+0, 0+, −0, 0−, ++, −−, ±0, 0±, +−, −+, −±, ±−, +±, ±+, ±±, 00



P1 +0 良心の苛責・恐怖症     女性傾向・社会性−


性格傾向:良心的な繊細な善意.女性的な罪悪感.例えば道を歩いていて蟻を踏み殺してしまったのではないかと思う.良心の苛責からくる恐怖症.
記号解釈:自らの+s攻撃欲の危険性を良心的な善意の機能+eで防衛し無害にする.良心の優勢.罪悪感がヒステリー(0hy)型の恐怖症の形で表現され道徳的羞恥の検察は欠如している(0hy).衝動過圧!を伴う場合:病的な良心の苛嘖.
衝動病理学的にはこのPべクタ像は感動生活における相対的な良心の優勢を意味するが臨床的には恐怖症を表現する.罪を償う欲求(+e)が,ヒステリー型の恐怖症状+eで表現される.いわゆる恐怖の原因(動物,高所,深淵,広場,飛行機,汽車等)は二次的なもので恐怖を原発的に規定する原因(父親,去勢観念等)は意識されない.背景に抑圧されたカイン要求P−±は,根源的に,父親や兄弟に対する殺害願望P−0から由来している.
臨床心理学:動物−高所恐怖症,深淵−広場恐怖症,飛行機−汽車−赤面恐怖症など.



P2 0+ 自己顕示欲求     男性傾向・社会性−


性格傾向:自己顕示欲.一般に性的魅力,肉体的能力,物質的・精神的優越を見せびらかし,競争する他者をエロス的に圧倒しようとする.自己愛的な反応.
記号解釈:起源は「エロス的な危機+hを,羞恥−hyで防衛するどころか,逆に肉体や性器を露出+hyすることで驚愕させ防衛する」ことである.ヒステリー(+hy)は本来,性対象獲得競争の緊張から自らを解放防衛するために生じる露出発作である.倫理的なブレーキを失い(0e), 自らを偉大に見せようとする衝動欲求+hy. 衝動過圧を伴う場合:ヒステリー発作の危険と無力になったアベル0e.
衝動病理学:過緊張の場合(+!hy,+!!hy)は,ヒステリー型の運動暴発,感情転換,性器露出等の危険があるが,自我の防衛例えば疎外自我Sch−±あるいは権力肯定自我Sch+0がその火を消すのである.このヒステリー発作者の倫理性は,背景に留まって倫理的なジレンマ(±e)と戦うアベルがその役割を分担している.(一部の医師はヒステリー患者の倫理的態度を誤って判断している).もしヒステリー患者が倫理的な人間でないならば彼等は転換ということが出来ず,他のどんな方法によっても,エロス的な欲求を防衛できないであろう.このことは,背景における±e反応がよく物語っている.
臨床心理学:目だちたがり.感情の易変性.裸を見せるのが好きな人.露出症.



P3 −0 怒りのうっ積・殺意     男性傾向・社会性−


性格傾向:激怒,憎悪,憤怒,復讐,猜疑,嫉妬など,怒りの欲求がうっ積している.それを旧約聖書の人類初の殺人者カインにちなんでカイン欲求という.誰かを殺してやりたいという願望.この感情反応は無意識のなかにある発作衝動であるから,本人が全く自覚していないことが多い.(テスト結果を知らせる時に注意)
記号解釈:自らの+s攻撃の危険性を防衛するどころか殺意−eで加速している.荒々しいカイン的な感動−eが道徳的な羞恥のブレーキを失い0hy,前景に欝積している状態.道徳的なブレーキというのは衝動ファクタhyの防衛活動で,−hyは恥ずかしさによる防衛,0hyは羞恥心による検察を失って感情が暴発することを示す.したがってこの場合激怒から嫉妬に至る荒々しい感動発作の危険が増大している.衝動過圧を伴う場合:迫りくる発作の危険.稀に潜在性癲癇およびその代理症.
衝動病理学:背景にある自己顕示的なアベルP+±は,しばしば感動爆発の直後に前景の舞台に現れてきて,この人は鎮静と善とを示そうと努力するのである.
臨床心理学:些細なことですぐ怒る人.こらえ性がなくすぐカッとなる性 格.冷静に事態を観察するゆとりがない.



