まんぼう先生の第3弾


と、いうことでナナキ率を上げてみたいと思います。

草原を渡る風の音は、波のそれに似ている。
風に流された草は砂漠の風紋を描き、裏、表の微かなグラデーションを輝かせていた。

「さんぽに行かないか?」
軽い食事の後、そう誘ったクラウドに賛成したのはナナキだけだった。
他の者は初夏の風を求め、窓際に集っていく。
ちゃっかり安楽椅子を手に入れたシドは床に傷を付けながらそれをテラスの日陰へと移動させ、昼寝を決め込む。
そこから数歩の広葉樹の幹にヴィンセントは躰を預け、瞑想しているようだった。
・・・・・・・もっとも、本当は何を考えているのかなんて、誰も知り得なかったが。
バレットは冷えたフローリングに腰を据え、武器の手入れ。
危なげもなく窓枠に座ったユフィは、すぐそこに射す日の光にマテリアを透かして鑑賞し、喜びに浸っている。
「はぅぅぅぅぅ・・・・」
時折漏れるため息は、16歳の娘の唇から紡がれるものにしては、間抜けといえる部類にはいるため、皆、きこえないふりをした。
エアリスとティファは麻のカバーを掛けたソファに座って談笑している。
構ってくれないので、クラウドは肩をすくめ、尾を振って急かすナナキだけを伴い、外への扉を開けた。

ざぁぁぁぁぁぁぁぁ

一瞬、強い風が吹き、流れた髪で視界が阻まれる。抑えようにも、まとまりのない髪は始末がつけられない。
草が揺れる音は思ったよりも大きく、耳の奥でいつまでも反響し、消えてくれそうにもない。
そしてその背丈はちょうどナナキの鼻の先にぴったりで、未だ成長したいと言わんばかりに細い先端でくすぐった。
逃れようとしても、辺りは一面、翠の絨毯。
くひゃん!
ナナキは額からだしたようなくしゃみをし、躰を懸命にふるってクラウドに抗議の意志を伝えた。

空の蒼と植物の翠がとけて絡む地平線。
どこかでチョコボが仲間を呼ぶ声が聞こえる。

クラウドは視線を彷徨わせながら歩を進め、ナナキのことを気にもしなかった。
そしてくしゃみが風の音と同じ日常的なBGMになりかけた頃、クラウドは急に立ち止まった。
「やめた。」
「くひゃん!・・・・・何を?」
もう、とっくの昔に散歩についてきたことを後悔していたナナキは突然の言葉に戸惑ったが、くしゃみには勝てない。
答えが返ってくるのを待つ間もなく、くしゃみの世界に帰ってしまう。
「・・・・くひゃん!・・・」
「さんぽ。」
「・・・へっ?・・・・・くひゃん!」
「ひるね、しよう。」
やはり突然にその場に座り込む。
「こっち、こいよ。」
自らの傍らを手で慣らすように叩き、クラウドはナナキを呼んだ。
何となく、というよりほぼ本能でナナキはそれに誘われ、お座りをする。
「猫?」
「違う。」
「くしゃみが猫だった。」
「でも、違う!」
「じゃあ、犬?」
「違う!」
「じゃあ、どっち?」
「どっちでもない!」
「どちらかって言うと、どっち?」
「どちらでもないの。」
「そう?」
「そう!オイラ達は犬とか猫とかとは違う種族。」
「ふうん。」
自分が聞いたくせに気のない返事を返すクラウドにナナキはちょっとむっとする。
あかはなにしわを寄せ、耳を寝かせて抗議の声を上げようとして、ふいにクラウドが仰向けに寝転がったのに巻き添えを喰らった。
「ふぎゃ!」
「あ、ごめん。でも、ひるね、しようって予告、しておいたよね。」
悪びれもなく笑うクラウドに、確かに自分も賛成の声を上げたのを思い出し、仕方なくナナキは挟まれてしまった後ろ足と尾をクラウドの背の下から引っぱり出した。そして長く横たわる。
クラウドは、また、くすりと笑うとその、そこだけ毛の長い腹を枕にした。
「ちょっと!!」
「何?」
「枕じゃないよ!」
「でも、俺には枕にしか見えない。」
ふんと鼻を鳴らし、ナナキは拗ねてみせたが、クラウドの形のよい頬が自分の自慢の体毛にうもれて笑みの形をとっているのを眺めやり、やめた。
「いちど・・・・」
「何?」
「一度、猫を枕にしてみたかったんだ。」
「・・・・・猫じゃないよ・・・・」
「知ってる。でも。あのさ、猫って人の膝の上とか、寝てるときなんて胸の上で寝ちゃうだろ?こっちの都合はおかまいなしに。だから、一度、猫を枕にしてみたかったんだ。でも、本物でやったらつぶれちゃうだろ?」
「そりゃ、ね。」
「・・・・・・・ナナキの毛、結構ふわふわして、気持ちいい。」
「ちゃんと、手入れ、してるからね。こう見えても。」
そういってクラウドを自慢げにのぞき込んだナナキの瞳。
・・・・爪月の虹彩がクラウドを認め、笑う。
「セフィロスの瞳に、似てる。」
「何?」
呟きは風に流され、ナナキの耳には届かなかった。
「・・・ねぇ、昼寝するんじゃ、なかったの?」
「する。」

間もなく、ひとりといっぴきの規則正しい寝息が、風の音にとけ、草原を渡っていった。


どうかいても落ちはセフィ・クラ。
本当に膝の上に猫をのせて下書きをしたので、足がしびれました。
うちのはアメリカンショートヘア、雌。
銀と黒の毛皮にセフィと同じような瞳を持っているので最近は「セフィ」などと呼ばれています。
はぁ、久しぶりにまともなも、かいた。

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