チープサイド先生の第3弾

投稿者 チープサイド 日時 1997 年 7 月 29 日 18:17:26:

失恋えありすちゃん。前のザックスエアリスの続き。前の読んでないとわからないかも…



 あのとき別れたきり、彼は帰って来なかった。1週間後にいつもの場所へ行っても、いくら待っても来なかった。
それから毎日毎日そこへ行っても、彼は姿を見せなかった。
 3カ月たった。何の連絡もないまま。何もする気がなくなり、以前の明るさなど消えうせてしまったエアリスを、エルミナはただ不安げに見守る事しかできなかった。ザックスがいなくなってから、エアリスは本当に生きる気力もうせたようだった。話しかけても少し返事をする程度で、自分から話をするということもなくなった。エアリスの頭を支配していたのは、絶望と悲しみだけだった。夜中に一人で泣いているのを、エルミナは何度も見た。

あるときなど、エルミナが出掛けているときにナイフで自分の手首を切ろうとまでした。幸いなことに手首を切ろうとした瞬間にエルミナが帰って来たので、ほんの少し血が出た程度で済んだが。
傷の手当をされ、ベットに寝かされてぼんやりと宙を見ているエアリスにエルミナはいった。
「もうあきらめなさいよ、」
そう言われエアリスはぼんやりとエルミナを見た。しかし焦点はあっておらず、どこか遠くを見ているような感じだ。
「彼のことはもうあきらめなさいよ、エアリス。こんなに待っても来なかったんだから。そのうちまたいい人を見つければいいさ。元気をだしな。」
エアリスはかすかに首を振り、答えた。
「いや…、彼じゃないと……。他の人じゃ……。」
その様子を見てエルミナは首を振り、ため息をついた。
「ふぅ……。エアリスをこんなに夢中にさせておいて、いなくなるなんて…。まったくそんな人だったなんて思いもしなかったよ……。」
エルミナが部屋をでて行くと、中からエアリスの泣き声が聞こえてきた。

 その日からエアリスは、まったくものを食べようとしなくなった。一日中ベットのうえに座ってぼんやりしているだけだった。日増しにやつれていくエアリスを、うまく励ますことのできない自分を、エルミナは情けなく思った。
 ある日、ふらふらと家を出て行ったエアリスを、エルミナはそっと追って行った。今のエアリスの状態では何をするか分からないからだ。
ぼんやりとエアリスは五番街の教会の中に入って行った。エルミナもそっと中に入って様子をうかがって見ると、エアリスは花畑の真ん中で座って顔を手で覆い、ずっと泣いていた。声を出さず、涙だけが花の上にこぼれ落ちていく。
エルミナは泣いているエアリスを見て小さくため息をついた。目を閉じて、どうやったらエアリスを立ち直らせることができるか、考えて見た。
エアリスが動いた気配がしたので、目を開けて見ると、花畑の中央にエアリスは立っていた。泣いたせいで、目が真っ赤になっている。懐から何か取り出すと、目を閉じて、上を見上げる様に首を上げた。手にもった何かを首の上にかざした時に、それがキラリと光り、ナイフと分かった。
「エアリスッ!やめなさいっ!!」
まさにナイフを喉元に突き立てようとしたその瞬間、危ういところでエルミナが止めに入った。ギクリとしてエアリスは振り向いた。
「母さん……。」
「エアリス!死のうとなんかするんじゃないよ!」
「だって……。」
「もっと気を強くもちなさい!彼を信じているんでしょう!何かあってどうしても帰れなくなったか、行った先でもう一つ任務ができたに違いないよ!約束したんだろう、また会おうって。ザックスは約束をきちんと守る人だって事、あんたが一番よく知っているだろう!母さん、エアリスがそんなに弱い子だったなんて、思いたくないよ!」
自分でも驚くほどに、大声で言った。エアリスは大きな声で突然言われて、驚いたようだった。そして、ため息をついて寂しそうに笑った。
「母さん、もう、いいの…。もう…ほっといて……、お願い……。」
パチンッ!
エアリスは叩かれ、よろめき倒れた。エルミナが頬を叩いたのだ。上半身を起こし、上を見ると、涙を流して怒っているエルミナの姿があった。
「母さん……。」
「ザックスが死んだって話は聞かないだろう!もしザックスが帰って来たとき、エアリスがいなかったら悲しむだろう!それに…。」
そこでエルミナは少し間を置いてから言った。
「ザックスが帰って来なくても、彼のくれた花はちゃんと育てなきゃ。ほら、枯れそうなのもあるじゃないか。」
そう言ってエルミナは雑草を取り、枯れた花を取り除きと、花の世話を始めた。それを見てたエアリスも、すぐに手伝いだした。
花の世話をしながら、エルミナは話し出した。
「母さんもねえ、昔そういうことがあったよ。付き合ってた人に振られて、その日から毎日泣いて過ごしたな…。とても悲しかった。食べ物も喉を通らなくてね…。何度死のうと思ったことか…。しばらくは立ち直れなかったよ……。」
「ふぅん……、そうだったの……。」
「あんたも泣いてばっかりじゃあいけないよ。初恋は全部が全部実る訳じゃあないだからね。時には失恋もあるだろうさ……。元気をだしな。」

その日から、エアリスが少しずつ元気を取り戻して行くのが分かった。教会や裏庭の花の世話を毎日して、上の街へ花を売りに行く事もまた始めた。その様子を見てエルミナはほっと胸をなでおろした。
”あの子はすぐに、元のエアリスに戻ってくれるさ…。”
エルミナは、明るく無邪気なエアリスが好きだった。実の娘のように愛してきたエアリスが毎日元気に過ごして行くことは、エルミナの願いであり、喜びであった。
夜そっとエアリスの部屋をのぞくと、すやすやと眠るエアリスがいた。もうこれまでのように泣いたりしていない。
”いつかきっと、あんたを幸せにしてくれる人が現れるよ……。”
眠るエアリスに、そっとエルミナは語りかけた。



なんかいつの間にか、エルミナさん主人公に…
エアリス主人公にするつもりだったのにな…
感想求む。


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