第7プラント/リファレンス ポイント(第7攻撃大隊基地)
 待機している5機のサイファーにアリス達は搭乗した。
「アリスさん。」
 アリスがレバーに手をかけたとき、モニターにロキの姿が映った。
「ロキ少尉。」
「アリスさん・・・・ありがとうございます。」
「え?」
 アリスがきょとんとしている間もなく、交信は途絶えた。
 それが終わったと同時に、5機のサイファーは地球へ出発して行った。
 
第3プラント/ムーニー バレー(第3攻撃大隊基地)
 彼らは基地に着いた。
「異常はなさそうですけれど・・・・」
 アリスは心なしか何か様子がおかしいと感じていた。確かに基地自体はこれといった異常は見られない。だが、野性の勘というべきか彼女には妙な違和感を感じていた。
「どうした?アリス。」
「!」
 そんなアリスの気持ちをウリエルは察したようだった。
 その時である。
 突然、一筋のレーザーがこちらにきた。
「うわぁ。」
 間一髪のところでかわしたが、振り返ると彼らは愕然とした。
 RNAテムジンが5機、その背後にはRNAドルドレイの集団が待機していた。前方に向き直すと・・・これが俗に言う「絶体絶命」または「八方塞がり」というのか、いつの間にかRNAスペシネフが5機、背後にはRNAグリスボックスの集団が待機していた。
「・・・やばいな。」
 ウリエルは苦笑いをした。
「あのー、何でこんなにたくさん集まったんでしょうかぁ?」
 ロキはシルヴァに尋ねた。
「うーん、敵側に基地が占領されて・・・って、もしかして・・・まさか・・」
「・・・・そのまさかかもしれないわね。」
 ローレヌとシルヴァの表情が一層深刻なものになった。
「まさかって・・・・きゃぁ!」
 敵側は状況が掴めていない彼らに攻撃を開始した。
「短期間でここを完全に占領するなんて・・・・」
 シルヴァは未だにこの状況が信じられなかった。
「確かに。・・・敵側に大隊(第3攻撃大隊)の中枢というべきところを占領されたけど、まだ他のムーニー・バレー周辺の基地は占領されていないはずよ。シルヴァ! 他の基地で撤退できる所はこの近くにないかしら。」
「僕の所属している部隊がいるところなら・・・もしかしたら、できるかもしれません。」
「この状態で一か八かで撤退することなんて極めて危険な行為よ。」
「だけど、隊長!時間はないんだ。一か八かでも行くしかないだろ。」
 確かにいくら優秀な部隊でも限度というものがある。ウリエルの言ったとおり、予想外なことで、しかも4種の異なった機体と戦うにも無理がある。がしかし、だからっといって行き当たりばったりなのはかえって状況を悪化させる危険性が十分にあるのである。
「・・・・ローレヌ隊長!!」
「どうした?」
「(シルヴァが)所属している部隊の方は大丈夫だそうです。」
「・・・で、場所は?」
「第3攻撃大隊2部基地です。」
 不幸中の幸いであったが、すぐに撤退するわけにはいかない。そこは比較的ここから近い基地であるため、少なくとも半数の敵が追って来ないとも限らない。もし、追われたら更に痛手を負うことになりかねない。
「問題はここをどう離脱するかですね。」
「まっ、時間はないんだ。少々の荒治療にはなるが、これなら効果はあると思うよ。」
「?」
 ウリエルはいきなりアリスの足を引っかけた。
「きゃぁ。」
 当然のごとく、アリスは転倒した。彼女は建物(障害物)の上にいたのでそこから落ち、敵に無防備な姿をさらけ出すことになった。
 そして、ウリエルはS.L.Cで敵を旋回している軌道の内側に回避させた。
「ローレヌ隊長、ここは僕とアリスに任せて下さい。」
「え?!」
 彼女は驚いた。
「大丈夫ですから。今は1人でも基地に行くべきですよ。」
「ウリエル・・・・わかったわ。あとで、応援を呼ぶつもりだけどそれまでに耐えられる?」
「もちろん!」
 彼女は彼の言葉を信じた。

