チープサイド先生の第1弾

This is 鎮静剤っ!!!


 ミッドガル八番街。昼間でも灯る街灯の下に一人の花売りがたたずんでいた。
歳は14・5歳だろうか。彼女のその美しい顔の割には、
バスケットの中の花は貧弱で少なかった。
時たま通行人に声をかけるが、皆気にする様子もなく、通り過ぎて行く。
今日はもうだめかなぁ・・・、そう思ったとき、壱番魔光炉の方から一人のソルジャー
が歩いて来た。そのソルジャーは、他のソルジャーの持つ冷たさと厳しさが感じられず、暖かさを持っている気がした。
あの人がだめだったら今日はもうおしまい、そう心に決めて声をかけてみた。
「ねえ、お花買ってくれない?1ギルなんだけど。」
そう声をかけてみると、そのソルジャーは彼女の顔をみて少し慌てたようだった。
「ん、あっ、それじゃあひとつもらおうか?」
「わぁっ、ありがとぉ!」
無邪気な幼女の様ににっこり笑ってカゴの中から一番いい花をとりだした。
ソルジャーの方は、その彼女の顔にじっと見とれていた。
「はい、どうぞ。」
にっこり笑って花を差し出すと、そのソルジャーは突然言った。
「お、俺、ソルジャー2ndのザックスって言うんだ。君、なんて名前?」
「えっ、わ、私は・・・」
とつぜんんの問いに驚くと同時に、ふと考えた。
素直に名前を言っていいのか、と。以前にも神羅兵に名前を聞かれた事がある。
しかしそいつは、彼女に乱暴しようとした。
名前を言って大丈夫かな?そう思ってそのソルジャー・ザックスの顔をみた。
大丈夫、この人なら。なぜかそう思って安心していった。
「私はエアリス、五番街スラムに住んでるの。」
「エアリスかぁ・・、ねえ、今時間ある?」
「え?うん、あるけど・・」
「じゃ、あそこの喫茶店でお茶飲まない?君といろいろ話したいんだ・・」
そう言われてエアリスはザックスに素直にしたがってその店へと入った。
エアリスは、どうしてこの人の言うことに素直にしたがったんだろう、と思った。
席につくとザックスはいろいろなことを話し出した。
話を聞いているうちに、エアリスはザックスにどんどんひかれていった。
その明るさ、性格に。
ザックスの方もエアリスがたまらなく好きになった。
今までこんなにかわいくて明るくて無邪気な少女にはあったことがない。
ミッドガルで長年暮らしていると、ほとんどの者が自分のことだけで精一杯、
自然と暗く冷たい性格になってしまうのだ。
それにもともとザックスは、エアリスみたいな性格の子が好きだった。
「あ、もうこんな時間。母さんが心配するからもう帰らなくっちゃ。ありがと、ザックス。とっても楽しかった。」
エアリスは、席を立ってそう言った。ザックスとしては、もっとエアリスと一緒にいたかった。いや、このまま離れたくはなかった。
「また、会ってくれるかい、エアリス?」
「もちろん、ザックス。私もまた会いたい。」
「それじゃ、約束だ。また会おうな。」
八番街ステーションへ着くと、ちょうどあと3分で汽車が来るところだった。
「じゃあね〜、ザックス〜。」
そう言って駅の中へ行こうとするエアリスの手を、突然ザックスはぐいと引くと、エアリスの体をだきしめた。
えっ、なにっ?
それを口にするより先に、ザックスの唇がエアリスの唇に重ねられた。
エアリスは、突然のことに戸惑い、体中に強い電気が流れ、全身に火がついたようにエアリスは思った。エアリスは、ザックスのことが一瞬も忘れられないほどに心底好きになった。
二人は、堅く堅く抱き合った。

「へぇ・・、すごいな・・。」
数日後、エアリスは、ザックスにスラムの教会の花を見せた。
「エアリス、これみんな一人で世話してんの?」
彼は驚きを隠せずに言った。
「うん、私がもっと小さかったころね、母さんに連れられてここへ来たの。そしたらとってもお花がきれいに咲いててね、それからずっと世話してるの。」
「ふぅん・・。」

「エアリスが最近妙にはしゃいでると思ったら、そういうことだったのかい。」
エアリスがエルミナにザックスを紹介すると、エルミナは少々驚きながらそう言った。
「ねぇ、彼と付き合っちゃ、だめ?」
エルミナが、少し怪訝な顔をしたので、エアリスは不安な顔をしてそっと聞いてみた。
「良さそうな感じの人じゃないか。かまわないよ。」
エルミナは、笑いながらエアリスにそう言った。

ザックスと初めてあってから、もう数カ月がたった。
エアリスは、一週間ほど風邪をひいてザックスとも会えず、教会にもいけなかった。
お花、枯れちゃったかなぁ・・
そう思いながら教会に行ってみると以前はなかった花が、いくつも植えられていた。
多分彼が植てくれたんだ、そう思いながらもとりあえずザックスに聞いてみた。
「ねぇ、教会の花畑に新しいお花、咲いてるんだけど、ザックス植えてくれたの?」
「ああ、あれか。そうだよエアリス。」
「なんで〜?」
「ん・・」
理由を聞いてみると、ザックスは照れて、頭をかきながら言った。
「エアリス、そろそろ君の誕生日だろ・・」
「え・・」
「俺からの誕生日プレゼント。気に入ってくれたかい?」
そう言われると、エアリスはうれしくてうれしくて、涙があふれて来た。
「おいおい、泣くなよエアリス。」
「うん・・、うれしくて・・・、ありがと・・ザックス・・」