P4 0− 易感性関係不安     女性傾向・社会性−


性格傾向:気にしなくてもよいことを気にする.他からのエロス的な刺激を敏感に感じ,そのショックを隠す.誰も気にしないのに人に知られるのではないかと不安になる.非現実的な空想にふける.ものごとをオーバーに語る傾向.
記号解釈:エロス+hの危険性を羞恥−hyで防衛する. エロス的な感動やその他の種類の感動を隠そうとする.易感性関係念慮の不安.倫理的なブレーキが減弱している(0e).衝動過圧を伴う場合:非現実的,性的な空想界への逃避.空想嘘言.
衝動病理学:このPベクタ像は,偏執病的な易感性関係念慮の不安をもつ人の,確実なテスト所見である.この種の人達は次のような不安を抱く.「もし私が心の中にどんな種類の欲求を隠しているか−hyを人々が知ったならば,彼等は何と言うだろうか」.気にしなくてもよいことを気にする傾向.
臨床心理学:偏執病的な神経症や心気症の典型的な反応.一般に抑圧自我Sch−0,制止自我Sch−+を伴うことが多い.完全投影を伴う同じ所見(即ちP0−!,Sch0−)では重篤な偏執病的・投影的自我障碍であることを証明する.このPべクタ所見が女性的自我Sch0±を伴い,しかも性衝動に目標倒錯S+−があり,接触衝動に両性に対する二重対象結合C++が存在するならば,男性の同性愛を疑うに足る所見と言わねばならない.背景にある償いへの傾向をもつ自己顕示的カインP±+は,この関係念慮の不安のより深い基礎を明らかにしてくれる.



P5 ++ 感動氾濫     女性傾向・社会性+


性格傾向:感情が高ぶり溢れて息苦しい状態.手足を運動させて発散したい.悪意のないことを顕示したい.運動暴発の兆し.極めて派手に着飾る人.
記号解釈:性的興奮(S++)の危険性をヒステリックな感動氾濫の形で防衛する.即ち運動暴発への素質.自己顕示を伴った良心の苛嘖の氾濫.ヒステリー型の感情転換.循環性の感動氾濫(欝病,躁病).多動児.
衝動病理学:この所見は,ヒステリー型の感動氾濫の「感傷的な」所見である.もしこの感動氾濫P++が,10回のテストの系列中に現れる感動退潮P00によって解放される場合には,しばしば運動亢奮への素質を伴うことが証明される.この感動氾濫は,良心的な傾向(+e)が氾濫すると同時に,ヒステリー型の自己顕示欲求(+hy)が加わった状態である. その両者が融合し互いに膨れあがることによって感動生活が膨張し緊張が高まってくる.
臨床心理学:この感動氾濫が生産される場合に,もしその内部的緊張が何らかの運動亢奮や暴発などによって外へ放出されない時には,実際に現れてくるパニック(P−−)によって,背景から精神が包まれ冷たく硬直した静かな感情状態に戻る.



P6 −− 内部パニック・擬死反射     男性傾向・社会性−


性格傾向:「実存的危機」つまり環境の突然な変化や,予期しない性的刺激を突然に受けた時などに起こる内的なパニック.症状としては擬死反射の状態.
記号解釈:外界からの性的刺激や精神的刺激の危険を,死んだ振りをする形で防衛する.内部的パニック,実存的或はエロス的刺激によって惹起された不安。 固定化すれば擬死にまで至る感覚運動性の脱落現象(動物における死んだふり の反射).
衝動病理学:突然指名され,人の前でスピーチをしなければならないような実存的あるいは感動的な危機の状況,そのような過度の体験刺戟は精神を一時的に麻痺させる.内部的なパニックの感動発作像.このとき無意識的に荒々しい感動(−e)と繊細な感動(−hy)が抑圧され,頭の中が真っ白になる.道徳的検察(−hy)は鬱積された荒々しいカイン的感動(−e)の放出路を遮断し,その結果,外部に対する感動生活を硬直させてしまうのである.これを擬死による感動防衛という.このような状況を,人は不快な不安として体験する.背景に欝積している感動氾濫(P++)は,この人が運動亢奮によって,この耐え難い不安の窮境から身を守ろうと準備していることを証明している.
臨床心理学:この実存パニックはしばしば精神的健康人においても出現する.