 ローレヌ達が基地に撤退した後、彼の態度は豹変した。
「短い間だったけど、ありがとな。」
「え?」
「俺はここで死ぬのはごめんだからね。」
「ウリエル曹長?」
「じゃぁな。」
「え?冗談でしょ・・・・って」
 ウリエルはあっさりと去ってしまった。
「ちょっ、ちょっと!ウリエル曹長!!」
 アリスはあまりにもウリエルの無責任な態度に愕然とした。
「見殺しにしないでくださいよ!!!人でなしーーーー!!鬼ーーーー!!」
 1人取り残されたアリスを敵は容赦なく攻撃した。
 とにかく今は運を天にまかすしかない。アリスは粉砕覚悟で集団に飛び込んだ。
 彼女は体当たりで一機のスペシネフを転倒させ、屈んだ状態でドルドレイをソードで斬りつけた。旋回して背後から斬りつけてくるテムジンの攻撃をガードした。しかし、1人では無理があった。ガードしている間にドルドレイのドリルが腹部に貫通し、アリスは地面に伏せるように倒れた。(擱座は辛うじてしていない)
 それでもアリスは起きあがろうとした。
 敵側は追い打ちをかけてきた。
「まだ・・・まだ・・・」
 ジャンプで追い打ちの嵐から逃れると、敵側との距離をとった。
 ゲージが30%切っていた。無闇に攻撃はできない。
「・・・・。」
 回避で耐え抜くしかない。つい熱くなって敵の中に飛び込んだ自分を呪う暇などない。今はチャンスを願うしかない。
「・・・・なに?!」
 その時である。突然シャフトが作動し、アリスは敵地の地下へと降りて行った。
 それを見た敵は他のシャフトで降りて行った。
「・・・どうなるんだろ・・・」
 アリスの不安は一層大きくなった。

 第3攻撃大隊地下基地
「ここは・・・」
 辺りは暗く、天井と道に小さな光が点々とあった。
 ガシャン、ガシャン・・・
「・・・?!」
 後ろの方からVRの足音が聞こえてきた。
 アリスは前方へ突き進んだ。しかし、皮肉なことに行き止まりに突き当たってしまった。
「うそ・・・でしょ・・・」
 後ろからはVRのダッシュ音が聞こえてくる。
「・・・冗談じゃないわよ!私もこんなところで死ぬなんて、死んでも死にきれないわよ!!」
 ガシャン、ガシャン!
「・・・・・。」
 絶体絶命・・・・。と思った瞬間である。
 ドン!!という爆音と共に一機のDNAサイファーが現れた。
「・・・誰?」
 物凄い煙立つ中、そのサイファーは彼女の腕をつかむと、破壊した壁から外へ出た。
「大丈夫か、アリスちゃん。」
「・・・ウリエル曹長?」
「当たり黶v
「・・・・・。」
「怒ってる?」
「冗談じゃないですよ!!!何で私が死ぬ思いしなきゃいけないのですか!!!」
「怖い、怖い。」
 ウリエルはアリスから手を離し変形すると、移動速度を上げて行った。
「あ・・・・いや〜ん、置いて行かないでくださぁ〜い!!」
 アリスも変形して速度を上げて行った。
 
 第3攻撃大隊2部基地
 二人が着くと、擱座しているRNAVRがあっちこっちに散乱していた。どうやらここにも侵入してきたようだ。
「ウリエル、アリス!」
「!」
 ローレヌ達がやって来た。
「ローレヌ隊長!」
「そちらに行けなかったけど、大丈夫?」
「ええ、何とか。」
「みなさん、基地内に入りませんかぁ?第2部隊の方々は戻ったようですし。」
「そうね。」
 5機は基地内に入っていった。

