浅木かいと先生


投稿者 浅木かいと 日時 1997 年 8 月 22 日 15:58:17:

ふふふ。実はこっそり用意してたりして(爆)
漫画で描くには長いので小説にしてみました・・・。
気に入っていただけると嬉しいなあ・・・。



「それじゃあ僕たちはこれで・・・」
 ライオネル城。
 高い城壁に囲まれたその城の中で。
 ドラクロワ枢機卿に助けを求めるためやってきたラムザは、王女オヴェリア、そして騎士アグリアスに別れを告げ、機工士ムスタディオとともに機工都市ゴーグへ向かおうとしていた。
「ラムザ、ここまで来れたのは貴公のお陰だ、感謝するぞ」
 そういってアグリアスは、自分の右手をラムザに差し出した。
「え・・・」
 正直、ラムザは驚きを隠せなかった。騎士というものはよほどのことがない限り、他人に手を預けたりはしない。ましてや彼女のような人間が、たかが少しの間のつきあいでそんなことを許すようには思えなかったからだ。しかし、手を差し出して、ほんの少し微笑んでいるアグリアスが、自分を信頼していてくれるのだ、という事が嬉しく思い、ラムザは、彼女の綺麗な手を、しっかり握り返した。

 城の中から、去っていくラムザ達を見届けながらアグリアスは、傍らにたたずむオヴェリアに言った。
「不思議な者たちでしたね。何の迷いもなく北天騎士団を敵に回し、我々についてきてくれた・・・多分、信頼に値する人でしょうね」
「そうね、とても優しいかただわ。私、あの人達にまた会う日まで、どうか危険のないように毎日お祈りをしようと思うの」
「それは良い考えですね。・・・さ、お部屋に戻りましょう。」
 2人連れだって、割り当てられた部屋に戻ろうとしたその時。背後から静かな声がかかった。
「・・・いや。部屋に戻る必要はない。」
 途端、アグリアスの後ろにライオネルの紋章のついたマントを身につけた騎士が現れた。男は片手で安々と彼女の両手をつかみ上げた。
「なにをする!離せ!」
「おとなしくしてもらおうか、お嬢さん。お姫様が怪我するよ」


「ムスタディオっ!早く、早く行こう!」
 危険だ、早く行かなくちゃ。
 機工都市ゴーグで聖石を守り抜いたものの、それがきっかけで王女達を危険にさらしてしまった。まさか、こんなことになるなんて。そう自責の念を深くしながらラムザはライオネル城の方向へと向かっていた。
 辺りは雨雲に包まれ、今にも雨が降り出しそうな空気だ。遠くでかすかに、雷鳴が聞こえる。その天気がいっそう、ラムザを焦らせた。
「ちょっ・・・ちょっとまてよラムザ!なにをそんなに急いでるんだ!」
「早く行かないとアグリアスさん達が殺されてしま・・・!?ぅわっ!」
 よそ見をして走っていたのがいけない。ラムザは突然現れた大きなぬかるみに足を取られ、尻餅をついた。ムスタディオや他の仲間達は遠慮も無しに笑い出した。
「な、なんだ・・・ここ・・・」
 しりもちをついたままで、ラムザはムスタディオに問いかけた。
「バリアスの谷だよ。ここには池があって、あたりがぬかるんでるんだ。」
 彼に手をかしつつムスタディオは、この土地のことを説明する。
 その時。
(・・・・!!)
 かすかに聞こえた女の悲鳴に、ラムザ達ははっとして振り返る。
 その声とは別の、数人の声も聞こえたが、ラムザの耳にそれらは入らず、ただ悲鳴を上げた声の主・・・自分が知っている人・・・を頭に思い浮かべた。
「・・・アグリアスさんの声だ!」