P7 ±0 倫理的ジレンマ     男性傾向・社会性+


性格傾向:優しい仏様のような態度をとるべきか,非情で冷酷な神のような悪魔的態度をとるべきかの悩み.神の存在を疑う気持ち.怒りっぽくイライラする.
記号解釈:迫りくるエロス的危機,その刺激対象を「殺すべきか,殺さざるべきか」に悩む感情.アンビバレントではあるが,倫理的検察(±e)が優勢を占めている. 倫理的葛藤および倫理的懐疑の混在.倫理と道徳とが態度において互いに分離している.この人は道徳的制止を失った(0hy),倫理的な思い煩い(±e)を示している.煩悶.
衝動病理学:善と悪,殺すな/殺せ,その両方の傾向を伴った倫理的検察±eが優勢を占めている.正義に対する欲向,忍耐,善意,救助,敬神に対する良心(+e)が,同時に存在する不正,良心の喪失,狭量,悪意への傾向,及び他人の不幸を喜ぶこと,涜神への欲求等(−e)と常に闘争し,衝突する.このような倫理的葛藤や倫理的懐疑,及び倫理的煩悶,善と悪との間の骨の折れる,しかも単調な水車様運動が生ずる.しかも,一方が他方に対して勝利を得るということがない.このような情況は,道徳的検察の拒否ないしは減弱(0hy)によって更に重篤なものになり,その結果このような人は羞恥の限界を失って,倫理的な懐疑の状態にあることを環境にみせる(0hy)のである.
臨床心理学:とくにわれわれは,このような感動像を,倫理的な強迫によってエロス的あるいはその他の種類の感動を抑圧している強迫神経症患者や転換ヒステリー患者において見出すのである.



P8 0± 道徳的ジレンマ     女性傾向・社会性+


性格傾向:前の列に並んで自分をさらけ出すべきか,後ろの列に目だたないように隠れるべきかの悩み.恥の基準がわからない状態.身の置きどころなく嘆き悲しむ.
記号解釈:アンビであるが道徳的検察(±hy)が優勢を占める.倫理的なブレーキを喪った(0e)道徳的な葛藤,道徳的懐疑.悲嘆.迫ってくるエロス的な危機,その刺激対象から「隠れようか,それとも露出すべきかのジレンマ(外敵撃退の原始防衛は自己隠蔽の他に孔雀のような身体顕示や原始人の性器露出があることに留意).
衝動病理学:この所見は前項の葛藤や懐疑が倫理的領域(±e)から道徳的領域(±hy)へと移動しただけである.この人は倫理的な検察が静止しているが(0e),自己顕示欲求と自己隠蔽欲求との間の闘争が強迫的に行われている(±hy).倫理的強迫(P±0)は荒々しい男性的な性質をもつが,道徳的強迫の場合には,繊細な女性的傾向を挙げねばならない.
臨床心理学:それは悲歎,呻吟という臨床的現象がよく示し,ヒステリー患者や欝病患者に見出す.倫理的強迫は背景に道徳的強迫を,又道徳的強迫は背景に倫理的強迫を置くことが補償理論から推論される.



P9 +− 小羊アベル     女性傾向・社会性+


性格傾向:周囲を意識した小羊のような優しさ.良心と善意.乙女のような羞恥心.控えめな態度.目だたないようにつとめる.良心的不安.
記号解釈:基本的には自らの性欲S++に対する防衛である.+sの攻撃危険性を,殺すな!の+eが防衛し,+hのエロス欲求を,羞恥−hyで制御するのである.「小羊のように柔和な」純粋アベルは,次のような態度を示す:良心的,寛容,善意,救助,宗教性(+e),羞恥,自己顕示欲求の抑圧(−hy).
衝動病理学:この感動像は一方では倫理的生活において,同胞に対して良心,正義,寛容に従って行動し,善意をもち救いの手をのべ,しばしば宗教的である.他方では道徳的生活において厳格に羞恥の限界に注意し,自らを外に顕示するのではなくて,自己顕示欲求を抑圧し,繊細な情緒運動を隠蔽する(−hy).
臨床心理学:社会は彼を紳士的な,善良な人として評価する.彼は善良と呼ばれるけれども,背景に悪人,即ち「兄,カイン」の性質をもっている.そして,それを実現する法廷は自我である.