 休憩室
 室内に5人は入った。中は煙草の煙が充満しており、非喫煙者にはあまり居心地が良くはない。室内には丸い机を囲んで座っている3人の男性と壁際にあるソファーに座っている2人の女性がいた。
 彼らがその室内に入った瞬間である。
「ロキさん!!!」
 バタン!と大きな音をたてて突然ロキは倒れた。
「どうしたんですか?!」
「ええ・・・・大丈夫です・・・・ア・・リ・・ス・・さぁ・・・・・」
 彼は発作を起こしたような様子であった。
「どう見たって大丈夫そうじゃありませんよ・・・・」
「あの戦いは無理があったのかしら。」
「サイファーは精神負担が大きい機体ですから。」
「・・・・救護室へ運びましょうか。」
「ちょっと待ってくれ。」
「ウリエル曹長・・・」
 ウリエルは倒れているロキのそばまで行くとしばらく顔を眺めた。
「ふーん・・・・」
 ウリエルはロキの頭を持つといきなり頭突きをした。
「ウ・・・ウリエル曹長?!」
 ウリエル以外は皆あ然とした様子だった。ロキはぐったりとしてしまった。
「気絶しているだけだな。」
「・・・・って、気絶させたんじゃないですか・・・」
 ウリエルは気絶したロキを担ぎ上げた。
「救護室へ行くか。・・・アリス、付いて来な。」
「あっ、はい!」
 二人は部屋を出た。
 
 救護室
「・・・・うっ・・ん・・・」
 ロキは意識を取り戻したようだ。
「ロキさん・・・」
「アリスさん、ウリエルさん・・・私は・・・」
 ロキは起きあがった。
「気を失っていた。」
「そうなんですかぁ。」
「・・・・それにしても、何で急に倒れたんですか?」
「タバコアレルギーだよ。」
「タバコアレルギー・・・って、ウリエル曹長!何で煙草を吸おうとしているんですか!」
 煙草をくわえたウリエルをアリスは睨んだ。
「・・・癖だよ。俺、昔はヘビースモーカーだったから無意識に煙草をくわえちゃうんだよ。ロキはタバコアレルギーだから、こいつと行動を共にするときはライターは持ち込まないようにしている。」
 ウリエルは近くのソファーに座り込んだ。
「私は、タバコの煙を少しでも吸うと急にめまいがして発作が起きるんです。・・・・皆さんにご迷惑をお掛けしたようですね。」
「・・気にしないで下さい。それにしても知りませんでしたよ。」
「伝える暇がなかったからな。」
 ウリエルはすっとソファーから立ち上がった。それを見たロキは床に足を着けた。
「そろそろ戻りましょうか。」
「大丈夫なんですか?」
「ええ。それに、今は急がないといけませんしね。」
 ロキはベットから立ち上がり、三人は部屋を出た。

 三人が廊下に出ると、ローレヌ、シルヴァと休憩室にいた人の中の3人が待っていた。
 「大丈夫か、ロキ。」
ローレヌが心配そうに尋ねた。
「はい。ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。」
 ロキは笑みを浮かべた。
「な〜んだ。そんなに大したことじゃないじゃん。急に倒れるもんだから驚いちゃったよ。」
 休憩室にいた金髪で片目を髪で隠している女性が煙草を吸いながらアリス達の前に来た。
「あっ・・・」
 バタン!!
 アリスが言おうとした時、ロキは再び倒れた。
「・・・体弱いの?」
「いえ、ロキ少尉はタバコアレルギーなんです。」
「・・・それ早く言いなさいよ。」

