パノラマ先生の第16弾

8月10日、皆さんと集まれそうでうかれているパノラマです。
せのおさん、リクエスト承りました。ツォン受けですねー、やってみたかったんですよ。ふふふ。最近のマイブームはレノのようで、かなりドリームをとばしています。ふう、やれやれ....
FFTも、どうせならクラウドじゃなくてセフィロスとか、レノとかが仲間になればいいのに(そりゃむりだよ)セフィロスの特技は当然メテオかな。
ところで、泊り込みで遊びに行くのもなんだか楽しそうですよね。
ちかばの温泉に一泊ぐらいで。土日だったら社会人の方も参加できますよね。
ああマサチューセッツ行きたくない...温泉も同人誌もないし。
以下、かなりドリー無なツォンとレノの小説が続きます。
なんかむやみにだらだらしているので、根気のある方のみお読みください。



彼の名前はない。本当の親の名前も知らない。それもスラムではそうめずらしいことではない。育ててくれた女の数はダースを優に上回る。彼は毛色の変わったペットのようなものだった。大体の女は半年ほどで彼に飽きた。うまくしたもので、そうあいだをあけずに次の“飼い主”が見つかる。
女たちの職業はさまざまだった。スラムだったから娼婦がやはり最も多かった。
彼がもっともうまのあった女も娼婦だった。彼女とは2年近くいっしょに暮らした。彼女がやばい客に殺されなければもっといっしょにいただろう。いつも男で失敗ばかりを繰り返す女だった。
「だまされやすいのよ」
男に去られて泣くたびに彼女は言った。
「だまされてみたいのかもね」
つらいときだからこそ笑うような女だった。彼は10にも満たなかったが、彼女を泣かせる男どもにかすかに嫉妬の念を抱いた。
彼の名前はない。親がつけた名前などとっくに忘れていた。そもそも名前があったのかどうかもあやしい。目下の彼の身元引受人である女たちが、好き勝手な名前で彼のことを呼んでいた。
「おまえの真名、本当の名前はレノだよ」
そういったのは、彼が身を寄せていた占い師だった。彼はもうじき15だった。ようやく肉の付いてきた体だったが、不安定さは否定できない。
くすんだ水晶を覗きながら彼女は自信たっぷりに言った。
「おまえは魂を引き裂かれるような恋をするだろう。その恋人がおまえの真名を見つけてくれるんだ」
「真名って何だい?オレを産んだ親がつけた名前ってこと?」
「違うよ。真名は一人にたった一つ、はじめからその名前を名乗っている幸運なやつなんざほとんどいないね。大体の人間は、真名に気づくことすらなく一生を終えちまう。真名を他人が見つけてくれるってことは、自分の心の一番大切なものをそいつが命を懸けて守ってくれるってことなんだよ」
彼女の今日の売上金を金庫にしまいながら、おざなりに彼はたずねた。
「マリアの真名は?見つけてくれたやつはいたのかい?」
「ああ」
白いものが目立つ女は笑った。遠い笑いだった。
「あたしがお前よりもまだガキだったころに、そいつと出会ったよ」
彼のことを尋ねよう、と思ったが思い直す。彼女が言葉を繋いだ。
「ウータイとのいくさであっさりと死んじまったね」
眠る前、ランプを消そうとする彼女に彼はつぶやいた。
「ごめん」
ぽんぽん、と優しい手が彼の赤い髪をなでる。
「馬鹿な子だよ。あたしゃお前のことが心配でたまらないよ・・・・らしくないね」
冬がくる前に、風邪をこじらせて彼女は死んだ。

ふと、目が覚める。
随分昔のことを思い出していたらしい。彼と触れ合っていった、優しく愚かな女たちのことを。
すかんぴんのエイダ、占い師のマリア、かっぱらいのブリジット、何人いや何十人のいただろう。
今の彼は誰の世話になっていない。正確に言うと最新の彼の”育て親”は1万ギルで彼を売ってしまったのだ。彼のとなりで眠る男に。
今頃後悔してアルコールを浴びているにちがいない。
酒とドラッグさえなければヘレナは涙もろいおとなしい女だった。
裏通りを歩いていたら、いきなり黒い服の男たちに囲まれた。
「赤毛だな」
うなづきあう。一秒後、彼は高電圧で昏倒させられた。気づいたときは、男と向き合っていた。
「お前を1万ギルで女から買った」
ヘレナの字がのたくっている汚い書類を突き付ける。
「何か言うことはあるか?」
彼は首を振った。何を言ってもむだな事は分かっている。一万ギルならかなりの値段だ。ヘレナは死ぬまでアルコールとドラッグ浸けだろう。
「目的は?臓器か?」
男は呆れたように鼻を鳴らした。
「スラムの臓器など、おそろしくて使えないね」
彼は考えた。誇るほどの美貌も肉体も、自分とは無縁である。
「服を脱げ」
呆れたのは今度は男だった。
「物好きだねえ、あんたも」
彼の体をほしがる男や女がいなかったわけではないが、ほとんどはただの興味だった。
「金回りもよさそうだし、何より色男だ。オレ以外にもしっぽを振る奴なんかごまんといるだろう」
男は首を振った。肩を越すまっすぐな黒髪が音をたてる。
「お前の瞳がほしかった」
彼のハシバミ色の瞳が真っすぐに男を貫く。
男は目をそらした。
「その目が曇るときが楽しみだよ」
男の神経質そうな指先が彼の上着にかかる。
(目をえぐられてヘンタイのおもちゃか・・・・)
彼が描いた未来像は、お先真っ暗だった。

