あぐり先生


投稿者 あぐり 日時 1997 年 8 月 24 日 02:19:29:

 さて、ここからはヴィン×シドと、二度レスの反省文がごっちゃになってマス。そのへんようくお含みおき下さいね。時間的には、「読者限定小説」のすぐ後、同じ日の午後です。では、開始ー(あぐり@ちょっと酔ってる)


 かつては明るく澄んでいたジュノンの空の下を歩きながら、ヴィンセントはブルーだった。
 嫌われてしまった・・・シドに・・・。そりゃまあ仕方ないかも知れないけれど。でも、あんだけ喜ばしてあげたのに、ナンダあの仕打ちは・・・あのおっさんホント恩知らず・・・いやいやそれとも、やっぱり自分に魅力がないのだろうか・・・ルクレツィアにも振られたし・・・。
 ヴィンセントは、朝方、シドに殴られてしまったばかりだった。ハイウィンドのデッキで。昨夜はあれだけ熱い一夜を過ごしたふたりなのに・・・・。
 そんなことを考えながら歩いていく、三歩くらい先をクラウドが行く。二人は、エルジュノンで買い物中なのであった。
「次は、エーテルとポーションだな。・・ヴィンセント、何してるんだよ、遅いぞ」
 クラウドは、ヴィンセントの苦悩なんか少しも気づいていないのであった。しかしまあそれもやむなき仕儀、かも知れぬ。ヴィンセントのように普段からクラくて無口な男は、たまに本気で落ち込んだとしても、あんまり他人から気づいてもらえないのである。
 こうなったら、クラウド押し倒したろか。おっさんへの腹いせ・・・もあるし、この子もカワイイし。
 そんなヨコシマな考えまでが浮かんでくるヴィンセントであった。(だからルクレツィアに振り飛ばされる・・・)
 だが二人がちょっと横道にそれた時、二人の前に立ちはだかった群れがある。
「久しぶりだな、兄ちゃんよ・・・」
「あ!貴様らは・・・」
「そう、ドン・コルネオ様の手下よ!」


 何メートルかはずれた道を、やはり新しい武器防具を物色しながら歩いていたのは、シドとケット・シーであった。
「・・・なンか、向こう、騒がしいでんナ」
「あれは・・・」
 シドは、わずかな音の違いを聞き逃さなかった。
「・・・ヴィンセントの銃だ!二人になんかあったらしい!」


 クラウドは、必死で走った。背後でヴィンセントが、「逃げろ、クラウド!」と叫びながら、暴漢どもにデスペナルティを乱射している。狙いは確かだ。だが、いかんせん、まだまだヴィンセントはデスペナルティを入手したばかり。「とどめ数」はゼロに近く、従って、まだこの武器の破壊力は低かった。
「ふっ、効かねえなあ」
 暴漢たちのほとんどは、クラウドを追って行ったが、三人ばかりはその場に残って、ヴィンセントをいたぶることにしたらしい。
「なんだ、そのヘナヘナした銃は・・・」
「・・・」
「きれーな顔したにいちゃん、こんなのより、俺らの生身の銃のほう、食ってみるかあ?!」
 ・・・下品な・・・ああいやだ。
 ヴィンセントは、わずかに眉をひそめた。・・・同じ攻め方でも、昨夜の私のなんと美しかったこと。言葉だけで海千山千のシドを追いつめ、イかせてしまったこの私にひきかえ、この暴漢どものなんという品のなさ・・・。
 こうなったら、カオスに変身して・・・こいつらみんな、地獄送りだ・・・!
 だがその時、向こうからすさまじい勢いで駆けてくる者がいる。
「てめえら、何してやがる!!」
「・・・シド!」
 シドだった。オヤジ走りでも、スタミナとスピードは衰えていない。
 シドは、暴漢たちとヴィンセントの間に立ちはだかり、息をはずませながら、彼らをにらみつけた。
 ヴィンセントはその姿に見とれずにいられなかった。・・・なんて美しい。やはりシドはきれいだ。この屈服することを知らない熱い情熱・・・。
 シドは、一人で三人を引き受けて戦い始めた。それも別に銃も武器も使うわけではない。素手で、だ。ヴィンセントは、加勢品柄も、ひそかにそんなシドに見とれずにいられないのだった。