 休憩室
 ロキは休憩室のソファーに運ばれ、しばらくして意識を取り戻した。
「すまなかったな。」
 煙草を吸っていた女性は面目なさそうな様子だった。
「気にしなくていいですよぉ。」
「ところでシルヴァ、この人達の名前まだ聞いていないけど・・・」
「そうだったね。えっと・・・」
「その役は私がやるよ。」
 女性はソファーに深く座り込んだ。
「私は第3攻撃大隊2部小隊の隊長、「レイ・マルシス」。そして、私の左側にいる男が、 「ユリス・ゲールス」。」
 長髪を束ねた黒髪の男性が軽くお辞儀をした。
「右側にいる男は「ジョン・A・ショパルス」。あなた達のそばにいる男は「ユン・ロールス・ケリー」。」
 レイの右側にいる茶髪で両耳にピアスをたくさんつけた男性は椅子に座ったままで軽くお辞儀をした。
「よろしくお願いします。」
 アリス達のそばにいた童顔で癖毛がかったダークブルーの髪の男性はお辞儀をした。
「そして、「エミ・パトラシア・フォーシス」。」
「短い間ですけど、よろしくお願いしまーす。」
 外巻きカールをした茶髪の女性はペコリとお辞儀をした。
「じゃ、こちらも紹介しますね。私は高機動VR大隊第6部隊の隊長であります。ローレヌ・エリカ・ジャンヌスです。よろしく。・・・・そして・・」
 ローレヌが自己紹介した後、ロキがソファーから立ち上がった。
「・・・いいですよ。自分でしますから。同じく私はロキ・マックスと申します。よろしくお願いします。」
「同じく俺はウリエル・ガゼフス。よろしく。」
「私も同じく、アリス・ロバートといいます。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくな。えっと、第3攻撃大隊本部基地の奪回だけど・・・・何から話そうか・・・・」
「敵はどのくらいまで侵略しているのですか?」
 ローレヌは尋ねた。
「本部が侵略されたばかりなので、まだ広がっていないと思います。ですが、敵は各部の基地に侵入してきます。攻めるには辛い状況です。」
 ユリスは淡々と説明した。
「ところで、私たちが本部に着いた時、何であんなに敵が待機していたの?」
 アリスはシルヴァに尋ねた。
「それは、たぶんちょうどその時に帰還してきたのと他の基地へ侵入するもの、そして基地を守備するものがいたところに僕らが入っていったんだよ・・・・・・」
「確かに、たった5機のVRであの数の迎えは普通はないよな・・・」
「・・・・で、どうやって本部の基地を奪回するの?」
「中枢を狙って攻めるしかないでしょ。」
「中枢ねぇ・・・ところで何機で攻め込むの?」
「こちらにも最低3機は欲しいから・・・だいたい6機か7機だな。」
「・・・・メンバーは今日中に決めますから、出撃は明日の0900時でいいですか。」
「了解。・・・あなた達が来てくれると頼もしいよ。」
レイの言葉にローレヌは微笑んだ。
 「いえ、こちらこそ。」
 
 翌日 0856時 ミーティング室
「集まってきたようね。」
 ローレヌは目で人数を数えると、出てきたモニターを見つめた。
 モニターには第3攻撃大隊の設計図が映し出されていた。
「基地内への入り方は全部で5つある。その中で侵入可能なのは・・・」
 非常シャフトと書かれた2カ所に黄色い点がついた。
「・・・破壊して行けってことか?」
「そういうことだけど・・・行くのは2機よ。」
「他は敵を入り口シャフト前へ誘い込んで。」
「ところでメンバーは?」
「レイ少尉とロキ、ユリス曹長、シルヴァはここの基地の守備にはいるから・・・」
「その他のやつが行くってことか。」
「そういうこと。」
 ビーッ!ビーッ!・・・・
 突然ブザーが鳴り響いた。
「そろそろ出撃するわよ。」
「了解!」

 アリス達はそれぞれのVRに搭乗した。
「ウリエル曹長・・・」
 ウリエルが座席に座った時、モニターにアリスが映っていた。
「どうしたの?」
「・・また、置いてけぼりにしないで下さいよ。」
「ふふ〜ん・・・それはどうかなぁ・・」
 ウリエルは笑いながらアリスをからかった。
「もう!!いじわるぅ〜〜〜〜」
 アリスは交信を切った。

