第8プラント/フレッシュ リフォー(第8主力攻撃大隊基地)
「・・・・うっ・・・ううっ・・・・」
 青白く輝く満月、何ともいえない極度の恐怖感、絶望に包まれた闇・・・
「・・・ぐっ・・・はっ・・・・ハアハアハア・・・・」
 恐ろしさのあまり目が覚めた。呼吸が荒く、心臓の鼓動も激しかった。
 真っ暗になった基地の軍事寮の窓からは普段よりも増して輝いている満月が見えて、全身から溢れ出ていた汗が月光に照らされて光った。上半身を起こし、目の前にある鏡を見るとそこには体半分が月に照らされているローレヌがいた。

 格倉庫 
「・・・・まだいないみたいね。」
 かなりまれともいえる程今日はいつもより早く起きたアリスは暇つぶしに基地内を散歩していた。時間は0454時。警備や整備、通信を担当者が数人いるだけで、アリス以外のパイロットの姿はなかった。
「こんなに朝早くだもんねぇ。いない・・・!?」
 後ろから足音が聞こえてきた。振り向くと、その足音は綺麗な顔立ちの女性だった。
「随分と早起きね。」
「・・・VRパイロットの方ですか?」
「そうよ。見ればわかるでしょ。」
 女性は笑顔で答えた。
「そうですよね。あのう・・・サイファーを見に来たのですか?」
「そうよ。私の愛機の改良機がきたというから。」
「改良機ですか?」
「私の364号の改良機、通称”鳳凰”よ。」
「鳳凰・・・。」
「私、助っ人として参戦するの。その時に鳳凰はお披露目になるわね。」
「そうなんですか。・・・改良機か・・・。」
「私はこれで失礼するわ。また会えるといいわね。」
「はい・・・。」
 女性は何歩か歩くとピタッと立ち止まった。
「あっ。」
「?」
 女性は振り返った。
「名前なんて言うの?」
「アリス・・・、アリス・ロバートです。」
「アリスちゃんね。じゃぁ、私はこれで失礼するわ。」
 女性は再び歩き出した。
「あ、あの・・・・」
 アリスが声をかけようとした時、女性は奥へと行ってしまった。

 休憩室
 アリスは散歩した後、しばらくの間ソファーに横たわりながら、朝のことを思い浮かべていた。
「改良機・・・いいなぁ。私の405号機も改良して欲しいなぁ。」
 アリスは向きを変えた。
「あの人の名前聞きそびれちゃった・・・・誰なんだろ。」
「アリスちゃん。」
 聞き覚えのある声が聞こえてきた。アリスは上半身を起こすとドアの近くにウリエルが立っていた。
「ウリエル曹長、今何時ですか?」
「まだ0500時ちょっと過ぎだよ。」
「そうですか。」
「お前がこんなに早起きするなんて珍しいな。今日あたりサイファーのマシントラブルでも起こるんじゃないか・・・・」
「変なこと言わないで下さいよ。」
 アリスは床に足をつけると、さり気なくウリエルは隣に座った。
「・・・・・。」
 すると二人の間に妙な沈黙ができた。
「・・・・ウリエル曹長、鳳凰って知っていますか?」
 しばらくして、アリスはこの沈黙を破ろうと話題をもちかけた。
「鳳凰・・・?」
「サイファーの364号機の・・・・。」
「・・・ああ、改良機の”鳳凰”のことね。」
「どんなのか知ってます?」
「わからないけど・・・・今日、ここに運ばれたという話は聞いたことある。」
「そうですか・・・・・」
 また沈黙がでてきた。
「ウリエルさ〜ん。」
 それをうち破るようにロキの声がした。
 「おや、アリスさんもいたのですか。」
ロキは室内に入ってきた。
「どうした?」
「ローレヌ隊長はここに来ましたか?」
「いや・・・隊長は来てないよ。」
「どうしたんですか?」
「普段はこの時間に休憩室にいるのですが・・・」
「・・・寝てるんじゃないか?」
「そうですか。」
 ロキは室内を出た。
「珍しいようですね。」
「まぁな。・・・でも、俺たちにとっても仕事はハードだったし、隊長は交渉とかなんとかもあったから疲れてるんじゃないか。」
「そうですね。・・・じゃ、私はまた格倉庫に行って来ます。」
 アリスは格倉庫へ走っていった。