 そういうわけで、二人は見事に暴漢たちを叩きのめして、無事にステイ先のホテルに戻ってきた。
 無事に?
 ・・・では、ない。シドは、目の辺りにクリティカルヒットを受けて、気絶していた。残されたヴィンセントがなにに変身してどう暴れたのか・・・は、ご想像にまかせよう。
 ともあれ、気絶したシドを抱き上げて、ヴィンセントが帰ってくると、ティファはパニックを起こした。
「クラウド、クラウドはどこなの?・・・コルネオの手先、って言ったわね」
「ああ」
「・・・たいへん、クラウドが・・・!」
 ティファが血相を変えてどこかへ飛んでいってしまったので、シドの手当ては、なんでアタシが、とブツブツ言いながらユフィがやってくれたのだった。
「そおか、今度あジュノンに来てたんだね、あのスケベオヤジ」
 一度襲われかけたことのあるユフィは、唇をとんがらかせながらも手当てを済ませた。
「ホントにしぶといオヤジだよネ。おーこわ、気イつけなくちゃ・・・」
 ユフィが出ていくと、そばでずっと見守っていたヴィンセントは、何を思ったか、部屋のカギを内側からかけてしまった。
「シド・・・」
「う、うう」
 シドは、心底痛そうに身じろぎしながら、意識を取り戻した。
「・・・ここは?」
「ホテルだよ」
「・・・!」
 そばにつきそっていたのがヴィンセントだと気づいて、シドは身を固くした。
 ヴィンセントは、それに気づいてかすかに眉をひそめた。
「・・・怒ってるのか?」
「べ、別に何とも思っちゃいねえよ」
「シド・・・」
 ヴィンセントは身をかがめた。
「・・ありがとう」
「れ、礼を言われるようなこたァ何も・・・」
「私を、助けてくれた」
「べっ、別にオマエのためじゃねえや」
 強がりを言うシドに、ヴィンセントの、長年月にわたって「熱くなる」ということのなかった胸が、いっぱいになった。彼はもう抑えきれなかった。
「シド・・・」
 シドの手を取ってそっと接吻した。
「ややや、やめろよ、何も言うな、テレるからよ」
「シド」
だから、黙れって
「・・・」
「こっち見るな!あ、あっちへ行ってやがれ、この・・・」
「シド、愛してる」
 ヴィンセントは、そっぽを向いてしまったシドにおおいかぶさって、背後からぎゅっと抱きしめた。シドはぴくんと反応した。
「だ、駄目だって・・・あ」
「嬉しかった。生きてきて、よかった・・・」
「ば、バカタレ、何を大げさなこと・・・」
 だがさすがのシドも、そこまで言われてはどうしようもなかった。


「愛してる・・・と、言ってくれないか」
 執拗にシドを攻め立てながら、ヴィンセントはささやく。シドはかぶりを振る。
「愛してなんか・・・あ、あ、いねえよ」
「うそだ」
 体をまかせながらも、絶対自分の言いなりになろうとしないシド。ヴィンセントは焦れながら、シドの首筋を舌先でいたぶった。
「・・・!」
「正直になれよ、シド・・・私を愛してる、と・・・さあ」
「・・・」
「一言でいいんだ。それだけで私は・・・」
「あ、愛してなんか・・・あっ、あああ!」
 ヴィンセントのほっそりした指先が、シドの口の中に侵入した。
「うそをつくのは悪い口だな」
「・・・あ、ああ・・・やめ・・・」
「“愛してる”と言うまでやめない」
「あ・・・あい・・・」
「そのさきは?」
「あいし・・・て・・・。てっ、テメエ、今に見てやがれ・・・!」
 ヴィンセントの白いしなやかな体に蛇のようにからみつかれて、シドの、顔のわりに若々しく引き締まった体が反り返る。
 ヴィンセントについて言うと、テクニックがそんなにあるわけではないが、その低くしめった声で耳もとにささやくだけで、シドはどうしようもなく感じてしまうのであった。
「シド」
 ヴィンセントは、律動しながらもシドを抱きしめずにいられなかった。
「後悔はさせない。幸せにする・・・だから」
「ち、ちくしょお・・・あ、あー!」
「もっと感じておくれ。わたしの名だけ・・・呼んでほしい」
 シドは、やけくそで嬌声を上げた。どんなに感じたとしても、“愛してる”なんてとても言えない。
 でも、シドの燃えぶりは、ヴィンセントをかなり満足させていた。あとはただひとつ、「愛してる」とだけ言ってもらえれば、もう言うことはない・・・。
 