 第3攻撃大隊基地
 非常シャフトの前に着地する6機。
「さてと・・・ここからは2機でシャフトに入るんだよな。」
「そうよ。」
「隊長・・・ここから俺とアリスで行きます。」
「え゛っ?!」
「・・・大丈夫なの?」
「ああ、こいつとは何だか気が合うんです。」
「アリスはどうなの?」
「えっ・・その・・・私の実力は不十分ですから・・・曹長の足を引っ張るのではないでしょうか・・・」
 アリスは複雑な表情を浮かべた。そこへウリエルが近づいてきた。
「アリス、アリス・・・」
「はい?・・・」
「前のようなまねはしないから安心しろよ。」
「・・・本当ですか?」
「もちろん!」
「ウリエル曹長! アリスに余計な事を言わないで下さい。これはアリスが考えることです。」
 ローレヌはウリエルを窘めるように言った。
「彼女の実力は足手まといにはなりません。俺が保証します。」
「・・・・ウリエル曹長がそこまで言ってくれるのでしたら私は構いません。」
「じゃぁ、私たちは入り口シャフトへ行くわ。よろしく頼むわよ。」
 ローレヌ達は飛び立った。
「行くぞ。」
「あ、はい。」
 2機は非常シャフトの入り口を破壊して入って行った。

 ある程度進むと格倉庫に出た。
 人のざわめきが聞こえ、背後にはRNAテムジンが3機やって来た。
「さてと・・・・」
 ウリエルは3機のテムジンの合間を縫うように回避した。2機のテムジンが彼を追うと、残りの1機のテムジンがアリスに斬りかかってきた。彼女はスライディングして回避し、ウリエルの後を追った。
 追っていくと、巨大昇降機が目の前に見えた。ウリエルはそこの緑色の建物の上に乗っていた。
 彼は2機のテムジンの様子を伺うとジャンプした。
「まっ、俺のサイファーは他のとは一味違うんでね。覚悟した方がいいぜ。」
 マルチランチャーがほのかに青白く光り、彼はそれを八の字に斬るように振った。
 すると、細いレーザーが2機のテムジンに向かって飛んできた。1機のテムジンはそのレーザーに数本刺さったものの回避しきったが、もう1機のテムジンは回避しきれず、レーザーに集中的に突き刺さった。
「ウリエル曹長!」
 アリスと追ってくる1機のテムジンが巨大昇降機に乗った時、昇降機は動き出した。
「えっ?何?何?」