 軍事寮
 まだベットで横になっているローレヌ。ふと時計を見ると0645時を表示していた。
「・・・・もうこんな時間なのね。」
 彼女は頭を抱えたままゆっくりと起きあがった。窓から零れる光は昨夜の悪夢が嘘だったように柔らかく彼女を照らした。
 するとポーンとインターホンの音がした。ローレヌはベットから立ち、ドアの前まで来た。「はい。」
「ロキですが、お知らせに来ました。」
「それで用件は?」
「助っ人して2名、私たちの部隊に入って来るそうです。」
「ありがとう、わかったわ。」
 ローレヌはインターホンを切った。
 彼女が着替えをしようとしたとき、テーブルに置かれていた小さな箱がふと目に入った。引き寄せられるように箱を手に取り、開けるとプラチナのチョーカーが光っていた。
「・・・・。」
 彼女はしばらく見つめるとそれを元に戻した。

 格倉庫
 アリスが再び来るとそこには少年がアリスのサイファーを見つめていた。
「ねぇ、あなたサイファーの搭乗者なの?」
「・・・・・・・。」
 アリスは話しかけてみたが少年は無視していた。
「・・・・ちょっと!」
「うるさい。」
「失礼しちゃうわね。私のサイファー見て何かあるの?」
「?!・・・・今何て言った?」
「え?私のサイファー見て何かあるの・・・って。」
「・・・この405号機がお前の搭乗するサイファーなのか?!」
 少年は驚愕した。
「そうよ。」
 アリスがそう言うと少年はガックリした表情を見せた。
「こいつが・・・・405号機をねぇ・・・・」
 その嫌みな態度にアリスはカチンときた。
「こいつとは何よ!可愛くないわね!!」
「黙れ。」
「子供に命令されたくないわよ!」
「うるさい女パイロットだなぁ。僕は、お前のような未熟な腕のパイロットと話す気はないんだ。」
 少年のいかにも鬱陶しそうな表情がアリスには我慢ならなかった。
「ずいぶんと生意気なパイロットさん、あなたの搭乗しているVRも紹介してくれないかしら?」
 彼女はいやみっぽく尋ねた。
「スペシネフだ。」
 少年はそう言うとその場から立ち去った。
「・・・・・?」

「あっ、アリスさん。」
 後ろから声が聞こえてきた。アリスは振り向くとロキがこちらへ歩いて来た。
「ここにいたのですか。」
「どうしたのですか?」
「今日、助っ人として2人程私たちの部隊に入ってきてくれるそうです。」
「そうなんですか。」
「おや?ずいぶんとうれしそうですねぇ。」
「だって仲間は多い方がいいじゃないですか。心強いですし。」
「そうですね。」

 2F通路
 アリスとロキがミーティング室へ行く途中、ウリエルとばったり会った。
「ウリエルさん、どちらへ?」
「えっ・・・あ、ちょっとな。」
 ウリエルは動揺した様子を見せ、辺りをソワソワと見回していた。
「どうしたんですか?」
「こ・こ・に・い・た・の・ね黶v
 突然ウリエルの後方から声が聞こえてきた。
「・・・やべ。」
 ウリエルは恐る恐る振り向いた。すると紫がかった赤髪の女性が走ってきた。
「ウ・リ・エ・ルーーーーーー黶v
 女性はウリエルに抱きついてきた。
「離せバカ!」
 ウリエルは女性を無理矢理振りほどいた。
「せっかく会えたのに・・・もう、照れ屋なのね
「・・・お前と会えても全然嬉しくねぇーよ。」
「あなたはあの時の・・・」
 アリスはその女性が格倉庫で会った人だということを思い出した。
「え?あっ、あの時のアリスちゃんね。・・・それにしても奇遇ね。あなた達の部隊に参加するなんて。」
 女性は微笑んだ。
「え?!そうなんですか?」
 アリスは驚いた。
「ええ。・・・そういえば、名前を名乗ってなかったわね。私の名は”アルマンディーヌ・パイロープ”。よろしくね黶v
「こちらこそ・・・。」
 アリスはペコリとお辞儀をした。
「私も同じく、あなたに参加される部隊のロキ・マックスです。よろしくお願いしますね、アルマンディーヌさん。」
「ふふ・・・なんか改めてそう言われると照れちゃうわね。私のことは呼び捨てでいいのよ。」
「いえ、そんなに気になさらなくても結構ですよ。」
「アルマンディーヌ・・・・ここにいたのね。」
 そこへローレヌが入ってきた。
「あっ、隊長さん・・・」
「なかなか来ないから行ってみたんだけど・・・・」
「あっ!・・・どうもすいません。隊長と会うことをつい忘れていました。」
 面目なさそうにアルマンディーヌは言った。
「久々の私たちの部隊はどうだった?」
「率直なことを言いますと変わってないって感じでしたね。」
「そう。」
「同僚にも会えたことですし、また楽しめそうです。ね、ウリエル黶v
アルマンディーヌは振ってみたがウリエルはそっぽ向いていた。
「少しは応答してくれたっていいのに・・・。」
「それはそうと、もう一人紹介したい人がいるの。ちょうどみんなもいることだしB10Fのミーティング室へ付いてきて来て。」

