埼玉プロレス旗揚げ戦
99/03/29 東京・大田区民プラザ地下体育室大会

 17時40分頃到着。予想通りまだ開場していない。人はまばらに来ている。18時になっても開場しない。20分頃ようやく開場。
 エプロンには「SPWC」(裏は「SPWC」)。リングの四方にひな壇。座って見れる。売店には「サバイバル飛田Tシャツ」、「飛田の恥ずかしい写真入り対戦カード付きパンフレット」、DDTのチケットが売られている。他の人が買ったものも含め、数枚の写真を見たが、どれも違う。トレーディングカード?コンプリートしなきゃ駄目?試合開始予定時間の18:30から20分ほど遅れて、オープニング曲(暴れん坊将軍)が流れて開始。ギルギルガンJrの対戦相手XがI.W.A.JAPANの山下義也(ビッグネーム)だと発表され、意外な大物の登場に、場内興奮の坩堝と化す。

 入場式。

 飛田の挨拶。

第1試合 シングルマッチ
 山下義也<I.W.A.JAPAN> VS ギルギルガンJr


 今日がデビュー戦だというギルギルガンJr。小柄な体格の3つ目の怪人だ。しかも、長い舌を出しっぱなし。Jrの技を一通り受けた義也が、Jrの第3の目を攻撃。しかも客に見せ付けるかのように。いやらしい攻撃だ。その後もラリアット、カミカゼで痛めつけ、最後は新人への洗礼、逆片エビ固めで勝利。6分24秒。敗れはしたものの健闘したJrに対し、場内からは暖かい拍手が送られた。

第2試合 総合格闘技ダイハードトーナメント 1回戦第1試合
 鴨居長太郎<ボクシング代表(二瓶組)・日本> VS ザ・カラテ・デビル<全日本空手振興会代表・日本?>


 ザ・カラテ・デビルはデストロイヤー風のマスクをつけた謎の空手家。T.A.M.A.の長瀬総帥がセコンドにつく。鴨井さんのセコンドには二瓶組の幻らがつく。カラテには彰俊説、青柳館長説等諸説流れる。カラテの手技足技を巧妙にしのぐ鴨井さん。マジモードは強い。2R1分8秒、パンチ連打で鴨井さんのKO勝ち。カラテは腹部にダメージを負った模様。

第3試合 総合格闘技ダイハードトーナメント 1回戦第2試合
 エドワード・セクストン<全米マーシャルアーツ組合代表・米国>
 VS Toshi森谷<プロレス代表(国際プロレス)・高円寺>


 エドワード・セクストンはホントに外人だった。リングス・グルジアとかそんな感じの。エディの攻撃に防戦一方の森谷さん。グラウンドの攻防になってもエディはジェットセンター仕込みの(?)アキレス腱固め、脇固めで攻め、これで森谷さんの左半身が破壊されてしまう。更に追い討ちのヒールホールドで森谷さん無念のギブアップ。1R2分51秒。

 最下位決定戦に出場する2人が共に手負いの状態となり、大会に暗雲が立ち込め始める。

第4試合 総合格闘技ダイハードトーナメント 最下位決定戦
 ザ・カラテ・デビル VS 佐野直<プロレス代表(国際プロレス)・新宿歌舞伎町さくら通り>


 休憩を挿み、最下位決定戦。が、1回戦で負傷した森谷さんが最下位決定戦を辞退。「えーー!?」。トーナメントの続行が危ぶまれたが、「こんなこともあろうかと」各代表毎に補欠選手が用意されていた!プロレス代表のスペシャルリザーバーは佐野直!国際プロレス所属で各団体から引っ張りだこの、今売り出し中の若手選手だ。
 立ちの攻防はやはりカラテ有利。そのカラテの攻撃をかいくぐり、タックルを仕掛ける佐野。3R0分21秒、マウントマンチの連打を佐野に浴びせるカラテ・デビルのTKO勝ちが宣告された。納得行かない様子の佐野だが、かなりダメージを受けた様子。思ってもみなかったプロレス最下位という結末に、プロレス最強神話が音を立てて崩れ始めた。

第5試合 総合格闘技ダイハードトーナメント 決勝戦
 鴨居長太郎 VS エドワード・セクストン


 決勝戦。本命のプロレスが姿を消してしまい、場内の観客は頭を日米対決に切り替える。「リメンバー、ヒロシマ!」「フォーエバー!」「フォーエバー?」。自ら手足を自在に操り、パンチ、キックを繰り出すエディに対し、鴨井さんはあくまで2つの拳のみ、BOXINGで真っ向勝負。激しい打ち合いとなる。3R0分24秒、コーナーにつめてパンチ連打を浴びせた鴨井さんがTKO勝ち。

 地獄のダイハードトーナメントを制し、優勝のトロフィーと副賞を受け取る。

第6試合 シングルマッチ
 サバイバル飛田 VS 原始猿人ヴァーゴン


 メインイヴェント。まずはサバイバル飛田が入場。会場に集まったファンの声援に両手を挙げて応える(前傾姿勢で)。

 赤コーナーからヴァーゴン入場。黒覆面の男が先導。そして布を被せた上に紐で縛られ、義也、佐野に両側から押さえつけられたヴァーゴンが現われる。

 リング近くでその縛めを解かれ、放たれたヴァーゴン。中国雲南省あたりに生息するという野人は実在したのだ!