「きゃあっ!」
 ナイトの振り下ろした剣を肩口に受け、アグリアスは思わず悲鳴を上げ、ぬかるみのせいもあってか、足を滑らせ倒れ込んだ。今切られた肩についていたガーターは先ほどの攻撃で破壊されている。流れ出す赤い血を手のひらで押さえながら、アグリアスは体制を立て直し、片膝をついた。
 傷を負っているのは肩だけではない。身につけていたライト・メイルはほとんど破壊されていた。服の至る所が切り裂かれ、白い肌に目立つ赤い傷が見え隠れしている。アグリアスは片手で肩口を押さえ、もう片方の手で、傷つきながらもしっかりと、剣を握っていた。
 そんな彼女の姿を見下ろしながら、追っ手のリーダー格の男が、ふん、と鼻を鳴らして言い放った。
「女だてらにホーリーナイトというからどれだけの器量かと期待したが・・・所詮女は女だな。力不足は否めまい?」
「・・・っ・・・!」
 嫌いだった。それを言われるのは。
 途端、雷鳴がとどろき大粒の雨が降り出した。どんどん激しさを増すその雨足は、辺りの地面をぬかるみへと変え、アグリアスの金の髪を濡らしていく。濡れた髪はほどけ、汗と雨で濡れた頬にはりついてうっとおしい。
「こんな所で短い命を終わらせるとはな。おとなしく家庭でも護っていれば良かった物を・・・。」
「普通の女と同じにするな・・・!」
「ではなんなんだ。だれがどこから見てもお前は女だ。何をそんなに否定する?力の差は歴然ではないか。所詮女は強くなどなれはしないんだよ!」
「そんなことはない!そんなこと、関係ないはずだ!」
「笑わせるな!ひ弱な王女1人も護れないような、ただの弱い女が何を言う!」
 その言葉を聞いたとき、アグリアスは自分の体から、全ての力が抜けていくのを感じていた。手の中からするり、と、剣が抜け落ちる。もはや、彼女の瞳からは戦う意思、強い意志、全てのその光が消えてしまったように見えた。
 まぶしいほどの稲光と、激しい雷鳴があたりを一瞬包んだ。さらに雨足は強くなり、谷のくぼみにある小さな池は、今にも溢れそうなほどに水かさが増している。
 振りかざされる剣をよける気力もなかった。
 しかしその時。
 ざしゅっ・・・っという音と共に今まで剣を振りかざしていた男が、操り人形の糸が切れたかのように崩れおちた。
 崩れ落ちた体の向こうに立っていたのは、赤く染まった剣をもった、まだすこし幼さの残る顔立ちの、見知った青年だった。
「ラムザ・・・?」
「アグリアスさん!しっかりして!」
 一目見て、彼女の体力が限界なのは解った。彼女の瞳に、いつもの意志の強い光が宿っていなかったのである。それは本当は、傷からきたものではないのだが、そんなことをラムザは知らない。見るのも痛々しい、ぼろぼろの体を抱きしめるように庇い、ラムザは仲間達に指示を与えた。
「アリシア!こっちにきて回復を!ジークとステラは敵を頼む!それから・・・・」
 毅然とした態度で次々を指示を出していくラムザの暖かい腕と胸に護られながら、アグリアスはゆるんだ気を保つことが出来ず、そのまま意識を遠のかせた。
 ・・・なぜ、私は女なんだろう・・・。
 そんなことを、うつろな意識で考えていた。