彼は男の部屋から出ることを許されなかった。高層ビルのかなり上階、いかめしいセキュリティが行き来する127階が彼の世界になった。大きな窓から見下ろす景色はあまりにも小さい。人影など見えやしない。彼と男、時折食事をもってくるセキュリティの大女だけが彼の見る人間だった。
男は彼に何も聞かない。だから彼も男に何も聞かない。
男は東洋系だった。混血が進んだこの時代にしては珍しく、純血を守っているらしい。滑らかな琥珀の肌に漆黒の髪。闇を宿した物憂い瞳は時々弱々しげに揺れる。
きれいな人間だと思う。自分よりずっと。だから彼は男と交わることが嫌いではなかった。
「お前を抱いていると刃と眠っているようだ」
かすかに上がる息の下で男が繰り返す。
「骨に当たりそうだよ。さぞ苦しいだろう」
苦しかった。ちっとも快楽なんか感じなかった。彼はいつも一方的に男に身を捧げていた。羞恥心なんてもってもいないから、どんな屈辱でもたいしたことはなかった。
「お前は正気を失わないんだな」
優しく男が口づける。生ぬるい舌の侵入を許すと、甘いシートが滑り込んだ。
合成コカインだ。スラムでは一般的な興奮剤であり、同時に媚薬でもある。男のものは特別製だそうで、習慣性もなく、効果は通常品の10倍以上にもなる。触れられた所がやけどしそうに熱い。体が自分の意思とは無関係に駆け上がってしまうほど、彼の意識は冷たくさえた。そんな彼の目にいぬかれた男はいらだたしげに舌打ちをし、いっそうひどい愛撫を施す。痛みすら快感だから、彼の口はだらし無く半開きになったままだ。
痛みと快感が交錯し、意識を手放すまいとすることで彼は精一杯である。薄目を開けて男を見上げると、男の方が苦しげに息をついていた。男を抱いてやれるといいと思う。肉体ではなくて心を。だが、自分に名前すら呼ばせない男がそんなことを許すとは思えなかった。

「なんだ、珍しいな」
自堕落に眠る彼を強引に起こすのがいつもの男の始の仕事だっただけに、男はソファに座る彼を見て驚いたようだった。
「これはなんだよ、と」
昼食のトレーを受け取りにドアを開けた彼は、いきなり催眠スプレーを浴びた。気づいたときは病室で、みょうに化粧のきつい女が横に座っていた。
「しばらくじっとしていて、微妙な所だから、大事をとって、ね」
女の言葉の意味はすぐに分かった。舌にすさまじい異物感がある。舌にピアシングを施されたらしい。
病院で無理やり一泊させられ、セキュリティの大女と一緒に戻ってきた。
「気に入らなかったか?」
ジャケットを脱ぎ、ネクタイをゆるめながら男が尋ねる。こう言った何げないしぐさも嫌みなほど様になる男だった。
「そろそろこのフロアだけに閉じ込められるのも、お前が飽きたんじゃないかと思ってね。それは魔晄発信機だ。これからどこに行こうと、何をしようと自由だが、お前の居場所は必ず分かる」
「なんだ、あんた・・・・」
回らない舌でしゃべるため、自然にゆっくりと言葉を選ぶことになる。もどかしい。
「オレを自由にしたら、もうここに戻って来ないとおもってるのか、と」
「そりゃそうだろう」
何を言い出すのかと男は彼を見つめている。
「あんたキレるようで、けっこうマヌケだな、と」
男は気を悪くした様子もない。彼の口の悪さは今に始まったことではない。
「オレはここから出て行こうと思えばいつでも出て行けたんだ、と。フロアコードはSPZ−72−4、だろ、と」
初めて男がほうと息をついた。
「アイシャだな」
「そ。あの大女もオレなんかにコード盗まれてるようじゃまだまだだな、と。オレはここにいたいからいる。それだけだ、と」
「クックック・・・・」
男が体を震わせている。ひょいとのぞき込んだら笑っていた。目尻がかすかに光っていた気がしたがさすがに目の錯覚だろうと考えた。
「・・・そうか。捕らわれていたのは私の方だったということか」
男は彼を見た。痛いほどまっすぐな視線だった。
「アイシャは首だ。お前が彼女の替わりにメンバーになるといい」
「メンバー?」
「タークスさ」
ゆっくりと立ち上がり、背伸びして男に口づける。
「はじめからオレの命はあんたのものだよ。時がくるまではね、と」
その夜の男とのセックスは甘く、初めて彼は意識を飛ばし快楽に溺れた。
夜明け前、男が音もなくベッドを抜け、温もりの冷めないうちに戻って来た。わずかな空気の動きで、彼はすぐに目を覚ました。
それから
「血の匂いだな、と」
「お前の感覚はこれから役に立つだろう。せいぜい研ぎ澄ましておけ」
触れるだけのキスを裸の肩に受ける。
「ま、オレの座るいすは空けてもらわないと困るからな、と」
笑いながら男の首に手を回す。しっとりとした黒髪のかすかな愛撫が心地よい。
「良いメンバーになるだろう。ルードの困る顔が楽しみだな」
血の匂いは二人の吐息にあっけなくかすんでしまった。
翌日、彼は少ない荷物をまとめて部屋を出た。廊下には新しいセキュリティが顔を見せていた。サングラスをかけていて表情は分からないが、無愛想な男である。アイシャの死体は彼が片付けたのか、血の名残すら見えなかった。


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