チープサイド先生の第6弾

投稿者 チープサイド 日時 1997 年 8 月 21 日 16:39:42:

私はFFTのエアリスは、FF7のエアリスが復活して、FFTの世界に流れ着き記憶を失っていると思っています。
だからこれもそうなっています。


「あら、あなたは昨日の……。」
エアリスが扉を開けると、そこには昨日、悪漢から自分を助けてくれた金髪の戦士が立っていた。
「いきなりたずねて来てすまない。ちょっと君に聞きたいことがあってきたんだ。」
「ええ、どうぞ入って。汚い家だけど。」
そういってエアリスはその戦士を招き入れた。上がるほどのことでもない、と戦士が言うのを、無理にいすに座らせると彼女は言った。
「ごめんなさい。借金苦しくて、お茶、出せないの。」
「そんなことはどうでもいい。それより……。」
戦士はぐるりと部屋を見回す。
家は狭いが、奥に階段がある。しかし壁紙はほとんどはがれ、灰色の地が見えている。床板も破れたりして、満足な家とは言い難い有り様だ。
家具と言えば、汚れたタンス一つと、古いテーブル、いすが三つ。台所には食器はあまりなく、一目で生活が苦しいことが分かる。
エアリスもよく見ると、だいぶ痩せてしまっている。
「汚い家でしょ?母さんの病気、治すためのお金の為に、借金しちゃって。売れるものは全部売ったの。でも、今戦争だから、なかなかお金できなくて。それでこんな状態になっちゃったの。」
エアリスが少し寂しげに笑いながら言う。
 クラウドは昨日、ラムザたちからこの世界の状況−獅子戦争のせいで、一般の人達が苦しんでいること−を聞いたが、これ程までに大変だとは思わなかった。
「エアリス−だったよね。変なこと聞くけど、君はこの世界の生まれなのかい?」
えっ、とエアリスが不思議そうな顔をしているとき、階段を下りてくる足音がして、母親らしき人の声がした。
「エアリスは、実は私の子じゃないんだよ。」
「母さん、歩いて大丈夫なの?」
ああ、もうだいぶよくなったよ、といいながら、五十歳位の女が降りて来た。
「少し前−戦争が始まってから−−どのくらいだったかな?それは忘れたが、ある日この子が港のすぐそばの海岸に流されていたんだよ。それを私が看病してやったんだ。」
いすに腰掛けて、クラウドを女は見た。
「そう、そのときはあんたの着てる様な見たことない服を来てたねえ。それで記憶喪失だったんだよ、この子。どこの誰かも分からない。
分かったのは服の縫い取りにあった名前だけだ。それで私が記憶が戻るまで世話してやろうと思ったんだけど、今じゃそれがかえって迷惑になってしまったねえ。人生これからっていう若い娘に、こんなばばあの世話なんかさせて。」
「いいのよ、母さん。命の恩人だもん。」
二人のその仲のよさを見て、クラウドは自分の元いた世界のエアリスとエルミナを思い出していた。そして確信した。このエアリスは自分の知っているエアリスに間違いない。自分と同じように、この世界に流れついたんだ、と。
「そういえば、あなたの名前、聞いてなかったね。あなたはなんて言うの。」
「ああ、俺は−−。」
クラウドは名を名のるのを中断しなければならなくなった。ひどく乱暴に戸をたたく音がして、男の怒鳴り声がしたからだ。
「やい、エアリス!出て来い!!今日こそ借金の三万ギル、返してもらうぞ!!!」
その声を聞くとエアリスの母はあわて出し、色を失った。大丈夫、私が何とかするから、と言いながら、エアリスは彼女を二階へ行かす。
「あなたもどこかへ隠れて。」
エアリスは母を二階に押しながら言う。
「分かった。」
クラウドが台所の棚へ隠れるのを見ると、エアリスは思い切って玄関の戸を開けた。
「おうエアリス、借金三万、耳をそろえて返してもらおうかい?昨日は変な奴らに邪魔をされたが、今日はそんなこともねえ!さあだせ!」
「お願い、もう少し待って。きっと返すから。」
どなる男にエアリスは必死に頭を下げる。棚の陰からそっとクラウドは様子をうかがった。クラウドは今にも飛び出しそうなほど、怒りでこぶしがぶるぶる震えている。それを必死で押さえ、憎々しげに男をにらみつける。
男はエアリスの襟首をぐいっとつかむと、さらにどなった。
「だめだ。それともこの家を、おフクロさんごと燃やしちまってもいいんだぜぇ!?」
「それだけはやめて…。お願い、もう少し待って…。一週間でいいから…。」
「そうだ。三万の代わりに、おまえが俺たちに春を売ってくれてもいいぞ?どうする?」男は、自分の顔がエアリスの顔にくっつけるくらいに近づけた。エアリスは男からなるべく顔をそらせようとする。
「いいかげんにしろっ!!彼女から手を放すんだっ!!」
ギョッとして男が手を放す。怒りに震えるクラウドが、そこに立っていた。
「何だ、また貴様か。」
男はいやらしくニヤリと笑う。
「いいかげんにしたらどうだ。彼女がこんなに頼んでいるんだ。聞いてやってもいいだろう!」
ふんっ、と男は鼻を鳴らすと、エアリスの方に向き直ってまたどなった。
「こいつも仲間だったんだな!それじゃあ仲間の治療費も含めて四万だ!特別に明日まで待ってやろう。絶対明日払え!!」
「そんな…。」
「俺は彼女と関係ない。無理矢理たずねて来ただけだ。」
「だめだ。そんなウソは通じねえ。」
憎々しげにクラウドは男をにらみつけた。俺がたずねて来なければ…、と言う自負の念がクラウドを襲った。エアリスは今にも泣き出しそうな顔だ。必死に、どうか一週間でいいから待ってくださいと言っているが、男は全く耳を貸さない。
「…よし、分かった。俺が彼女の代わりに四万払おう。あしたの正午、この家の前で渡そう。」
驚いてエアリスがクラウドを見る。男はそんなこと無理だ、と言うような顔でクラウドを見る。
「別にいいが、もし間に合わなかったらどうするつもりだ?」
「俺は約束を守る。だからだめだったときのことは約束しない。」
「よーし、それじゃあしたの正午。四万、耳をそろえて返してもらおう。」
そう言うと男は帰って行った。一瞬、エアリスの安堵のため息が聞こえる。
男が見えなくなってから、エアリスはクルリと向きを変えると、クラウドを驚きの表情で見つめた。
「あなたはなぜ、私の代わりにお金、出してくれるの?昨日会ったばかりなのに、あんな大金……。」
「いずれ分かるさ。じゃあな、エアリス。」
あっ、ちょっと、とエアリスが言う前に、クラウドはもう走り去って行った。