 次に目を開いたときは、夕焼けのさす部屋の、ベッドの上だった。
 自分の顔を、2人の人影がのぞき込んでいる。ひとりは、アグリアスも知っている、白魔導士のアリシア、そしてもうひとりはラムザだった。
「ああよかった。気がつきました?」
 そう声をかけたのはアリシアだった。肩の傷にかざしていた手を引っ込め、ほっとしたように笑顔を見せる。
「ここは・・・?」
「ウォージリスですよ」
 答えたのはラムザだった。魔法をかけ終えたアリシアに、ありがとう。もういいよ、と声をかけ下がらせてからアグリアスの方に向き直った。
「気分はどうですか?」
「・・・ああ、大丈夫」
「よかったー・・・。もう僕、心配で心配で・・・」
 ふと、アグリアスは自分の着ている服を見た。あのとき切り裂かれた自分の服とは違う物だった。桜色の小さな花の刺繍が入った、麻のワンピースだった。
「この服は・・・?」
「ああ、それはウチの仲間が買ってきてくれたんです。だ・・・・・あ、あ。もちろん着替えさせたの女の子ですからねっ!も、もちろん!」
「・・・・。」
 慌てて取り繕うラムザから目線をそらし、アグリアスは夕焼けに染まる空を窓から見つめた。その横顔があまりにも儚く見えて、ラムザは少し、心配げに見つめた。
 彼女はただ、横になっていたせいでほどけた自分の髪を見つめていた。腰の辺りまで届く、長い、親譲りの綺麗な金色の髪。夕日に照らされて時々、不思議な色に光り、窓ガラスにそれを反射させる。それほど、綺麗に手入れの行き届いた美しい髪の毛だった。
 戦いの中に身を置く騎士に、長い髪は邪魔だった。それを解っていながらしかし彼女は、髪を切ることはしなかったのだ。いや、出来なかったと言った方が正しいか。
 髪は女の命、とかいう言葉がある。いつ誰がいったのかは解らないが、しかしそれは、紛れもない真実だ、と彼女は思っていた。自分もまた、そうであったから。
「あの・・・アグリアスさん・・・?」
 気遣うように問いかけてきたラムザを横に、アグリアスはぽつん、と呟いた。
「・・・女は・・・戦ってはいけないのだろうか・・・?」
「えっ・・・。」
「そんなことをさっき言われた・・・。ねえラムザ。女ってそんなに弱い物?強くはなれないんだろうか・・・?」
「アグリアスさん・・・。」
 そう言ったきりまた黙ってしまった彼女の夕日に照らされる金の髪に、ラムザはそっと触れた。ふわっとした感触にアグリアスはラムザの方に少し、首を向ける。
 髪に触れた手をそのままアグリアスの頬に滑らせ、下に降ろしてから、剣を握るにしては細く綺麗な手に優しく重ねた。驚いたような表情の彼女にやさしい微笑みを向けながら、ラムザはゆっくりと、言葉を紡ぎ出す。
「・・・そんなこと、ないですよ。人は誰だって強くなれる。そんなのに性別なんて関係ないじゃないですか。僕はそう思います。だけど・・・」
 重ねた手を、今度はきゅっ、と軽く握り、少し上に持ち上げて、ラムザはもう片方の手のひらも重ねた。
「だけど・・・女の人はみんな綺麗な手をしてる・・・。その綺麗な手を、あまり血に染めてはだめですよ。せっかくの手が汚れてしまう・・・。」
「・・・」
 アグリアスは黙って彼を見つめていた。重ねられた手のひらから暖かいぬくもりが伝わり、しばらくぶりの安心感を彼女に与えていく。アグリアスはその手を空いている方の手・・・ラムザより少し小さいそれを重ねて包み込
む。はっとしたように少し顔を赤くするラムザを見て、アグリアスは小さく笑みを浮かべていった。
「不思議だな・・・こうしているとすごく安心する・・・。」
「アグリアスさん・・・。」
 夕日に包まれた部屋の中で、2人はしばらくそのままだった。雨の後の晴れ間の、少し冷たい風が窓から入り込み、カーテンをもてあそんでは去っていく。
「・・・あとすこし時間ありますから、その間は全部忘れて眠って下さい・・・。時間になったら呼びに来ます」
「・・・大丈夫かな?処刑の時間を早めたりはしないだろうか・・・」
「大丈夫。あっちには偵察を送ってます。だから安心して・・・。」
「・・・わかった・・・。」
 アグリアスはゆっくりと横になり目を閉じた。ラムザはそのまま、手を取ったままで、しばらくそこにいた。
 この人は今、安息の場所を求めている。
 刃のように突き刺さる言葉を受けて、護るべき人を奪われて。きっと中身は傷ついているんだろうな・・・。
 だから、せめて今だけでも・・・
「安心して・・・・ゆっくりと休んで・・・」



「きゃあっ」てだれだよ・・・。友人に言われてやってみたが・・・。何か違うぞ!!
大体なんか本題から最後めちゃめちゃずれてるし、ゲロ甘っぽい・・・(死)
・・・・逃亡!!!


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