグリかなあ・・・。(というわけでこのお話のアグリねえ様は、浅木先生に捧げます。ご迷惑でしょうが受け取ってやって下さると嬉しいです・・・)
 読んで下さった貴女には感謝の投げキッス、チュッ☆


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