かいと先生の第6弾


「私は・・・なにをしたんだ・・・」
 獣への変化から元に戻ったヴィンセントは、まだ早い鼓動を必死に押さえ、目の前の状況を把握しようとしていた。しかし、見ればみるほど、目をそらしたくなる。認めたくない光景だった。しかしそれは、紛れもない現実。ヴィンセントは、見た。
 赤い液体の広がる地に倒れ、肌を切り裂かれて、おそらく呼び寄せられたのだろう、何人もの仲間に回復魔法をかけられている、少女の姿を。
 大きな目をぎゅっと閉じ、それでも口では”大丈夫”と言っていたユフィが、ふとこちらを向き、にっこりと微笑んだ。『大丈夫』と示すように。
「・・・私が・・・やったのか・・・?」
「ヴィンセント!何やってる!早く手をかしてくれ!」
 クラウドの声にも、すぐには反応出来なかった。
「・・・っ私はっ・・・・!」
 再び早まる鼓動。かすかに覚えている、彼女の悲鳴。
 元の姿に戻っても尚残っている、自分の右腕についた血のあと。
「ヴィンセント!早く!」

 数日後。
 小鳥の声と、木のさざめく音が心地よいとある木陰。木の根本に座り、何をするでもなくただ、ヴィンセントはそこにいた。
 ふと、自分の手を広げ、見る。
 自分が守るべき者に、この手で傷を負わせてしまった。それがたとえ、自我がなかった時の事だとしても、自分がやったことには変わりはない。
「・・・許されない事・・・だな・・・」
 ヴィンセントは1人、そう呟いた。
 突然吹いた強い風に、木が大きく揺れ、無数の木の葉が空に舞う。
 なにかにひかれたかのように、ヴィンセントはふと、伏せていた目を上げた。そこには、少し離れたところからこちらを見ている、小さな人影があった。
「こんなとこにいたの?ヴィンセント。」
 ユフィは小走りで近づいてくると、座り込んでいるヴィンセントの横に、座り込んだ。彼女の体のあちこちに、それほど厚くはないが、しかししっかりと巻かれた包帯を自分の目に認め、ヴィンセントはふっ、と視線をそらす。
「・・・あのときのこと、まだ考えてんの?気にしないでいいよ、あのことは」
 そういいながら、自分の顔をのぞき込んでくるユフィの瞳を見て、ヴィンセントの脳裏に、あの悲鳴が、あの瞬間がフラッシュバックする。思わず堅く閉じてしまった目を薄く開けながら、ヴィンセントは心の底から声を出すように言った。
「・・・すまなかった・・・私は・・・何てことを・・・!」
「・・・ヴィンセント・・・?」
 ヴィンセントはユフィには視線を向けずに言った。
「・・・もう私に近寄らない方がいい・・・そうしなければまた・・・」
 そう言ったきり、黙ってしまったヴィンセントの背中を、ユフィはいきなり、ばちっ!と平手で打った。それに驚き、思わず振り返ったヴィンセントにユフィは、怒ったような顔をしながら言った。
「アンタねぇ!なに勝手に悩んで勝手につっぱねてんのよ!当の本人のアタシが気にすんな、って言ってんだからそれでイイじゃん!」
 時ならぬ剣幕に、呆然とするヴィンセントの長くのびた黒い髪に、ユフィはそっと手を伸ばし、そのまま首にするりと、腕を回した。
「辛そうにされる方が。アタシは困るんだけどなぁ・・・。」
 まだ完治していないためか、首に回された腕の他、体の動きはぎこちなかった。しかし、それでも十分に暖かさは伝わり、ヴィンセントは自分の中の、何かが溶けていくような、そんな気分を味わっていた。
 そっと、ユフィの体をはなすと、今度はヴィンセントの方が、ユフィの頬に触れる。
「・・・アタシはへーきだよ。だから、アンタも平気でいなさい!」
「それは無理な相談だな・・・」
「だめっ!平気でいるのっ!」
 まるで小さな子供のように、ユフィは声を上げる。自分もそれに気づいたのか、かぁっ、と頬を赤らめた。それがきっかけになったのか、2人は小さく笑い出す。
「もう、それ以上暗くなんないでよね?」
 ヴィンセントは言葉を返すその代わりに、優しい口づけを返した。



げーほげほごほっっ!!
うっ!発作がっ!(笑)
とっととトンズラしますでゲス。
・・・そーいえば、この話しの最初の方、もしや獣○!?と思われた方もいるかもなあ・・・。


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