 ヴィンセントが幸せの絶頂にいたころ、すっっかり忘れさられていたクラウドは・・・。
「う、うう・・・」
 ああ、やはり逃げ切れていなかった。コルネオの手下たちに縛り上げられ、連れて来られたのは、ゴミゴミした裏通りの、コルネオのアジトである。
「久しぶりだなあ、金髪のにーちゃんや」
 ドン・コルネオの下品な姿が、みたび、クラウドの前に登場したのであった。
「まさかジュノンで会えるとは、思ってもみんかった。・・・オマエにはさんざお世話になったからのー。せいぜいこってりと礼をさせてもらうからのー」
「な、何をする気だ・・・」
 コルネオは、ニヤニヤしながら部下に目くばせした。
「お前、いつかわしに“チョン切る”とか何とか言ってくれたのー・・・覚えてるかのー、ほひーほひー」
「!!!げっ・・・」
「お返しに、ホントにチョン切ってやるからのー」
「ま、待て!」
 クラウドは身もだえした。しかし、後ろ手にしっかり縛り上げられていて、どうにも身動きがとれない。
「そっ、そんなこと・・・ダメだっ!!」
「ほう、命令する気か」
「あ・・・」
 クラウドは顔をそむけた。
 長いまつげが、白い頬に影を落とした。意識していないにも関わらず、自然とにじみ出す、触れなば落ちん風情・・・。スケベなコルネオがそれを見逃すハズがない。
 コルネオは、ごくりと喉を鳴らした。
「ほひー・・・そんなら、それ以外の代償を払ってもらおうかの・・・」
「えっ・・・」
 クラウドの驚いたような表情は、却って、この下品で残酷な男の嗜虐心をあおりたてたようであった。


「・・・ああ、セフィロス!」
 クラウドは、ついに叫んでしまった。
「あああ・・あ、セフィ・・・」
 クラウドの落花狼藉の姿は、コルネオ親分が疲れ果てて彼を放したあとも、その部下たちをそそり立てずにおかなかった。獲物に群がるハイエナのように、彼らはクラウドの白い肉体に群がって、肉を食いちぎり、血をすすり、骨の髄まで噛みくだいた。
 クラウドの理性は、とうにどこかに飛んでいた。・・・そうでもしなければ、彼はとっくに発狂していただろう。
「セフィ・・・セフィ・・・ああ、もう・・・」
「男の名を呼んでやがる」
 コルネオの部下が、さげすむように呟いたが、クラウドの耳には入らなかった。
「助けて、セフィ・・・おれ、おれ、もう・・・ああ・・」


「・・・クラウド、無事に逃げられたのかな?・・・」
 数時間後、すっかり堪能して、ぐったりベッドの上に身を投げ出したシドとヴィンセントの二人は、まだ夢の続きをさまようような風情で、それでもすこしは現実に返って、そんな話をしていた。
「・・・」
 ヴィンセントは、あまりシド以外のことを考えたくなかったのだが、さすがにクラウドのことを思い出して、一瞬ギクリとした。
「そういえば・・・どうしたろう・・・」


 ・・・こんなとこで区切ってしまっていいのかなあ・・・。
 次回は、クラウド救出編です。救出・・・したほうがいいですよね?(・・・このまんまでいいという人、お手上げ!)
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