まんぼう先生の第5弾


先送りにしていた反省文をやります。
ちなみに罪は生徒会無断欠席(遅刻よりも始末が悪い)数回。
何を書いてよいのやら、テーマさえも忘れてしまったので勝手にいきます。



「だから言っただろう? これははずしておけと。」
「覚えてない。知らない。聞いてない。」
 拗ねたように顔を背け、ほとんど感覚がない耳にそっとふれたセフィロスの指から逃れる。
「大丈夫だって。自分でやるから、かまわないで。」

 しかし本当は、今すぐ玄関でいいから転がってしまいたいほど疲れている。と、いうより、躰が冷えてしまっていて、あらゆる感覚がどこか遠くあって、それさえも理由かどうか判らない状態だった。

 でも、たぶんこれは疲れているのだ。

 クラウドはそう思いこむことにした。
 乱暴に靴を脱ぎ捨て、放りだすとタイルが苛められたと悲鳴をあげる。その衝撃で立て掛けていたスノボが鈍い音をたてて雪に沈んだ。
 それを元に戻すのさえ鬱陶しい。
 クラウドは見なかったことにして、無言で目の前に立ちふさがるセフィロスにわざとぶつかる。
 「・・・・・邪魔。」
 セフィロスは軽くため息をつくと、普通に滑っていたら付くはずのないところについた雪を払ってやった。
 大人しく親切だけを受け入れると、クラウドはセフィロスの脇をすり抜け、また、わざとフローリングを苛めながら足音高く居間に向かった。
 その姿を見送ると、セフィロスは彼の仕草をまねて肩を竦めてみせる。そして、踊っていたところを見つかってしまったような様子で玄関に散らばるクラウドの靴を並べてやると、彼の後を追った。

 「今時、暖炉なんて珍しいな。」
 ソファを暖炉のそばに引き寄せ、浅く座って燃えさかる炎に手をかざしながら、クラウドは嫌みとも取れないことを呟く。
 「・・・・お前が買ったのだろう・・・・?」
 「まあ、そうだけど。」
 無感動に言葉を返し、セフィロスの方を見ない。
 その横顔には、微かに付いたままだった雪が解けて濡れた髪が張り付いていた。
 セフィロスは用意していたタオルをクラウドの髪にあてがおうとして、手を伸ばした。その気配に気付き、クラウドは自分からそれをもぎ取った。
 「自分でするって、いっただろ?」
 乱暴に頭を振り、下を向くとタオルでがしがしと髪を拭く。その豪奢な金の髪が荒れてしまうのではないかとセフィロスは心配したが、クラウドはそんなことを気にしている様子はない。
 そして、その杜撰な性格から推測すると・・・・
 「・・・・クラウド?」
 急にきつい口調で呼ばれ、クラウドは反射的に振り向く。
 「何?」
 「・・・・・・・・」
 いつのまにか背後に立っていたセフィロスは無理矢理顔を自分の方に向かせた。そして軽く上を向かせると、その耳をよく見えるように灯りの下に晒す。
 もともと色素が薄い肌にくいこんだピアスが凍って、一層血の気を失わせていた。
 「・・・・自分ではずす、そう言ったな。」
 「・・・・言ったよ? でも、まだ忙しいから。」
 半ば叫ぶようにクラウドは言い訳をし、きっ、とセフィロスを睨む。
 「子供扱い、するなよ!」
 「こんなに冷えて震えた手をしているくせに、何を言おうとも無駄だ。」そう言って、手を掴まれる。

 ・・・・初めてかもしれない。セフィロスの手があたたかいと感じたのは。

 暫く、その感触に包まれていたいと一瞬夢をみる。
 しかし、セフィロスの方からそれは離された。
 「こっちへ来い。」
 猫を抱くように簡単に抱えられ、クラウドはセフィロスの膝枕をあてがわれて横になった。さっきの余韻で、膝の上の猫は逆らうそぶりを見せない。
 「外に出るときは、こういったものははずせと何回言い聞かせた?」
 「・・・・・・耳にたこができるくらい・・・・」
 「私の言うことは、聞けないと?」
 「だって・・・!」
 セフィロスの細やかな手つきで、さわれば皮膚が張り付いてしまいそうに凍った金の細工のピアスがクラウドの耳から取り除かれる。
 「・・・反対側もだ。」
 それが耳からいなくなって、苦痛が少しは和らいだはずなのだが、何故かクラウドは泣きそうな顔になる。それを疑問に感じながらもセフィロスはもう片方もはずした。
 「ほら、こんなになって。そんなに凍傷になりたいのか?」
 優しく降り注ぐように言葉を掛けられ、クラウドは一層顔を歪めた。
 「・・・・そのようがよかった。」
 「何?」
 「はずすくらいなら、その方が良かったって言ってる!」
 顔を伏せ、セフィロスにしがみつきながら、くぐもった調子で言葉を続ける。
 「セフィロスに買ってもらって、セフィロスにつけてもらったんだから、はずしたくなかった。でも、そんなこと、セフィロスには判らないだろ? 俺の言ってる意味、判らないだろ? 俺、そんなつまんないないことでもすごく大切なんだ。いつも子供扱いされて、いつも俺ばっかり好きだって思ってて、だから・・・・・・はずしたくなかったのに・・・・わざと、このまま外に行ったのに・・・」
 「・・・・・判った。」
 「判ってない!」
 「・・・・・・そうだな、私にはよくわからない。だが、私にはこんなものより、クラウド、お前の躰の方が大切だ。それではいけないのか? それに、私はずっと側にいる。そんなことで良ければ、いつでもしてやる。
 ・・・・・それに、私もこれをはずした事がない。お前のことだけを言えないな。」
 セフィロスはいつもしている黒の革手袋の指先を噛み、引っ張ってはずして見せた。
 「これ・・・・」
 「お前にもらって、はめてもらってから一度もはずしたことがない。・・・・・どうして笑う? ・・・・・不潔か?」
 「っくっ・・・・・・違う・・・・そうじゃない・・・・何か・・・判らないけど、嬉しい。」
 「・・・・・・さっきまで泣いていたくせに・・・・・・」
 「じゃあ、泣かせたお詫びに、『こんなこと』じゃすまないから、もっといいことして。」
 「・・・・・疲れているんじゃ、なかったのか?」
 「疲れてる。じゃあ、まず、お風呂に行こう? それから先は、セフィロスだけ頑張ってよ。」
 「・・・・・我が儘だな・・・・」
 紡いだ言葉ほどほど困っていないような口調で呟くと、セフィロスはクラウドを抱え上げ、言われる前に用意していた浴室へと歩を進めた。



リミットレベルが上がりません(涙)
・・・・・・・南国ばっかりあるので、ちょっと逆らってアイシクル・エリアを使ってみました。
でも、この台風の季節になんだかなぁ。
皆さんの小説に隠れてくれることを願います。
で、受セフィなんぞを受け取ってしまったうりさんにお詫びの品として献上させて下さい。
それではデジョン!(死んでどうする・・・・・)


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