次の日、エアリスはもしものときのために、あるだけの金をもつと家の前へ出た。借金取り共は、もう既に来ている。三、四人程だ。そいつらはエアリスを見つけると、近寄って来た。
「ようエアリス、あいつはきっとこねえぜ。今のうちに金を出すか、それとも俺たちに春を売ってくれるか決めておくんだな。」
そう言うと男たちは、いっひっひっと気味悪く笑った。その男共をきっとにらみつけると、エアリスはきっぱりと言った。
「あの人、絶対来てくれる。約束、絶対破らない人だもん。」
どうかな?といいながらそいつらはエアリスから離れて行った。しばらくの沈黙。
エアリスは目をつぶってじっとしていた。
「そろそろ正午だが、あいつは来なかったな…。いっひっひっ…。」
不意にそばで声がした。すでに男たちに囲まれている。
「まだ時間じゃ…。」
「どうせこないさ。」
「…ここに一万あるから…、後は一週間でいいから待って…。」
もって来た金を差し出しながら、エアリスは言った。何とか平常を保とうとしているが、恐怖を感じ始めていることはだれにでも分かった。
「だめだ。耳をそろえて返してもらう約束だったな。それができないんだったら…。」
男共がニヤニヤしながら迫ってくる。エアリスは身の危険を感じて逃げようとしたが、既に男たちはエアリスを押さえ付けていた。
「さあどうする?俺たちに春を売ってくれれば、それですむんだぜ…。それともおふくろごと家を燃やされてぇか?」
「やめて…、家には…母さんには何もしないで…。私はどうなってもいいから…、母さんだけは…。」
「よーし、それじゃあ話は決まったな。こいつを裏へ連れて行け。ひっひっひっ…。」震えているエアリスを、男たちは路地裏へ連れて行く。エアリスは抵抗したかったが、そうすると母がどうなるか分からないので、必死にこらえていた。
「いっひっひっ…。」
暗い路地裏について、一人が笑いながらエアリスの頭のスカーフに手をかけた。エアリスはこの男を突き飛ばしてやりたかった。悔しさに身を震わせていた。悔しさで目が潤んでくる。スカーフが外された。
遠くで正午を知らせる教会の鐘がなっている。しかしその音も今のエアリスにはほとんど聞こえなかった。鐘が鳴り終わった。男が服に手をかけようとする。そのとき、
「貴様らぁっ!!やめろぉっ!!」
びくん、と男たちが反応する。だれかが走ってくる。エアリスがずっと待ち望んだその人の声。飛び上がりそうなほど、うれしくなった。
「ちっ…、後ちょっとだったのに…。」
「約束の金はここにある!今すぐ彼女から手を放せ!!俺は約束を守ったぞ!!!今が約束ちょうどの時間だっ!!!」
ゼイゼイ息を切らしながら、クラウドは走って来た。暗くてもそれが分かる。エアリスは、自分を押さえ付けていた手が離れるのを感じた。
親分らしき男に、彼は袋を突き出すと言った。
「確かめろ、ちょうど四万だ。」
そいつが中身を数えている間に、クラウドはエアリスのそばへ行った。
「すまなかった。俺がもうちょっと早く来ていれば、君がこわい思いをしなくてすんだのに…。ごめん。」
スカーフを拾ってやりながら言う。ううん、とエアリスが首を振る。
「あなたちゃんと来てくれた。約束、守ってくれた。」
「ようし、確かに四万、返してもらったぜ。」
男が袋を掲げて言う。
「もうエアリスにはかかわらないな?」
クラウドが聞いた。
「ああ、誓う。俺たちは金さえ返してもらえればいい。」
残念そうに、男が言った。
「よし、行くぞ。」
親分らしき男が言う。子分たちは残念そうな様子だったが、素直に親分について行った。
クラウドたちも路地裏を出た。
「あなたは、どうして私を助けてくれたの?」
表通りを歩きながら、エアリスは聞いてみた。クラウドはほほ笑むと、ちょっと散歩しよう、と言った。
「ねえ、どうして?」
