場所は東京新宿、日差しも西に傾き始めた冬のある1日。新宿御苑で対談が行
われた。
 年も明け、新たな風を受けて進み始めたWEAREXのSIVAに、最近のことを語って
貰った。前回のインタビューから5カ月間の時が過ぎたが、思わぬ出来事でその
5カ月という時間がSIVAにとってどんなものになったか。そして今後の活動に関
しての展望は?
 なんて別にスゲー事なんてやってないんだけどね。
 
 
 

  『まぁ自分には充電期間だったと言い聞かせてますよ』
 

--------こんにちは。

SIVA「こんにちは」

--------早速だけど、去年は災難だったねぇ。

「まぁ、色々ありますからね、こんなもんかも知れませんよ」

--------所属していた会社が倒産したのって、あの夏の対談(HDL140.LZH同梱)の
すぐ後だったもんねぇ。正直言って驚いたよ。あれからほとんど表に出た活動し
てなかったから、なかなか状況も把握しづらいものがあったしね。

「突然でしたからね、倒産したの。給料も全然出てないし、あれから借金した
り散々でしたよ」

--------で?今の状況としてはどうなの?

「一応バイトしながら細々とやってます(笑)。稼がないと生活できませんから
ね、おかげで予定とかメチャメチャでしたけど」

--------やる予定立ててた事とか色々あったみたいだもんね、この約半年の時間
で。

「まぁ自分には充電期間だったと言い聞かせてますよ、本当はかなりの放電期
間だったような気もするけど(苦笑)」

--------放電期間か(苦笑)。確かに表面的には充電というよりは放電なのかも知
れないけど、表面には出ないような〈気持ち〉とか、そういったメンタル的な要
素は蓄えられたんじゃない?

「まあ、確かに目先の忙しさのおかげで何も表現できなかったり、何かを使お
うとか、何かする前にまず生活資金が有りましたからね、唯一心だけがじっくり
と時間をおいて、色々なことを模索することが出来たっていうのはありますけど
ね」

--------ただ、方向性の問題だよね。足場がもろい状態でどこに傾いていくかっ
ていうの?期間が長いだけに気がかりだったけど。

「フラストレーションは溜まりまくりましたよ。だから、どっちかっていうと
気持ちや考えを練って蓄えたというよりは、どんどん鬱になっていって、一時期
はヒステリックでしたよ。
 こういう状態になって初めて解ることとか有って、全く収穫がなかったってい
う訳じゃないけど、かなりの面で人に迷惑かけたりとか、いろいろな人に心配か
けたりとかあって、自分の中で追い込んでたモノとかあったんで、この半年って
いう期間が俺の中で最終的にどれだけの傷を負わせ、どれだけの傷を癒せたのか
はよく解らないですね。ただ、こういう状況になって人って言うのは面白いもの
だなって感じましたけど」

--------それはSIVAって言う一個人が少し成長していった証のひとつって事
かな?

「成長はしましたけど、この半年で人に指摘されるようなこととか多くなりま
したね。テンションが高いとか、目が恐いとか、独り言が多いとか。どことなく
壊れてきたって言われたこともありますけど、何て言うかテンションは高くなっ
てきた気は自分でもするんですが、他は自覚がないんです」

--------おいおい、お手柔らかに頼むよ。

「何て言うか、10年後には俺はもうここには居ないんじゃないかなって、本
当に思うときがあります。散り際は派手にいきたいですけど(笑)」

--------そんなところでYOSHIKI節してどうするんだよ(笑)。
 

  『活動休止はしないし、WEAREXも解散を考えていません』
 

--------とりあえずまたここに戻ってきたって言うことは、この半年間で沈んで
いたものがまた浮上してきたって解釈していいのかな?

「本当は活動休止宣言でもしておけばここまでまわりに迷惑をかけなかっただ
ろうと思ってます。だけどそうしなかったのは、まだ何かやりたい事っていうの
がうまく表現し切れていないし、今この時点でも悔やまれることとかあって、事
実上活動休止だったわけですけど、気持ちっていうか、今のシーンにまだ居る気
持ちでいましたからね。それに、このまま沈みっぱなしじゃいろんな人達に申し
開きが立たないじゃないですか。だから活動休止はしないし、WEAREXも解散を考
えていません」

--------アクティブになるにはかなりのリハビリが必要とされるけど、その意気
なら乗り越えて行けるね?