ザックスが手伝ってくれたおかげで、エアリスの家の裏庭にも花が咲くようになった。
その花を売るようになってから、以前はほとんど売れなかった花が、よく売れるようになった。
そんなある日、八番街ザックスと会って五番街スラム街に帰る途中に、ふだんはほとんど人の乗ってない汽車に、あまりいい感じでない人達が二、三人乗っていた。
ああいうのに関わったら最後、どんなことになるかエアリスはよく知っていた。そいつらとは少し離れた入って来たドアのそばに立って、外を見ていると、ID検知エリアに入り、暗くなった。
「やだな、このエリア。暗くなるし・・・」
誰とにもなくエリアリスはつぶやいた。
「そうかい、俺たちは結構気に入ってるけどな。」
不意に後ろで声がした。驚いて振り向くと同時に明るくなり、さっきの男たちがいつの間にかエアリスを取り囲んでいるのが分かった。とっさに逃げようと思ったが、もう逃げれる隙が無い。
「おい、ねぇちゃんよぉ〜。俺たちとあそばねぇかい?」
そいつがニヤニヤしながらいった。エアリスはこわくてこわくてたまらなかった。頭の中が真っ白になった。
「おい、何とか言ったらどうだい!?」
もうひざはガクガク震えている。言葉を言おうとしても、口がまるで動かない。
「こいつ、震えてるぜぇ〜。」
「おいねぇちゃん、返事がないのは俺たちと遊んでくれるってことかい?」
と、不意に二人の男がエアリスの両手をすごい力で押さえ付けて来た。
「何すんのっ!やめてっ!」
必死に振りほどこうともがいたが、男たちの手は離れない。
「ニヒヒヒヒ・・・」
もう一人の男がいやらしく笑うと今にもエアリスに飛びつこうとした。
「いやぁっ!やめてぇっ!はなしてよぅっ!」
必死に叫ぶが、周囲には助けてくれるような人は乗っていない。恐怖で目が潤んでくる。「ニヒヒヒ・・、こいつ泣いてるぜ・・・」
「たなんねぇな、かわいこちゃんはよ・・・」
「やめてぇっ!お願いっ!はなしてよぉっ!」
「こんないい獲物はなす訳ねぇだろ・・」
何とか逃れようともがくエアリスに男が飛びつこうとしたその瞬間、
「ぎゃあっ!」
男が血しぶきと肉片を上げて壁にたたきつけられた。
「な、何だおまえはっ!」
「その子から手をはなせっ!」
「何だとこのっ!」
もう一人が殴り掛かろうとすると、ヒラリと声の主は男をかわし頭に強打を浴びせる。ゴキッといやな音がして、男はその場に倒れ伏した。
「ひえっ!おたすけっ!」
もう一人は大慌てですぐさま後ろの車両へ逃げ込んだ。
「大丈夫かっエアリス!何もされてないかっ!」
「ザックス・・こわかったよぅ・・・」
ザックスはバスターソードをしまうと、泣き出してしまったエアリスを優しく自分の腕に抱き込んだ。
「よしよし、もう大丈夫。これからは一人で汽車に乗るんじゃないぞ。俺が送っていってやるからな。」

エアリスとザックスが初めて会ってから、もう2年が過ぎた。
ザックスはソルジャー1stになり、また一段とたくましくなったようだった。
そして、久々に会えた日に、ザックスはしばらく任務で君にあえなくなる、といった。「今度はどこ?」
「ニブルヘイムだ。エアリス新聞で読んだだろ、あの事故。あれに俺とセフイロスで行くことになったんだ。」
「ふ〜ん。で、どのくらいかかるの?」
「セフィロスが一緒だからそんなにはかからないよ。一週間くらいだ。」
「じゃ、帰って来たら、また一緒にどこか行こうね。」
「ああ、約束だ。」
「じゃ、指きり。」
汽車が来る時間になって、七番街スラムの駅へザックスが行こうとしたとき、エアリスはザックスに、二度と会えないんじゃないかという胸騒ぎを感じた。
「ザックス、きっと帰って来るよね?」
「当たり前じゃないか。帰って来たら真っ先に会いに行くよ。」
「うん、じゃ、がんばってね。」
そう言うと、エアリスはザックスの肩に飛びつき顔にキスをした。
エアリスからザックスへキスをしたのはこれが初めて、いつもザックスの方からだった。だからザックスはそのキスがとれもうれしかった。
「じゃあね〜、ザックス!早く帰って来てね!」
エアリスは、列車に乗り込んだザックスに大きく手を振った。ザックスも窓から手を振った。汽笛が鳴り、汽車が出て行った。
これがまさか二人の永遠の別れになるとは、このときだれも予想することなどできなかった。


ふ〜。これ見たらいきなりエアリスとザックスだもんね。びっくりしちゃうよね。
鎮静剤にと書いたんだけれど、エアリスが襲われるシーン書いたらかえってリミットレベルあがっちゃうよね。
続編だしたら、怒る?感想もとむ。


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