『吼えろペン』インタビュー

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これは『アニメパラダイス(2001年10日4日放送分)』にて放送されたインタビューを筆記したものです。『吼えよペン』の誕生秘話とも言うべきこのインタビュー内容は、放送とともに消え行くのも忍びないと思い、文章化したものです。

文責:いっそく


Q: この漫画『吼えろペン』を描くきっかけを教えてください

「サンデーGX(ジェネックス)という本が発売される。新しく創刊されると。変身ヒーローものがたくさん出てくる本です。マンガ家のところにヒーローが訪ねてきて、アシスタントをやりながら戦う。手塚治虫先生の『バンパイア』のような作品をやりたいと思いませんか?」という電話をいただいて、「それは是非やりたいです。おまかせください!」と返事をしてですね、企画を練り始めたわけなんですけども、向こうが言ってきた内容っていうのが、最初は戦隊モノで巨大ロボも出るような、一度そういうものを描いてみましょうかというような話を、まず話をしていたんです。それが、結局はこういう形に落ち着いたわけです。

Q: 何故、炎尾燃が主人公なんですか

『燃えよペン』というマンガがありまして、マンガ家が主人公の、私の描いたマンガがあるんですけど、その彼のキャラクターと、島本和彦が先生役で登場するのと、どちらがいいだろうかということを考えてですね、私がさすがに宇宙人と戦うのはどう考えてもウソだろうと。炎尾燃に任せようということで、始めてみたんですよね。『燃えよペン』というのは、マンガ家の生活を描いた作品なんですけども、『吼えろペン』というほうは、マンガ家の生活を描く作品ではなくして、あくまでも、マンガ家とそのアシスタントが力を合わせて悪と戦う、あるいは何かの組織と戦うヒーローものであるという、そういう構図である筈なんです(笑)

Q: 炎尾燃は島本先生がモデルですか

まあ・・・違いますよね。
私が描くキャラクターは、みんな私の一部分が反映されてはいるんですけども、自分の子供みたいなもんですから、影響は受けているけども、行動や反応は違ってくるんですよ。キャラクターによって、やっぱり。炎尾燃も、私自身ではなくして、より能動的なキャラクターになっていますよね。

Q: 炎尾燃が島本先生と似ているところ、違うところはありますか

本当は言いたいことを言えない、で、思っていることをやってくれる。で、実際にそれを何故現実では言わないかというと、現実で言っちゃったら問題が起きるから言わないんですよ。それでまた解決しなくちゃいけない、自分で。物語の中では問題を起こさなきゃいけないですから、あえて起こしてもらうんです。そして結局、やっぱり炎尾燃は痛い目をみたっていうような結末になれば、やっぱりこうなるんだよねと、だから僕はやらないんだよと、ね!?(笑)っていう、そういうシュミレーション的なものはありますよね。

Q: この漫画に対しての業界の反応はどうですか

一番最初に『燃えよペン』を描いたときは、雑誌の中でかなり浮いた連載で、他の連載陣に比べて、ターゲットとしている読者層が全く違ったんですよね。結構自由に描いてたんですよね。今から消してしまいたいものもたくさんあるんですけども、もう出てしまったものは仕方が無いなということで。今はサンデーGXさんでやっていて、私のファンもそこでやってるっていうのが十分わかってるし、炎尾燃自体のファンの方もいらっしゃいますので、結構気を使って。マンガの中にマンガ家が登場する場合は、誰という風に特定できないように一生懸命気を使ってやってます。

Q: 先生の漫画には、まるで格言のような名セリフが見所ですが、そのアイデアはどこから出てくるのですか

ポジティブな言葉を言うと、プラス思考になるっていうかね。どんな状況で、どんなセリフを言っても、それが前向きになればいいかなと思って。じゃ前向きになるように、ちょこっと言葉を変えてですね、使ったりしますよね。

Q: いままでのセリフで気に入ったものを教えてください

前に『逆境ナイン』で、「それはそれ、これはこれ」っていう言葉を使ったんですけど、それは別に私が考えた言葉でも何でもないんですけど、それは言い訳じゃないかと、なんでそういう事を言うんだ、ということを思いながら、その言い訳を、前向きな言葉として使ったらどうなるだろうと思ったときに、がんじがらめに縛られて、落ち込んでいる主人公に、「この言葉で立ち直れ!」って言って、「それはそれ、これはこれ」って言うと、それはイイ言葉になるんですよね、同じ言葉ですけど。結構、いろんな人が使ってくれてますけども。

Q: やはり常に作品には魂を込めているのですか

「布団が吹っ飛んだ」というギャグがあるじゃないですか。それは、オヤジギャグというか、面白くないギャグのひとつとして言ってるじゃないですか。それは、あなたがそれを面白いギャグと思ってないからつまらないんだよ、と。すごく高い高級羽毛布団をダイナマイト10本で吹っ飛んだところを想像しながら言ってみろと。その「布団が吹っ飛んだ」と、風が吹いてきて単に布団がぱさってなった時の「布団が吹っ飛んだ」では違うだろう!っていうのがあるんですよね。何を話してるんでしょうね(大笑)。だから、同じネタ、同じネームでも、気持ちが入っているときの絵と、単に形を追っているときの絵では、やっぱり違うんですよ。

(『吼えろペン』のコミックスをとって、真顔で)
本の中には、人の一生を左右する本というものがある!
この本が、君の一生を左右するかどうかは、わからないが、
読んでみる価値はあるかも知れない。是非、一度読んでください。
よろしくお願いします。


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