 全身は剛毛に覆われ、その恐ろしい顔には大きな牙・・その姿はまさに猿人!自由になったヴァーゴンは突然鉄柱にしがみつく。鉄柱を故郷の森の大木と思ったか、それともこの見慣れぬ光景に戸惑い、脅え、何かにすがりたくなったのか。義也と佐野が無情にもヴァーゴンをリングに押し上げ、飛田と戦わせようとする。その人間のあまりにも身勝手な行動にヴァーゴンがキレた。人間は時として大自然を軽視する。優れた叡智を持つ人類が大自然をもその支配下においたのだと錯覚するのだ。この時の佐野がそうだった。彼は人間の中でも最強の肉体を持つプロレスラーの一人なのだ。そう思い込んでも仕方がないのかもしれない。だが、大自然はそんな彼に鉄槌を食らわせた。ヴァーゴンは自分をぞんざいに扱う佐野を捕まえると一気に彼の着ているTシャツを破り、佐野を投げ捨てた。だがそれはヴァーゴンの力のほんの一端でしかなかった。

 ゴングがなる。眼前に飛田が迫る。数日前、飛田は公の場で「原始猿人ヴァーゴンをブッ殺す」と宣言していた。今の飛田は殺意の塊だった。ヴァーゴンは自分の置かれた立場に気づいているのか。しかし野生の感というやつか、ヴァーゴンは飛田を「危険なもの」と見なしたのだろう。迫る飛田をその絶大なる腕力で一押しした。そう、ほんの一押しだった、ヴァーゴンにとっては。だが、プロレスラーとはいえ、生身の人間である飛田にとってはそれはとてつもない一撃であった。

 飛田はコーナーまで弾き飛ばされ、コーナーポストに強烈に叩き付けられ、うずくまった。おそらく再起不能であろう。

 目の前の危険を排除したヴァーゴンは場外へ降り立った。恐れ、逃げ惑う観客達。観客達の命が危険にさらされる!

 自分の興行を見に来てくれた客を守ろうという気持ちがそうさせたのか、それとも眼前の敵を叩き潰したいというファイターとしての本能がそうさせたのか、そのいずれかはわからないが、再起不能のはずの飛田は立ち上がった。

 立ち上がり何事か呟くと場外のヴァーゴンめがけ飛び掛かっていった。場外でもみあう飛田とヴァーゴン。
「・・14、15、16・・」
 どこからか数字を数える声が聞こえる。その場所は・・リングの上、数えているのは”アイアンマン”西田レフェリーだ。そう、これはプロレスの試合なのだ。だが、我を忘れてヴァーゴンに挑む飛田と、プロレスなど知るはずもないヴァーゴンにはそんなカウントなど全く意味を持たない。ついに20数えられ、ゴングが乱打された。プロレスとしての裁定は両者リングアウト。飛田から逃れたヴァーゴンは出てきた方向(控え室がある)へと逃げ去っていく。2分26秒、両者リングアウト
 リングに戻り、何故終わらせた?と西田レフェリーに詰め寄る飛田。「できるのか?」問う西田レフェリーに答える飛田。西田レフェリーが大会本部と協議に入る。事の成り行きを固唾を飲んで見守る観客。
「5分間の延長戦を行います!場外カウントは数えません!」

延長戦
 サバイバル飛田 VS 原始猿人ヴァーゴン


 義也、佐野によって再び、リング上に連れ戻されるヴァーゴン。どうしてここまでしてヴァーゴンが戦わねばならぬのか。「ヴァーゴンが可哀想だ」「もう、やめてくれ!」。客席(の一部)からそんな声が聞こえ始めた。唐突にヴァーゴンがダッシュ、飛田にアタック。再び弾き飛ばされる飛田。なんとか立ち上がった飛田にたいしてつかみ掛かり、投げ捨てる。飛田、ここまでか!?更に追い討ちをかけようというのか、ヴァーゴンがコーナーを登る。そして、何事もなかったかのようにリング上に飛び降りる。もはや飛田など敵ではないと思っているのだろうか。その時、もう駄目かと思われていた飛田が蘇生。気づいたヴァーゴンが再び挑みかかったところを捕らえ、パイルドライバー一閃!そのまま押え込み、飛田が勝利。人間力が大自然の力に打ち勝ったのだ。

 ヴァーゴンが去った後、リング上に座りこんだままの飛田がマイクを手にし、「今日はどうにか生き延びた、明日も明日で生き延びる。これからもよろしくね」と。

 ガッツポーズ

20世紀の観戦記録