「乗り越えないといけないでしょう(笑)、最近また新たに知り合いも増えたん
で、いい刺激を貰ってますしね。年も変わって心機一転しないと、何処で踏ん切
りつけていいのかわからないじゃないですか」

--------そういえば1月17日に Voice Magic(以下VM) 2 っていうイベントを
行ってたよね?2ってくらいだから、当然1もやっていたと思うけど?

「1は会社が倒産した日にやったんですよ(苦笑)、会場とかはもちろん倒産前
に決めてて、倒産なんて思いもしないまま当日を迎えて、そしてそのイベントを
行う時には出るか悩みましたよ」

--------主催者だしね、そうおいそれとはキャンセルできないだろう?

「で、出たわけですが、いやはや、楽しんでいいのかなんなのか、複雑な心境
でしたよ」

--------2を行ったのは自分に吹っ切れたから?

「まぁ、自分の中でブチ切れたものっていうのがあって、もう色々とあったこ
との、特に嫌なことを忘れてやろうと。今年から俺は俺に我侭に生きていこうと
思ってて、去年の年末にフッとイベントの話が出て、じゃあやるかって事になっ
たんです」

--------今回は主賓でもある後援者が出れなかったって聞いてるけど?

「そうなんですよ。もともとVMってイベントは美龍さんが居て成立するイベン
トですからね、VM2はそういう意味では不完全なイベントでした。この次は今回
のことをバネに256倍にして3を開く予定です(笑)」

--------じゃあまたすぐにやる訳かな?

「都合が合えば出来ますね。ただ、2月一杯は苦しいかも知れませんけど」

--------楽しみだね。そん時は教えてくれよ。

「ははは、いいですよ」
 

  『まぁ、まだ模索し続けている課程の、ほんの一過程と考えて下さいよ』
 

--------色々なメディアに対してのアプローチをして行くんだと思うけど、何か
聞いた話、立体造形にも手を出すんだって?

「もう話が行っちゃってるんですか?(笑)」

--------早耳だけが取り柄だからね(笑)。

「ええっとですねぇ…(ここでポケットから何やらメモのようなモノを出して
きた)、こういうものを作るんですよ」

--------何だいこれは?スタートレックにでも出てくる宇宙船かい?

「鋭いですねぇ(笑)、でもスタートレックではないです。これは昔やっていた
あるアニメーションの中に出てくる宇宙船なんです」

--------ふぅん。でもどういった風の吹き回しで作る気になったわけ?

「事の起こりは大した事じゃないんですが、人に色々と触発されまして、じゃ
あ作ってやろうかと(笑)」

--------そんな気持ちで出来るのかい?

「いや、軽い気持ちじゃ出来ませんから、やるからにはきっちりやりますよ」

--------新たな試みって奴だね。でもあんまり手を広げすぎると大変だよ。

「そうですね(苦笑)。まぁ、まだ模索し続けている課程の、ほんの一過程と考
えて下さいよ」

--------音はもとより、本、絵、造形…留まるところが無いみたいだね、これで
すべてうまく行くって言うんならいうことは無いけどね(笑)。

「いかせて見せますよ、でも自分にとって納得がいっている状態が、一番うま
く行っていると思うんで、受けるとかどうかって事はまた別だって考えてますけ
どね」

--------でも受けなきゃ受けないでまたジレンマが生じてくる癖に(笑)。

「ははは、痛いところを突いてきますね。でも、自分が受け手のつもりでもの
を作っていくって考えれば…、つまりは良いものを作ろうって努力すれば、きっ
といろんな人達の目に留まるようなものが出来るって信じてますけどね。だから
このまま追求し続けて行くつもりです。その時にあるベストを尽くして行けば、
いつ死んだって悔いは無いじゃないですか」

--------死ぬ気で頑張るという事かな?

「まぁ、だらだら生きていても寿命は来る訳だし、どうせなら何かやって死に
たいじゃないですか。いつもそう思って生きてるつもりですけどね、まぁ理想と
現実のギャップはぬぐい去れない事実ですけど(笑)」

--------(笑)まぁ、安定よりも波瀾万丈ね。それじゃ、最後に画面の前の人達に
何かメッセージを貰えるかな?

「ご迷惑をおかけいたしました。いろいろと考えが纏まってきたり、今の自分
の生活基盤を立て直しつつあるので、これからはもっと自分の足下の不安を無く
して、今まで以上に精力的に活動して行くつもりですので、これからもよろしく
お願いします」
 
 

29/JAN/1997