ミュウ先生の第4弾
走れセフィロス<4>

身体疲労すれば、精神もともにやられる。もう、どうでもいいという、英雄に不似合いなふてくされた根性が、心の隅に巣くった。私はこれほど努力したのだ。約束の地を渡すつもりは、みじんもなかった。神も照覧、私はは精いっぱいに努めてきたのだ。動けなくなるまで走ってきたのだ。私は愚かな人間とは違う。ああ、できることなら私の胸を断ち割って、真紅の細胞をお目にかけたい。愛と憎しみが混ざりあって動いている、この細胞を見せてやりたい。けれども私は、このだいじなときに、精も根も尽きたのだ。私はよくよく不幸な男だ。私はきっと笑われる。私のコピーも笑われる。私は友を欺いた。中途で倒れるのは、初めから何もしないのと同じことだ。ああ、もう、どうでもいい。ここが私の約束の地なのかもしれない。ヴィンセントよ、許してくれ。君はいつでも私を信じた。私も君を欺かなかった。私たちは、ほんとうに良き心の友と友であったのだ。一度だって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことはなかった。今だって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとう、ヴィンセント。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世界で一番誇るべき宝なのだからな。ヴィンセント、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんもなかった。信じてくれ!私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。タークスのからみからもするりと抜けて、一気に峠を駆け降りてきたのだ。私だから、できたのだよ。ああ、このうえ、私に望みたもうな。ほうっておいてくれ。どうでもいいのだ。私は生まれて初めて負けてのだ。いや、私は自分がいつ生まれたのか、どこで生まれたのか知らない。しかし分かるのだ。私は今、初めて負けた。それもあんな若僧、ただのプレジデントボンボンに、だ。だらしがない。笑ってくれ。クックック。社長は、私に、ちょっと遅れてこい、と耳打ちした。遅れたら、身代わりを殺して、私を助けてくれると約束した。私は社長の傲慢さ、自分勝手さを憎んだ。けれども、今になってみると、私は結局社長と同じことをしようとしている。私は遅れていくだろう。社長は独り合点して私を高笑いし、そうして、こともなく私を放免するだろう。そうなったら、私は死ぬよりつらい。私は永遠に神への道を閉ざされる。ついでに裏切り者だ。この星のすべての中で最も不名誉の存在だ。ヴィンセントよ、私も眠るぞ。お前といっしょに眠らせてくれ。君だけは私の心を分かってくれるに違いない。いや、それとも私の独りよがりか?ああ、もういっそ、普通の人間として生き延びてやろうか。街には私の家がある。コピーもいる。宝条達は、まさか私を街から追い出すようなことはしないだろう。神だの、選ばれし者だの、星と一つになるだの、考えてみればくだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかもばかばかしい。私は、美しいが裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬるかな。------四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。
 ふと目に、潺々、何か光るものが見えた。そっと頭をもたげ、息をのんで目を凝らした。すぐ足もとに、ガラスのボトルがあるらしい。よろよろ起きあがって、見ると、岩の裂け目からこんこんと、何か小さく輝きながら、エリクサーが置いてあるのである。その瓶に吸い込まれるように、セフィロスは身をかがめた。瓶を両手でつかんで、一口飲んだ。ほうと長いため息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労回復とともに、わずかながら希望が生まれた。任務遂行の希望である。我が身を殺して、神へと生まれ変われる希望である。メテオは赤い光を木々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は信じられている。私の命なぞは問題ではない。死んでおわび、などと気のいいことは言ってはおられぬ。私は、神になるのだ。そして信頼に報いなければならぬ。今はただその一事だ。走れ!セフィロス!!



何か、全然夢のかけらもないですよね。みなさん色々想像してらっしゃるのに、私はなんでこんな変なことしかおもいつかないんだろう・・・改めて、太宰治さん、そしてみなさん(セフィロス含む)、ごめんなさい。しかもまだ続きます(笑)。


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