 B10Fミーティング室
 室内へ入ると茶髪の少年がイスに座っていた。
「待たせてしまってごめんなさいね。」
「いや、任務に対して不真面目なことで有名な第6サイファー部隊ですから10分の遅れはむしろ早いというべきでしょう。ですから気にしなくて結構です。」
「お・・・お気遣いありがとう。」
 ローレヌは彼の言葉に少々戸惑った。
「あっ!あなたはあの時の生意気なガキ!!」
 アリスは少年を指さした。
「生意気なガキで悪かったな。・・・まさかお前がこの部隊にいるとは思わなかったよ。」
 少年はムッとした表情をみせた。
「まぁまぁ・・・それよりその少年のことを紹介していただけませんか?」
「そうだな。・・・彼の名は”ラフィケル・ヨウイチ・アフェッケルト”搭乗機は753号機のスペシネフ。」
「・・・よろしく。」
 少年は無愛想に言った。
「私の名はアルマンディーヌ・パイロープ。・・・ところであなたのことは何て呼んだらいいのかしら?」
「僕の名前であればなんでもいい。」
「なんでも・・・・うーん。」
「・・・ヨウイチでいいよ。」
「そう。じゃぁ、ヨウイチよろしくね。」
 アルマンディーヌは格倉庫へ向かった。
「俺の名はウリエル・ガゼフス。よろしくな。」
「私の名はロキ・マックスと申します。よろしくお願いします。」
 彼ら二人も格倉庫へ向かった。
「・・・・。」
 アリスはとてもじゃないが彼に対して自己紹介する気にはなれなかった。
「早く言え。」
「!・・・私の名はアリス・ロバート。よろしく。」
 ヨウイチの言葉に挑発されアリスはぶっきらぼうに言った。
「さてと・・・」
 ビーッ!ビーッ!・・・・
 警報が鳴り響いた。
「RNAのようね。・・・言い忘れたけど、アリス、ヨウイチと私は同じ班となって行動するから。」
「こいつとねぇ・・・」
 アリスとヨウイチはどうも乗り気になれなかった。

 格倉庫
「・・・アリス、くれぐれも足手まといになるのだけはやめてくれ。それだけ言っておく。」
 モニターにヨウイチの姿が映った。
「はいはい・・・全くかわいげがないのね。少しは謙虚になったらどうなの?」
「・・・ふん。」
 ヨウイチはモニターを切った。
「ムカツクーー。」
「アリス、そろそろいくわよ。」
 ローレヌの声が聞こえた。
「あっ、はい。」

