緒方さち先生の第8弾

/* 図書室 */

酷いおまけ。幸せになりたい人は見るのはやめましょう。不幸のりみっとぶれいく。えっちぃはそう大したことはない(と、思う)。



#3

セフィロスとそうした行為に耽るようになって以来、クラスメイトの間でのクラウドの孤独はさらに増したようであった。
彼とのつきあいを、もちろんクラウドは誰にも言うことは出来ず、ただ人つきあいのわるいサボりがちな生徒だと思われているその誤解を、解くことも出来なかった。
授業も次第におざなりになり、セフィロスの言う時間にあの図書室へと向かうことだけがクラウドの生活になっていた。
それでは駄目だということはわかっている。けれど逆らえないのだ。彼が与えてくれる快楽にではない。セフィロスという人間の存在に、すべての意志を奪われてしまったかのように、なにひとつ逆らえなくなっているのだ。
奪われている。身体も、心も。
時折クラウドは、彼を知らずにいたころを思い出したいかのように、誰もいない図書室へ行った。窓の少ない部屋の中で、ひとり立ち尽くしていると、ときにたまらない後悔に苛まれてしまうこともあった。
その日も−−−−気分が悪いと授業を抜け出して、クラウドは保健室ではなく図書室へと足を向けていた。今日は司書の担当員が来る日ではない。セフィロスに渡された司書室の合鍵で、中へ入ってしまえばしばらくは一人で休めるはずなのだ。
いつものように本棚の間を抜けて、司書室を開けようとしたクラウドは、中から人の話し声がすることに気が付いて足を止めた。
二人のものらしいその声は、司書や他の教員のものではない。
ひとりは知らぬ者の声だ。だがひとりは、聞き鳴れた低いトーンの、セフィロスのものだった。
「−−−−だから言ったろ? すぐに落ちるって」
「確かにすぐだったな。呆気ないほどだ。いくら身体だけの遊び相手とはいえ、あれは少し興ざめなほどだったな」
「はじめからおまえに気があったんだって、教えてやっただろ。感謝しろよ。あの小さい子で、いい思い、たくさんしたんだろ、オマエ」
「いい思いか−−−−おまえが座っているその長椅子でも随分やったな。昨日の昼も−−−−」
キノウノヒルモ、とクラウドは心の中でゆっくりと繰り返した。
昨日の昼間、司書室でセフィロスと触れ合ったのは、他でもないクラウドだ。
愛してると囁かれて、はしたなく声をあげて彼にしがみつき、横たわった彼の上に腰を下ろして自ら振った。
それは、自分だ。
「しかしそろそろ飽きて来たかな−−−−あれは、従順すぎるから、面白みに欠ける部分があってな」
「ひでぇ男だな。そのおきれいな顔で、さんざん愛してるとか言ってやったんだろうに」
「言った。言えばあいつは、喜んで腰を振るからな」
酷いやつだ、とセフィロスではない男の声は、さして憤慨したようすもなく言い、あわせてセフィロスが小さく笑った。
笑った−−−−
クラウドは、どきりどきりとうるさいほどに跳ね上がる自分の鼓動を、全身で感じていた。
セフィロスは、一体何を言っているのだろう?
誰のことを遊びだと?
誰に飽きてきたのだと?
震える両手から、司書室の鍵が音をたてて滑り落ちた。
鍵は、床に落ちて硬い音を響かせた。
「誰だ−−−−?」
誰何とともに開かれるドア。その奥にセフィロスと、クラウドの知らぬ黒髪の男の姿を見つけて、クラウドの足は震えた。
逃げ出したい、と思う。けれどクラウドが踵を返すより早く、セフィロスの冷たい手のひらがクラウドの腕をしっかりと掴んでしまっていた。
「クラウド、いいところに来たな……」
「あ……」
「おまえの話をしていたところだ。……聞いていたのだろう?」
懸命に、首を横に振った。けれど、頬を伝い落ちる涙が、その行為を否定していた。
「おいで。おまえに紹介しよう。わたしの友人の、ザックスだ」
クラウドの小さい身体をひきずるようにして、セフィロスは司書室へとひき入れた。背中を強く押されて、クラウドは二人の男の前で床にうずくまる格好となった。
背後で扉に鍵の落とされる音が聞こえる。
すぐに、セフィロスの声が甘く酷く囁きかけた。
「いい子だ、クラウド、よくお聞き。この男がこれからわたしとともに、おまえの身体を共有するのだよ」
いやいやをするように首を振る。
けれど残酷なセフィロスの腕は、クラウドの腕を捕まえて床に強く押しつける。
「おまえは、わたしのことが好きなのだろう? 言うことをお聞き。おまえの孤独を癒してやっただろう? おまえに快楽をやっただろう?」
「いや……イヤだ……」
セフィロスは、短く笑い、その長い脚で容赦なくクラウドの小さい身体を蹴りつけた。力なく倒れこむクラウドを無理に引き起こすと、無慈悲なくちづけで、クラウドのすべてを奪っていった。



なにやってんだろ、あたし……。図書室で密会えっちーと思ったのに、どうしてここまで不幸になるかな? これは顰蹙買いそうだ。でも送る。


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