P10 −+ 純粋カイン     男性傾向・社会性+


性格傾向:表面的には普通だが内心ではいつも何かに怒っている平凡人.わざと悪意を顕示する目だちたがり屋.無神論者.嫉妬からくる意地悪さ.
記号解釈:迫り来る実存的危機を怒りによって防衛する.「純粋なカイン」.激怒,憎悪,憤怒,復讐,猜疑及び嫉妬の欝積−e.悪を示そうとする欲求+hy.次のような態度が現れる.良心の喪失,不正.狭量.しかし社会的に我慢できる程度である.平凡人の1/5はカイン的人間である.
衝動病理学:カイン的な悪は二つの欲向から育つ.第1に,彼は荒々しい感動(激怒から嫉妬に至る)を自己の中に欝積させる−e.第2にその荒々しい感動を外に現そうとする+hy.ゆえにカインは邪悪な人間であることを恥じない.この「カイン存在」の選択運命を決定するものは遺伝素質の他に,幼時期における教育の失敗である.競争し張合っている兄弟姉妹の中で,もし誰か一人が両親から優遇されると,両親の愛を得ることに失敗した方がカイン欲求を発展させる.このような場合,競争相手や両親の死を願うという欲求が起ってくる.
臨床心理学:それゆえカイン的人間の悲劇的な運命は幼児期に始まる.彼等はしばしば夜には反抗的な夜尿症の人であり,昼は容易に激怒の状態に陥り,家庭および学校に復讐する.しかし,カインのうち,取り返しのつかないような感動行為をするのは僅かで,一部は反抗的な放尿を空虚な知識に変化させ,疑似批評家活動の裏に隠れるのである.



P11 −± 自らを隠すカイン     男性傾向・社会性−


性格傾向:短気で怒りっぽい性格,それを隠そうとしてイライラしている.恐怖の兆し.道徳と不道徳の闘いの中で緊張し,怒りを溜めこんでいる.意地悪.
記号解釈:迫り来る実存的およびエロス的刺激に対して,憎しみと空想逃避で防衛する.悪意を覚られぬように隠している.恐怖症の前期.
衝動病理学:a)カイン的性格P−+が自らを隠そうとしている−hy.良心の欠如.b)道徳的懐疑者±hyがカイン−eを抑圧している. c)パニックP−−がヒステリー的に顕示される+hy.d)荒々しい感動の爆発の危険性の前期P−0.e)同時に恐怖症的な背景像人格P+0が存在する.
臨床心理学:背景の恐怖症者は一時的に後に引込んでいるだけであって,突如として再び舞台の前景に現われるのである.



P12 ±− 償罪パニック・苦悶     女性傾向・社会性+


性格傾向:素直に感情つまり善悪の葛藤を表現することができない.不安の兆し.悪意を抑え,罪を償おうとするが,うまくゆかずパニック状態になっている.
記号解釈:迫り来る実存的およびエロス的刺激を良心と憎悪で防衛する.その結果として苦しみ悶える状態になる.それはヒステリー的に変化する.
衝動病理学:a)カイン(悪意−e)を抑圧しているアベル的性格P+−.顕示の欠如.b)倫理的懐疑者±eが自らをかくしている−hy.c)罪の償いをしようと欲して+eいるパニックP−−状態.d)易感性関係念慮の不安の前期P0−.e)同時にヒステリー型の自己顕示欲求P0+が作用する.
臨床心理学:この感動像は,善をなそうとする意志+eと悪行−eとの挽臼の間で,次第に磨り潰されてゆく倫理的懐疑者±eの像を示すものであり,しかもその倫理的闘争をかくそうとしている−hy.この所見において,±e反応は0e反応の前に現われるものとして我々は理解する故に,P0−の感動像の前期,即ち易感性関係念慮の不安として解釈することも出来るのである.背景において自己顕示欲求P0+が優勢を占めることは,同時に起る反対の作用によって,ヒステリー型の色彩をおしつける.この所見はアベル的性格をもつものではあるけれども,カインの荒々しい感動を欝積させ,またそれ故に倫理的ジレンマを生じ,苦悶している状態である.



P13 +± 善意顕示アベル     女性傾向・社会性+


性格傾向:怒りの感情を抑えつけて緊張状態になっている.いつも善人であることを強調したい気持ち.溢れ出ようとする感情を隠してイライラしている.
記号解釈:迫り来る実存的およびエロス的刺激に対して,良心の顕示と羞恥で防衛する.
衝動病理学:a)アベル的性格P+−がその善意を顕示しようとする+hy.怒りの欠如.b)罪の償い+eによって,道徳的な葛藤±hyから解放される.c)自らをかくそうとする−hy傾向をもった感動の氾濫P++.d)恐怖症P+0の前期.e)同時に背景では,カイン欲求の欝積P−0が共に作用している.
臨床心理学:道徳的葛藤+hyの中に生きている人間が,罪を償うことによって+e,救済を探し求めている.また,c)感動氾濫P++によってみちあふれているが,この人はそれを隠そうとしている−hy.±hy反応は0hy反応の前期とみなされるから,この反応P+±は次のファーゼにはP+0に移行するものであり,それゆえ恐怖症に対する素質を考えるべきである. この背景像人格はP−0の感動像を示すのであるから,それは同時にあるいは継起的にその反対の作用を示すものであるが,我々はまたカイン欲求P−0の潜在的欝積や時折起ってくる爆発を考えなくてはならない.