 フローティング キャリー(第8プラント)
 アリス達が到着すると早速、RNAアファームドSの攻撃がきた。ヨウイチはターボ鎌を放つと相手の死角に入り込み、1機のアファームドSを鎌で斬りつけた。その1機が倒れると青玉を2、3発放ち敵との距離を置いた。その間にアリスはもう1機のアファームドSに4本に分裂するレーザーを放ち前ダッシュダガーで距離を縮めた。
 ローレヌは空中前ダッシュ近接をダウンして起きあがった後のアファームドSにヒットさせた。その隙にヨウイチがライトターボCWから前ダッシュRWを放った。
「いけ!!」
 アリスはもう1機のアファームドSに接近してクイックステップで背後につきソードを振った。ガードされることを見切って、発生後キャンセルして下段攻撃した。転倒したアファームドSに追い打ちをかけた。そのアファームドSは擱座した。
 残りのアファームドSはヨウイチが鎌でとどめを刺し擱座した。
「意外と腕はあるんだな。」
「新米でもやるときはやるのよ。」
 アリスは自慢げに言った。
「まっ、この程度が限度だろうが。」
 ヨウイチは冷淡に言い放った。
「・・・可愛くないわね。」
 ガシャン、ガシャン・・・
 向こうから2機のRNAサイファーが数機のRNAドルドレイと共にやってきた。
「待たせたわね、アリス。」
 高飛車な女性の声が聞こえてきた。
「ジュノーンさん・・・・誰も待ってませんって。」
 アリスは呆れ顔だった。
「誰?」
ヨウイチが尋ねてきた。
「この人は・・・・」
「私の名はジュノーン・ローゼスと申しますわ。」
「ふーん・・・で、アリスに何かあるのか?」
「あなたには関係ないことですわ。」
 すると突然ダガーが飛んできた。もう1機のRNAサイファーからである。それと同時にRNAドルドレイがもの凄い勢いで前進してきた。
「・・・早くやれ。」
「うるさいわね。」
 ジュノーンは仲間の言葉に不機嫌な表情をした。
「この数じゃ対抗できないわね。」
「応援は?」
「たぶんもうすぐ来ると思うわ。」
「具体的には?」
「・・・・遅くて10分くらいかしら。」
「なら大丈夫だな。」
 ヨウイチは数機のドルドレイにターボ鎌を放ち突進した。
「あれじゃ危ないじゃない!!」
 だがアリスの予想と反してヨウイチはドルドレイの攻撃をかわしきった。
「・・・・きゃっ!」
 ヨウイチの様子を見ていたアリスに突然ジュノーンが斬りつけてきた。幸いアリスは寸でのところで転けたので直撃を免れた。
「ボーッとしている暇はないですわよ。」
 アリスは起きあがり近接を仕掛けたが、あっさりとかわされてしまった。ジュノーンは距離を置いてレーザーを放ち、それからホーミングビームを放った。アリスはそれを相殺するようにホーミングビームを放った。

 ヨウイチが何機かのドルドレイを擱座させると突然1機のRNAサイファーが飛びかかってきた。
「・・・・?!」
 ヨウイチはまともに相手の不意打ちを食らった。
「ヨウイチ!!」
 ローレヌはヨウイチの所へ向かおうとしたがドルドレイの集団に塞がれてしまった。
 ダウンしているヨウイチにRNAサイファーは追い討ちをかけようとしたが、逆に起きあがり攻撃で反撃されてしまった。
「ローレヌ少佐、僕は大丈夫です。」
 ヨウイチは相手から距離を置くと再びドルドレイに攻撃しようとしたがそれを妨げるようにRNAサイファーはレーザーを放たれてできなかった。そしてドルドレイ達はローレヌを集中的に攻撃しだした。
 ヨウイチはなんとか数機のドルドレイに攻撃しようとするがその度にRNAサイファーに妨害されてしまう。
「少佐!まだ応援は来ないのですか?!」
「・・・・?」
 ローレヌはふと見るとDNAテムジンとグリスボックスが数機かやってきた。
「今来たみたいね。」

 ドカッ!!
 アリスとジュノーンは近接で相打ちになり倒れた。
「今日こそは決着をつけてもらうわよ。」
 ジュノーンは起きあがり距離を置いたアリスにレーザーを撃とうとした。すると上空からS.L.CでRNAサイファーが降下してきた。
「ちょっといきなり何するのよ!!」
 戦闘の邪魔をされたジュノーンは逆上した。
「別にこっちの好きだろ。」
 相手の声は淡々としていた。
「・・・・まさか、あなたは・・・・」
 そのサイファーの外部スピーカーから出る声にアリスはビクッとした。
「ジャック・ロイドか?!」
 今まで無感情だったヨウイチの声が荒げていた。
「・・・・ヨウイチ?」
 ヨウイチの様子が急に変わったことにアリスは戸惑った。
「・・・貴様の相手は僕がする!!」
 ヨウイチはジャックに飛びかかった。しかし、相手に攻撃を避けられると一瞬にして反撃を食らってしまう。
「少しは冷静になったらどうだ?」
「クソッ!」
 ヨウイチはジャックを睨むと再び攻撃をし始めた。
「待ちなさい!!」
 ローレヌはヨウイチを抑えた。
「相手は敵だ!! なぜ止める!!」
「落ち着きなさい!」
 ローレヌは興奮しているヨウイチを押さえ込みなだめた。
「貴様も恨んでおかしくないはずだが。」
「・・・・今はそんなこと関係ないでしょ。」
「・・・・・・・。」
 ローレヌが少なくとも動揺していることがジャックには勘付いていた。
「まっ、俺には関係ないことだが。」
 ジャックはそう言うと去ってしまった。
「何で撤退するのよ!!」
「・・・・仕方ないさ。行くぞジュノーン。」
「はぁ・・・・」
 もう1機のRNAサイファーと残ったドルドレイも撤退していくのを見つめるとジュノーンは振り返った。
「今度会うときは必ず決着がつくわよ、アリス。」
 ジュノーンはそう言い残すと去っていった。