 アセント コリドー
 昇降機は徐々にスピードを上げて昇っていった。
「・・・・どうしよう。」
「仕方ないだろ。まずはデートの邪魔する奴らをなんとかしないとな。」
「・・・・・きゃっ!!」
 背後から前ダッシュビームライフルを撃たれ、彼女は転倒した。
「弱っ。」
「うっ・・・・」
 アリスは起きあがり、ダガーを2連射した。
 ウリエルの方はなぜか攻撃せずに相手を小馬鹿にしたような回避をしていた。
 建物に乗って奇妙な踊りをしたかと思えば、わざと攻撃を外しながら逃げ回っていたり、建物の陰からちょこちょこ顔を出す程度でそこから動かなかったりしていた。
「・・・・・・ウリエル曹長、もう少し真面目にやって下さい。」
 ガシャン!!!
 その時、物凄い激突音がした。
「何?!」
 アリスが音がする方へ向くとRNAサイファーが1機のテムジンに膝蹴りした状態でそのまま共倒れになった。(そのテムジンは激突した拍子に擱座した)
「・・・・ア・リ・ス・・・」
「もしかして・・あなたは・・・」
 RNAサイファーは起きあがり、アリスに指さした。
「そうよ。・・・アリス、勝負ですわ。」
「はぁ・・・ジュノーンさん、凄いですねぇ・・・。」
「それにしても、仲間を平気で擱座させるなんて・・・・血も涙もないやつだなぁ。」
「お黙り!こちらに行きましたら、たまたま同社のVRに衝突してしまっただけですの。私のせいにしないで欲しいですわ。」
「それにしても、何でアリスにそんなに執着するんだ?」
「あなたには関係ないことでしょ。」
 ジュノーンはぶっきらぼうに言い放った。
「あっそう。・・・・もしかして君レズ?」
「・・・・・・(−−*)」
「そのようだと、図星か?」
「おーーーだーーーーまーーーーーりーーーー!! 黙っていればあなたはいい男ですわよ! ・・・言っておきますが、私は同性愛者ではございませんことよ。それに、私は中途半端は嫌いですの、けりが付かないと私のプライドが許しません。おわかり?」
 ジュノーンは感情をぶつけるように話した。
「・・・冗談をまともに受けてたの?」
 ウリエルのその一言にジュノーンの怒りはエスカレートした。
「この私に対して冗談を言うなんて最悪ですわ!!!!! あなたのような男性はこの世から消してやりたいくらいですわ!!!」
「はいはい・・・」
「・・・あなたを好きになる女性はさぞかし最低な方でしょうね!! またはとてつもなく可哀想な世間知らずでしょうね!!」
 ウリエルはそっぽうを向いて彼女の聞き流していた。そんな彼の態度にジュノーンはヒステリックになってきた。
「あなたが好きになる女性は大したことないわね!! まっ、あなたは女性を見る目がないクズでしょうけど!!!」
「!!」
 ウリエルはジュノーンの話にカチンときた。
「・・・調子に乗るのもいい加減にしろよ。」
「ふん!!」
 険悪な雰囲気が漂った。
 その時、それをうち砕くように突然スペシネフの鎌ウェーブが地面を走った。奇襲的な攻撃に2機のテムジンは擱座した。
「あなたは?!」
 3機は振り向くとそこには1機のDNAのスペシネフがいた。
「僕は・・・」
「今日はいやな男のせいで戦う気がしないわ!勝負はこの次にしましょう。では、ご機嫌よう。」
 ジュノーンは去っていった。
「・・・・ところで、あなたは?」
 彼女が去った後、アリスは再び尋ねた。
「僕はここを応援するよう命じられた者です。」
「そうなのか。でも、応援がなくても俺達でなんとかなるよ。」
「よいのですか?」
「ああ。もし、応援が必要だったらこちらから呼ぶ。」
「そうですか。では、僕は第8プラント関係の基地に帰還します。」
「・・・第8プラント?」
 スペシネフは去ってしまった。
「ウリエル曹長、戻りませんと・・・」
「そうだな。ここで油売るのはあんまり良くないからな。」
 第3攻撃大隊基地に戻ると、何隊かの部隊が応援に来ていた。
アリス達は再び破壊した非常シャフトへ入った。
「ウリエル曹長・・・・」
「ん?」
「あの・・・・あんなに本気で怒るところ初めて見ました・・・・」
「本気で怒ってねぇよ。あれはなんちゃってギレだよ。」
 彼が照れていることはアリスには何となくだがわかった。

「ウリエル、アリス、ご苦労様。敵は完全に撤退したわ。」
 任務を終えた時、モニターにローレヌの姿が映っていた。
「そうですか。」
「この後、ミーティング室に集合して下さい。」
「了解。・・・・ウリエル曹長?」
 ウリエルは考え込んでいるのか動こうとしなかった。
「・・・ん?あ、何?」
「え、その・・・どうしたのかなって。」
「いや、別に大したことないさ。」
「そうですか。」
 2機は格倉庫に向かった。