歩きながらエアリスはさらに聞いてみる。どうしてもそれが不思議でならない。見ず知らずの人が、自分を必死に助けてくれるなんて。
「それは…、」
クラウドは少し照れたように頭をかく。そういえば、この人の名前も聞いてないんだ、とエアリスは思った。
「君を愛していたからだよ…、いや、今も愛している。」
「えっ!?」
突然のことに、エアリスは戸惑いを隠せなかった。
「俺はこの世界の人間じゃない。なぜだか知らないが、こっちの世界に来たんだ。
俺の世界で君にそっくり、いや、同じ人かな?エアリスと言う人がいたんだ。今は死んでしまった。だけど−、」
クラウドは、エアリスの顔を見て行った。
「俺と同じように、君はこの世界に流れ着いたんだ。間違いない。きっと君がそのエアリスだ。間違いない。覚えていないか?過去のことを。」
「ごめんなさい。過去のこと、全く覚えてないの。自分の名前だって忘れてしまっていたし…。」
それを聞いてクラウドは少し寂しそうな顔をした。二人とも、しばらく黙ったまま歩いた。
「そうだ、これに見覚えがないかい?」
クラウドがポケットから小さな玉を取り出した。クラウド自身の目の色と同じ、不思議な色をしている。それを手渡されても、エアリスは何も思い出すことができない。いや、何なのかも忘れてしまっている。初めて見るものだ。
「分からない……。これを見るのは初めて…。」
「マテリア、だ。覚えてないかい?君はいつもそれを使っていたはずだ。」
うーんと考えてみたが、やっぱり何も思い浮かばない。だめ、と首を振った。
「じゃあ、このリボンは?」
今度はピンク色のリボンを取り出した。エアリスの後ろに回ると、そっとスカーフを取り、優しく髪を束ねてリボンで結んだ。
ぴくん、とエアリスが反応する。以前、髪を結んでなかったっけ?という気がして来た。
エアリスは、さっき渡されたマテリアをじっと見つめてみた。
「どうしたんだい?」
クラウドが彼女の前に立って聞いた。
「私−−−、これの使い方知ってる!」
いつもそうしてたように、マテリアに精神を集中させると、前にいる彼に、いつもそうしてたように魔法をかけた。
「…ケアル!」
淡いグリーンの光がクラウドを包み、失った体力を回復させる。
「よかった…。思い出してくれたね……、エアリス…。」
とてもうれしそうな顔をして、クラウドが言う。
「クラウド…、やっと思い出せた…。会いたかったよ……。」
「俺もだ…。こっちの世界に流れ着いていたんだね……。」
二人はしっかりと、しばらく抱き合う。
「エアリス…、俺たちの世界へ帰ろう…、元の世界へ…。」
それを聞くと、エアリスは悲しそうにクラウドから離れた。
「ごめんね…、私、帰れない…。その世界じゃ、私、死んだ人だから……。」
「そんな……。」
クラウドはひどく落ち込んだ。せっかく会えたのに、また別れないといけないなんて…。
「大丈夫、私、きっと帰る。そんなに遠い日じゃないから…。」
「…分かった。きっと帰って来てくれ、エアリス…。」
「うん、約束、だね。」
エアリスがすっと手を挙げて小指を立てた。
「指きり、ね?」
クラウドが小指をエアリスのそれにからめる。エアリスが、にっこりと笑う。クラウドもつられて笑う。たとえようもない位、幸せだった。

「おーいクラウドー!そろそろ行こー!」
ラムザが向こうで呼んでいる。
「仲間が呼んでいるから。じゃあね、エアリス。」
「うん、クラウド、頑張ってね。」
クラウドは仲間のところへ走って行く。走りながらエアリスに大きく手を振った。エアリスも手を振った。
「クラウドー!きっと帰るからねー!!」


*お願い*
私の作品で、ご指摘ありましたら教えてください。(表現おかしいとかということ)
お願いします。


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