「ローレヌ隊長さん
 モニターにアルマンディーヌの姿が映った。
「アルマンディーヌ軍曹、そちらの方はどう?」
「もうすぐ完了します。」
「そう、ありがとう。」
 モニターは切れた。
「なぜ敵は撤退したんだ?」
 ヨウイチはローレヌに尋ねた。
「彼らは時間稼ぎのためにしか戦っていないのよ。そうしながら彼らはこちらの情報を偵察するのよ。なにせ高機動VRのほとんどは偵察目的がほとんどだから。」
「ところでアルマンディーヌ軍曹達は何をしていたのですか?」
「今はムーニーバレー(第3プラント)で大事な任務をしているところよ。」
「そんなことわかってますよ。ですから・・・・」
「今は残念だけど言えないわ。」
「そうですか。」
 アリスはがっかりした。

 休憩室
 ヨウイチは窓から外の眺めを見つめていた。
「ヨウイチ!」
「ん?」
 彼が振り返るとアリスがドアの前に立っていた。
「任務が終わるとすぐにいなくなるのね。探すの大変だったよ。」
「あっそう。で、用件は?」
「相変わらず無愛想なのね。・・・・・ヨウイチはジャックと何かあったのかなって思ったの。それで聞きに来たの。」
「それ聞いてどうする。」
「どうするって、そんな私はただ気になっただけだから・・・・。」
 アリスは少し戸惑った。
「・・・・あいつは僕の父さんを重傷に負わせた奴だからだ。要は単なる敵討ちだよ。」
 ヨウイチは素っ気なく言った。
「ふーん。」
「じゃ、これで失礼する。」
 ヨウイチは立ち去って行った。
「あっ、もう行っちゃった・・・・」

 軍事寮
「・・・・うっ・・・・ううっ・・・・・うっ・・・・」
 再び昨日と同じ悪夢だったが、昨日よりも恐怖感はさらに増していた。そして、絶望感に包まれた闇に月光が誰かの顔の半分を差した。その人の眼は狂気に満ちていた。
「・・・・はぁ・・・・ハアハアハア・・・・」
 起きたときには全身から汗が溢れていた。ローレヌには夢にでた人物がわかっていた。だが、なぜ今になってこんな夢を見るのかは彼女にはわからなかった。
「・・・・ルワーノ」

【第4章 DIVE TO BLUE〜HONEY〜終】
 
次回『第5章 SHE’S LOST CONTROL〜CYBER ROSE〜』
 ちゃお  鳳凰を駆っているアルマンディーヌです。任務が完了して戻ってきたらアリスちゃんたちのサイファーの調子が悪くなっちゃって急遽代わりのを搭乗したみたいだけど・・・そんな状態ていきなり任務をやれと言われてもねぇ。
それにしてもジャックとローレヌってどんな関係なのかしら。会ってはいつも意味重な言葉を交わしているし直接本人に聞いても全然話してくれないから余計気になっちゃうじゃない。あとルワーノって誰?
 
<キャラクター紹介 4>
ローレヌ・エリカ・ジャンヌス
年齢:32歳 性別:女性 血液型:AB型
精神コマンド:愛・復活・挑発・気合い・覚醒・自爆
第6サイファー部隊の隊長を務める女性パイロット。実力は大隊内でもトップクラスで面倒見の良さがあってか大隊外でも隊長になることが多い。また、癖のある人物とコンビを組むこともしばしばある。戦闘スタイルは特に偏ることなく状況に応じて変わるマルチ型である。特に彼女の実力が発揮されるのは空中戦。彼女のサイファーも若干機能もそれに対応してある。
性格は沈着冷静で真面目だが、決して融通が利かないわけではない。そして、責任感が強い。一見厳格そうに見えるが実は心優しく義理人情が厚い女性である。その反面、繊細な神経の持ち主で悲観的になりやすい。