 第3攻撃大隊基地 ミーティング室
「お疲れさまでーす。」
 室内に入るとエミの快活的な声が聞こえてきた。
「隊長、ロキは?」
「今、こちらへ来るという連絡が入ったわ。」
「ふーん。」
 ウリエルは椅子に座ると煙草をくわえた。
「・・・・アリス軍曹。」
「はい、何でしょうか?」
 エミはニコニコしながらアリスに近づいてきた。
「聞きたいことがあるんですけど・・・・」
「?・・・聞きたいこと・・・」
 エミはちらっと周りを見るとアリスを廊下まで押していった。
「え?え?・・・どうしたんですか?」
「ここではちょっとね・・・・・・」
二人は廊下に出た。
「ところで聞きたいことは何ですか?」
「・・・・突然ですけど、ウリエル曹長と付き合っているんですか?」
「え?!何でまた・・・」
 アリスは意外なことに驚いた。
「うーん・・・なんとなくです。」
「そ、そんな、付き合っているなんて・・・・。あと、私のことはアリスでいいです。お互いに同期でしょう。」
「ふーん。・・・・じゃぁ・・」
「まだあるんですか・・・」
「ウリエル曹長のこと好きでしょ?」
「!!・・・別に。」
 アリスはエミの言葉に動揺した。
「・・・・。」
「何?」
 エミはしばらくアリスを見つめていた。
「・・・・嘘ついてる。」
「何でよ!!」
 アリスは声を少し荒げた。
「まっ、そういうことにしましょう。」
「そういうこと・・って・・・・」
「アリスさ〜ん、エミさ〜ん。」
「・・・・ロキさん、シルヴァ。」
 そこへロキとシルヴァがやって来た。
「そろそろ準備が出来ましたので行きませんか?」
「そうですね。じゃぁ、隊長を呼びます。」
 第3攻撃大隊基地格倉庫
 アリス達が格倉庫に行くとレイとユリスが待っていた。
「ありがとうな。この借りは必ずよ。」
「その日を楽しみにしているわ。」
 レイは軽くそう言うとローレヌはそれに応えた。
 そして、アリス達はサイファーに搭乗した。

「ロキ少尉・・・・」
 ロキが座席に座ったときモニターにシルヴァの姿が映った。
「シルヴァさん、どうしたんですかぁ。」
「・・・いえ、その、すいませんでした。」
「え?どうしたんですか、急に。」
「僕は・・・少尉の気持ちも考えずに大変酷いことをしました。」
「そんなこと気にしないで下さいよぉ。あなたが悪いわけではありませんよ。」
「ですが・・・」
「いいえ、本当に気にしないで下さい。シルヴァさん、部隊でまた頑張って下さいね。応援しています。」
「・・・ありがとうございます。」
交信はふつりと切れた。

「アーリースー!!」
 アリスが座席に座りレバーに手をかけたとき、モニターにエミの姿が映った。
「エミ・・・」
「恋かなうといいね
「もーう!違うってば!!」
「あははは・・・・・じゃぁね。」
 交信はあっという間に切れた。
「・・・こんなことだったの・・・・」
 アリスは一息つき、前方を見つめた。
 そして、4機のサイファーは青空へ飛び立って行った。

【第三章 STORM〜SHINE〜終】

次回『第四章 DIVE TO BLUE〜HONEY〜』
 はーい!アリスです。ついに第8プラントに着きました。そこで出会った少年と綺麗な方と共に行動する事になってうれしいです。だって、また仲間が増えるんだもん。それにしても、ローレヌ隊長どうしたのかな・・・着いたときから何だか寝不足だというし。過去に起きた事件という話もあるし・・・何だろう。
え?!また、ジュノーンさん来るんですか?しつこいですね・・・って、ジャックさんも来る?!・・・やっばー。(−−;)

<キャラクター紹介 3>
ウリエル・ガゼフス
年齢:21歳 性別:男 血液型:B型
精神コマンド:加速・手加減・挑発・再動・撹乱・キレる
大隊、部隊の中で攻撃、戦闘スタイルが一風変わった人物である。
彼の戦闘スタイルは手段を問わないでかつ屈辱を与えられるのを好む。彼のサイファーはレーザーやダガー、そしてS.L.Cを変化させたものを多く出す。
性格は一言でいえば浮気者。彼の周りには女性との噂が絶えない。罪悪感もなくふたまたも平気でする。不真面目で気まぐれな彼だが、根はいい青年。
彼は行動が突発的なので他人には読みづらいものがある。
※キレる:字のごとくキレちゃうんです。キレてる時は攻撃力、防御力が強力になり、速度が速くなるが、制御がなくなり行動が予測不可能になる。もちろん本人もそうなる。
かなり危険なコマンドである。