P14 ±+ 償罪カイン     男性傾向・社会性+


性格傾向:内面の感情つまり善と悪の葛藤を隠すことができない.人に良く思われたい.罪を償って良い人間になろうとしている.それを顕示したい.
記号解釈:迫り来る実存的及びエロス的刺激に対して,怒りと良心で防衛する.
衝動病理学:a)カイン的性格P−+が罪を償おう+eとしている.羞恥の欠如.b)倫理的懐疑者±eがその葛藤を顕示する+hy.c)カインの抑圧−eを伴う感 動氾濫P++.d)自己顕示欲求及び露出症が優勢を示す前期P0+.e)同時に易感性関係念慮の不安P0−が作用する.
臨床心理学:この場合,次のような解釈可能性が重要である.荒々しい感動と繊細な感動にあふれているP++人間が,カイン欲求を抑圧する−eことによって惹起された緊張の中に生きている.この感動像はP0+のベクタ像の前期と考えられるから,自己顕示欲求,露出症及びヒステリー型の「見せびらかし」が優勢を示す可能性を証明する. また背景像人格はP0−の感動像であるから,この所見は,同時的あるいは継起的な反対の作用によって,易感性関係念慮の不安を招くのである.



P15 ±± 感動発作前期     男性傾向・社会性+


性格傾向:イライラ感が高まっている.感情の爆発が近い.「嵐の前の静けさ」.
記号解釈:迫り来る実存的およびエロス的刺激から自分を防衛するために,発作直前の状態にまで感情が膨れたり縮んだりしている.善人アベルと悪人カインの統合された状態.倫理的・道徳的な悩み.感動発作の直前.
衝動病理学:感動運動の二つのファクタeとhyとの作用の四つの機能:+e,−e,+hy,−hyが統一される:a)感動氾濫P++の運動爆発による魂の氾濫を,非活動化P−−という反対の反応が阻止する.b)殺すな!という倫理の内部的法則+eと,時間と場所に結びついた外的な道徳±hyとが,例えば戦時において一致し調和する.c)荒々しいカイン欲求P−+を繊細なアベル欲求P+−が抑制する.d)四つの対立した感動運動(隣人を公平に扱う,公平に扱わない,自己を顕示する,自らを隠す)を,1つの共通的な力制の中に統一する.
臨床心理学:この感動像が,未発達な自我(例えばSch0−,0+,+0,+−),および感覚的なエロス的性欲像(S0+!,+!0,+!+!等)と同時に現われるならば,P±±の感動像は,感動運動の統合ないしは人間化のしるしではなくて,例えば神経症患者(強迫神経症,吃音)および精神疾患者=強迫妄想,絶望妄想等=における,病的に現われた倫理的,道徳的ジレンマのテスト所見の特徴である.それゆえ相対的関係を考慮せずに感動像を解釈することは正しくない.



P16 00 無感動     女性傾向・社会性−


性格傾向:泣いた後,激しく感動した後の反応.どんな事が起こってっも心が動かされない冷静な人.激しい感情や繊細な情緒が全くないロボットのような人.
記号解釈:迫り来る実存的およびエロス的刺激に対し,号泣,絶叫,凶暴によって防衛した直後の反応.荒々しい感動(e)と繊細な感動(hy)の同時解放.感動氾濫P++,或いは耐え難い倫理的・道徳的ジレンマP±±の後の感動の退潮.
衝動病理学:P空虚像は,感動生活における氾濫の後の一過性の干潮,嵐の後の無風状態.ヒステリー患者,循環性欝病または躁病において泣きわめくこと,号泣,狂暴等の感動爆発の後の感動運動の病的な解体を示す.運がよけれぱ,時折同じテスト系列中に感動氾濫の時期P++, あるいは倫理的・道徳的ジレンマの時期P±+と,それに続く解放及び解体の時期P00とを見出すことに成功する.
臨床心理学:それゆえ,不安ヒステリー患者や,欝病や躁病の患者を,最高度の感動氾濫の時とそれに続く感動干潮の時にテストすることは,極めて望ましいことである.臨床的に,Pべクタ領域におけるこの空虚像は,一般に感動運動の最高度の易変性を意味する.